【後編】ユニコーン企業メルカリ大解剖
「メルカリは不完全な企業である」

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様々な企業の中で閉じられていた組織人事のナレッジをシェアし、日本のべンチャー企業の発展に貢献していくことを狙いとしてスタートした「Strategic HR Summit」の、記念すべき第1回。モデレーターを務めるリンクアンドモチベーション麻野氏の盟友でもあり、銀河系集団と呼ばれ注目を集め続ける、メルカリ取締役の小泉文明氏を迎えてお送りしたテーマは、メルカリの組織戦略・採用戦略・人事戦略がどのようにつながっているかを紐解く『メルカリ大解剖』。

【イベント実施日】
2016年5月19日

【登壇者】
株式会社メルカリ 取締役 小泉文明 氏
株式会社リンクアンドモチベーション 執行役員 麻野耕司 氏

「MBO」ではなく「OKR」にバリューを掛け合わせる

麻野氏:メルカリの人事制度について聞かせてください。

小泉氏:僕らはOKR(Objective and Key Result)というものを作っています。OKRとMBO(Management by objectives)で決定的に違うのは、キーリザルトと言われる目標を明確にすることです。目標を明確化すると、当然優先順位を決めないといけない。そこでメルカリとしては、プロダクトで6つ、コーポレートで3つの合計9つのOKRを持っています。会社を運営していく上では、無限に優先したいものがあるんですけど、カンパニーの9つのOKRを個々人まで紐付けているという感じですね。

役員はカンパニーのOKRと同じですが、メンバーのOKRはツリー化して見える化しています。中途入社社員が多いので「あの人は一体何にコミットして仕事をしているのか分からない」っていう声もあったりしますが、結果こそオープンにはしないものの、誰がどのOKRにコミットしているかまで見える化することで、このモヤモヤは解消できます。

そしてもうひとつは、やはりバリュー。メルカリでは、数字で測れるもの以外は基本的には評価・判断をしないっていう、ある意味で冷徹な仕組みがあるんです。ですが実際、ラッキーパンチ的に目標数字を達成するようなケースもあったりするんですよね。でも、僕らとしてはやはり、プロセスと言いますか、その仕事の進め方を会社として評価できるのかという点を大事にしたい。そのためにも、3つのバリューに紐づいた自己評価を、まず本人から上げてもらって、それに対してフィードバックをするんです。例えば本人が「Go Boldできていた」と振り返ったとしても、僕らからすると「こういう点で全然Go Boldじゃないよね」というコミュニケーションが取れる。これはとても大事なことです。

麻野氏:人事制度は会社毎に大きく変わるものでもないので、成果部分はMBOやOKRで見て、行動部分をバリューで見るというパターンは、他社でもあるんですが、メルカリは運用が上手いですね。MBOやOKRは設計に時間がかかる割に、得られる成果にばらつきがあって。それは、運用の工夫次第なんですよね。個々人のOKRを見える化するなんて、本当に最後のひと手間じゃないですか。会社が大きくなると、自分の目標って一体何のためなんだろうな、会社の歯車になっちゃってるなという感覚を持つ人もいると思うんですよ。でも、自分の目標が会社の目標とどうつながっているのかということを見える化するだけで、そういった懸念が解消されたりもする。メルカリのように最後にひと手間をかけて、運用をすることが、非常に大事だと改めて思いますね。

メルカリ流人事施策〜副業推奨、小会社化奨励〜

麻野氏:続いて、メルカリの人事制度メルシーボックスについて。

小泉氏:ライフイベントは様々ありますが、基本的にダウンサイドだけは、会社がリスクヘッジしようという考え方です。僕らはビジネスを「Go Bold」でやっていきたい一方で、色々と問題が起きると思うんですよね、生きていれば。ライフイベントの中でも特に、産休・育休については、みんなが不安に思っているところなので、メルシーボックスでサポートするから、安心して戻って来てくれればいいかなと思っています。ちなみに今は、産休取得者は1名なので、担当してもらっていた仕事は、ほぼパッケージ化して外に出してます。それから、CTOとCEOが育休取得中ですね。そう考えると、相当面白い会社ですよね、改めて。

麻野氏:労働市場において女性は、自分が女性としてどう働いていけるかという目線が強いと思うので、これは相当訴求力がありますね。

小泉氏:それから、副業やイベント登壇を推奨しているのも特徴的かなと思います。アウトプットを出すということはインプットをしなきゃいけないじゃないですか。だからこそ、副業やイベント登壇を推奨しています。勝手にそれぞれがアウトプットを出して、そのアウトプットに対してフィーが発生したとしても、その儲けに関しては、会社は一切関与せずいこうと思っています。

子会社経営については、基本的にはワンドメインワンカンパニーが基本方針です。経営陣は、財布を与えるだけで細かいことは言いません。新しいことをやりたい人たちに対して、子会社を作って自由にできる環境を与えている訳ですが、大事にしているのは、周囲からの声を意図的に遠ざけることです。と言うのも、メルカリって最初のサービスに成功していることもあって、商品・サービスを新たに立ち上げることに対してかなり潔癖になっていて。新しく始めることに対して、周囲が口を出したがるんですよね。だからこそ、法人も別にして情報を遮断させます。例えば、メルカリ社員はソウゾウ(メルカリの子会社)の情報にはほぼ触れていないと思います。ただ、ソウゾウ側からは、メルカリの情報が知りたいっていうこともあると思うので、下(子会社)から上(本体)については、比較的自由に情報が取れるようにして、なるべく自由に新規事業ができる環境を整えています。

麻野氏:これって、言うのは簡単ですけど、難しいことですよ。経営者としては口を出したくなると思うんですよ。進太郎さん(メルカリ代表)はどう我慢してるんですか?

小泉氏:結局、自分も言われることが面倒なんだと思います。メルカリは、自由にお山の大将でやってきた人たちの集まりなので、上に口出しされるのが嫌なはずなんですよ。なので、自分が嫌なことをしない、と。新規事業が成功するのは10%とか15%で、基本的にほとんど失敗するものなんです。だからこそ、失敗した時の言い訳をなるべく事前に取り除いてあげようとしている。失敗した時に、自分が失敗しましたって言える環境を整えておかないと、自分で責任を取ろうとしないですしね。僕も、ソウゾウの松本社長に対しては「環境を整える分、成功しても失敗してもお前らの成果・責任なんだから、ともかく自由にやれ」と言ってます。

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組織課題すら採用上のトークに聞こえる、メルカリの凄さ

麻野氏:最後に、メルカリの組織課題とは。

小泉氏:一番はやはり、顔が一致しないってことですよね。関心がない訳ではないんですけど、諦めちゃうんですよね、もう無理だって。毎月5〜10人増えていると、名前とか覚えられなくなってくる。ただそうすると、メルカリが大事にしている「All for One」的マインドが薄くなって、会社が弱体化して。僕自身も全社ミーティングで「すいません。役員で恥ずかしいけれど、社員の名前と顔が一致しない時がある」みたいな話を赤裸々に言います。それで、色んな手法で顔と名前の一致に取り組んでいる訳です。どの施策が効果があるのかはまだ全然分からないんですけど、とりあえず沢山やると決めています。例えば、東京・仙台・サンフランシスコと、拠点があるところには全てマンションを借りて、社員が自由に使えるようにしていたり、オフィスの椅子に名前を入れて、話しかける時に名前を確認できるようにしたり。後は部活動ですね。ルールを作るのは面倒なんで、5名集まれば中身は何でもいいから1万円出す、と。お酒飲んでるだけじゃないかという部活も相当量ありますけど、何でもいいんですよね。ともかく、きっかけ作りに徹しようと思ってます。

【前編】ユニコーン企業メルカリ大解剖
「メルカリは、ミッションとバリューでできている」はこちら

【中編】ユニコーン企業メルカリ大解剖
「これからの時代の採用戦略」はこちら