
兵庫県 「誰の仕事でもないこと」を「自分たちの仕事」として取り組む組織へ
「モチベーションチームアワード」とは、リンクアンドモチベーションが毎年開催している、従業員エンゲージメントを高め、組織変革を実現した「部署」を称える祭典です。
2025年度は、モチベーションチームアワードの優秀賞に選出された中でも傑出した変革を遂げた4部署にインタビューを実施しました。
部署単位で変革がいかにして行われたのか。
事例を通じて、組織変革に挑む管理職や人事の方々に、実践のヒントをお届けします。
本記事でご紹介するのは、兵庫県但馬県民局総務企画室様の事例です。
【お話をお伺いした方々】
兵庫県 但馬県民局総務企画室
・室長補佐兼総務防災課長 村尾 久司 氏
・主査 中島 弘道 氏
・主任 福丸 雅士 氏
・副主任 橋本 泰希 氏
・主事 三原 亜結 氏
・主事 井上 輝 氏
・主事 山本 涼音 氏
部署名 但馬県民局総務企画室
事業内容 内部管理事務・企画および総合調整など
部署規模 36名
事業の変化
- 公用車の安全面の改善を実施し、交通事故件数を半減
- 限られた予算の中でも、オフィス環境やIT環境を整備
組織の変化
- 与えられた仕事を完遂する組織から、主体的に改善活動を行う組織へ
- 日々の業務を淡々と遂行する組織から、目指す姿に納得して一体感を持って働く組織へ
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職場に活気をもたらすことで、県民サービスを向上させたい
はじめに、組織変革に取り組んだ目的を教えていただけますか。
村尾氏:エンゲージメントを高め、職場に活気をもたらすことで、それが県民サービスの向上につながればいいなと思い、組織改善の取り組みを開始しました。
当初からオフィス環境への問題意識は抱いていましたが、今回の取り組みを通じて、組織のコミュニケーションというより深い課題の改善へとつながりました。

受動的な姿勢が目立ち、変化を起こすハードルが高かった
組織変革に取り組む前、貴部署の事業・組織はどのような状態でしたか。
村尾氏:与えられた業務については、各々の職員が責任感と使命感を持って、着実・堅実に進めていたと思います。しかしながら、兵庫県が求める職員像「HYOGO's WAY」の観点で見ると、「前例に捉われず、柔軟な発想で挑戦し続ける」「庁内外と連携・協力して、チーム力を最大化する」といったポイントは、まだまだ改善・向上の余地があると感じていました。
決して、職場の雰囲気が悪いわけではありません。かといって、業務外のことを積極的に発信したり、取り組んだりといった姿勢はあまり見られない状態でした。
そして、今回の取り組みを通じて、職員が抱いていた課題感にも気づくことになりました。
▼職員の声
- 「課題意識とまではいかないが、誰もが、小さいながらも疑問に思っていることや気になっていることはあった。ただ、普段はなかなかそういう話をすることがなかった。」
- 「職場環境、特にハード面が気になっていた人は多い。たとえば、配線が乱雑だったり、ロッカーが汚かったり、傘立てから傘があふれていたり。パソコンの不具合など、IT環境に関する問題や、車の事故が多いことも課題だった。但馬県民局はエリアが広いので頻繁に公用車を使うが、自損事故も含め、結構事故の件数が多かった。」
福丸氏:「ここが気になる」「これがやりにくい」と思っていても、変えるのにはエネルギーがいるし、別にこのままでいいかという人は多かったのではないでしょうか。
中島氏:同じ組織の職員同士ではありますが、役割が違えば他人事と言いますか、「隣の家の事情」みたいな雰囲気もあり、他の人や係にあまり関心がないという面はあったと思います。
「自分で選ぶこと」から動き出した改善活動
組織変革に向けた取り組みの内容について教えていただけますか。
村尾氏:まず、モチベーションクラウドのサーベイで組織の課題を抽出しました。その結果、私たちの弱みとして8項目が明らかになりました。ハード面の弱点は認識していましたが、コミュニケーションなどソフト面の課題は「言われてみればそうだよね」という点が多く、それらが可視化されたのは非常に良かったと思っています。
8項目の弱みのうち、まず自分たちの取り組みで変えられそうな6項目にフォーカスして改善に取り組むことにしました。
具体的なアクションプランは、モチベーションクラウドのAI機能にレコメンドしてもらい、その内容・表現を自分たちに合うように変更して策定しました。その後、全職員に6項目の弱みのうち、「興味のある項目」または「これなら自分でもできそうな項目」として2項目を選択してもらいました。そのうえで、各項目につき4人の班を編成しました。この班は、あえて総務・企画班と財務班から2人ずつ選んで4人にしています。
アクションプランの進め方や4人の役割分担などは、基本的にフリーハンドです。「自分たちで話し合い、自分たちのやりたいように進めてください」と伝えました。自治体の通常業務は申請・承認が多く、機敏に動くのが難しいからこそ、今回の取り組みでは職員の自主性を尊重するようにしました。そして、リーダーに中間報告をしてもらいながら、各班にアクションプランを実践してもらいました。
具体的に、どのように実践していったのでしょうか。
山本氏:たとえば、「身体的な快適性」を改善する取り組みとしては、傘立ての整理があります。来客が多い部署ということもあり、持ち主が分からない傘があふれていたのですが、持ち主を特定して不要な傘を処分しました。使用可能なものは「貸出用」と表示して自由に使えるようにしました。使っていないプリンターなど不要なものは整理し、配線はまとめてテープで固定しました。公用車に関しては、バックモニターの設置・修繕を進めました。事故の可能性を潰すという意味で、重要な取り組みの一つだったと思っています。
こうした取り組みがスムーズに進んだのは、自分でやりたいこと・興味のあることを選んでいるからだと思います。私も、自分で選んだ以上、ちゃんとやらなければという気持ちになりました。
三原氏:もともと気になっていて、何とかしたいなっていう気持ちはありました。今回、行動できたのは、やはり自主的に選んだことが大きいですね。
改善施策の一つとして、計画・方針を共有する機会も設けたと伺っていますが、どんな取り組みをされましたか。
中島氏:はい、「計画や方針の発信と伝達」に弱みがあることが分かりましたので、幹部が定期的に、県民局の重要施策やその時々の動きを共有する機会を設けました。
それぞれの職員がそれぞれの業務をしていれば、組織は回っていきます。ですが、一般の職員からすると「自分の業務が、どのように県のためになっているのか」が見えにくい部分があったと思います。たとえば、財務ではお金の支払いをおこないますが、「この支払いはどういう補助金で、どんな課題を解決するために使われているのか」ということが分からないまま、支払っている職員もいたと思います。
こうした反省から、兵庫県の目指す姿や施策を共有することにしました。「この補助金はこういう目的があり、こういう団体に支給され、こういうふうに活用されているんだ」ということが分かれば、自分の支払い業務の意義を感じられます。それだけでも、仕事のモチベーションは変わってくるのではないでしょうか。

その他に取り組んだことはありましたか。
中島氏:先ほど、「隣の係に関心がない」「何をしているのか分からない」といった話がありました。こうした状態を改善するために、係ごとに管理していた予定表を一元化し、それぞれの係の予定を月単位で共有するようにしました。同じ場所で予定を参照できれば、「どの係がどの時期に忙しいのか」「この時期にこの業務をしているのか」といったことが分かります。そうなれば、コミュニケーションを図りやすくなり、風通しも良くなると考えました。
村尾氏:職場の風通しを良くするという点では、Teamsを使って自己紹介文を共有する取り組みも始めました。同じ部屋で働いていても、仕事内容が違えば話す機会は多くはありません。「一年一緒に働いているけど、あの人のこと、ほとんど知らないな」といったケースもあります。
そこで、順番に自己紹介文を共有することにしたんです。職種も年代も肩書も異なる36人の人に、自分のことを伝える機会はそうそうありません。1周目は出身地や趣味、おすすめのお店など幅広く、2周目は「私の成功体験・失敗体験」というテーマにしました。もちろん、プライベートなことはあまり話したくないという人もいるので、開示できる範囲でOKです。
この自己紹介は、意外な一面が見えておもしろかったり、共通の趣味から会話が生まれたりと、思っていた以上に好評でした。「この人は若い頃にこういうバックボーンがあるから、今の〇〇につながっているんだな」というように、ストーリーが見えてくることもあります。
自己紹介を始めてみて、具体的にどんな反応を得られましたか?
井上氏:一般の職員は普段、局長のような上の役職者と話をすることはありませんし、当然、趣味も知りません。ですが、自己紹介を通して、今の局長の趣味が「仏像づくり」だと知りました。上の役職者がフランクに開示してくれるので、私たちも「こんな内容でも発信していいんだな」といった安心感を持ちながら自己紹介ができました。
村尾氏:自己紹介は、まず私からスタートしたんです。自分のことって、どうしても構えてしまうものですが、それではおもしろくありません。ですから、固くない内容にしようと心がけました。それが良かったのかもしれませんね。

誰の仕事でもなかったことに、みなが向き合い始めた
組織変革の取り組みによって、どのような成果がありましたか。
村尾氏:限られた予算のなかですが、様々な工夫によって職場環境・IT環境の改善を進めることができました。机の周りやロッカーの中がすっきりして働きやすくなりましたし、見た目もきれいになりました。
大きな成果と言えるのが事故の減少です。必ずしもバックモニターだけが功を奏しているとは思いませんが、事故件数は昨年の34件から今年は17件と半減しています。
今まで「誰の仕事でもなかった業務外のこと」を、こういう機会だからやってみようと、職員が前向きに取り組んでくれたのが良かったですね。上に言われたから動くのではなく、主体的に動く。主体性があったからこそ、取り組みにもスピード感がありましたし、取り組み後もTeamsで改善状況を発信するなど、前向きな姿勢が見られるようになりました。
また、部屋や班を超えて話し合ったこともポジティブな変化をもたらしています。一つの課題に対し、それぞれが異なる視点で意見を言い合うことで、より良い改善策が生まれました。職場の風通しが格段に良くなり、柔軟なアイデアが出るようになり、それがチーム力の向上につながりました。
中島氏:今回の取り組みは、「班で集まって自由にやってね」と言われてスタートしたのも大きかったと思います。そもそも、今までは仕事で接点のない人と集まることもなかったので、そういう機会ができたのはとても良かったです。自治体は何かやろうと決めても、動き出すのが遅くなりがちですが、今回は4人いたので、みんなで声をかけ合ってスピーディーに進められました。
村尾氏:自己紹介もコミュニケーションの活性化につながり、職場に活気が生まれました。こういう機会があったから開示したこともたくさんあったのではないでしょうか。
三原氏:自己紹介の話を聞いたときは、正直戸惑いました。ですが、職場の人の人柄を知れたことで、いざという時に頼りやすかったり、頼られやすかったりするのかなと思います。
橋本氏:お互いのことを知ることで、普段のコミュニケーションが格段にとりやすくなりました。自己紹介を見てすぐのタイミングが話しかけやすいんです。「〇〇の出身だったんですね」「〇〇が趣味だって知りませんでした」など、会話のきっかけになるのが良いなと思います。
村尾氏:こういった関係性の改善によって、結果的に業務外でのコミュニケーションも増え、組織全体のモチベーションも向上したと思いますね。
改善を積み重ね、進化し続ける組織へ
最後に、今後の展望をお聞かせいただけますか。
村尾氏:もしかすると、取り組みが終わったという実感を持っている職員もいるかもしれませんが、改善は継続しておこなうものです。そのためにリーダーは、引き続き進行管理をおこない、「その後どうなった?」ということをモニタリングしながら、要所要所でアドバイスをしていけたらなと思います。今日までの取り組みで組織は大きく変わりましたが、まだまだ改善の余地はあります。今後のアクションで、より良い組織を目指していきたいと思います。





