【後編】サイバーエージェント×ネクスト “モチベーションカンパニーの創り方”
「組織の問題は“ヒト”ではない」

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2016年に第6回目を迎えたBest Motivation Company Awardは、リンクアンドモチベーションが毎年開催している社員モチベーションが高い企業を讃えるイベント。モチベーションサーベイ実施企業の中から、最も優秀な取り組みを行った2社の代表者として当時サイバーエージェント執行役員・現シーエー・モバイル代表取締役社長石井洋之氏、ネクスト代表取締役社長井上高志氏、そしてリンクアンドモチベーションからは代表取締役会長小笹芳央氏、モデレーターを務める執行役員麻野耕司氏の4名が登壇し『モチベーションカンパニー創りの過程から組織創りの秘訣を紐解く』と題してパネルディスカッションを行った。

【イベント実施日】
2016年3月10日
【登壇者】
株式会社シーエー・モバイル 代表取締役社長 石井洋之 氏
株式会社ネクスト 代表取締役社長 井上高志 氏
株式会社リンクアンドモチベーション 代表取締役会長 小笹芳央 氏
株式会社リンクアンドモチベーション 執行役員 麻野耕司 氏

伝えているつもりの経営陣と、伝わっていない現場

井上氏:先ほどのお話で、モチベーションインデックス(リンクアンドモチベーションが独自に開発した組織診断の結果を偏差値化した指標)がV字の谷に落ち込んでしまっていた時期のことです。「伝えているつもりの経営陣と伝わっていない現場、本当にこれでいいのか」という漠然とした不安感がありました。当時の社内には「厳しい逆風はあるけれども、決めたことを成功させよう!」と現場をうまく組織マネジメントできる部門もあれば、飲み屋でマネジャーも現場の人間と一緒になって愚痴を言っている部門もありました。経営的に大きく舵を切ろうというとき、後者のような組織マネジメントをする部署は会社の変化についていくことができません。

そこで全社を集め、ビジョンブックといったコミュニケーションツールを作成し、全ての課題を一つひとつの施策に落とし込んでいきました。やらなければいけないことが明確になると、下を向いていた従業員たちの態度が「この武器でがんばります!」という前向きな姿勢に変わり、力強く前進していけるようになっていきました。

麻野氏:組織診断でビジョンが社員に伝わっていない、という結果が出たときに「伝わっていない現場に問題がある」と捉える経営陣が多いです。そこを「伝えられているか」が最大の問題だと考えることができたのはなぜでしょう。

井上氏:内心、そう思ってしまうこともありますよ。でも、そんなときは「本当に伝えたいことは20回くらい言わないと伝わらない」と自分自身に言い聞かせ、戒めることにしています。認めざるを得ない現実は、受け入れるしかありませんからね。

小笹氏:ビジョンカードというツールは大切ですね。社員から選ばれる会社となるためには多様性を取り込み、多様性を統合する能力が必要です。宗教には戒律というものがあります。その中には“右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ”という「こうあるべき」ものと、“人を殺めてはならない”という「してはならない」ものがありますが、この「してはならない」ということを決めておくのは組織を統合するうえでも非常に重要です。

問題は「人」ではなく「こと」にある

麻野氏:組織診断の結果を受け、組織活性化にむけてどんな施策をしていったのでしょうか。

井上氏:ネクストでは、人事が主導して施策を実施しています。そのひとつに、「ネクスト大学」があります。従業員の能力開発を目的に、様々なプログラムを用意しています。しかも講座のほとんどは、社員が講師です。なぜなら、実は講師をやる側に一番学びが多いから。整理して人に伝えるには意識的なインプットが必要で、普段の業務を見直し、効率を高めることにもつながります。今や、講座数は60以上に増えました。もちろん、受けた社員の満足度も非常に高いです。

また、全社員とビジョンを共有するために社員必携のビジョンカードを作成したり、マネジャーのビジョンカレッジを行ったりしています。マネジメントスキルの差をなくすミドルセッションは、私自らも講師を務めています。「働くこと」「ビジョン」「モチベーション」といったテーマを設定した、シナリオなしの討議。双方向のセッションで受講者自ら言葉を発する方が、断然理解が早いです。

小笹氏:人に語ることでコンテンツが内在化するということですね。実は、私は最近とある社内の人間から相談を受けました。次のリーダー候補が2人いて悩んでいる、経験や能力は同じくらいでどちらにするべきだろうか、と。そこで私は、どっちが採用の矢面に立てるのか、インパクターに向いているのかと聞きました。すると直ぐに一方の候補者の名前が返ってきたので、そちらを次のリーダーにするように助言しました。学生に語れる、社員に語れる、感化できる人は多様な労働市場で適応できる人材です。社内外に対して語れるかという観点は、そのモノサシにもなりますね。

井上氏:こうした施策を講じてもワークモチベーションが低い部署は、自分たちでどうしていいかわからない状態に陥っていることが多いです。そこには人事がファシリテーター的に入ることで、改善しています。このとき大切にしているのが「人」じゃなく「こと」に課題を見つけるようにすることです。

例えば、現場にビジョンが伝わっていない場合は「伝えてない課長が悪い」のではなく「伝わっていないこと」が組織課題であると捉える。すると「聞きに行かない部下」も実は問題かもしれない、といったように、別の解決策が見えてきます。そうした方向へと、人事がうまくファシリテーションしていくことが大切です。

麻野氏:人事は、現場と経営の間に立ってオペレーションしていくだけでなく、ときには経営に意見し、ときには現場に深く介入していく必要があると思います。それを実現するにはどうすればいいでしょうか。

井上氏:人事自らが積極的に学んでスキルを身につけること、そしてひたすらトライアンドエラーを繰り返すことです。実は、現場に感謝されるシーンの多い人事が、我が社では一番モチベーションインデックスの値が高いです。

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ポテンシャルを呼び覚ます戦略的人事異動

石井氏:組織診断の結果を受け、組織活性化の施策として行っていることのひとつは、人材を適材適所に配置するための、戦略的な人事異動です。と言いますのも、以前私が管掌していた部署では、社員のスキルが伸び、仕事がある程度できるようになると、組織診断でいうところのモチベーションインデックスの値が低い人は、社外に活躍の場を見出そうとしてしまう傾向がありました。もちろん、それは新たな挑戦ではあるのですが、会社にとっては損失になってしまうわけで、社員の流出を防ぐため、人事を見直そうとしたことがきっかけでした。

組織診断の結果を受け、社員とのコミュニケーションや関係の質を向上させるため、自分の時間の使い方を変えました。具体的には、全体の自分の時間のうち、30%は幹部を含む社員の育成に投じ、ゆっくりと時間をかけて話し合うために会食をしたり、本音が聞ける環境をつくりポジティブな関係性を築くための体制を整えるなど工夫しました。サイバーエージェントグループでは戦略的な人事異動を行っており、どこに、いつ、誰をどんなチームに配置するかを大切にしているのですが、半年に1回の大きな人事異動の際にも組織診断を参考にしています。

人事異動の時期になると、2ヶ月前からメンバーとのコミュニケーションを強化し始めるのですが、その際、客観的指標としてモチベーションインデックスを用い、評価者、被評価者という関係とは別のところで冷静な判断軸を元に両者で話し合うことで、建設的な人事につながっていると思います。

戦略的に適材適所に人材を配置することは、モチベーションの向上につながるだけでなく、個々の能力が更に引き出され、結果として組織の士気も上がるという相乗効果が生まれ、経営面からいっても非常にパフォーマンスが高くなります。実際に、3年間で事業部の営業利益が組織診断導入前と比較して2倍以上に増加しました。

麻野氏:石井さんには、ワークモチベーションを高めることに時間を投資する際、投資対効果を最大化するために組織診断を使っていただいています。このポイントを押さえたらこの部署がよくなる、というピンポイントの狙い撃ちをすることで、効率的な施策を打つことができます。理念浸透や人材育成だけでなく戦略的人事異動にも使っていただいています。

小笹氏:業態によって人事異動のしやすさ、やりにくさは変わってきます。3年目の罠という言葉の一方で、私は4年目の天狗という段階が一番危ないと感じています。仕事を一通り覚え、自分は「できる」という錯覚を抱き、そのポジションにあぐらをかいて成長が止まってしまうことを言っています。ですから、天狗になる節目で異動させて新しい環境に追い込みます。すると、身につけてきたスキルが本当にポータブルなスキルなのかどうか自覚するきっかけにもなります。視点や視界がかわることで、それまで見えていなかった自分の姿が見えてきます。人事異動もひとつの経営戦略としてこれからも活用していってほしいですね。

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