
ジョブクラフティングとは?メリットや研修の手順・ポイントを解説
ジョブクラフティングとは、従業員が自分の仕事の内容や方法を自らの価値観やスキルに基づいて調整するプロセスです。
この手法は、業務のやりがいや満足感を高め、仕事へのモチベーションを向上させる効果があります。VUCA時代において、変化に柔軟に対応するための重要なアプローチとして注目されています。
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ジョブクラフティングとは?
ジョブクラフティング(Job Crafting)は、従業員が自らの仕事を積極的に再構築し、仕事の内容や方法を自分の価値観や能力に合った形に調整するプロセスを指します。
この概念は、従来の上司からの指示に従うだけの仕事の枠組みから、個々の従業員が主体的に自分の役割を形成し、仕事に対する満足感や生産性を高めることを目的としています。
ジョブクラフティングの提唱は、2000年代初頭にアメリカの組織心理学者、エイミー・ワッスマン(Amy Wrzesniewski)とジェームズ・ペンサー(James Pfeffer)による研究に基づいています。
特に、2001年に発表されたワッスマンの論文がこの概念を広めるきっかけとなり、ジョブクラフティングは従業員のモチベーションやエンゲージメント向上、組織のパフォーマンス改善に寄与する方法として注目を集めました。
ジョブクラフティングが注目される背景
ジョブクラフティングとVUCA時代には深い関連性があります。急速に変化する環境では、従業員が自分の仕事を柔軟に適応させる能力が求められます。ジョブクラフティングは、従業員が自ら仕事の内容や方法を調整し、変化に対応する力を高めるプロセスです。
これにより、仕事に対するモチベーションが向上し、柔軟性を持って新しい状況に対処できます。VUCA時代では、従業員一人ひとりの自主性や適応力が組織全体の競争力に直結するため、ジョブクラフティングが非常に有効なアプローチとなります。
ジョブクラフティングとジョブデザインとの違い
ジョブクラフティングとジョブデザインは、どちらも仕事の構築に関連する概念ですが、従業員の主体性において大きな違いがあります。ジョブデザインは、組織の上層部が主導で行うもので、従業員の役割や業務内容を計画的に決定します。
一方、ジョブクラフティングは、従業員が自らの仕事を積極的に調整し、自分の価値観や能力に合わせて仕事の内容や関わり方を再設計するプロセスです。従業員の主体性が強調され、仕事への意義やモチベーションが高まります。
ジョブクラフティングのメリット
ジョブクラフティングは、従業員が自らの仕事を再構築するプロセスであり、組織に多くのメリットをもたらします。特に、離職率の低下、従業員エンゲージメントの向上、生産性の向上といった点において、その効果が顕著です。
離職率が低下する
ジョブクラフティングの大きなメリットの一つは、従業員の離職率が低下することです。従業員が自らの仕事に対して主導権を持ち、役割や仕事の内容を自分の価値観やスキルに合った形で調整できることで、仕事に対する満足度が向上します。
例えば、ある社員が定期的な業務に加えて、プロジェクト管理やチームリーダーの役割を追加することにより、自分のキャリアに対する意義を感じ、仕事へのモチベーションが高まります。
このように、自分自身で仕事を再設計することができると、従業員は仕事に対する責任感ややりがいを感じやすくなり、結果として離職のリスクが減少します。
従業員エンゲージメントが高まる
ジョブクラフティングが従業員エンゲージメントを高める理由は、従業員自身が自分の役割を積極的にデザインできる点にあります。従業員が自らの仕事の内容や働き方を調整することで、仕事に対する責任感が強まり、結果としてエンゲージメントが向上します。
例えば、顧客対応の仕事をしている従業員が、自分の業務に新たな価値を加えたいと考え、顧客からのフィードバックをもとに新しいサービスを提案することができるようになります。
このような主体的な取り組みが従業員の仕事に対する熱意や関心を高め、エンゲージメントを促進します。この結果、従業員は組織への貢献を意識し、長期的なコミットメントを持ちやすくなります。
生産性の向上
ジョブクラフティングは、従業員が自分の業務をより効率的に、かつ効果的に進めるための手段としても有効です。従業員が自分の強みや興味に合わせて業務内容を調整することにより、仕事の効率性やパフォーマンスが向上します。
例えば、ルーチンワークに追われていた従業員が、業務の一部を自動化ツールで補完したり、別の方法で効率化したりすることで、時間の使い方が最適化されます。
さらに、ジョブクラフティングを通じて、従業員は自分の役割の中で最も生産的な部分を特定し、それを強化することができます。仕事を自分のペースや得意分野に合わせて調整することで、パフォーマンスが最大化され、結果として組織全体の生産性が向上します。
ジョブクラフティングの実践
ジョブクラフティングを実践するためには、その観点を知っておく必要があります。ここでは、ジョブクラフティングの3つの観点について、簡単にご紹介します。
ジョブクラフティングの3つの観点
ジョブクラフティングには、従業員が自分の仕事を再構築するための3つの主要な観点があります。それは「作業クラフティング」「人間関係クラフティング」「認知クラフティング」です。
これらは、それぞれ異なる方法で仕事を調整し、やりがいや満足感を向上させる手段として活用されています。
作業クラフティング
作業クラフティングは、従業員が自分の仕事の内容やタスクを調整することを指します。具体的には、仕事の範囲を広げたり、逆に縮小したり、または自分の強みを活かす形でタスクを変更することが含まれます。
例えば、営業職の従業員が新たにデータ分析業務を担当することにより、自分の得意分野である数字を活用し、業務に対する自信を高めることができます。
アドバイスとしては、作業クラフティングを進めるためには、自分の得意な分野や興味を見極め、それを業務にどう取り入れるかを考えることが重要です。
人間関係クラフティング
人間関係クラフティングは、仕事をする上での関わり方や人間関係を調整することです。従業員が自分のチームメンバーや上司、顧客との関係を積極的に変えることで、業務に対するモチベーションや仕事の質が向上します。
例えば、同僚との協力を強化することで、よりスムーズにプロジェクトが進行し、チームワークが向上することがあります。
アドバイスとしては、人間関係クラフティングを実践するには、コミュニケーション能力を高め、他者との信頼関係を築くことが重要です。
認知クラフティング
認知クラフティングは、仕事に対する自分の認識や捉え方を変えることを指します。仕事の意味や価値を再評価し、自分が行っている業務がどのように組織や社会に貢献しているかを理解することで、仕事へのモチベーションややりがいが向上します。
例えば、事務職の従業員が自分の業務が会社全体の効率化や顧客満足度に繋がっていることを認識することで、仕事に対する意義を感じるようになります。
アドバイスとしては、認知クラフティングを実践するために、自分の業務がどのように他者や組織に貢献しているのかを常に考えることが重要です。
ジョブクラフティング研修の手順
ジョブクラフティング研修は、従業員が自分の仕事を再設計し、より満足度の高い業務環境を作り出すための手法です。研修の手順には、業務の洗い出し、自己分析、3つの観点から業務や人間関係を見直すこと、そして振り返りが含まれます。
業務の洗い出し
ジョブクラフティング研修の最初のステップは、自分が現在担当している業務を詳細に洗い出すことです。まずは、自分の日々の業務をすべてリスト化し、各業務の目的や重要性、頻度などを明確にします。
この作業は、従業員が自分の業務内容を客観的に把握するために非常に重要です。例えば、営業職の従業員がクライアントとのミーティングや書類作成、データ分析などをリストアップすることで、自分がどの業務に多くの時間を割いているかがわかります。
自己分析
自己分析は、ジョブクラフティングの中心となるステップです。研修の中で、自分の強み、価値観、仕事に対するモチベーションを再確認します。自己分析を行う際には、自分がどんな仕事をしているときに充実感を感じるか、逆にどんな仕事が負担に感じるかを考えます。
例えば、プロジェクト管理が得意であり、顧客との関係構築に強い興味を持っているといった自己認識を深めることです。
3つの観点から業務や人間関係を見直す
ジョブクラフティングでは、作業クラフティング、人間関係クラフティング、認知クラフティングの3つの観点から業務や人間関係を見直します。まず、作業クラフティングでは、自分の得意分野を活かせる業務に調整し、業務内容を改善します。
人間関係クラフティングでは、職場での協力関係やコミュニケーションの取り方を見直し、より良いチームワークを構築します。認知クラフティングでは、仕事の意味や目的を再認識し、業務に対する意義を感じられるようにします。
振り返り
研修の最後には振り返りの時間を設け、ジョブクラフティングのプロセス全体を見直します。このステップでは、研修で学んだことや実施した業務の変更について、自己評価を行い、どれだけ改善が進んだかを確認します。
また、今後の業務にどのようにジョブクラフティングを活かしていくかを考えることが重要です。例えば、作業クラフティングで業務を調整した結果、業務の効率が向上したことを実感することができます。
ジョブクラフティング研修を成功させるポイント
ジョブクラフティング研修を成功させるためには、従業員の主体性を尊重し、組織内に風土として定着させ、業務の属人化を防ぐことが重要です。
従業員の主体性を尊重する
ジョブクラフティング研修の成功には、従業員が自らの役割や仕事を再設計する主体性を尊重することが不可欠です。もしこの主体性が無視されると、従業員は研修を受けても自分の仕事に反映させることができず、モチベーションが低下する恐れがあります。
従業員が自分の仕事に対する意義を見いだし、積極的に改善しようとする意欲があってこそ、ジョブクラフティングは機能します。
アドバイスとしては、研修を一方的に行うのではなく、従業員が自分の意見や思いを自由に表現できる環境を作ることが重要です。
ジョブクラフティングの風土定着を促す
ジョブクラフティングを研修で学んだ後、組織全体にその風土を定着させることが重要です。もし風土として定着しない場合、研修後に元の業務に戻ってしまい、成果が持続しません。
組織全体がジョブクラフティングを支援する文化を持つことで、従業員が自分の業務を継続的に改善し、仕事に対する満足度が向上します。
アドバイスとしては、研修後にジョブクラフティングを実践した成果を定期的に共有し、成功事例を広めることが有効です。
業務の属人化を阻止する
ジョブクラフティングの実践には、業務の属人化を防ぐことが必要です。特定の従業員だけが特定の業務に依存する形になると、他の従業員がその業務を引き継げず、組織全体の柔軟性が低下します。
ジョブクラフティングを活用することで、業務の内容を見直し、チーム全体で負担を分担する方法を考えることができます。属人化を防ぐことは、長期的な組織の安定と成長に貢献します。
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まとめ
ジョブクラフティングは、従業員の主体的な業務再設計を促し、エンゲージメントや生産性を向上させる有力な方法です。業務内容、関係性、認知の3つの観点から仕事を見直すことで、個々のやりがいや効率性が向上します。
組織内での実践と定着が重要であり、これを積極的に推進することが企業の成長に繋がります。