LIFULL 代表取締役社長 井上高志氏
「日本一働きたい会社」実現への軌跡

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2017年に第7回目を迎えたBest Motivation Company Awardは、リンクアンドモチベーションが毎年開催している、社員モチベーションが高い企業を讃えるイベント。2016年にモチベーション調査を実施した283社の頂点に輝いたのは、株式会社LIFULL。
昨年の2位から、有言実行で1位となった代表取締役社長 井上高志の受賞スピーチと、その後のパネルディスカッションで紹介された現場の変革ストーリーを、HR2048だけの特別編集でお届けします。

【プロフィール】
株式会社LIFULL 代表取締役社長 井上高志 氏

会社概要
設立:1997年3月12日
事業内容:①不動産情報サービス事業 総掲載物件数No.1の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」の運営、②その他事業 家具・インテリアECサイト「LIFULL インテリア」の運営
社員数:1,057名(連結) ※2016年6月末時点
本社:東京都千代田区

有言実行でつかんだ、念願のベストモチベーションカンパニーアワード第1位。

今回の1位受賞は、非常に感慨深いです。というのも昨年の授賞式で2位をいただいた際、私は壇上で「来年こそは必ず1位を獲ります」と宣言しました。そしてこの1年間、その言葉を実現するために本当にたくさんの努力をしてきました。改めて従業員のみなさん、そして我々を支えてくださった関係者のみなさんに、心からお礼を言いたいです。

LIFULLがモチベーションサーベイを初めて受けたのは、12年ほど前のことです。モチベーションサーベイを導入する多くの経営トップは、本気で組織を創ろうと思っている方々だと思います。その熱意が人事・従業員を本気にし、その本気が施策や制度に魂を吹き込んでいくものだと考えます。LIFULLでは2008年に「日本一働きたい会社プロジェクト」を立ち上げ、のべ80名以上の人々がプロジェクトに関わり続けてきました。当時まだ20代だった人事の羽田がメインになって「日本一働きたい会社」を目指し、様々な取り組みに励んでまいりました。2人3脚で共に目標を追いかけ続けてくれた人事担当役員の羽田に、1位のこのトロフィーを渡したいです。

モチベーションサーベイの価値は「健康診断」「管理職育成」「組織全体の感情の可視化」の3つ。

これまでの取り組みを通じて、モチベーションサーベイには大きく3つの価値を感じています。

1つ目は組織の健康診断としての価値です。部署ごとに項目別で診断結果が出るので、各部署が抱える課題が手に取るようにわかります。部署が違えば、そこに所属するメンバーも違いますし必要な施策も異なるので、部署ごとに対策をとれることは、確実かつスピード感のある成長を可能にしてくれます。

2つ目は管理職が育成されていくという価値です。具体的に何をどう改善すればいいかがわかるので、各部署のリーダーはメンバーとの接し方を効率よく身につけていくことができます。上からの画一的な施策に頼るのではなく、マネジャークラスが自ら考えて行動していける部分も、成長を促す大きな要素です。lifull0そして3つ目は組織全体の感情が見えるという価値です。感情が数値化されるのが、このサーベイの特徴です。熱狂しているチームはMI(モチベーションインデックス)が高く、さらにその数値は生産性と収益性とに見事に連携しています。従業員の内発的動機が満たされる環境を維持し続けることで生産性・収益性が上がり、業績も上がっていくのを実感しています。 

今回念願の1位獲得が叶いましたが、ここを新たなスタートラインと捉え、これからもますますいい会社となるよう精進していきたいと思います。

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マネジャーを経営陣と現場の結節点にする。

◉事例1:新任マネジャーが配属された部署が陥りやすい、マネジメント不全からの脱却

マネジメント不全症(評価C+ MI54.5:2016年7月)→経営と現場の接続(評価A MI73.0:2016年12月)

lifull1【背景】
新任マネジャーが配属された直後のサーベイ結果で明らかになったA部署の状態は「マネジメント不全症」と呼ばれるものでした。企業が急激な成長を遂げる過程において、新米管理職が部下を上手に育成できないという事態はしばしば発生します。その結果、部下たちの不満が膨らみ、モチベーションが下がり、業績も低迷してしまっている状況が「マネジメント不全症」と呼ばれるものです。

A部署の場合、「形式的にビジョンは共有されているものの、メンバーの中で納得感をもって浸透するまでには至っていない」「その現実に対して、マネジャーがどう手を打っていけばいいのかわからない」「現場と経営陣との溝が邪魔をして、新しい経営戦略に舵きりをしたくてもコントロールしきれない」といった事態に直面していました。lifull2【施策】
CAFÉミーティングや1on1ミーティングによる上司部下の信頼構築・強化

A部署で重点的に取り組むことにしたのが、上司部下の信頼構築・強化でした。具体的には、CAFÉミーティングや1on1ミーティングといった施策です。CAFÉミーティングというのは、ビジョンを共有する打ち合わせを社外のCAFÉといったカジュアルな場所で行うものです。社内のミーティングルームと違って、お互い率直な意見を言いやすくなるのがこの施策の特徴です。まずはマネジャーと現場のメンバーとのコミュニケーション密度を高めることで、マネジャーが伝えるビジョンへの納得度を深めてもらうことが狙いです。

1on1ミーティングというのは、メンバーと1対1で「1年後どうなっていたいか」という目標から逆算し、3ヶ月後にはどうなっているべきかを育成シートを用いながら現状と理想の関係を確認するものです。こちらも、地道なコミュニケーションをとり続けることで、信頼関係を構築していくことに役立ちました。その他には、行動指針ガイドラインを体現したエピソードをチャットツールで流し、そこに対して役員がフィードバックをするという施策を実施しました。「ガイドラインに即した行動をすると成果は出る」という実感をマネジャーに持たせることと、経営陣との距離を近くすることを狙いとした施策です。

【結果】
マネジャーは当初、どうしたらいいかわからないときに「マネジャーらしく、自分で考えて解決しなければ」といったスタンスだったのですが「自分は新任だからわからない。だからこそ、周囲にもっと積極的に聞いてみよう」というスタンスに変わっていきました。また、信頼関係がしっかりと構築されたことにより、メンバーは新しい戦略にも強くコミットできるようになっていきました。人事が直接介入したわけではなく、サーベイの結果を受けてあくまでも自分たちの力で課題解決への取り組みを主導して高い成果を出したことに、大変驚きました。

「感情」「ビジョン」「戦略」3つのギャップを埋めることで意義とビジョンを接続。

◉事例2:短期間の激しい変化に疲弊する部署の活気を取り戻す

事業優位性喪失症(評価A MI67.0:2016年7月)→意義と戦略の接続(評価A MI94.1:2016年12月) 
lifull3【背景】
B部署は、事業者とユーザーとのマッチングをサポートするメディアを制作する部署で、Webデザイナーやエンジニアが中心メンバーでした。事業の再編に伴いチーム編成が変わった結果、自分たちの存在意義を感じることができない「事業優位性喪失症」と呼ばれる状態に陥っていることが、モチベーションサーベイによって判明しました。スピード感のある戦略が次々と打ち出されていく中で「自分たちは何のためにサービスを作っていたのだっけ」と、根本の部分を見失ってしまっていたのです。 lifull4【施策】
新しい事業におけるグループビジョンの再策定

まず前提として、LIFULLではチームビルディングの際に3つのギャップというものを意識しています。それは、感情のギャップ、ビジョンのギャップ、戦略のギャップです。どんなチームも、感情のギャップを埋めることから始めます。簡単に言えば、チームメンバー同士で仲良くなることです。4〜5月の新チーム発足のタイミングでは必ず各部署で様々なイベントを実施し、メンバー同士の感情のギャップを埋めることから始めるようにしてもらっています。

感情のギャップを埋める施策の実施以前は、ビジョンや戦略を浸透させるミーティングをしても緊張して手を挙げて意見を言うことができないことがよくありました。しかし、先に仲良くなっておけばミーティングの場で反対意見も出やすくなりますし、その分ビジョンの浸透も早く・深くなります。そして、ビジョンの共有がしっかりなされていれば、具体的な戦略の話に移っていったときも、高いコミットを得ることができます。

今回B部署は、戦略のギャップを埋める前にビジョンのギャップを埋めようということで、ビジョンの再検討に取り掛かりました。「自分たちは何のためにサービスを作っていたのか」というビジョンの部分で、当初のビジョン策定時の気持ちを忘れていたためにモチベーションが上がらない、業績も上がらない状態になっていたのです。議論を通して、何のためにやっているのか、という初心に立ち返ることができ、最終的には元々あったビジョンをそのまま継続することになりました。

 【結果】
ビジョン継続の結論に行き着く過程でチーム内のコミュニケーションが深まり、まずは感情のギャップが埋まったことが課題解決の大きな要因でした。そのことによってビジョンへの納得度が格段に増し、ビジョン継続という結論に至ったのです。それまでは目の前の戦略に納得感が持てず、部署の業績自体も苦戦している部分があったのですが、最終的には業績を黒字転換させることにも成功しました。経営や人事側から指図するのではなく、部署単位で自発的に対策を考え実施していったからこそ、感情のギャップも埋まりやすかったのではと感じています。

 

◼︎株式会社LIFULL 代表取締役社長 井上高志氏の過去の記事
【前編】サイバーエージェント×ネクストモチベーションカンパニーの創り方「事業よりも先に取り組むべきこと」はこちら

【中編】サイバーエージェント×ネクストモチベーションカンパニーの創り方「ワークモチベーションを可視化する」はこちら

【後編】サイバーエージェント×ネクストモチベーションカンパニーの創り方「組織の問題はヒトではない」はこちら

 ◼︎文中にも登場する、株式会社LIFULL 執行役員人事本部長 羽田幸広氏の著書

「日本一働きたい会社のつくりかた」はこちら

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