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日立製作所×テンプホールディングス「大手企業の人事に潜む問題とテクノロジーでの解決策」

あらゆる業界において第一線で活躍するプロフェッショナルを「先生」として迎え、オンライン授業を届けるschoo。株式会社リンクアンドモチベーション執行役員の麻野耕司による4回シリーズの共通テーマは「人事はテクノロジーによって進化する」。


第3回目のテーマ「大手企業の人事に潜む問題とテクノロジーでの解決策」でゲストに迎えたのは、株式会社日立製作所ICT事業統括本部人事総務本部人財企画部タレントマネジメントグループ主任の中村亮一氏、テンプホールディングス株式会社グループ人事本部人事情報室室長の山崎涼子氏、同室の小川翔平氏の3名。

日本を代表する大手企業におけるHR Techの現状が明らかになった60分を、HR2048が独占レポートします。

【放送日】
2017年2月28日

【登壇者】
株式会社日立製作所 ICT事業統括本部 人事総務本部 人財企画部 タレントマネジメントグループ 主任 中村 亮一 氏
テンプホールディングス株式会社 グループ人事本部 人事情報室 室長 山崎 涼子 氏 
グループ人事本部 人事情報室 小川 翔平 氏
株式会社リンクアンドモチベーション 執行役員 麻野 耕司 

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優秀な人財・とがった人財の定義を曖昧にせず、タイプ分けして捉える

麻野 耕司(以下、麻野):第3回目の本日は、日本を代表する大手企業2社の皆さまに登場いただいて「大手企業の人事に潜む問題とテクノロジーでの解決策」をテーマにすすめていきたいと思います。

昨年の秋に第1回HRテクノロジー大賞が発表されたのですが、日立製作所さんはイノベーション賞を、テンプホールディングスさんはアナリティクス部門優秀賞を受賞されています。

中村 亮一氏(以下、中村氏):本日私からは、採用の取り組みについてお話しできればと思います。

採用担当者の方は自分が面接に入っていない学生を見て「なぜこの学生が採用されたのか?」という疑問があったり「優秀な学生を採用しよう」「とがった学生が欲しい」という声があっても、その定義が不明瞭だと感じた経験をお持ちの方も多いと思います。

私自身もそう感じた経験があり、データを使って曖昧さを可視化することに取り組んでいます。

これまでの一般的な人財要件の設計手法は、モデルとなるハイパフォーマーにインタビューを行って要素を抽出するというものでした。

今回はそこに定量情報となる人財データ・ハイパフォーマー分析を加えて、ポートフォリオ設計・人財要件設計・選考設計を行っています。

また、学生の適性データやステイタス、社員に行った適性テスト結果を基にした適性値・コンピテンシーデータを活用し、アナリティクスで、クラスタリングなどから解析できる情報を基に、人事施策につなげる取り組みをしています。

そして、事業を牽引する人財、優秀・とがった人財というのは、あやふやに一つの言葉で語られることが多いですが、実際はタイプ分けできるのではと考え、可視化することからスタートしたのです。

麻野:興味深いですね。縦軸と横軸によってA~Dの4タイプに分けているということですが、どういう考え方で分けているのでしょうか。

中村氏:どういうタイプを見える化するかを考える際に、現在所属している人財とこれから欲しい人財ということについて様々議論を重ね、行動や思考、企業としての価値観を軸にタイプ分けをしました。

麻野:なるほど。例えば思考するタイプに該当するといっても、実際はもっと細かく定義されていて、当てはまる度合いが高いほど、左寄りにプロットされるというイメージということですね。

日本にも、グーグルのようにデータサイエンティストがいる人事がある

麻野:本日お越しいただいた小川さんがそうなのですが、テンプホールディングスさんは人事にデータサイエンティストがいます。

グーグルにはデータサイエンティストがいるというのは有名な話ですが、実際に日本の企業にもいるということで、驚きました。なぜ専属のデータサイエンティストが必要だと思われたのでしょうか。

山崎 涼子氏(以下、山崎氏):まず人事でHR Techを進めていく上で、自分一人の力ではできないと思ったことが最初のきっかけです。

こういった高度なデータ分析を行う場合、アールという統計ソフトや機械学習といった、普通の人事ではできないようなことをやっていかなければいけないため、データサイエンティストがいてくれたらという考えに至りました。

麻野:小川さんのデータサイエンティストとしての活動内容を、詳しく教えてください。

小川 翔平氏(以下、小川氏):データサイエンティストとしての活動とすると、まず最初に人事として取り組みたい課題をPJTメンバーと一緒に議論し決定します。

その後データ分析の問題として再定義します。大まかな方針が決まり次第、Rを用いてデータを処理するコードを書いて処理を行い、その結果をまとめ説明資料を作ります。

この段階でPJTメンバーに分析結果を説明し、問題点があれば指摘をもらい再分析を行い、納得できるクオリティになるまで繰り返すということをしています。

山崎氏:ちなみに私としては、分析だけやって欲しいと思っているわけではないので、人事の課題を考えたり、仮説を設計するところから入ってもらっています。

ディスカッションをもとに分析をしてもらうなど、タッグを組んでチームとして仕事をしています。

テンプホールディングスが人事データ分析に取り組み始めたのは一昨年の4月からですが、個人的にずっと「現在はわかるけれど未来はわからない」ということに対して、もやもやとした思いがありました。

また、社内ではKKDと呼んでいる、勘と経験と度胸で行う人事から脱却したいという思いもありました。

具体的には、社員の入り口から出口まで、つまりは採用・育成・異動・配置・退職の各フェーズにおいて、表面的に見えていた課題を、勘と経験と度胸も活かしながら、客観的なデータ分析をしています。

例えば、社内で活躍できる人・活躍できる場所を明確にして、どのような人をどのような部署に異動させればどの程度の確率で活躍できるのかも明らかにしています。

小川氏:私からは、取り組み事例をご説明します。ハイパフォーマー分析・退職予測モデル・異動後活躍組織予測モデルなどありますが、HRテクノロジー大賞の優秀賞をいただいたきっかけにもなった分析「退職予測モデル」について。

これは、退職しそうな人を事前予測するモデルです。性別や年齢など基幹システムに蓄積されているデータを用いて、機械学習手法であるランダムフォレストによって、予測をしました。

良い予測モデルが構築できたため、現在パイロット的な位置付けで社内活用しています。

麻野:大変興味深いですね。差し支えない範囲で結構ですが、退職するかしないかというのは、何を見ればわかるのですか。

小川氏:同じ等級で滞留するなどといったことは、重要だということがわかっています。

山崎氏:会社によって、説明力が高く出る変数というのは異なると思いますが、このモデルの特徴は、社内で通常把握している指標だけで作れていることにあります。特殊なアセスメント結果は一切使っていないので、どこの企業でもできると思います。

麻野:一人に対して、何種類のデータを分析しているのでしょうか。

小川氏:20データあるかどうかです。

麻野:データを用いたことで、勘や経験で感じていたことと、違う結果が出ましたか。

山崎氏:出ました。社内で、ハイパフォーマーとされていて退職する可能性が見当たらないような社員が、退職予測で挙がってくることもあり、それは驚きました。

それが実際に当たっているかどうかは別として、退職の可能性があるという目で見ることができることは、新しい発見です。

グローバル化にあたっては、定量的なデータ提示が必要になる

麻野:ありがとうございます。すごいですね。先ほどの日立製作所さんのお話は採用領域でしたが、データが配置や退職にも有効に活用できるということですね。

その上で、それぞれにお持ちの課題についてはいかがでしょうか。まずは日立製作所さんから。

中村氏:そうですね。まず、採用分野でピープルアナリティクスを進めてきたわけですが、配置や退職といったその他分野に一歩踏み出していかなければと思っています。

また、アナリティクスの結果をどう施策に反映させるかです。データ上は8割異動させることを推奨するという結果が出てきたとして、本当に異動がさせられるのか。

また私たちも、ピープルアナリティクス専門の部門を立ち上げたいという話もしているので、そこに必要な人財のスキル・コンピテンシーは何かを考える必要があるとも考えています。

麻野:ピープルアナリティクス専門の部門を立ち上げるということで、日立製作所さんが、そこまで本気で人事のデータ分析・活用に取り組もうとされている背景は何でしょうか。

中村氏:グローバル化していく中で、判断をする・判断を仰ぐ上で、定性的な情報をもとにするのではなく、定量的なデータで示さなければいけないという変化の最中にあることが大きいですね。

データの力と、勘や経験を掛け合わせる

山崎氏:私たちの課題は2つあります。

ひとつは、情報の集約と一元管理をさらに進めていくことです。テンプホールディングスが所属しているパーソルグループは、国内外90社を超える幅広い企業群で構成されているのですが、各企業の持っているシステムがバラバラでした。

昨年にようやく、グループのシステムを統一したところなので、情報の粒度の統一をはじめとした情報の一元管理が必要だと考えています。

もうひとつは、人事施策とHR Techの連動です。分析結果の効果検証や人事施策への活用を主眼としたデータ分析により、実用性を高めていきたいと思っています。

麻野:テンプホールディングスさんは情報を多くお持ちでしょうから、データを統合するだけでも、かなりの手間がかかりそうですが、テンプホールディングスさんがHR Techの専門セクションを置いている背景も、ぜひお聞かせください。

山崎氏:グループ全体の人をきちんと見ていく上で、自分たちの目だけでは見切れないと思っているからです。データの力を借りつつ、人事が大切にしている勘や経験といったウェットな部分を掛け合わせてやっていきたいと考えています。

麻野:ありがとうございます。それでは最後にお一人ずつメッセージをいただければと思います。

HR Techに興味があるならば、まず始めてみること

中村氏:どこの企業であっても様々な知見が人事に蓄積されているはずですが、それらを可視化してオープン化することです。それにより、人事をもう一段高めるだけではなく、経営者とデータで話ができる機会になると思います。

私を含め皆さんで取り組むことで、この市場を大きくできればと思っています。データを目にすればきっと面白いと思うはずなので、ともかくまず、始めてみることが大切です。

山崎氏:データ分析は結果が出にくいものなので、投資をすることが難しいと考える方も多いと思います。

ですが、私たちのように2名でもたくさんの分析ができて、結果を出すことができますので、未来の人事のために、ぜひ早く手をつけることをおすすめしたいと思います。

小川氏:データ分析者の立場としては、今はまだシンプルな手法を多く用いている段階だと思っています。これからもっと高度なことにチャレンジしたい一方で、難しい手法を使えばいいというわけではありません。

人事として何をやりたいかという問題設定次第で、シンプルな分析でもいい結果が出せると思いますので、興味を持たれたら是非取り組んでみて欲しいと思います。

麻野:第2回のベンチャー企業版の場合は、外部ベンダーのプロダクトをどう活用していくのかという話でしたが、今回は内部のデータをどう活用していくのか。2社ともに本気で取り組んでおられて、そして成果が出てきているということに、非常に感銘を受けました。

一方で、他の会社もなるべく早くこういった取り組みを始めなければ、取り残されてしまうという感覚も持ちました。本当に面白く貴重な時間を、ありがとうございました。

最終回となる次回は「HR Techサービス開発者と考える、10年後の人事の姿」をテーマにお送りします。どうぞご期待ください。

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※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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