
パナソニックマーケティングジャパン株式会社 ボトムアップの助け合い文化を醸成し、生産性と顧客満足度を向上
「モチベーションチームアワード」とは、リンクアンドモチベーションが毎年開催している、従業員エンゲージメントを高め、組織変革を実現した「部署」を称える祭典です。
2025年度は、モチベーションチームアワードの優秀賞に選出された中でも傑出した変革を遂げた4部署にインタビューを実施しました。
部署単位で変革がいかにして行われたのか。
事例を通じて、組織変革に挑む管理職や人事の方々に、実践のヒントをお届けします。
本記事でご紹介するのは、パナソニックマーケティングジャパン株式会社 CS社 首都圏社 東京東サービスセンター様の事例です。
【お話をお伺いした方々】
パナソニックマーケティングジャパン株式会社 CS社 首都圏社 東京東サービスセンター
・所長 前島 敬 氏
・フロント課 課長 田村 隆之 氏
・技術一課 北部係 主務 石原 和弥 氏
部署名 CS社 首都圏社 東京東サービスセンター
事業内容 家電修理サービス など
部署規模 45名
事業の変化
- NPSスコア(お客様が家族や友人に商品をお勧めしたいと思う割合)が前年から200%上昇
- お客様から直接いただいた100件以上の声を製造部に届け、製品の進化に貢献
組織の変化
- 業務過多で疲弊した組織から、互いに感謝をし助け合う組織へ
- 「どうせ」が連鎖した組織から、「さすが」と言われる組織へ
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従業員エンゲージメントの向上で、お客様満足度の向上へ
はじめに、組織変革に取り組んだ目的を教えていただけますか。
前島氏:私たちの大きな使命は、パナソニックのファンを拡大することです。そのために、極めて重要な要素になるのが「人」です。お客様のご自宅にお伺いする家電修理サービスは、人こそがサービスそのものと言っても過言ではありません。
一方で、人手が集まってこないなかで業務負荷が大きくなり、日々の仕事に追われる従業員のモチベーションは明らかに低下していました。従業員が生き生きとして仕事をしていなければサービスの品質は上がりませんし、ファンを増やすこともできません。「いかにESを高めながら、CSを高めるか」すなわち、従業員エンゲージメントを向上させることによって、お客様満足度を向上させること──これにチャレンジするために、今回の取り組みをスタートしました。

気力・体力ともに消耗し、モチベーションが低下していた
組織変革に取り組む前、貴部署の事業はどのような状態でしたか。
前島氏:パナソニックマーケティングジャパン株式会社には、家電修理サービスを提供している「CS社」というセクションがあります。そのなかで、私たち「東京東サービスセンター」は、東京23区の東側のエリアを担当しています。
家電修理サービスを通してパナソニックのファンを増やしていくために、私たちは「NPS(ネットプロモータースコア)」を重要指標の一つに据えています。これは、「家族や友人にパナソニックの商品をおすすめしたいと思いますか?」といった質問に答えていただく、お客様アンケートのスコアです。このNPSがなかなか目標値に届かない状態が続いていました。つまり、再販に貢献できていない、リピーターを創出できていないということです。
田村氏:私たちの事業を取り巻く環境として、日本は人口減少が進んでいますが、私たちが担当している東京東エリアは、この10年で人口が1.2倍くらいに増えています。人手が不足しているにもかかわらず、家電の修理依頼は依然として高止まりしており、仕事量は多く、従業員はみんなひっ迫していました。
私たちのKPIの一つに、「修理の依頼をいただいてから実際に修理が完了するまでの日数」があるのですが、2年前の夏季繁忙期では、1週間後、10日後でないと訪問できないような状態で、お客様にもご迷惑をおかけしていました。
組織の状態はいかがでしたでしょうか。
前島氏:先ほど申し上げたように、従業員は日々の仕事に追われ、気力・体力ともに疲弊していました。当時は離職者もおり、残ってくれた従業員の負荷がさらに大きくなり、モチベーションが低下するという悪循環に陥っていました。
田村氏:2年前、何かを変えようと思ったときも、何から手をつけていいかが正直わからない状態でした。
「挨拶」と「ありがとう」から始めるボトムアップ型組織への改革
組織変革に向けた取り組みの内容について教えていただけますか。
前島氏:モチベーションが低下した職場では、日々のコミュニケーションも希薄になります。そのため、まずはコミュニケーションの活性化から着手しました。
コミュニケーションの基本は挨拶であり、気持ちのよい挨拶が、お客様から感謝のお言葉をいただくことにもつながります。創業者の松下幸之助も、「挨拶はお互いの毎日の暮らしの潤滑油とでもいった尊き働きを果たしている」という言葉を残しています。そこで、当たり前に挨拶が交わされる職場を目指し、責任者が率先垂範して挨拶をするようにしました。
業務チャットも、発信に対して返信が少ない状態でした。発信すれば、ちゃんと反応が返ってくる。そんな当たり前の風土をつくるため、まずは責任者が返信することを徹底しました。
また、職場内で日々「ありがとう」を伝え合うことを心がけました。私たちが提供している修理サービスは、一人のお客様に様々な部署が関わっており、チームでお客様の困りごとを解決する仕事です。チームの連携を強化するためには、コミュニケーションが不可欠であり、特に周囲に感謝することが大事だという思いから、従業員同士が「ありがとう」を伝え合う取り組みを始めました。
田村氏:一度希薄になったコミュニケーションを活性化させるのは容易ではなく、「どうせやっても…」というような後ろ向きな意見があったのも事実です。それでも、責任者を中心に根気よく「おはよう」「おつかれさま」を続けることで、自然に挨拶が飛び交うようになっていきました。挨拶が増えたことで雑談も増え、「まずは聞いてみよう」とお願いごとや相談をしやすくなるという好循環が見られるようになりました。

コミュニケーションの施策以外では、どのような取り組みをしましたか。
前島氏:モチベーション高く働いてもらうためには、従業員が自分たちで考えて行動してもらう機会が必要だと考えました。従業員の主体性を醸成するために始めたのが、「一人一役活動」です。これは、通常業務以外の改善テーマを決めて、一人ひとりに役割として与えるものです。上司の指示を待つのではなく、自ら改善策を考え、実行してもらいたいという狙いがありました。
一人一役活動は24年にスタートしましたが、実はこの年はうまくいかないまま、終わってしまいました。25年に、あらためて仕切り直したという経緯があります。
田村氏:24年にうまくいかなかったのは、従業員にテーマを与えるだけで終わっていたのが大きな原因だったと思います。本人への役割の説明や、上司によるフォロー体制が不十分でした。ですから、25年は会社の方針と接続したテーマを設定したうえで、「なぜそのテーマをあなたに任せるのか」ということを丁寧に伝えました。テーマを任せた後も、各従業員の経験や能力に応じて上司がフォローするようにしました。こうしたことで、従業員は自分の役割をしっかりと認識し、「よし、自分のやり方でやってみよう」と、前向きに取り組んでくれるようになったと思います。
一人一役活動の具体例を教えていただけますか。
石原氏:私が一人一役活動で与えられたテーマは「VoE」の活性化でした。これは、「ボイスオブエンジニア(技術員の声)」という意味で、修理現場で見つかった想定外のトラブル事例などを、技術員の声として製造現場にフィードバックする運動のことです。
私が行ったのは、「なぜ、技術員の声を製造現場に届けるのか?」という意義を技術員に伝えることです。フィードバックをして改善しないと、将来お客様に選んでもらえなくなり、必要とされなくなる。そんなことを再確認し、VoEを促したことで、24年に6件だったVoEは25年に122件まで増えました。パナソニックマーケティングジャパン全社で取り組んでいる活動ですが、この件数は、首都圏で2位、全国で5位の数値です。

その他に取り組んだことはありましたか。
石原氏:修理情報を集めたナレッジベースをつくったのも、取り組みの一つです。東京東サービスセンターは、20~30代の従業員が中心で、新人も少なくありません。技術面で経験の浅い従業員も多いため、技術指導をする必要があるのですが、なかなかその時間を確保できない状況が続いていました。
それならば、新人が自ら知識・技術を取りにいける仕組みをつくろうと考え、社内チャットを活用して、ナレッジベースをつくったんです。修理情報などを整理して保存してあるので、現場で困ったときにナレッジベースにアクセスすれば、すぐに確認できます。こうして技術力向上を図ったことは、少なからず「初回修理完了率」の向上にもつながっていると思います。
NPSは前年比200%!主体性と協力が根付いた組織に生まれた好循環
今回の取り組みを通して、どのような成果がありましたか。
前島氏:コミュニケーションが増えたことで、従業員同士の協力・連携が生まれるようになりました。また、従業員の主体性が芽生えたことで、個々のPH(時間あたり生産性)が向上しました。具体的な成果としては、修理スピードの向上により、1日あたりの訪問件数が増加しています。2年前はお客様を1週間以上お待たせしてしまうこともありましたが、現在は安定して翌日・翌々日のご案内ができるようになっています。
こうして時間的な余裕が生まれたことで、お客様に丁寧な応対ができるようになり、私たちの最重要指標であるNPSも前年比200%と大幅に向上しました。お客様からは毎週のように「さすがパナソニック」「次もパナソニックを選びます」といったお言葉をいただけるようになりました。なかには、わざわざお電話やお手紙で感謝の気持ちを寄せてくれるお客様もいます。これは本当に嬉しいことですよね。
田村氏:私たちの組織は、大きく「内勤者」と「技術員(外回り)」の部署があります。2年前は部署間の交流はほとんどありませんでしたが、今は壁が取っ払われ、相互のコミュニケーションが活性化しています。内勤者が技術員に声をかけて質問しているシーンもよく見かけますね。これは、従業員が「コミュニケーション・連携を図ることが業績につながる」ということに何となく気づいているからだと思います。だから行動が変わったんだと、私は考えています。

組織風土にはどのような変化がありましたか。
前島氏:私はずっと、社内の従業員もお客様だと思って、感謝の気持ちを持って仕事をしようと言ってきました。少しずつですが、「感謝し合う風土」が生まれつつあります。こうした感謝の気持ちがお客様にも伝わることで、「次もパナソニックを選びます」といった言葉につながっているように思います。
田村氏:若手を中心に、「こういうことをやりたい!」「こうしたほうがいいんじゃない?」といった前向きな意見が出てくるようになりました。以前は、「上から言われたことをやらなきゃ」「数字を上げなきゃ」という意識で働いていましたが、今は「もっと自由に仕事しようよ」といった雰囲気があります。
大きく変わったのは一体感ですね。技術員が「お客様から褒められた」と言うと、内勤の女性スタッフから「やった!」「よかった!」という声が上がるんです。一体感があるから、「みんなで成果を出そう」という雰囲気になりますし、「あの人が頑張ってるから、自分も頑張ろう」というような相乗効果も生まれます。
石原氏:挑戦する姿勢が根付いてきているように思います。挑戦するのはもちろん大変ですが、「大変だから挑戦しない」とは誰も思っていません。これは、一連の取り組みを通して、みんなが「やれば数字は後からついてくる」ということを実感できたのが大きいのではないでしょうか。
前島氏:「一人一役活動」も挑戦の一つですが、任されたテーマをやり切ることで達成感が生まれ、それが自分の喜びになり、モチベーションも上がります。モチベーションが上がれば、サービス品質も上がり、お客様の満足につながるという理想的な循環が生まれつつあると感じています。
パナソニックを盛り上げる「最強の東京東」へ
最後に、今後の展望をお聞かせいただけますか。
田村氏:組織風土改革に終わりはありませんので、常に「パナソニックのファンになってもらうには何ができるか?」を考え、それを実践する組織にしていきたいですね。
私たちはよく「最強の東京東を目指そう」「ESもCSも日本一の拠点にしよう」と話しています。たとえば、10年後くらいに振り返ったとき、「今活躍している人って、あのとき東京東にいた人ばかりだよね」と言われるくらい、みんなで力を合わせてパナソニックを盛り上げられる拠点にしていきたいと思います。
前島氏:やはり私たちの仕事は、全スタッフが関連しないと成り立たない仕事です。
感謝の気持ちを大切にしながら、スタッフともお客様とも関わることで、いい会社になっていきたいですね。
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