【研究レポート】日本のミドルマネジャーの特徴とは

SHARE

 株式会社リンクアンドモチベーション(以下当社)の研究機関モチベーションエンジニアリング研究所(以下当研究所)は「日本のミドルマネジャー(中間管理職)の特徴」に関する調査を行いましたので、結果を報告いたします。

サマリー

 日本のミドルマネジャーは専門性が高く、厳格性は低い傾向にある。ミドルマネジャーは、専門性を武器としたプレイングマネジャーではなく、時には厳格性も発揮し、部下の主体性を引き出すモチベーションマネジャーであることが重要だ。

調査背景

 当研究所の前回のレポート(※)では、従業員エンゲージメント向上の鍵はミドルマネジャーにあることが示された。では、その主人公たるミドルマネジャーにはどのような特徴があるのだろうか。当社で実施しているミドルマネジャー対象のサーベイ(マネジメントサーベイ)結果を分析し、日本のミドルマネジャーに共通する課題を考察した。

※参考:従業員の多い企業のミドルマネジャーがすべきこととは

調査概要

【マネジメントサーベイの概要】

マネジャーのマネジメント状態を診断するためのサーベイ。質問項目は、全体的な満足度を問う「総合満足度(※1)」と、「マネジャーに求められる『4機能』」(※2)から構成されている。サーベイでは全40の質問項目に対し、マネジャーの上司、マネジャーの部下が「何をどの程度期待しているのか(=期待度)」、「何にどの程度満足しているのか(=満足度)」について「非常に期待(満足)している(5)」から「全く期待(満足)していない(1)」までの5段階で回答する。回答結果は、期待度×満足度の2軸で整理された「4eyes®Windows(※3)」で編集され、期待度と満足度が共に高い右上の象限を「強み」とし、期待度は高いが満足度は低い左上の象限を「弱み」とする。

【調査対象】

2015年1月~2019年9月にマネジメントサーベイを実施した198社、のべ23,632名。

調査結果

①日本のミドルマネジャーは専門性が高く、厳格性が低い傾向にある。

ミドルマネジャーの総合満足度 

 マネジメントサーベイの上司回答版の総合満足度平均を表1、部下回答版の総合満足度平均を表2に示す。この結果より、日本のミドルマネジャーは専門性が高く、厳格性が低い傾向にあることがわかる。

②日本のミドルマネジャーの多くは、上司から「短期的な成果追求」「業務管理とサポート」が強みと考えられている一方、「外部環境の伝達」「中長期的視点と業務改善」は弱みと考えられている。

上司から見たミドルマネジャーの強みと弱み 

 マネジメントサーベイの上司回答版の強み、弱みの出現率上位8項目を図3、4に示す。

 強みの出現率の上位には、「1位:短期的な成果の追求」「2位:自部署使命の重視」「3位:発言の実行と成果の追求」「6位:問題の即時報告」「8位:自社課題の確認」があり、「自部署の使命を重視し、短期的な成果を追求できている」とまとめることができる。他には、「4位:業務の進捗管理」「5位:部下の業務サポート」「7位:業務クオリティーの重視」があり、「業務クオリティーを重視し、進捗を管理しながら部下をサポートできている」とまとめることができる。

 一方、弱みの出現率の上位には、「1位:顧客ニーズの伝達」「4位:市場変化の伝達」「5位:業界動向の伝達」「8位:競合動向の伝達」があり、「外部環境の変化に関心が薄く、自部署に伝えることが出来ていない」とまとめることができる。他には、「2位:中長期的な成果の追求」「3位:全社視点で役割を担う姿勢」「6位:目標達成方法の伝達」「7位:業務フローの改善」があり、「中長期的視点、全社視点で目標達成の方法を考えることができておらず、業務フローの改善ができていない」とまとめることができる。

③日本のミドルマネジャーの多くは、部下から「状況把握と支援行動」「トラブル確認と意思決定」が強みと考えられている一方、「部下の成長促進」「戦略提示と意識統合」は弱みと考えられている。

 部下から見たミドルマネジャーの強みと弱み

  マネジメントサーベイの部下回答版の強み、弱みの出現率上位8項目を図5、6に示す。

 強みの出現率の上位には、 「1位:部下への支援行動」「2位:オープンでフランクな姿勢」「5位:部下の意見の傾聴姿勢」「6位:上位役職者からの要望把握」「7位:部下の成果の確認」「8位:部下の強みや持ち味の把握」があり、「親しみやすく、上位役職者・部下の意見・状況を把握した上で、部下の支援ができている」とまとめることができる。他には、「3位:トラブル状況の確認」「4位:即時の意思決定」があり、「トラブル状況を確認し、即時の意思決定ができている」とまとめることができる。

 一方、弱みの出現率の上位には、「1位:評価基準の提示」「5位:部下の成長の方向性提示」「7位:業務のノウハウ伝授」「8位:率先垂範行動」があり、「基準を提示・体現できておらず、部下の成長を促しきれていない」とまとめることができる。他には、弱みの項目には他に、「2位:戦略遂行の具体策の明示」「3位:対立時の葛藤解消行動」「4位:自社の戦略や方針の伝達」「6位:職場への要望や希望の把握」があり、「自部署の戦略を明示できておらず、部下の要望や希望を踏まえた上で意識を統合できていない」とまとめることができる。

④日本のミドルマネジャーは、上下の結節点として板挟みの葛藤を抱える存在である。

ミドルマネジャーの上司と部下のギャップ

 マネジメントサーベイ上司回答版の期待度と満足度の乖離が大きい上位8項目を表7、部下回答版の期待度と満足度の乖離が小さい上位8項目を表8に示す。

 この結果より、上司回答版の「6位:部下の挑戦機会の創出」の期待度が高く、満足度は低いことがわかる一方、部下回答版の「1位:部下への権限委譲」の期待度が低く、満足度は高いことがわかる。これは、上司からは「部下に挑戦させよう」と要望されている一方で、部下は「もう十分任されています」と認識していることを表し、ミドルマネジャーは、上下の結節点として板挟みの葛藤を抱える存在であることを示唆している。

結論

日本のミドルマネジャーは専門性が高く、厳格性は低い傾向にある。
ミドルマネジャーは、専門性を武器としたプレイングマネジャーではなく、時には厳格性も発揮し、
部下の主体性を引き出すモチベーションマネジャーであることが重要だ。

 当研究所の前回のレポートでは、従業員エンゲージメント向上の鍵がミドルマネジャーにあることが示された。では、その主人公たるミドルマネジャーにはどのような特徴があり、如何に成長していけばよいのだろうか。

 今回の調査結果から見えてきたことは、日本のミドルマネジャーは専門性が高く、厳格性は低い傾向にあるということである。そして、日本のミドルマネジャーの多くは、短期的な成果追求が強みである一方、中長期的な視点で部署の戦略を立て、部下一人ひとりの成長を導けていないことが弱みであることが分かった。

 この結果から考えられることは、日本のミドルマネジャーの多くは自らの専門性を武器として組織をマネジメントしているということだ。短期的な目標達成に向けて、場合によってはプレイングマネジャーとなっていることもあるのではないだろうか。オープンでフランクな姿勢で部下の支援を的確に行い、一人ひとりに寄り添っている様子も見て取れる。一方でミドルマネジャーには、中長期的な視点で逆算的に目標や基準を示し、必要に応じて厳格性を発揮することも必要であるが、そこが弱いのが日本のミドルマネジャーの特徴のようだ。

 では、日本のミドルマネジャーは如何に成長していけばよいのだろうか。

 日本のミドルマネジャーの特徴から読み取れる根底にあることは、成果を上げるために自ら動く、もしくは、目の前の課題解決をサポートするという方法しか取れていないことだ。上下の結節点として板挟みの葛藤がある中でも、部下を課題に向き合わせ成長させることで、自分自身は動かずに目標達成するという方法を取れていないのではないだろうか。

 自ら動かずとも部署が目標達成している状況を作る。そのためには部下一人ひとりの動機付けが重要になる。

 目標達成と部下の動機付けの両立ができるマネジャーを私たちは「モチベーションマネジャー」と呼んでいるが、この「モチベーションマネジャー」になることこそ、日本のミドルマネジャーの成長の方向性だと言えよう。

 昨今の、個人に対するきめ細やかなマネジメントが重要だと言われている時代において、ミドルマネジャーが部下に寄り添っていくことは必要である。しかし、ただ寄り添うだけではいけない。会社と部下をつなぐ結節点として、部下に寄り添いながら会社と統合していく役割を果たすべきであり、そのために自ら「モチベーションマネジャー」として部下の主体性を引き出すことが必要なのではないだろうか。

現場責任者のコメント

 ミドルマネジャーが企業を動かす中心であることは、企業で働く私たちにとって納得感のあることだと思います。では、ミドルマネジャーの理想像はどのようなものなのでしょう。

 今回のレポートからわかることは、ミドルマネジャーの多くは「今ここ」に強い一方で、「未来」に弱いということでしょう。勿論「今ここ」に注力することは必要不可欠ですが、「未来」に向けた空間軸、時間軸双方の広がりをメンバーに示すことも重要です。例えば、メンバーとの面談の場において、目の前の課題のみ話すのではなく、「君のキャリアはこういう可能性がある」とか「この仕事にはこういう意義がある」などの話をするという具合です。

 令和の時代において、ミドルマネジャーは「背中で見せる」のではなく「言葉で魅せる」必要があると私は考えます。ハイパフォーマーの延長線上にマネジャーがあるわけではありません。そのことを認識した上で、「言葉で魅せる」ために空間軸、時間軸を広げながら、一人ひとりのメンバーのキャリアへの結びつきや仕事の意義を語っていく必要があるでしょう。

<プロフィール>

川内 正直(かわうち まさなお)
株式会社リンクアンドモチベーション 取締役

1979年生まれ 早稲田大学教育学部卒業
2003年 株式会社リンクアンドモチべーション入社
2010年 関西の採用領域事業の執行役員に就任
2014年 大手企業向けコンサルティング事業の執行役員に就任
2018年 同社取締役就任

公開日:2019.12.24

SHARE