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リンクアンドモチベーション 執行役員 麻野耕司 「HR後進国、日本の未来」

オウンドメデイアのタイトル名にも通じる、新連載。未来(2048年)を見つめるインタビュー。現在の問題意識と未来の展望をテーマに、新しい組織のあり方を模索し、働き方を改革している様々なリーダーに迫っていきます。第1回目は、リンクアンドモチベーションの麻野氏。コンサルタントとして、クライアントの組織変革に携わる以外にも、数々の成長ベンチャー企業に社外取締役としても名を連ねる組織人事のスペシャリストが見つめる未来とは。

【プロフィール】
株式会社リンクアンドモチベーション 執行役員 麻野 耕司

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「人的資源から見た日本」への強い危機感

-人や組織という観点から、現在日本が抱えている問題はなんでしょうか?

この国の最大最強の資源は、人材です。広大な国土・豊富な資源があるわけではないこの国が高度経済成長を実現できたのは、優秀な人材がいたということの影響も大きかったはずです。

しかし現在の日本は、人や組織の可能性を引き出すという点において非常に厳しい状況にあります。

理由は2点あります。1点目は、労働力人口の減少という量の問題。2点目は、生産性の低さという質の問題です。労働力人口については、現在約7,600万人ですが、2050年には約5,100万人まで減少すると見られています(総務省)。

未曾有の問題である労働力人口減少は、女性・高齢者・外国人の登用などをはからなければ、解決の糸口は見つけられません。女性については出産・育児に際しても働き続けられる仕組みを、高齢者については定年退職年齢の引き上げに伴う活用の場の拡大を、外国人についてはそもそも移民を受け入れるのかどうかという、国民感情も含めた議論になるでしょう。

生産性については、日本はOECD(経済協力開発機構)加盟国34か国の中で下位争いをしています。1位のルクセンブルク、2位のノルウェー、そして3位のアイルランドという顔ぶれに次いでアメリカが4位、日本は21位です。

例えばアメリカは、金融やIT業界が成長を牽引してきたため、製造業で成長してきた日本とは産業構造の違いが大きくあります。しかし、それを除いても生産性が低い。人材の流動性が低いことも一つの要因になっていると思います。

日本という国を「株式会社日本」と見立てた場合、A部門が伸びていてB部門が伸びていないとしたら、通常は、B部門からA部門へ人材を移す措置をとります。しかし、日本の労働市場は流動性が低いため、業界をまたいで人を動かすことが難しいのです。

制度の面から言えば、解雇規制が厳しいことも、成長産業での慢性的な人材不足を引き起こしている理由です。日本は労働組合の力が強いため、解雇規制に対してメスが入れにくいのだと思いますが、ここは着手しなければいけない。政府の働き方改革については注目しています。

-麻野さん自身が特に注目しているテーマは何でしょうか?

私自身は生産性の低さをもたらす様々な要因の中でも、特に「日本のエンゲージメントの低さ」と「テクノロジーの活用」に対して問題意識を持っています。

日本は「働くモチベーション」の低い国

-「日本のモチベーションの低さ」について詳しくお聞かせください。

いわゆるモチベーションの高さを測る「モノサシ」として世界的に使われているものの一つに、エンゲージメントスコアというものがあります。エンゲージメントとは、会社への愛着や仕事への熱意。つまりは、会社との相思相愛状態のことを指します。

ここ20年ほどで活発になってきた考え方で、ES(Employee Satisfaction)とはまた異なった考え方です。ESという指標よりも、エンゲージメントは明確に業績と連動すると言われています。退職率の低下や生産性の向上、顧客満足度や利益率の向上などに、エンゲージメントスコアとの連関が認められているのです。

Towers Watsonが調査した「企業に対して高いエンゲージメントを持っていると答えた従業員の割合」は世界平均40%のところ、日本は何と21%で、先進国の中で最低レベルのスコアです。

日本のエンゲージメントが低い理由は、時代の変化の中で、企業が提供するものと個人の求めるものにズレが生じてきたからだと考えられます。高度経済成長の時代、個人が企業に求めるものは、地位や給与といった金銭報酬でした。会社や仕事に求めることが非常にシンプルだった時代です。

一方で現在の個人は変化をしていて、仕事のやりがいや自己成長・人とのつながりといった意味報酬を企業に求めるようになりました。それにもかかわらず、多くの企業は90年台の成果主義を引きずるような形で旧態依然としたマネジメントを続けています。個人が求めるものに対して企業が提供するものが合致していない現状が、モチベーションクライシスを生んでいるのだと捉えています。

日本企業にもっと「HR Tech」と「CHRO」を

-「テクノロジーの活用」について詳しくお聞かせください。

テクノロジー、特にITの活用については、日本はアメリカから数歩遅れています。アメリカではHRTechが活発で、多くの企業がデータやテクノロジーを駆使して、人や組織のパフォーマンスの最大化に取り組んでいます。

一方で日本では、データやテクノロジーを駆使して本気で組織を変革しようとしている企業は、数えるほどだと思います。個人的には、数歩どころか、日本はHRTechの後進国だと感じています。

また、アメリカ企業の多くは、HRを経営の中心に据え、CHRO(Chief Human Resource Officer/最高人事責任者)というポジションを設けています。かたや、日本企業における人事担当の取締役はまだまだ少なく、日本でCHROというポジションの方にお会いすることも稀です。

私自身、複数のベンチャー企業の社外取締役を務めていますが、いわゆる人材業界から社外取締役が登用されるケースは稀です。社外取締役に招聘される要件が、現在の経営陣に不足している知識や経験を持つ人材なのだとすると、第二次産業が栄えた製造業の時代には当然、商品を作るために設備が大切で、資金が必要になるからこそ、金融機関で活躍する人材の知識と経験が必要でした。

第三次産業が中心となって商品サービスを開発・リリースする現代においては、明らかに人材が差別化の要因になります。

そう考えれば、社外から取締役を招聘するとしても金融機関やベンチャーキャピタル、公認会計士からだけではなく、HR領域からの人材登用がもっと盛んになっても良いはずです。

私は、このままでは日本企業と世界の企業との組織力の差は、大きく開いていくだろうという、強い危機感を持っています。

日本をHR先進国へと導く

-麻野さん自身が今後取り組みたいことを、具体的に教えてください。

私は、長年取り組んでいるモチベーションに強みを持った組織変革コンサルティングのメソッドに、テクノロジーを融合させることで、HRの領域で革命を起こしたいと思っています。

具体的には「モチベーションクラウド」という国内初の組織改善クラウドを展開していくことで、企業で働く人のモチベーション、エンゲージメントを高め、日本全体の生産性を高めていきたいと思っています。

また私自身は、リンクアンドモチベーションの投資事業担当という顔も持っているので、日本が抱える人や組織の問題解決に向けた事業展開を行っているHRTech企業を、より一層積極的に支援していこうと考えています。

ベネフィッツアンドコンペンセーション(給与・労務)、ハイヤリングリクルーティング(採用)、イーラーニング(教育)、パフォーマンスタレント(評価・配置)、ネットワークベイストアプリケーションズ(コミュニケーション)、ニューシステムオブエンゲージメント(エンゲージメント)という6つが、現在のHRTechの主要領域であり、既にこれらの領域において投資を行っている実績もあります。例えば「ネオキャリアのjinjer」や「ビズリーチのHRMOS」「スクーのSchoo」がそうです。

テクノロジーの力を用いて、組織変革コンサルティングを次のステージへと進化させるだけでなく、志を同じくする多くの企業を支援することで、日本のHRをリードしていくこと。それが、私の使命です。

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※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

 

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