【前編】株式会社プロノバ代表取締役社長 岡島悦子氏
「女性活躍推進は、経営戦略のOS改革」

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Cutting Edgeな人やテーマを取り上げていく「Cutting Edge_働き方改革」。
今回は、グロービス経営大学院の教授をはじめ、複数企業の社外取締役として活躍する岡島悦子氏をお迎えします。「女性活躍推進」といえば必ずお名前が挙がるほど、大きな影響力を持つ岡島氏だからこそ、今改めて聞きたいテーマ「なぜ企業にとって女性活躍が大切なのか」。

【プロフィール】
株式会社プロノバ代表取締役社長、グロービス経営大学院 教授、アステラス製薬株式会社 社外取締役、株式会社丸井グループ 社外取締役、ランサーズ株式会社 社外取締役、株式会社セプテーニ・ホールディングス 社外取締役、株式会社リンクアンドモチベーション 社外取締役 岡島悦子 氏

実現したいことは、企業の非連続の成長

国家施策という文脈では、労働人口の減少に伴った対策として挙げられますが「今なぜ企業にとって女性活躍が大切なのか」。この分野のスペシャリストである岡島さんに、お話をおうかがいしていきたいと思います。

岡島悦子氏(以下、岡島氏):私は、労働人口の確保についてはもちろん重要だと思っています。その点においては、もう横の議論は結構できているなと思っているんですね。横の議論とはご存知の通りで、各階層における女性従業員比率を高い水準で保つというものです。

具体的には、採用した女性従業員に長期間働き続けてもらうための組織のテコ入れの話です。この横の議論については、いわゆる仕事と家庭の両立を支援するという話なので、各企業で託児所設立や、家事サポート制度やテレワークの容認などといった取り組みが盛んになってきていますよね。

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 ※岡島氏が代表を務めるプロノバ社資料_女性管理職比率向上

ただ問題は縦の議論です。私が縦の議論と呼んでいるのは、意思決定者に占める女性の割合を増やすということです。女性管理職比率の向上と言い換えることもできるかもしれません。

とは言え、私は女性活躍推進だけをやりたいわけではないのです。経営チームあるいは経営の意思決定の視点が、既存の成功モデル頼りになっていることが問題だと思っているんですね。私は、企業が「非連続の成長、つまりはイノベーションを起こしていく」ために、一つ目の矢として女性活躍推進が必要だと思っているんです。

私自身、多くの企業に接する機会がありますが、企業は成熟期に入るとイノベーションのジレンマに陥るんですね。その状況を打破できるかどうかは、過去の成功パターンに対して「本当にそうなのか」と疑ってみたり「こういう論点もあるんじゃないか」と違う視点から捉えることができる人が、その意思決定者群の中にいるか次第だと思います。

いつもお話していることですが「多様性」は属性の話ではないんですね。女性の方が優秀だとか、若手の意見を聞くべきだとか言っているわけではなくて、過去の成功モデルに染まっていない人の視点を持ち込む、というシンプルな話なんです。

これまでは意思決定者のほぼ全てが男性だったために、過去の成功モデルに縛られにくい「女性」が、多様性推進にあたって最初の対象層となっているだけのことです。

組織は、固定化した途端に陳腐化の一途を辿るという定めを持っているものなので、常に活性化した状態をつくらないといけない。つまりは、揺らぎのメカニズムみたいなものを、どう組織に内在化できるかということが、生き残れるかどうかの勝負の分かれ目だと思っています。

進化し続け、世の中に受け入れられ続けている企業は、実は内部で常にこの揺らぎを起こし続けているのです。その揺らぎとは何なのか。それは、ダイバーシティ&インクルージョンなんですね。経歴なのか資質なのか、ともかくこれまでとは「違う血」を組織に入れることです。これまで日本企業の多くは、成長戦略の中に女性という存在を組み込んでこなかったからこそ、女性という存在が「違う血」になり得るんですね。

なので、女性活躍推進という取り組みはイノベーションを起こしていく上での、最初の取っ掛かりという風に捉えると良いと思いますね。各社が、女性活躍推進というテーマで、働き方改革やキャリア開発支援など、様々な取り組みをしていると思います。

実際に私もそれらの施策をお手伝いしていますけれど、それは結局のところは枝葉の話です。本当は、組織内でイノベーションが起こっていくようなマネジメントシステムに変えていく、いわばマネジメントのOSを改革するためにやっているはずなんですよね。女性活躍推進はあくまでも最初のきっかけです。

施策成功の鍵は、経営者の意思と決断

「女性活躍推進」が成功している企業の特徴はありますか?

 岡島氏:多様性推進にあたり、経営者が意思を持って決断・推進している企業です。明確にそう言えます。そして、経営者が圧倒的に強い意思を持っていて、変化してきたと言われている企業の代表としては「カルビー株式会社」が挙げられると思います。

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松本会長は、ジョンソンアンドジョンソンからカルビーに移られたんですが、そもそも製薬企業は、比較的ダイバーシティ&インクルージョンが進んでいるんですね。そういう風土の中にいらっしゃった松本会長が、カルビーに移って来られて、様々な改革に着手されました。

カルビーは誰もが知るところの優良企業ですが、これまでは創業オーナーの元で、割と家族的に、まさにモノカルチャーに経営してこられたと思うんです。そう考えると、その風土のままに企業経営を進めていくことも十分に考えられるはずなのに、松本会長の強いリーダーシップのもと、一挙にダイバーシティが進んでいる、という凄さがありますよね。

今や、時短勤務の女性執行役員もいらっしゃいますし、女性の工場長もいらっしゃいます。「ダイバーシティ=カルビー」というイメージすらできつつあると思います。

ダイバーシティは、成長のための絶対不可欠な戦略である

カルビーの松本会長は、何がきっかけでそこまで腹をくくって「女性活躍推進」に取り組めているんでしょうか。経営という立場で考えると、最終的に業績が上がるという確信がないと、そこまでコミットメントできないんじゃないかと思います。

岡島氏: ダイバーシティが、成長のために絶対不可欠な戦略であると捉えているからだと思います。そして、経営者自身が過去にダイバーシティ推進による、事業の成功体験を持っているということも大きいと思います。

カルビーの松本会長は、ジョンソンアンドジョンソンでの成功体験がおありだったのではないでしょうか。ジョンソンアンドジョンソンは、分散型でありながら権限委譲型の組織なんですね。少し組織が大きくなってきたら、単位を小さく分ける。

ただし、小さく分けた組織を横串でつなぐというメカニズムが発達している会社だからこそ、着実に顧客ニーズをキャッチアップしてきたんです。ダイバーシティがベースにあって、エンパワーメントした先に120年以上続く成長があった。

そのカルチャーを経験されているので、カルビーはとても良い会社だけど、このままでは非連続の成長は少し難しいのでは、とお感じになったのではないかと思いますね。

【後編】株式会社プロノバ代表取締役社長 岡島悦子氏 「女性活躍推進は、経営戦略のOS改革」はこちら