【研究レポート】“個人志向”の強い新入社員に対して企業がすべきこと

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 リンクアンドモチベーションの研究機関 モチベーションエンジニアリング研究所が、2019年の新入社員567名に対して、ワークモチベーションに関するアンケート調査「2019年度 新入社員意識調査」を行いましたので、結果を報告いたします。

 本調査は「新入社員の組織への帰属要因を入社時に調査することによって、望ましい採用のあり方を探る」という目的のもと、当社が提供する新入社員研修の受講者に対して調査したものです。新入社員を受け入れる側に求められることについても考察しておりますので、ご活用いただければ幸いです。

サマリー

 新入社員は“個人志向”が強く、待遇の良さや働きやすさを求める一方で、“組織志向”は弱く、「企業理念」などへの期待は低い。
こうした入社時の傾向を変えることは難しいため、採用時における適切な期待形成と、期待に応える組織創りが重要である。

調査概要

【調査目的】
新入社員の組織への帰属要因を入社時に調査することによって、望ましい採用のあり方を探る

【調査対象】
2019年度の新入社員567名

【対象内訳】
男性50%(283名)女性50%(284名)
理系20%(113名)文系80%(454名)

【調査時期】
2019年4月

【調査方法】
株式会社リンクアンドモチベーションが提供する新入社員研修を実施した企業から、新入社員に任意でWeb回答形式にて実施

【設問内訳】
全体132問

株式会社リンクアンドモチベーション独自の「組織への帰属要因となる4因子」を元に設定した16領域・全64項目について、「どのくらい求めているか(=期待度)」「どのくらい満足しているか(=満足度)」で構成。※期待度・満足度は5段階で回答

【分析方法】
回答結果は、「期待度」「満足度」の各項目のスコアおよび期待度×満足度の2軸で整理された「4eyes®Windows」で分析

調査結果サマリー

①新入社員は、待遇の良さや働きやすさを求める一方で、企業理念や事業の将来性への期待は低く、「居心地の良い環境で、無理なく働ける」ことを求めている傾向がみられる。

②既存社員も同様に、理念や事業の将来性への期待が低下傾向にあることから、新入社員の理念や戦略への共感を入社後に高めることは難しいと推測される。

 4eyes®のプロットは、「期待度」の高い項目ほど「満足度」が低い右肩下がりの状態となった。ここから、採用において適切な期待形成ができていないと考えられる。

 具体的には、「ICE BLOCK」(期待度:高 満足度:低)には「経済報酬」「制度環境」「施設環境」「人材・共感性」があがった。

 項目別の期待度を見ると、「休暇や休日の取得状況」「家賃など補助手当」など、「待遇の良さ」に関する項目が上位を占めた。また「風通しの良さ」「快適な職場環境」が上位であるのに対し、「実力主義の評価制度」が低位に入ったことから、無理なく働きたいという傾向が見受けられる。こうしたことから、今年の新入社員は、総じて「居心地の良い環境で、無理なく働きたい」という”個人志向”が強いと言えるだろう。

 これに対し、「企業理念」など、組織に関わる項目の期待度が低いことから、今年の新入社員は”組織志向”が弱いことが分かる。

 しかし、“組織志向”が弱いのは新入社員に限った話ではない。既存社員に対する同様の調査(従業員エンゲージメント調査)を過去5年分抽出した結果、既存社員の“組織志向”も低下していることが分かった。したがって、“組織志向”の形成にあたっては、新入社員に対する既存社員からの働きかけも期待できないため、入社後の期待形成は難しいと推測される。

企業に求められるもの

調査結果から、今年の新入社員は”個人志向”が強く、待遇の良さや無理なく働ける環境を求める一方で、“組織志向”は弱く、理念や社会的意義などへの期待が低いことが分かった。

 言い換えると、新入社員は、目指すべき理念や意義など、組織に所属する「共通の目的」を持たず、待遇の良さや働きやすさといった条件のみで組織に所属している状態ということができる。しかし、待遇や働きやすさは、先行き不透明な経済のなかで容易に失われる可能性がある。この場合、組織に所属する理由が薄れ、エンゲージメントの低下や、従業員の離職につながりかねない。  

 では、こうした事態を避けるために、受け入れ側は、何をするべきなのか。まず考えられるのは、既存社員からのチューニングである。しかし、前述したように、既存社員の“組織志向”も低下傾向にあることから、入社後に“組織志向”を高めることは難しいと言わざるを得ない。したがって、企業に必要なのは、採用の段階で自組織に所属する「共通の目的」を新入社員とすり合わせていくことであると言える。

 一方で、超売り手市場と呼ばれる昨今、多くの企業が応募者“個人”の欲求を満たすために、待遇の良さや働きやすさを魅力として打ち出している。しかし、このような“個人”の欲求充足に偏った採用メッセージの発信は、目的なき入社を招く可能性が高い。ゆえに、企業は売り手市場にただ迎合するのではなく、やはり採用段階から新入社員の自社に所属する意味を明確にし、彼らの“組織志向”を醸成する努力が必要である。また入社後、新入社員を受け入れる既存社員の“組織志向”を醸成することも同様に求められるだろう。

 新入社員が“個人志向”だけでなく“組織志向”を持って入社すること。そして迎え入れる企業側もその想いに応えていくこと。その双方が、従業員とのエンゲージメント向上には必要ではないだろうか。

公開日:2019.07.05

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