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プロノバ代表取締役社長 岡島悦子氏 「女性活躍推進は、経営戦略のOS改革」【後編】

グロービス経営大学院の教授をはじめ、複数企業の社外取締役として活躍する岡島悦子氏。「女性活躍推進」といえば必ずお名前が挙がるほど、大きな影響力を持つ岡島氏に、改めて「なぜ企業にとって女性活躍が大切なのか」を伺います。

【プロフィール】
株式会社プロノバ代表取締役社長、グロービス経営大学院 教授、アステラス製薬株式会社 社外取締役、株式会社丸井グループ 社外取締役、ランサーズ株式会社 社外取締役、株式会社セプテーニ・ホールディングス 社外取締役、株式会社リンクアンドモチベーション 社外取締役 岡島悦子 氏

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現在は、ダイバーシティ成功に向けた仮説検証の時期

–ダイバーシティを内包できる組織づくりを、経営者が率先してやっていかないといけない。そうしたときに、ダイバーシティのゴールイメージはどこにあるのでしょうか。会社の規模や業態などによって、これくらいのレベルのダイバーシティを内包した方が良いなど、参考指標はあるものでしょうか。

岡島氏:どんな会社にも共通する参考指標はありません。最適解はなく、固有解を探すために仮説検証するしかありません。なので、会社ごとのオーダーパラメーター(黄金比率)は何かということを考えるしかない。

それは必ずしも、男女比率ということでもなくて、例えば海外留学経験がある人とない人、とか、様々ですね。

ですが今は、40~50代の男性で構成される母集団しかない。パラメーターを決めようにも、検証の母集団が偏りすぎています。多くの企業が様々な人事施策を行っている最中だと思いますが、結果を急ぎすぎず、全ては、検証するための母集団の適正化のフェーズなんだと思った方がよいですね。

極端に言えば、会社によっては、社員全員が男性であっても全く構わないと思いますし、社員全員が20代でも良いのかもしれません。

属性よりは経験値を重視するべきで、その経験値というのも、会社毎に重要な要素は違うはずですから。あとは何度も申し上げるようなんですが「今はまだ途中ですよ」ということなんです。

よく「ゴールイメージは何ですか?」とか「2020年までに、女性管理職を30%にするっていう数字はどうですか?」とか聞かれるんですが、それらは全て手段なんですよね。

数字の目標を置いた方が、仮説検証がしやすくなるのならば、数値目標を導入した方が良いというだけのことで。達成すべき目的は非連続の成長、そして経営戦略のOSを変えることです。

昭和型マネジメントを脱するには、まず気付くこと

-OS改革の内のひとつだと思いますが、男性は会社で仕事をし、女性は家庭を守るという文脈の中で培われてきた、画一的な「昭和型マネジメント」から、パラダイムチェンジしないといけないですよね。

岡島氏:そうですね。そしてまずは、その昭和型のマネジメントをしている人たちが、自分のマネジメントスタイルは、多様性に対応していない画一的な昭和型である、ということに気が付くことが非常に重要です。

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※岡島氏が代表を務めるプロノバ社資料_昭和型マネジメントからの脱却 

私は普段、多くの業界のリーディングカンパニーで上司向け研修の講師をさせていただいています。

その際に、男性上司のみなさんから「女性の部下は呼び捨てにしにくいから、距離感が縮まらない」とか「1対1で飲みニケーションしようとしても女性は誘いにくいから、充分なコミュニケーションがとりにくい」といった発言が出たりするわけですよ。

ただこれは、女性社員だけの話だけではなくて、呼び捨てにされたくない男性社員もいるわけです。そう考えれば、全員を「さん」付けにすればいいのでは、という話ですよね。

それから、今後は管理職への昇格だけではなく、降格というのもそう珍しいことではなくなってくるはずなんですね。それも踏まえると、「◯◯課長」といった役職呼びも適さなくなってくると思います。

呼び捨てにできないからとか、飲みにケーションできないからコミュニケーションが上手く取れない、といったことは理由にならなくて、そもそもあなたのマネジメントリテラシーが低いんじゃないですか、という話なんですよ。

ここまで言われて初めて、女性の部下という問題ではなく、自分のマネジメント手法の問題だと気がつくケースはよくあります。

イノベーションは、全く違う組織環境の中からしか出てこない

–最後の質問になります。経営者は誰しも、会社を成長させ続けなければいけないと思っているはずです。一方で、非連続の成長をしていかなければならないということは、頭では分かるものの、なかなか行動に移せないことのようにも思いますが、その点はいかがでしょうか。 

岡島氏:そうですね。過去の成功事例を踏襲した、継続的な成長戦略を否定したいわけではないのです。ただ「効率化を追求して、原因分析をして改善する」といった一連の流れは、これまで各企業が散々取り組んできたことなんですよね。結果、イノベーションには繋がりにくいんです。

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破壊的なイノベーションは、やはり、飛び地だったり、オープンだったり、横串だったり、揺らぎだったり、全く違う環境の中からしか起こり得ないものだと思います。

分りやすい例えで言えば、「コダックになりたいか、富士フィルムになりたいか」といったことです。効率化を極めていったとしても、残念ながらコダックのような結末になることもあります。

一方で富士フィルムは、新しい付加価値を追求し、現在約2.5兆円ある売上の半分くらいは、従来のフィルム事業ではなく、ヘルスケアやコスメ事業によるものです。

今の世の中では、事業ドメインの平均寿命が20年を切っていると言われていますし、今後はもっと短くなるかもしれませんよね。そう考えれば、連続性の先には、必ずしも未来はないんです。

加えて言うと、私は「外から来た変革者次第」というのは、やはりすごく嫌だなと思っているんですね。

一時期、再生の現場でよく言われた「外からプロの経営者が入れば会社が変わる」という議論に近いのですが、経営トップを外から招聘しなくても、内部から登用したとしても、必ず変革はできると私は思っています。

ダイバーシティ推進という文脈で、比較的上手く変革を進めている経営者は3パターンに分かれるんですね。まず、招聘されて外から入ってきたケース。しがらみがない分、ミッションに基づいて英断ができるからですね。

次に、オーナー企業のオーナー経営者。この方々は、会社を自分の魂だと思っているので、永続して欲しいという思いの下で直感が働いて、大胆に経営の舵を切れるケースが多いです。

そして最後は、グローバルな感性があって、ダイバーシティ&インクルージョンの経験値を当事者として持っている経営者、というケースです。この3パターンの経営者がいる企業は、変えることが当たり前で抵抗感がない分、改革のスピードが早いですね。

一方で、そうでない企業については、ダイバーシティ推進室を作っただけ、というようなことも実際に起きています。各階層の女性比率を高い水準で保つ、いわゆる「横の議論」にまだ終始している、という感じですね。

ダイバーシティ推進や女性活躍推進が、イコール経営戦略のOS改革なのだと捉えている経営者はまだまだ少ない。

ですが、多様性推進は全くもって枝葉の話ではなくて、環境変化に対応できる企業経営ができるかどうか、その地力が問われている、というレベルの話だなと考えています。

私自身、社外取締役として、また外部のコンサルタントとして、など、関わり方の形は様々ですが、これからも、経営戦略のOS改革にコミットしていきたいと思っています。

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【前編】株式会社プロノバ代表取締役社長 岡島悦子氏「女性活躍推進は、経営戦略のOS改革」 はこちら


​​​​​​​※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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