エンゲージメントトップクラス企業の、“組織のモノサシ”を用いた一人ひとりに向き合う組織人事

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組織の内部崩壊・倒産危機を乗り越えて、コンテンツマーケティング事業で業界トップクラスの企業へと成長した、株式会社ウィルゲート。創業者であり『ウィルゲート 逆境から生まれたチーム』の著者である代表取締役の小島梨揮氏と、同社執行役員の山中諭氏をお迎えし、コンサルタントとして長きに渡って同社をサポートしてきた、リンクアンドモチベーション執行役員の麻野耕司とのトークセッションが行われました。通常では聞くことのできない、赤裸々に語られた事業と組織の内情を、HR2048が独占レポートします。

【イベント実施日】
2017年7月27日(木)

【プロフィール】
株式会社ウィルゲート 代表取締役 小島 梨揮 氏
           執行役員  山中 諭 氏
株式会社リンクアンドモチベーション 執行役員 麻野 耕司 

事業の隆盛と組織状態の良し悪しには、一定のタイムラグがある

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小島梨揮氏(以下、小島氏):事業環境や組織の状況に応じて、メンバーが不安に思う内容も変わってくるので、都度、会社のメッセージをどのように現場に届けるのかという方法も変えていかなければいけません。エンゲージメントサーベイにより、それぞれの部門においてどのような課題が生じているか、どのようなメッセージを経営側に発しているのかを受け取ることができるので、2012年から17年まで約5年間近く、サーベイのスコアを手掛かりに組織活性化に取り組んでいます。

具体的な施策の話の前に、会社の事業状態について先に整理させていただくと、2008〜2012年にかけて、SEOのコンサルティング事業で会社が急成長したんですね。並行して2010年頃から、新規事業となるメディア事業を手がけていて、2012年を目標に大きくスケールしようとしていたところでした。2010〜2012年は既存事業の成長に加えて新規事業も伸びようとしている非常に良い状態だったんですが、2012年後半に、個人情報漏洩を起こしてしまった。そこで、収益よりも、改善・再発防止を優先しようと、営業停止してメディア事業の運営を止めたんです。

それで2013年以降は再度、ひとつの事業を運営する会社に戻ってしまいました。当時のネット業界をご存じの方であれば、お分かりになるかもしれないのですが、2012〜13年にかけては、スマートフォンが普及して、Facebookのユーザー数が1千万人を超え、いわゆるネットマーケティングの主流が、検索エンジンからSNSにシフトしていった時代です。つまり、事業環境が激変し、今までの私たちのやり方だけでは通用しなくなってきた状況に置かれていました。2013年以降に再度新規事業を立ち上げて、ようやく結果を出すことができて前に進み始めたのが2015年くらいです。

でも、2015年は事業の結果は出始めたにもかかわらず、エンゲージメントスコアが低い状態でしたし、会社の立ち上げ期や個人情報漏洩を起こしてしまった直後の1〜2年間はスコアが意外と高かったので、業績とエンゲージメントスコアはタイムリーに連動しているわけではないのだということを実感しました。

麻野耕司(以下、麻野):経営状況とエンゲージメントスコアには、一定のタイムラグがあるということが面白いですね。1年ほどのタイムラグがあって、後からインパクトが出てくる。私自身もやはり、最初に取り組むべきこと・大切なことは、理念だと思っています。16領域の内、どの項目が上がると他の項目も連動して上がるのか。逆に連動して上がらない項目はどれなのかという、影響度を算出したんです。そうするとやはり、その他項目に影響を与える項目として「理念・戦略」の項目が圧倒的に高かった。逆に、先ほどお話にもあった「制度・待遇」は影響度が低かったですね。

これは仮説ですが、理念に共感できていると、自分の評価にも納得できたり、上司の言っていることに満足できたり、仕事にやりがいを持てたりするのでしょう。ただ、評価に納得できているからといって、理念に共感できているかどうかは別であり、上司に満足できているかどうかは別です。「理念・戦略」の項目が非常に高いけれど他の項目は低いという会社はほぼ見たことないので、やはり「理念・戦略」は大事だと言えます。ウィルゲート社の場合は、2008年以降にしっかりと組織に投資をしてきたので、2012年に厳しい状況にさらされて以降も、2014年あたりまでの2年くらいは、組織の踏ん張りが効いたのかなと感じました。それではいよいよ、具体的な組織施策についてうかがえればと思います。

「兼任」「副業」により、社内外から社員の成長を支援する

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山中諭氏(以下、山中氏):はい、よろしくお願いいたします。エンゲージメントサーベイの「組織風土・人的資源」を中心に、お話しさせていただきたいと思います。実は私、このサーベイのマニアで(笑)、かなり深く分析をしています。そこでわかったことは「理念」はもちろん大事ですが、その次に大事なのがやはりこの「組織風土・人的資源」だということです。そこで、4つの観点(「成長支援」「多様性促進」「縦・横・斜めのコミュニケーション活性化」「社員の家族を大切にする」)でお話しができればと思います。

まず「成長支援」について。仕事内・外で分けて捉えています。仕事内で成長できる制度は幾つもありますし、一方で、仕事内だけではやはり成長に限界はあるので、仕事外というところでも考えています。仕事内で特徴的なところはやはり、兼任推奨ですね。「兼任チャレンジ制度」、通称「兼チャレ」という制度もあります。これは例えば、営業の人間がエンジニアに挑戦したいと言って手を挙げたら、兼任ができるという制度です。複数の部門を、横断的に見る視点を身に着けることで、事業・組織をつくる力が飛躍的に伸びるんですよね。

仕事外のところでは、最近メディアでも取り上げていただくことが多いのですが、「副業OK」というのが特徴です。また、5パーセントルールというのも設けています。何かというと、皆さんご存じのGoogleの20パーセントルールの、5パーセント版です。1ヶ月/20日間の内の5パーセントにあたる8時間は、自分の勉強のために時間を使えるという制度です。社員の能力は、重要な会社の資産なので、多くの成長機会を提供できるように心がけていますね。

社員のライフステージや社員数の変化に応じて、組織施策を考える

次に「多様性促進」ですね。多様な人材が活躍できることは会社の成長にも繋がっていきます。例えば、裁量労働の導入や、出社時間を自由選択にしています。現在の制度では出社時間は、7時半・8時・8時半・9時・9時半の5種類から選択ができます。帰る時間も連動するので、早く出社した分、早く帰れるというものです。導入した背景には、子どもがいる社員が増えてきたことがあります。時短勤務や週3~4日勤務で働いている社員も多く、自分の『will』の実現に向けて、それぞれがチャレンジしていますね。

「縦・横・斜めのコミュニケーション活性化」については、かなり力を入れています。例えば、運動会なんかは、かなり盛り上がりましたね。社員数が120〜130名になってくると、オフィス内の縦のラインばかりのコミュニケーションになりがちですが、こうしたイベントがあることで、通常とは異なるコミュニケーションラインが生まれるのかなと思います。それが、部門間の連携やノウハウ共有の動きを助け、事業成長にも繋がっているという実感があります。

あとは「社員の家族を大切にする」という意味で、会社の授業参観のような日を設けています。具体的には社員が日ごろお世話になっているご両親やパートナーの方などを社内にお招きして、感謝を伝えるとともにウィルゲートのことをもっと知っていただくという取り組みです。2012年から毎年実施していて、社員のご家族のみなさまからも好評ですね。

麻野:せっかくなので、少し質問させてください。「成長支援」の施策を行う上で重要視していることがあれば、教えていただいてもいですか?

山中氏:やはり、仕事を通しての成長というのが非常に大事だと考えています。いまの自分の能力よりも、少しチャレンジングな目標に向かわせる。もちろん失敗もありますが、それを乗り越えて大きく成長した社員を何人も見てきました。評価を決める項目にも“成長目標”を設けていて、成長した社員を評価する仕組みもあります。

また、先ほどお話した副業も、社員の成長に大きく繋がっていると感じますね。現状、社内でも20%くらいの社員が副業をしていて、社内ではできない経験を積んで、それを社内の業務に生かしてくれています。

多様性を認めるだけではなく、理念で束ねることで組織が成長し続ける

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麻野:副業やテレワークがニュースになることも多く、私もコメントを求められることがあるんですが、個人のモチベーションは上がるかもしれないけれども、ただそれだけを推進していくと、束ねることができずにバラバラになっていくんじゃないかという懸念をお話ししました。

山中氏:おっしゃる通りですね。

麻野:副業やテレワークを導入して、生産性が下がったとか退職率が上がったというご相談も、実際に複数の企業さまからいただいているので、安易に導入すると危ないなとも思っています。導入にあたり、気を付けているポイントはあるのでしょうか?

山中氏:はい。やはり重要なのは理念です。理念がしっかり浸透していて、会社への満足度が高ければ、副業をやっても結局は、社内に得たものを返そうという気持ちになります。会社が副業を認めてくれているから、自分は外でも成長できているという感覚を持っている社員が多いので、問題なく運用できているのかなと思います。それから、副業は何をしてもいいという訳ではなく、社内で学べないことや、会社の業務にプラスになることしか、許可は出していませんし、副業については全て、役員会で承認をとって進めています。

麻野:多様性を認めて、ダイバーシティを進めていくだけではなくて、インクルージョンとしての理念が必要だという前提に立っているということですね。

コミュニケーション施策は、何があっても継続する

麻野:「縦・横・斜めのコミュニケーション活性化」については、どの程度までやるのかを悩まれる企業が多いと思います。こういうことに気をつける・こういうことをやると良いということがあれば、ノウハウとして教えていただきたいです。

山中氏:4年ほど前に麻野さんから教えていただいたことが、すごく心に残っています。「コミュニケーションに対する投資は、どんなにつらくても続けていかないといけないよ」というお話を聞いてから、今までずっとやり続けています。ですが、会社が大きくなると、コミュニケーションが面倒だという人も出てくると思うので、コミュニケーション活性化を目的とするイベントは、会社行事として平日に実施するようにしています。土日に自由参加という会社さんもあると思いますが、結局イベント好きな人だけが集まる場になって、より一層一体感が生まれにくくなってしまうので、そこは徹底しています。

麻野:ありがとうございます。会社によってカルチャーが違うので、そういう全員参加の行事はやらないという会社もあると思いますが、やると決めるなら、自由参加にするよりも、ポリシーを持って全員参加にする方が、効果が高いということでしょうか。ちなみに、会社が大きくなってきて100〜200名規模になってくると「もうそんな運動会とかやりたくないですよ」という人も出てくると思うんですが、そういうときはどう対処しますか?

山中氏:「やりましょう」って言い続けるだけでしょうね(笑)。私は、そういうことに対しては一人ひとりと向き合うことが大事だと思っています。例えば運動会やりたくないという人に対して「じゃあ、あなたは出席しなくていいよ」と言うのは、楽じゃないですか。そうではなくて、こういう行事がなぜ大事なのかを向き合って伝える。ウィルゲートは、まだ面と向かって話を続けられるレベルの人数なので。

麻野:一人ひとりに向き合って、イベント実施の背景や、会社としての信念や哲学を伝える機会にするということですね。それでは最後に「社員の家族を大切にする」。イベントは、準備に工数がかかるでしょうし、ご家族の方々にも失礼があってはいけないので、非常に心配りも必要になりますが。

山中氏:実は私は一年に一度のこのイベントが一番好きなんです。正式名称は、ファミリーデーとウィルゲートをかけて「FamilyGATE(ファミリーゲート)」といいます。準備はもちろん大変ですし、ご家族に粗相のないようにしなくてはいけないんですが、会社のことを理解してもらえる一番の機会になります。イベント内容はそれほど特別なものではなく、会社・制度説明、社内見学の後にみなさんでランチを食べるというものですが、やはり社員の満足度は上がりますね。社員は、ご家族の支援がないと思い切り働けないじゃないですか。なので、ご家族の心配を払拭してご支援していただくためにも、時間をしっかりとかけたいなと思っています。

麻野:ご家族が「この会社いい会社だね」とか「応援してるよ」という声をかけてくれることで、それが本人のエンゲージメントにもつながってくる感覚を持てているということですね。

山中氏:そうですね。

組織づくりの基本は、部門に・一人ひとりに、向き合う

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麻野:色々とお話しいただいてきましたが、ウィルゲート社のサーベイ実施後のアクションは、全体結果を見ながら人事としての施策を展開していくだけではなく、部署ごとの結果を見ながら、部署単位でどうするかを考えることに特徴があると思っています。スコアが低い部署に関しては現場任せにせずに、山中さんをはじめとして人事がサポートをする体制がある。そしてそのサポートが効果的に働いています。これからの人事は部署ごとに異なる状況にどうプローチできるかを考えなければいけませんね。

それから今日よく出てくる言葉、「向き合う」。特に、小島さん・山中さんとお話しするとよく出てくる言葉です。私自身も、おふたりから向き合うということの、あり方・働き方・生き方を教わりました。そして、向き合うという言葉が好きになって、自部門の行動指針にまでしました。自部門では英語表記の「face」としていまして、直視するという意味を込めています。

山中氏:サーベイを実施していると、スコアが出る度に向き合う機会をつくれるんです。エンゲージメントサーベイによって数値化されたデータを見て、それぞれの部署に向き合いに行けることが、非常にいいなと思っています。

麻野:ありがとうございます。ここまで事業と組織の生々しい状況をおうかがいできる機会はないと思います。私自身も長きに渡ってご一緒しているお二人とのセッションでしたので、感慨深い気持ちです。本日は本当にありがとうございました。

 

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