【中編】サービス業界のリーディングカンパニー ”理念経営”生活の木
「社員の成長が会社の運命を決める」

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従業員のモチベーションが高い企業をランキング形式で表彰する、モチベーションカンパニーアワード。そのトップ10常連である株式会社生活の木をゲストに迎えて送る、リンクアンドモチベーション主催の経営者セミナー。3ヶ月毎に、他社の事例から学ぶという趣旨で実施されている。株式会社生活の木からは代表取締役の重永忠氏、モデレーターとして、重永氏と旧知の間柄であるリンクアンドモチベーションの麻野氏と近藤氏が登壇し、まさにここでしか聞けないクローズドトークとなった。

【登壇者】
株式会社生活の木 代表取締役 重永忠 氏
株式会社リンクアンドモチベーション 執行役員 麻野耕司 氏
株式会社リンクアンドモチベーション マネジャー 近藤俊弥 氏

会社を伸ばす「オンリーワンの組織図」

重永忠氏(以下、重永氏):生活の木には、階層という考え方がありません。ひとつの丸の中にそれぞれの部門が繋がっていて、それを「オープンネットワークサークル型組織」と呼んでいます。部門単独で成果を上げることはできないので、各部門が繋がりを大事にする、関係性を良くするという考えに基づいた組織図を描いています。オンリーワンの組織図だと自負しています。

近藤俊弥氏(以下、近藤氏):組織図で捉えると、専門店本部に120店舗がくっつくような形ですね。店舗展開型の企業では、本社と現場が仲が悪いことが組織課題として挙がることがありますが、実際のところ御社ではどうなんでしょうか。

重永氏:まず何より「本部は本社の人だけじゃないよ」と常に伝えています。私たちの組織では、ほぼ全ての部門にそれぞれ本部を置いているんです。つまり、みんなが本部だよということです。例えば「本部の人がやってくれない」とか言う発言があるとしたら、必ず「君も本部の人でしょ」と。全員が本部だから、本部と支店というような、通常の対立構造はないんです。「本社の人」とか「本部の人」という発言が出ない風土創りのためにも、ネーミングは大事ですね。

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麻野耕司氏(以下、麻野氏):私自身、組織図の書き方や部署の名前の付け方にこだわるということは、そこまで意識してやって来なかったんですが、お話を聞いていて非常に効果のある取り組みだと感じました。流通小売業では本部の力が強くなる傾向があるので、サークル型の組織図と、全部署に本部という名前がついているという形は、ユニークで有効だと思いますね。

また、言葉が意識を決めるという感覚にも、誰もが共感できると思います。例えば、日本人は蝶を見て綺麗だと思う一方で、蛾のことは汚いと思うというエピソードがあります。ちなみにフランス人はどちらも綺麗だと思うのだそうです。これはなぜかと言うと、フランス人は蝶と蛾を言葉で区別せず、いずれもパピヨンという言葉で認識してるからです。パピヨンは綺麗なもの、つまりは蝶も蛾も変わりなく綺麗だと思っているということになります。

言葉で認識が変わるとするならば、いくら「現場が主役だ」と言っても、マーケティングや管理部門を本部と呼んでいれば、そういう意識って知らず知らずの内に表れてくるだろうなと思います。また、視覚で受ける印象は非常に強いので、組織図の書き方や言葉といった、まさにダイレクトに視覚に訴えかけるもので、セクショナリズムを解消していくというのは、良いやり方ですね。

小売業なのにエリアマネジャー制廃止

近藤氏:2年前だったでしょうか。当時既に約110店舗あり、10店舗につき1人のエリアマネジャーがつくような体制だったと思います。これだけの店舗数を抱えていれば当然の体制ですが、重永さんが「エリアマネジャー制を辞める」と言って全店舗フラットにしたことがありますよね。その決断の意図について、今だからお話しいただけることはありますか。

重永氏:当時、エリアマネジャーは10名いて、その下にそれぞれ店長がいたんです。店長は自分の店のはずなのに、店舗運営についてエリアマネジャー頼りの状態になってしまっていまして。何から何までおうかがいを立てないと仕事ができない「エリアマネジャー依存症」のようになってしまっていました。自分の店を自分ごととして運営する意識が薄れてしまっている状況に強い危機感を持ちまして、この状況を何とかするには荒治療しかないと思ったんですね。エリアマネジャーが居なくなれば、店長は何としても自分でやらねばという気持ちになるだろうと。それでエリアマネジャー制を廃止したんです。あれから2年と少し経ちましたが、店長が、自分ごととして店の経営にあたってくれていると実感していますね。

近藤氏:どういった組織であっても、上司に頼りすぎてだんだん主体性がなくなるというケースはありますが、依存体質をどのように脱すれば良いのかということについて、麻野さんはどう考えますか。

麻野氏:それはもう、任せていくしかないと思うんですよね。私は過去に、会長の小笹の下で新卒採用を担当していたんです。応募者を合格にするか不合格にするか迷う度に、自分では結論を出せずに、補足メッセージと共に候補者を小笹に上げていたんです。ですがある時「お前は、いつまでも後ろに俺がいると思ってるだろ。失敗しても俺にケツを拭いてもらえるって意識でいるから、俺に委ねてるんだ。お前がフルバック(ラグビーでいうところの最後の砦)だぞ。お前が通しますと言う人材なら俺は落とさないから。その代わり責任を持て。そいつが良くても、悪くて成果が出なかったとしても、お前が一生責任を持て」と言われまして。そこから大きく意識が変わって自主性が生まれたんですよね。

実際それ以降、僕が小笹に上げた人材は、落とされることはありませんでした。何より、最終責任者としての意識を持ったことにより、人材に対する見方も変わっていきました。早いタイミングで任せすぎてもだめだとは思いますが、任せないと人は育たないんじゃないかなと、自分の実感値からも思います。

重永氏:そうですね。そして、任せるためには役割分担を明確にしないといけないと思います。役割分担というのは、部門の役割と階層毎の役割ですね。各部門がそれぞれきちんと仕事をすることは当然大事なんですけども、もっと大事なのは、それぞれの階層で必要とされている仕事や機能を果たしているかどうかってことなんです。例えば、経営層の人間が一般職が担うべき作業をやっていても仕方がないですし、管理者層が入社したばかりの社員と同じような作業に追われていてもいけません。それぞれが果たすべき仕事を担うことでかみ合っている会社というのは、上手く機能している会社ですね。

人材育成に命をかける

近藤氏:次は生活の木さまの育成について聞かせてください。私たちもご一緒させていただく中で、経営陣や人事の方のコミットメントが尋常じゃないなと思うことが多いです。

重永氏:そうですね、冗談ではなく、人を育てることに命をかけていると言っても良いぐらいです。プログラムを自分たちで考え、編み出し、実践をしているんですが、自分が講師に立つ以外の外部へお願いする研修にも、必ず立ち会います。どれだけ成長しているのかを自分で確かめたいという思いと、お互いに議論をしながら次の目標設定をしたいという思いからです。次のステップを一緒に宣言しながら、約束し合いながら成長していく感じです。生き方そのものが仕事だということを、お互いに理解した中でやっていくために、徹底的に向き合うんです。それから、教えた・教えられたとか、分かってるはずだという気持ちにならず、一生をかけて検証するためでもあります。

私は、社員のことを家族だと思っているので、社員の成長=家族の成長です。親は、家族の成長、特に子供の成長がこの世で一番嬉しいことじゃないですか。それと同じで、自分が経営をやっていて良かったなと思うのは、社員が育った瞬間を目にした時です。社員が成長していないのに、売上や規模が拡大している会社もありますが、最も豊かなのは、社員の成長と同じ度合いで成長する会社だと思っています。言ってみれば、人材育成によって会社の運命は決まってしまうんですよね。

【前編】サービス業界のリーディングカンパニー ”理念経営”生活の木
「理念経営企業生活の木が誕生するまで」はこちら

【後編】サービス業界のリーディングカンパニー ”理念経営”生活の木
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