エンゲージメントトップクラス企業の、倒産危機から理念経営に至るまでの軌跡

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組織の内部崩壊・倒産危機を乗り越えて、コンテンツマーケティング事業で業界トップクラスの企業へと成長した、株式会社ウィルゲート。創業者であり『ウィルゲート 逆境から生まれたチーム』の著者である代表取締役の小島梨揮氏と、同社執行役員の山中諭氏をお迎えし、コンサルタントとして長きに渡って同社をサポートしてきた、リンクアンドモチベーション執行役員の麻野耕司とのトークセッションが行われました。通常では聞くことのできない、赤裸々に語られた事業と組織の内情を、HR2048が独占レポートします。

【イベント実施日】
2017年7月27日(木)

【プロフィール】
株式会社ウィルゲート 代表取締役 小島 梨揮 氏
           執行役員  山中 諭 氏
株式会社リンクアンドモチベーション 執行役員 麻野 耕司 

経営者として明確な方針が示せない中で、組織が崩壊していった過去

麻野耕司(以下、麻野):本日は、ウィルゲート社の組織人事に関する取り組みをお伝えしていきたいと思います。最初に代表の小島さんから、ウィルゲートの会社紹介をお願いしたいのですが、小島さんの著書『ウィルゲート 逆境から生まれたチーム』はお世辞でもなんでもなく、経営者・人事の方々に是非お読みいただきたい内容です。本日は書籍の中に書かれているお話も、おうかがいしたいと思っています。

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小島梨揮氏(以下、小島氏):ありがとうございます。本日はよろしくお願いします。株式会社ウィルゲートは、私が2006年6月に立ち上げた会社です。現在、コンテンツマーケティングとクラウドソーシング事業、そしてメディア事業を運営しています。もともとはウェブのマーケティング事業からスタートして、SEMやSEOに注力して成長してきた会社で、現在、多角化が少し進んでいる状況です。社員数は130名ほどです。

書籍に記したのは、2006年から2012年ぐらいまでのストーリーなのですが、そこから5年経っているので、2012年以降のお話もできればと思います。私は創業者ですが、吉岡(専務取締役 吉岡諒氏)とふたりで立ち上げました。彼とは幼馴染だったのですが、会社が倒産しそうな中でも、それでも一緒に頑張ろうと連帯保証人にもなって、1億円の借金を背負ってくれた。まさに二人三脚でやってきました。「幼馴染とふたりで会社をやっている」というと「その体制は辞めた方がいい」とか「上手くいかないよ」といった助言をいただくことも多くあります。ですが、ウィルゲートの場合はむしろ、吉岡と一緒にやってこれたことがポジティブに働いていると思います。

創業時について振り返ると、2006年から2008年ぐらいまで、とにかく投資家の方に対して還元をしなければという思いで、事業の成長第一で走っていました。私は当時18歳でしたが、採用において、人物面よりも能力面を重視してしまったことが失敗だったなと感じています。自分より年上で、経験も実績もあるメンバーに囲まれながら、事業のアクセルを踏んだのですが、会社が大切にしたい想いを言語化できず、組織としての軸がないような状態でした。

「この会社はどこに進むんですか」といった声が社員から上がり始めて、さらには「この組織は、言ってることとやってることが違います」といわれるまでになりました。そんなことの積み重ねによって、組織が大きく傾いたのが、2008年頃です。私はその時20歳でしたが、当然、入社してくれる方は自分よりも10歳以上も年上で社会人経験も長くて。社内では、「普通の会社は、こういう取り組みをしていますよ」という話がよく出てくるんです。

そういう話に間違った内容はないので、すべてに「確かにな」と思って、気持ちが揺らいでしまっていました。ぶれると言う表現の方が正しいですね。「ウィルゲートはこうだよ」「ウィルゲートは違うよ」ということを明確に伝えられない状態が続いて、結果的に周囲からは「小島さんの考えていることがわからない」と言われるようになりました。代表として、社員と向き合うことが全くと言っていいほどできていない状態でしたね。

そうして組織が崩れていく中でも、ずっと自分の気持ちを抱え込んでいるだけで発信していませんでした。自信のなさから、自分が言うのもおこがましいなと思って、反対の意見を言うことができなかった。そして、いよいよ会社が倒産するという寸前ぐらいに、ちゃんと向き合わないと、と思ったんです。倒産してしまったら結局、ウィルゲートに関わった全ての人たちに迷惑をかけてしまう。であれば、徹底的に向き合おうと。当時の社員30名全員と面談をしました。もちろん「小島さんが入社時に言ってくれたこと、今言ってることは全然違う」「期待して入社したのに、もう倒産しそうなんですか」といった言葉を直接受けることになりましたし、その頃は、心理的に追い詰められるばかりで苦しかったですね。

でもその面談では、ウィルゲートとして大切にしたい理念や行動指針となるようなものについても話をしてみたんです。結果、30名の内、10名が会社を辞めずに残ってくれました。そして、30名でつくっていた売上を、その10名でつくることができたんです。そこから、赤字が止まって黒字に転換して行きました。10名で踏ん張っていたときの根幹はやはり、経営理念にあったと感じています。そうした経験から、理念の徹底を追求するようになり、会社がぐっと成長していったんですね。

理念を拠り所にして、厳しい事業環境を乗り越えられた

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麻野:ありがとうございます。早速、会社紹介のところから質問をさせてください。2008年あたりが、表面的な理念経営から理念経営の徹底という風に、変化の機会になっていると思います。表面的な理念経営というのは、具体的にはどういうことでしょうか?

小島氏:例えば、お客さまを大切にしたいという思いから、顧客満足度の徹底を謳っていたとしても「うちの商品・サービスはすごいんだ、万能なんだ」と、誇張した表現で契約を取ってくるようなことがまかり通っているとしたら、それはやはり、本来の顧客満足とは乖離している。おかしいとは思いながらも、そういったことが社内で起きているのを見過ごしていました。

また、採用面接のときに、その人の能力面だけを重視して、思いやスタンスを二の次にしてしまっていました。それではやはり、会社として大切にしたい理念と人材のアンマッチが起こってしまう。それは、会社の理念を自分自身がほぼ体現できていないということと同じで、まさに軸がぶれている状態でした。その結果、「社長についていけません」という退職理由を突きつけられることになったんです。

麻野:なるほど、ありがとうございます。今日ご参加いただいている会社さまの多くが、理念をお持ちだと思うんです。行動指針もあるという会社さまも非常に多いと思うのですが、それらが現場に根付くかどうかは決局、様々な判断の場面に現れるということですね。対顧客で、「最終的には業績追及なのか顧客満足なのか」という2択を迫られたときに、顧客満足を選択できるのかどうか。対応募者で、「能力なのか理念なのか」という2択を迫られたときに、踏ん張って理念を選択できるのか。

小島氏:そうですね。

麻野:そうやって理念経営を徹底されてきて、良かったと思った出来事があれば教えてください。

小島氏:後ほど、組織のモチベーション状態を測るエンゲージメントサーベイについてはお話しますが、会社の状況が厳しいときに踏ん張ってくれる社員の存在が、ものすごく大きかったですね。2008年に会社が潰れそうになったとき、その人の人生や色々なことを狂わせてしまう可能性が大いにあったにもかかわらず「それでも一緒にやりたいです」と言ってくれたこと。

2012年には、個人情報漏洩を起こしてしまいまして、事業を撤退し、赤字に突入するという出来事がありました。そのときも当然、何千ものたくさんのお叱り・お怒りの声をお客様からいただいて、とてもじゃないけれど通常業務ができるような状況じゃなかったんです。社員のみんなは真摯に仕事に取り組んでくれているのに、ひたすら罵倒される。こういった難しい状況になっても、人が辞めず、みんなで頑張ろうと言ってくれたのは、根幹にある理念のつながりがあったからだと思います。

麻野:業績の良いときは、理念云々関係なく業績が良く仕事も増える。チャンスも増えるし、ポストも増えます。ただ、業績が下り坂になったときにこそ、組織の真価が問われますね。結局、業績が伸びているという軸で組織を束ねていると、下り坂になった途端に、サッと人が離れていく。ただ、そのときに理念があれば、そこでもう一度踏ん張って立て直していくことができるということですね。

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小島氏:追い風のときは当然良いですよね。社員のみんなもさらにモチベーションが高まって、もっともっと頑張ってくれるので。業績が良いことが、会社の課題やそれぞれが抱える不満を覆い隠してくれるんです。

麻野:「成長はすべてを癒す」という言葉もあったりしますが、最近お会いしたある経営者の方が言われていたのは「成長はすべてを癒すんじゃなくて、すべてを隠してるんだよ。別にモチベーションを高めなくても、成長していればいいよと言う人もいるかもしれないけれど、モチベーションは、成長しているから担保されているだけ。成長が止まった瞬間に、問題はすべて明るみに出てくるよ」というお話でした。小島さんのお話を聞いていて、まさにそういうことなのかなと思いました。

エンゲージメントサーベイは、組織における定量指標を測るツール

麻野:それでは、ウィルゲート社における具体的な取り組みについて、お話をうかがえればと思います。先ほど小島さんからのお話にも出ましたが、ウィルゲート社では、私どものエンゲージメントサーベイを実施いただいています。毎年、エンゲージメントスコアの高かった上位10社を表彰させていただいてるのですが、ウィルゲート社は過去3回ベスト10に入賞されるという、非常にモチベーションの高い企業でもあります。

エンゲージメントサーベイ実施後の組織施策についてお話しいただくのですが、エンゲージメントスコアという言葉も多く出てきますので、先にご説明させていただきたいと思います。組織力強化に必要なこととして、ものさし・定量指標によるPDSサイクルを掲げています。ダイエットを成功させようと思うと、良いサプリや良いエクササイズも大事である一方、体重計に乗って現在の体重を知ることで初めて、PDSサイクルが回っていくという考え方です。

事業活動について考えてみると、事業面においてはPLをはじめとした様々な定量指標を活用されていると思います。一方で組織に目をやると、これだけ組織が重要な時代になってきているにもかかわらず、勘や経験で決められていて、定量指標がなく、現状把握や効果測定ができていないという声が多いです。エンゲージメントスコアというのは、組織における定量指標であり、エンゲージメントサーベイは、その指標を測るためのツールです。

エンゲージメントとは、直訳すると“婚約”という意味ですが、会社と社員の相互理解・相思相愛度合いを測るツールと思っていただければ良いかと思います。その度合いは、スコアとして出てくるのですが、過去サーベイを実施させていただいている2,450社の中心を偏差値50のCランクとして算出しています。このスコアは、16領域のエンゲージメントファクターというもので測っています。具体的には、社員が会社に求めるものということで、会社の未来に関することや会社の活動に関すること、風土に関することや待遇に関すること、また、上司に求めるものと職場に求めるもの。それぞれの領域において、4項目ずつで設計される全64項目によって、組織状態が決まるというものです。

また、16領域64項目については、2軸で質問しています。「社員の方々がどれくらい求めているか」という期待度を、5段階評価で。そしてもうひとつが、満足度です。「社員の方々がどれくらい満たされているか」も、5段階評価で質問していきます。期待度が高く満足度の高い項目は、会社と社員がお互いに求めていて与えられている、エンゲージメントにおける強みです。ここの要素により、退職が減ったり、生産性が上がったりしていることが推測されます。逆に、期待度が高く満足度が低い項目は弱みで、ここの要素が増えてくると、退職が増えてきたり、生産性が下がってきたりすると捉えています。

私たちは、2012年からこのサーベイを用いてウィルゲート社をサポートさせていただいています。これらの情報を前提としていただきながら、お話をおうかがいしていきたいと思います。

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小島氏:大きく3つに分けてお話ししたいと思っています。今エンゲージメントサーベイのお話が出たので、エンゲージメントサーベイにのっとってお話ししていきます。中でも私たちが大切にしているのは、まず「理念と戦略」または「事業内容」です。2つ目は「組織風土や人」のところ。最後は「現場接続」です。この3つが良いサイクルで回らないと、何かしらメンバーには引っかかるものがあって、良いスコアが出ません。良いスコアが出ないということは、要は会社に満足してないという状況だと思います。

制度・待遇も大切ですが、特にベンチャー企業で働くメンバーたちが求めているのは、それだけではなく、成長環境があるのかどうか。会社としては当然、評価をどんどん上げて社員に還元する努力はするのですが、給料が高い企業からうちに入ってきてくれるメンバーもいるので、目の前の給料よりも、より成長できる環境を作ろうとしています。

具体的にどういう風に組織・風土をつくっているのか。いわゆる現場接続の部分も非常に重要なので、その具体論は、山中からお話しさせていただきますが、エンゲージメントスコアも公開しながら、お話を進めていければと思います。

 

「エンゲージメントトップクラス企業の、“組織のモノサシ”を用いた一人ひとりに向き合う組織人事」は、こちら

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