圧倒的なコミュニケーション投資で実現させた、「事業成長」と「人でつながる組織風土」
株式会社キュービック

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「組織偏差値70の企業が実践するマネジメントの秘訣とは」というテーマで迎えたゲストは、株式会社キュービック代表取締役の世一英仁(よいちひでひと)氏。学生インターンが多く非常に若い組織であり、急拡大しているにも関わらず、高い組織偏差値を生み出せる秘訣とマネジメントのポイントに迫ります。

【イベント実施日】
2017年11月24日(金)

【プロフィール】
株式会社キュービック 代表取締役 世一 英仁(よいち ひでひと) 氏

モデレーター
株式会社リンクアンドモチベーション 
執行役員 麻野耕司

組織づくりは、組織状態を数値で見える化することから始まる

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世一英仁氏(以下、世一氏)株式会社キュービックで代表を務めています、世一と申します。弊社は、インターネットのウェブサイトを通じて、企業様の集客支援を手掛ける、デジタルマーケティングベンチャーです。現在12期目に入ったところなのですが、3年前まで、30〜40名程度だった社員数が、この3年弱ほどの間に一気に260名ほどまでに増えまして。理念の浸透などがずいぶん後手に回ってしまったので、リンクアンドモチベーションさんにもご協力いただきながら、今まさに、組織づくりの真っ最中といったところです。

麻野耕司(以下、麻野):ありがとうございます。世一さんに組織づくりについてうかがう前に、まず私の方から、どうやってこの組織偏差値を算出しているのかという説明をさせていただこうと思います。組織偏差値とはつまり、モチベーションクラウドで測定するエンゲージメントスコアのことでして、そのモチベーションクラウドとは何なのか。

私たちは、効果的な活動にはものさし(定量指標)が必要だと考えています。受験勉強もダイエットもそうですが、良い授業・良い教材、良いエクササイズ・良いアプリだけでは、絶対に成功しません。受験勉強をする人で模試を受けない人はいないと思いますし、ダイエットをする人で体重計に乗らない人はいません。一方で企業経営に目を向けると、事業サイドではP/Lなど、様々なものさし(定量指標)を持っているけれど、組織サイドのものさしをお持ちでない企業さまが多いです。「組織状態を数字で表現してください」と言われると困ってしまうという状況ですね。

そこで我々が提供するようになったのが、モチベーションクラウドでありエンゲージメントスコアという指標です。「事業サイドにおけるP/Lと同様の扱いで、エンゲージメントスコアを組織サイドのものさしにしていこう。そして、それをSee・Plan・Do・Check&ActionというPDCAサイクルに乗せよう」。これが、モチベーションクラウドのコンセプトです。現在、2,700社/66万人のデータベースがあり、組織状態を定量化するツールとしては国内最大規模になっています。先日、日本のHR Techの第一人者である慶應義塾大学の岩本隆先生率いる岩本研究室と共同研究発表をさせていただきましたが、エンゲージメントスコアの高さと業績の高さとの相関性が高く、売上や利益の伸長率・前年との比較という点においては、明確な相関が見られることがわかりました。

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また、他社比較を通じて自社水準がわかるだけではなく、結果を基にして次に起こり得ることを予測できるツールでもあります。最近では、部署毎の結果を用いて改善項目を決めてアクションプランを立てていく企業さまが多いですね。ちなみに、本日のテーマとなっている組織偏差値70というのは、出現率で言うと3%以内ということで当然上位スコアであり、貴重なお話が聞けると思っていただければ。サーベイ結果を受けての取り組みも、事業内容を理解した方がよりわかりやすいので、ぜひ会社の紹介からスタートしていただければと思います。

マーケティングとは、データの分析ではなく、画面の向こうにいるユーザーを想像すること

世一氏:先ほど「デジタルマーケティングベンチャーです」と申し上げましたが、通常のウェブプロモーション・デジタルマーケティングというのは、SEO対策やリスティング広告の運用代行といった、クライアント企業の集客をお手伝いするケースが多いんです。弊社の場合は、自社メディアを用いて、ユーザーとクライアントをマッチングする形式です。クライアント企業のサイトを直接取り扱うわけではなく、自社メディアを使うため、PDCAが非常に早く回せることが特徴です。検索エンジン対策やソーシャルメディア広告など、全部やった先の提供価値は、クライアント企業の新規顧客獲得ですが、似たような会社は本当にたくさんあります。

ですが弊社は「ヒト・オリエンテッドなデジタルマーケティングでみんなの明日が変わるキッカケを生み出し続ける」というミッションを掲げています。マーケティングは、データや数字だけの文脈で語られがちですが、画面の向こうにいるユーザーにどんなメッセージを届けるのかを大切にしたい。最終的には人間同士のこと。人間だからこそ「Facebookのこの画面にこういう画像が出てきたら、こんな反応をしてくれるのでは?!」といった妄想をしてアプローチすることを心がけています。

起業から8期目くらいまでは中小企業のつもりでいて、売り上げも人もそこまでの拡大をイメージしていなかったんですが、ここ3年ほどでベンチャー化と言いますか、一気にドライブがかかっている状態ですね。社員数も勢いよく増えていますが、大きな特徴としては、社員よりも学生インターンの数が多いことです。長期インターンをしてくれている学生たちが、社員の2倍弱いるので、非常に若い会社とも言えると思います。

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キュービック社の強さは「人の魅力」と「職場のつながり」でできている

麻野:ありがとうございます。では早速、どういう取り組みによってこの結果が得られたのか。実際のサーベイ結果を見ながら進めていきたいと思います。4象限のグラフになっていますが、縦軸が期待度で、上に行けば行くほど高く、下に行けば行くほど低いという意味です。横軸は満足度で、右に行けば行くほど高く、左に行けば行くほど低いとご理解ください。中心点は必ず会社の平均値でプロットされるので、どこかに集中するということはなく、必ず分散されるということも補足させていただきます。

キュービック社の場合は、偏差値が71.2という高さであることもそうですが、比較的綺麗な右肩あがりのプロットになっていることがお分かり頂けると思います。モチベーションという観点では、会社の提供しているものと社員の求めているものが一致している、非常に効率的な状態と言えます。

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具体的に中身を見ていきましょう。期待度が高く満足度も高い、右上の領域にプロットされている強みは、「人的資源」と「内部統合」ですね。「人的資源」とは、働く社員の魅力ということで、「経営陣への信頼」や「他の社員への魅力」といった要素で構成されている項目です。「内部統合」とは、職場に求めるもので、「職場の一体感」とか「目標に向けて一丸となっている」といったことです。期待度が高く満足度が低い、左上の領域には何もプロットされていないので、弱みは出現していません。ですので現在の組織は、「人的資源」と「内部統合」というふたつの強みで引っ張っていると言えると思います。どんな取り組みによってこの強みを生み出しているのか、教えてください。

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世一氏:まず「人的資源」についてですが、先程お話しした通り、平均年齢が24歳と非常に若く、学生さんが160名ほどいる組織です。なので、会社に対して何かをして欲しいと求めるよりも、自分の成長にフォーカスして前向きに頑張っているメンバーが多いと思います。もちろん、そういうメンバーを採用しようと意識していますし、マーケットへのメッセージングとしても気をつけていることです。デジタルマーケティングと言いながらも、業務上、人との関わり・つながりを大切にしているので、組織にもそれが表れているように思いますね。社員同士の仲も良いです。

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次は「内部統合」ですが、表彰会をはじめとしてコミュニケーション施策が多い会社だと思います。学生インターンは非常勤なので、一緒に働いているという実感を持ってもらいにくいと考え、割とウエットに量も多くコミュニケーションしています。例えば、飲み代・ランチ代の予算を取っていたり、インターン生のMVPを月間・四半期で表彰したりしています。後は、「やるじゃんレター」という施策もあります。社内に置かれた名刺大のカードに、「この間の件、助かったよ。ありがとう」などとメッセージを書いて、社内のポストに投函すると、本人に届けられるという仕組みです。日々の小さな承認が、モチベーションの向上につながっていると思います。

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圧倒的なコミュニケーション投資でしか実現できない、 「People」で束ねられた組織

麻野:お話しを聞いていて改めて思いましたが、エンゲージメントスコアを高めていくには、満足度の低い項目にテコ入れするということもありますが、継続して高いスコアを出されている会社さんは、どの軸で会社を束ねるのかが明確で、それが強みになっています。マーケティングの4Pならぬ、モチベーションの4Pがありまして。「Philosophy(理念や目標)」・「Profession(仕事)」・「People(人・風土)」「Privilege(待遇)」の4つなんですが、キュービック社は非常にPeopleが強い印象を受けました。

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例えば、サイバーエージェント社もこのPeopleで束ねる要素が、非常に強いと思います。「人や仲間が魅力的だから、サイバーエージェントで働きたい」と思う社員が多いイメージです。こういう会社の特徴は、新規事業に取り組みやすいことが挙げられます。サイバーエージェントの藤田さん(株式会社サイバーエージェント 代表取締役社長の藤田晋氏)は自身の著書で「サイバーエージェントのメンバーならうどん屋でも成功させられます」と仰る。それは、事業内容にこだわりが少ないということだと思うんです。どちらかと言えば、何をやるかよりも誰とやるかが大事だということ。人の魅力で束ねているからこそ、幅広く事業展開の中で異動が発生しても、「それはやりたくない」という人が、通常の会社よりも少ないのかなと推測します。

一方でデメリットもありますね。それは、多大なコミュニケーション投資が必要になるということです。会社総会を実施したり、社内のメディアを使ってコミュニケーションをはかったり、定期的に飲み会を開いたりなど。ちなみに、キュービック社ではどの程度の時間をコミュニケーション施策に割いているのでしょうか。

世一氏:そうですね、おそらく全体の10%近くじゃないでしょうか。時々、こういうことを考えているよとみんなに伝えるために経営メッセージを発信するんですが、2〜3時間かけて文章を考えています。縦・横だけではなく、斜めの関係もつくるために、「社内家族」みたいなつながりをつくったりもして。インターン生にも1on1ミーティングをやったりもしますしね。

コミュニケーション投資は、事業を成功させるために必要不可欠な戦略

麻野:なぜコミュニケーションに投資しようと思われたんですか。

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世一氏:僕自身、ちゃんと勉強をして会社経営を始めたわけではないんです。ただ、僕らが戦うデジタルマーケティングのフィールドは、新規性がある訳ではない。最近で言えば、AIやロボットが話題ですが、僕らはメディアをやっている。インターネット業界の中では若干レガシーな領域ですよね。そこにわざわざ人を集めて何かをするとなると、事業や業務そのものの魅力以上に、人の魅力が大事なんだと、創業して5年目くらいのときに気づきました。しかも、その当時一緒にやってくれていた人たちがいい人だったので、一層強みにしていこうと。「この仲間でやる」ということを重視する人が非常に多いので、人の要素が求心力になっている実感はあります。僕自身も、コミュニケーションにかかわることをコストと感じたことはないですね。

麻野:サイバーエージェント社の場合は、環境変化のスピードが速いインターネット領域で成功させるために、組織や人で束ねると考えたのだと思いますが、世一さんの場合は、取り組む領域がさほど目新しいわけではないという中で、事業以外の別の魅力を立てて、組織力や実行力で、伸ばしていこうと。事業の戦略とも相まって、重点を置かれたということですね。

このブレない一貫性って非常に大事ですね。少し業績が悪くなったときに、「こんなことやってる場合じゃない」とブレたりすると、途端に会社の軸がなくなってしまったりします。この軸で束ねると決めたら、業績が良いときも悪いときも貫くこと。投資し続けるという時間軸もそうですが、施策という点でも重要だと思います。採用時に語られることと、社内のマネジメントが合っている、つまり社内施策においても一貫性があることは重要ですね。

世一氏:そうですね。先ほどもお話ししたように、僕たちのマーケティングポリシー・強みは「ヒト・オリエンテッド」なことです。社内における対面のコミュニケーションでも、画面を挟んだユーザーとのコミュニケーションの根本でも、同じものが問われると思っています。弊社の場合は、人間そのものへの興味関心や、共感してもらいたい・共感したいといった、コミュニケーションの楽しさを感じる人間こそが、事業も組織も上手く行きやすい。だからこそ、事業における戦い方と人・組織のあり方が一貫している状態をつくり・高めていこうと、今まさに取り組んでいるところです。

麻野:事業を推進していく上で、この組織戦略であるべきなんだという、非常に納得感のあるお話をいただきました。ありがとうございました。