【前編】サービス業界のリーディングカンパニー ”理念経営”生活の木
「理念経営企業生活の木が誕生するまで」

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従業員のモチベーションが高い企業をランキング形式で表彰する、モチベーションカンパニーアワード。そのトップ10常連である株式会社生活の木をゲストに迎えて送る、リンクアンドモチベーション主催の経営者セミナー。3ヶ月毎に、他社の事例から学ぶという趣旨で実施されている。株式会社生活の木からは代表取締役の重永忠氏、モデレーターとして、重永氏と旧知の間柄であるリンクアンドモチベーションの麻野氏と近藤氏が登壇し、まさにここでしか聞けないクローズドトークとなった。

【登壇者】
株式会社生活の木 代表取締役 重永忠 氏
株式会社リンクアンドモチベーション 執行役員 麻野耕司 氏
株式会社リンクアンドモチベーション マネジャー 近藤俊弥 氏

3度の創業に共通するサービス業へのこだわり

近藤俊弥氏(以下、近藤氏):今回の経営者セミナーでは生活の木さまを題材に進めて参ります。突っ込んだお話にも全てお答えいただけるということですので、どうぞご期待ください。

重永忠氏(以下、重永氏):こんにちは。みなさんとの出会いに感謝の気持ちを持って進めさせていただきたいと思います。生活の木は、現在はハーブやアロマテラピー事業に特化しているんですが、実は3度創業しています。第1の創業は私の祖父が戦後、現在も本社のある原宿・表参道に起こした、重永写真館です。今は誰でもスマホで写真が撮れる時代ということもあり、写真館は随分少なくなっていますが、当時写真館はニュービジネスでした。カメラを所有している方はほぼおらず、自分で現像する技術もなかった。そこで、お客さまの元に写真が渡るまでの一切を請け負おうということになったのです。この写真のビジネスは今考えてみれば、私たちのスタイルである「製造・小売」、つまりはSPA(speciality store retailer of private label apparelそのものです。

そして、第2創業者である私の父は、同じ地で写真館を手伝いながら、洋食器の取り扱いを始めました。いずれ日本にも洋食文化が来るであろうことに目をつけ、自分たちで洋食器をデザインして製造し、お客様に提供するようになりました。これは、洋食器のSPAですね。

そして、私の代となる第3創業では、洋食器を扱っていた店の一角で今の事業を始めました。ハーブを使っていかに自然な暮らし・健康な暮らしを提供できるかに取り組んできました。ハーブを使った製品の販売だけではなく、企画・製造から行っていて、OEM(original equipment manufacturer)商品も作ってもいます。つまりは、ハーブのSPAです。

近藤氏:生活の木というと、一般的にハーブのアロマテラピーの店舗運営のイメージが強いですが、小売に特化しているのではなく、製造から一貫して手掛けられているんですよね。そして、3度の創業を経る中で「企画・製造」へのこだわりは同じく持ちながら、各代で違う事業を営まれていることが、大きな特徴ですね。

経営者自ら講師を務める理念研修

近藤氏:ここからは、生活の木さまの組織創りについて、紐解いていこうと思います。リンクアンドモチベーションのモチベーションサーベイで用いているモノサシで、生活の木さまの調査内容を見てみましょう。ちなみに、ベストモチベーションカンパニーアワードという企画は2010年に始まったのですが、生活の木さまはトップ10の常連企業です。

調査内容を簡単にご説明しますと、全社員にアンケート調査をし、その結果として「今働くモチベーションがどこにあるのか」ないしは「ここさえ改善されれば、もっとモチベーションが上がるのにな」といったように、組織における優先課題が分かるというものです。生活の木さまの調査結果は2005年の「C(世の中標準)」からスタートし、2009年には382名と社員数が増える中で「B+」へと変化していきます。最新の結果では、社員数532名となっても「B」のモチベーション状態を保たれています。

重永氏:そもそもは、社員のみんながどういう気持ちで仕事をしてくれてるのかを知りたいという思いから、2005年に初めて従業員満足度調査を実施しました。結果、最も多かったのが、もっと勉強する機会を与えて欲しいという声でした。次に多かったのが、トップと会って色々話したいという声。そこで、この上位2つの不満を解消すれば、会社は幾らか良くなるのではないかと捉えました。そこで、自分が講師となって研修をしようと考え、思いや叶えたいこと、在り方を伝えるための理念研修を徹底的に行いました。

近藤氏:調査結果に対してシンプルに応えていったということですね。

重永氏:そうです。素直に、シンプルに。

麻野耕司氏(以下、麻野氏):ちなみに調査項目の中でも相関度が高いといわれる項目があります。相関度が高い項目とは、その項目がアップすると連動して上がるのではと読み取られている項目のことです。例えば、理念戦略の項目と組織風土の項目。「理念に共感できているから、目の前の仕事も楽しい」というようなイメージですね。

近藤氏:確かに、モチベーションカンパニーアワードのトップ10企業さまは大抵、理念戦略や組織風土に関する項目が強みに上がっている印象があります。

麻野氏:とはいえ、ここにいらっしゃる経営者のみなさんも「理念は大事だと分かってはいるけど、やっぱり目先の業績を伸ばさないと」という現実があると思うんです。例えば理念研修ひとつをとっても、必要だとは思っても結構時間をとられますし。ただ、生活の木さまは実際、しっかりと理念に関わることへ投資をしていらっしゃる。重永社長は、長野で実施されている内定者研修へも毎回必ず顔を出されていますよね。それだけでも相当な時間の投資です。目先の業績への気持ちを抑えて、理念教育に時間を使うにあたっての、葛藤はあったりするのでしょうか。

理念に賛同している事業なら、仕事は本当に楽しい

重永氏:例えば技術研修などは、極端な話、そのスキルがあれば誰でも対応ができますが、理念研修だけはトップ自らコミットしなければダメです。どんなに素晴らしくどんなに時間をかけても、トップがそこにいなければ意味を成しません。

そしてもうひとつ、私たちは会社説明会の段階から、全てが理念浸透の機会だと思っています。新卒採用を例にとると、内定まで6度の面接があるんですが、面接を通じて、会社として大事にしている考え方を伝え、対象者を育てています。ただの採用・不採用の判断の機会ではありません。内定後は長野の山奥で4日間泊まり込みの研修を行いますが、仕事に対する考え方、意識を作るだけではなく、生活の木で120%やり切る覚悟を決める時間だと捉えています。それらのプロセスを通じて、入社のタイミングではもはや、生活の木でいうところの「志事」というものを、頭だけでなく体で分かった状態になっていますね。

近藤氏:入社前・入社後含めて、相当に理念浸透にコミットされている理由は、最終的にはリターンがあるということを確信されているからでしょうか。

重永氏:理念に賛同している仲間とやっている事業・志事は本当に良いですよね。「これは仕事だから、理念には賛同できないけど仕方ない」と思っているような仕事は楽しくない。どんな仕事であっても、理念に賛同していれば辛いとは思わない。仕事の面白さってそこだと思うんですよ。

近藤氏:現在約750名の社員がいらっしゃいます。一人ひとりに理念を届かせるというのは至難の技でしょうけれど、意識されていることはありますでしょうか。

重永氏:伝え続けることです。それから、何のために仕事をしているのかという原点的な話。このテーマはやはり、トップにしか語れないと思うんです。トップが口にしたことは、イコール会社としての在り方です。そして、会社としての在り方が、社員一人ひとりの生き方と合致していると大きなパワーになるんですね。トップが語ることは、時に朝令暮改であってもいいんです。昨日こうだと思ったけど、変わることってあると思うんですよ。そういうことも含めて、やはり腹の中にあることを発信していくことが、トップの仕事です。

近藤氏:社内で取り組む施策の全てを、理念を伝達するための手段として捉えて、しつこく取り組むということがポイントになるんでしょうね。

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