【研究レポート】新入社員の意識変化から探る、withコロナ時代のエンゲージメント向上のカギとは

SHARE

 株式会社リンクアンドモチベーションの研究機関モチベーションエンジニアリング研究所(以下、当研究所)は、Withコロナ時代における「従業員エンゲージメントと新入社員意識の変化」に関する調査を行いましたので、結果を報告いたします。

サマリー

 Withコロナ時代における従業員エンゲージメント向上のカギは、顧客価値を基点とした組織の一体感醸成である。一方、環境変化を受けて、新入社員は「個」としての成長志向が強くなっており、顧客価値という組織成果と自己成長を統合させるマネジメントが一層求められる

調査背景

 新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の流行は、経済活動の制限など商品市場への影響に留まらず、雇用・働き方など労働市場にも影響が及んでいる。

 このような状況下で、従業員エンゲージメントにはどのような変化が起きているのか。また、入社からフルリモートの新入社員もいる中で、新入社員の意識はどのような変化をしているかを分析するため、本調査を行った。

 本調査では、新型コロナ流行前後のエンプロイーエンゲージメントサーベイ、新入社員エンゲージメントサーベイのデータを用いてその変化を調査し、Withコロナ時代における従業員エンゲージメント向上のポイントを考察した。

調査概要

【エンプロイーエンゲージメントサーベイの概要】

社会心理学を背景に人が組織に帰属する要因をエンゲージメントファクターとして16領域に分類し(※1) 、従業員が会社に「何をどの程度期待しているのか(=期待度)」、「何にどの程度満足しているのか(=満足度)」の2つの観点で質問を行う。

 エンゲージメントファクターにはそれぞれ4つ、計64の項目が設定されており、回答者はそれぞれの期待度、満足度を5段階で回答する。その回答結果から「エンゲージメントの偏差値」であるエンゲージメントスコア(以下、ES)を算出する。

(※1)エンゲージメントファクターの一覧

 
【新入社員エンゲージメントサーベイの概要】
 エンプロイーエンゲージメントサーベイで用いている16領域のエンゲージメントファクターのうち、新入社員が認識可能な「会社」の8領域を抽出。その8領域をさらに16領域・全64項目に分類し(※2) 、それぞれの項目について期待度・満足度の2つの観点で質問を行う。回答者はそれぞれの期待度、満足度を5段階で回答する。

(※2)新入社員エンゲージメントサーベイにおける16領域

 
【分析対象】
〇エンプロイーエンゲージメントサーベイ
2019年1月から2020年5月にエンプロイーエンゲージメントサーベイを実施した延べ347社 
(回答人数30名以上の企業のみ)
〇新入社員エンゲージメントサーベイ
当グループが提供する新入社員研修に参加した新入社員の任意回答者  
2019年:567名 2020年卒:294名

調査結果

【調査結果① まとめ】
新型コロナ流行前後でESが上昇した企業では、満足度の上昇幅が大きく、特に外部環境変化の共有、全社や職場の一体感、適切な採用や配置に対する満足度の上昇幅が大きいことがわかった。
この結果より、ES上昇企業では顧客価値を基点とした組織の一体感醸成がなされていると推察される。

【調査結果① 詳細】
新型コロナ流行前後においてESが上昇した企業の特徴

 新型コロナ流行前 (2019年1月から2020年3月) と流行後 (2020年4月以降) の両期間でエンプロイーエンゲージメントサーベイを実施した企業を抽出。その後、エンゲージメントスコアが新型コロナ流行前と比べて上昇した企業で、64項目の期待度・満足度の上昇幅が大きかった5項目を表1に示した。

 期待度については総じて上昇幅が小さく、あくまで参考値ではあるが、その中でも上昇幅の大きかった項目としては「歴史や経緯の共有」「社会的意義や貢献感」「顧客ニーズの伝達」「毅然とした態度の明示」「顧客や社会への貢献感」があがった。

 満足度の上昇幅が大きかった項目としては、「外部環境の変化の共有」「全社的な連帯感」「適切な採用・配置」「職場の一体感」「多様な働き方」があがった。「多様な働き方」に対する満足度上昇については、新型コロナ流行におけるリモートワーク導入が背景にあると考えられる。

 今回の企業群は、新型コロナ流行という状況下においてもエンプロイーエンゲージメントサーベイを行っていることから事業存続上のリスクは比較的小さいと想定されるため、過度な一般化はできないものの、総じて、新型コロナ流行前後でESが上昇した企業では、満足度の上昇幅が大きく、特に外部環境変化の共有、全社や職場の一体感、適切な採用や配置に対する満足度の上昇幅が大きいことがわかった。

 この結果より、ES上昇企業では、顧客価値を基点とした組織の一体感醸成がなされていると推察される。

表1 新型コロナ流行前後で期待度・満足度の上昇幅が大きかった5項目

【調査結果② まとめ】
2020年卒の新入社員は2019年卒と比べて、働き方や待遇よりも自己成長を会社に期待しており、休暇や顧客基盤、企業規模といった企業のハード面よりも、魅力的な理念や、同期の魅力などの、ソフト面に満足していると考えられる。

【調査結果② 詳細】
 2020年卒と2019年卒の新入社員傾向の違い 

 2020年卒と2019年卒に対する新入社員エンゲージメントサーベイの結果から、期待度・満足度が大きい上位5項目を抽出し、表2に示した。

 期待度において2020年卒と2019年卒でともに上位5項目に含まれていたのは「責任ややりがい」「風通しの良さ」であった。また、2019年卒でのみ上位5項目に含まれていたのは「休暇や休日の取得状況」「家賃などの補助手当」「快適な職場環境」であり、2020年卒でのみ上位5項目に含まれていたのは「自己成長の実感」「多様な考え方」「幅広い経験の獲得」であった。

 満足度においては、2020年卒、2019年卒の双方において「業界内の認知度」が1位であった。また、2019年卒でのみ上位5項目に含まれていたのは、「休暇や休日の取得状況」「顧客基盤の安定性」「研修制度の充実」「企業規模の大きさ」であり、2020年卒でのみ上位5項目に含まれていたのは、「業界自体の認知度」「魅力的な理念」「理念の発信と伝達」「共感できる同期」であった。

 総じて、2020年卒の新入社員は2019年卒と比べて、働き方や待遇よりも自己成長を会社に期待しており、休暇や顧客基盤、企業規模といった企業のハード面よりも、魅力的な理念や、同期の魅力などのソフト面に満足していると考えられる。

表2 2020年卒と2019年卒における、期待度・満足度が高い5項目

結論

 Withコロナ時代における従業員エンゲージメント向上のカギは、顧客価値を基点とした組織の一体感醸成である。
一方、環境変化を受けて、新入社員は「個」としての成長志向が強くなっており、顧客価値という組織成果と自己成長を統合させるマネジメントが一層求められる。

 エンプロイーエンゲージメントサーベイの結果から、新型コロナ流行前後でESが上昇した企業では、満足度の上昇幅が大きく、特に外部環境変化の共有、全社や職場の一体感、適切な採用や配置に対する満足度の上昇幅が大きいことがわかった。

 この結果から推察されることは、ES上昇企業では、顧客価値を基点とした組織の一体感醸成に加えて、外部環境への適応度合いが高まっているということである。この特徴は、新型コロナ流行後の経済の下降局面において、重要な意味を持つと考える。というのも、歴史的に見れば、経済の下降局面においては、顧客に対して「真の価値」を提供できるものだけが生き残ってきたからである。新型コロナの流行をふまえると、顧客価値を基点とした組織の一体感醸成は、従業員エンゲージメント向上のみならず、商品市場適応という点でも重要であると考えられる。

 また、2019年卒と2020年卒を対象とした新入社員エンゲージメントサーベイの結果から、2020年卒の新入社員は2019年卒と比べて、働き方や待遇よりも自己成長を会社に期待しており、休暇や顧客基盤、規模といった企業のハード面よりも、魅力的な理念や、同期の魅力などのソフト面に満足していることがわかった。 

 この結果から推察されることは、新入社員は自身のキャリアに対して健全な危機感を抱いているということではないだろうか。一方で、まだ仕事というものを体験していない新入社員は、顧客に価値貢献することのリアリティが薄いため、ともすれば顧客視点が欠落した自分中心の働き方をしてしまう恐れがある。従業員エンゲージメント向上という観点では、成長志向の強い新入社員に顧客視点を獲得させることが重要だと考える。

 以上の結果をまとめると、本調査では、Withコロナ時代において従業員エンゲージメント向上のカギは、顧客価値を基点とした組織の一体感醸成であることが明らかになった。一方で、環境変化を受けて新入社員は「個」としての成長志向が強くなっているため、受け入れ側には顧客価値という組織成果と自己成長を統合させるマネジメントが一層求められるのではないだろうか。 

 本レポート執筆時点では未だ新型コロナ流行の終息が見えず、経済の先行き不透明感は増している。しかし、このような状況下でも地道に改善施策を行うことで、組織能力が高まるという調査結果が、厳しい環境下で業務や組織と向き合う方々の一助になればと願う。

発行責任者のコメント

 本調査では、新型コロナへの対応真っ只中での「企業と従業員の関係」と「2020年新入社員の意識」について探りました。

 企業と従業員の関係を「従業員エンゲージメント」という観点で紐解くと、Withコロナの状況においても従業員エンゲージメントが向上している企業は「外部環境適応」「内部組織統合」「柔軟な採用配置」を推進している様子が見て取れます。外圧に負けないハード・ソフト両面でのタフさと、硬直性とは無縁のアメーバ的なしなやかさを兼ね備えた「運動神経の良さ」を感じさせます。

 2020年新入社員意識調査は、これまでの「安定志向」から「 (自己) 成長志向」への意識変化を示す結果となっています。Withコロナの状況の中で、一抹の不安は感じつつも、自立・自律に向けた変化や成長にポジティブであることは、ある意味頼もしさを感じます。

 企業活動のベースは顧客の存在であり、顧客に対する価値発揮が事業存続と雇用安定をもたらすということに、Withコロナの状況が改めて気づかせてくれました。そして新入社員含めた従業員が、企業に過度に依存することなく変化・成長を果たしていくことで、結果的に顧客への価値発揮レベルも高まるという良いサイクルの入り口に、私たちは居るのかも知れません。ポジティブに、ピンチをチャンスに変えていきましょう。

<プロフィール>
lmg191023_07.jpg
大島 崇(おおしま たかし)
株式会社リンクアンドモチベーション
モチベーションエンジニアリング研究所 所長
 
2000年 京都大学大学院エネルギー科学研究科卒業
2005年 住商情報システム株式会社を経て株式会社リンクアンドモチベーションに入社
2010年 モチベーションマネジメントカンパニー 執行役部長に就任
     大手企業向けの組織変革や人材開発で多くのクライアントを担当
     同時に商品統括ユニット、モチベーションエンジニアリング研究所を兼任し、新商品を開発
2015年 モチベーションエンジニアリング研究所 所長に就任

公開日:2020.07.14

SHARE