マネジメント研修とは?目的や内容、実施ポイントを詳しく解説!

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会社経営において、経営や現場をつなぐ管理職の重要性は増しています。その役割は、「会社側」としてのルール遵守だけではなく、全体を俯瞰し経営の意図を伝える、現場で起きていることを経営に伝えるなど、コミュニケーションを繋ぐ役割を担っており、マネジメントが機能しなければどんなに優秀な経営層やメンバーがいたとしても成果は生まれません。環境変化が激しくなり、現場を起点とした変革が求められるからこそ、管理職の重要性は一層増していると言えます。この記事では、企業成長を支える管理職を研修でどのように育成していくのか、その実践ポイントまで含めて記載します。

マネジメント研修の目的と効果とは?

経営と現場を繋ぎ、組織成果を最大化させる管理職を育成するにはどうすればよいのでしょうか。上位役職者からの、現場の状況に応じたマネジメントのアドバイス(OJT)が欠かせないのは当然ですが、効果的な研修(Off-JT)によってOJTの効果も最大化することができます。

ただ、マネジメントを強化するための研修にも様々な種類があります。現状の課題や目的によってもその効果が異なるため、マネジメントの機能や役割を紐解きながら、マネジメント研修の目的と効果に関して詳しく説明します。

 

管理職・マネジャーとは?

そもそも、管理職の役割は何でしょうか。大きく分けると「管理監督責任」と「成果責任」の2種類の役割に分かれます。

・管理監督責任:経営者から労務管理に関する一定の権限を委ねられ、管理し責任を負う役割
・成果責任:メンバーの成果を最大化し、組織としての成果を創出する役割

前者はハラスメントやコンプライアンス、労働基準法の遵守などの「守り」の部分であり、大手企業では管理者になるタイミングで教育される部分ですが、後者は定義の難しい「攻め」の部分だと言えます。また、後者は知識を持っていればできるという役割ではなく、メンバーとの間で信頼関係を築けているかが最も大事であり、信頼関係がない中での「攻め」はほとんど不可能だと言えます。

 

それでは成果責任を果たすためにはどんな機能が必要なのでしょうか。
リンクアンドモチベーションでは、社会システム論を背景に下記の4つの領域、8つの機能を定義しています。

 

 

管理職を「経営と現場を繋ぎ、判断しながら現場を支援する役割」としており、情報の量を担保する機能(経営情報の現場への提供・現場情報の収集)、情報の質を担保する機能(論理的な判断と共感的な支援)を十分に行えているかが重要です。

ただ、これらの機能は全てあればいいものの、全てを最高の状態で実施し続けることは実質的には不可能です。プレイングマネジャーを担っていることも多い中で、効率的にこれらの機能を果たすことが必要なため、状況に応じて機能を絞ることが必要になっています。ただ、何を絞るべきなのか、その判断が難しいのも正直なところです。経営陣からは短期の成果が求められる一方で、現場を考えると長期的な育成の必要性があるなど、常に葛藤がつきまとうのが管理職という役割だと言えます。

これらの機能を絞り込むための研修トレーニングを行うことが管理職育成においては最も基礎的であり重要です。そのうえで、管理職の4つの機能にそれぞれ合わせた研修トレーニングも必要になると考えますが、まずは前提となる役割を理解した上で、「機能を果たすことで上位役職者やメンバーとの信頼関係を築くこと」こそが成果創出に向けた鍵であることを意識しなければ、いかなるスキルも役に立ちません。

 

今の時代に求められるマネジメントとは?

マネジメントの機能やマネジャーの役割について説明しましたが、時代の変化によって変化が求められています。

前提となるのは、「事業成果を出すための戦略の変更」と「従業員の働く動機の多様化」です。戦略や人のモチベーションが多様化しているからこそ、「今の時代に求められるマネジメント」という画一的なものが存在する訳もなく、事業とメンバーの状況に合わせてマネジメントを変えていく必要があるのです。

 

事業とメンバー、そしてマネジメントを繋げて考える際のフレームとしては社会学者のチェスターバーナードが提唱した「組織成立の三要素」が役に立ちます。集団を「組織」として成立させ、成果を出していくことを考えた際には、マネジメントの役割は、間をつなぐ「コミュニケーションのハブ」(結節点)であると言えます。
そして、その中で環境変化を踏まえたマネジメントの役割は下記のように変化しています。

 

昭和型マネジメントとして「トップダウン」と言われる率先垂範・指示命令が悪とされることがありますが、状況に応じては最適であり、必要な機能であることは間違いありません。一方で、戦略を遂行するだけでは新たな勝ち筋が見えづらい昨今においては、先の「コミュニケーションの4機能」を適切に使い分けながら、メンバーにチャレンジや挑戦を促すことが必要だと考えます。

加えて、コロナ禍の影響もあり、普段のコミュニケーション量が担保しづらい中では4機能の重要性は高まっています。マネジメントのコミュニケーションの前提として、相互の理解を促すような普段の会話や雑談が必要であることは間違いないですが、マネジメントの成果責任を果たす中では、4機能に到達しなければ生産性は高まりません。

 

そのため、管理職に対するトレーニングとして、状況に応じたコミュニケーションスキルを徹底的に強化し、組織におけるコミュニケーションの「結節点」としての役割を果たせるようにすることが最も重要だと言えます。加えて、今の時代に合わせたマネジメントという意味では、メンバーを束ねる「ビジョンマネジメント」や個々人の動機づけを行う「ダイバーシティマネジメント」が重要であると言えます。

マネジメント研修で得られる効果とは?

マネジメント研修によって管理職のマネジメント能力を強化することは、管理職本人の成長のみならず、組織成果の向上に寄与することに繋がります。
組織的な効果としては下記の4つの効果を得られます。

・従業員の定着率の向上
・組織の運動神経の向上
・組織の連携能力の向上(内外で生産性も高まる)
・イノベーションの創出

マネジメント研修の種類と内容とは?

マネジメントの基本的な機能や、今の時代に求められる役割を整理しましたが、今の管理職の状況によっても打つべき改善策(研修)は異なります。
マネジメント研修の種類と内容に関して詳しく説明します。

マネジメント研修のパターンとは?

マネジメント研修は、以下のように「何を目指すのか」によって分類されます。

人の状態は上図のように4つのレベルに分かれますが、最上段の「あり方」に関しては、研修などの節目で習得できるものではなく、繰り返し修練した先に得られるものです。そのため、マネジメント研修で目指している状態は、大きく分けて「知識を持っている(=分かる)状態」「スキルを持っている(=行動できる)状態」「姿勢を持っている(=実践できる)状態」の3種類に整理されます。

 

「知識」習得型のマネジメント研修の内容例

マネジメント研修で最も扱いやすいテーマは「知識」の習得です。
マネジメントの役割で記載した内容のうち、下記のような内容が「知識」習得型の研修の内容例です。

■管理監督責任
→マネジメントの対象(組織・人・仕事)の理解、労働基準法の理解、コンプライアンスの理解、会社経営におけるリスクの理解 など

■成果責任
→人材ポートフォリオの考え方の理解、戦術PDCAのポイント理解、事業戦略フレームの理解、若手メンバーの特性と対応方法の理解、年上部下マネジメントのポイントの理解 など

ただし、「知識」を習得しただけでは、マネジメント能力の発揮や、マネジメントでの組織成果の最大化にはつながりづらいため、「スキル」や「姿勢」の強化が次のレベルでは求められます。

「スキル」習得型のマネジメント研修の内容例

「知識」をもとに「マネジメントの実践」のために必要な考え方やコミュニケーションポイントなどを体系的に理解するのが「スキル」習得型の研修です。基本的に「管理監督責任」は徹底的に知識インプットを行えばクリアできるため、一般的なスキル(業務処理スキルなど)以外は必要になりません。そのため、「スキル」習得型のマネジメント研修においては、「成果責任」を果たすためのスキルがテーマとなります。

網羅的に整理するとすると、4機能によって整理されます。

 

■情報提供
・戦略情報の提供:3Cなどでの環境分析と自部署の事業戦略立案スキル
・役割情報の提供:自社のビジョンと自部署の目標・個々の業務を接続するマネジメント接続スキル
(およびその伝達のための論理的思考力・論理的伝達力)

■情報収集
・役割情報の収集:個々人の特性や希望の把握スキル
・進捗状況の収集:業務情報把握のための仕組み構築スキル
(およびその情報を引き出すための質問力)

■判断行動
・基準提示と人事評価:目標設定ならびに評価振り返りスキル
・意思決定と率先垂範:二者択一の難しい葛藤状況での判断スキル
(およびその判断を納得させるための指導力)

■支援行動
・人材開発と業務支援:個々人に合わせた機会の創出スキル
・支援行動と意欲喚起:現場の意見を支援し、成果を創出させるスキル
(およびその支援に共感させるための多様性受容力)

8つの機能別に区切るといずれも4つの領域ごとに関連するスキルであることが見て取れるかと思います。また、それぞれの機能を最大化させる能力も追記しましたが、コミュニケーション機会が減っている今の働き方の中では、それぞれのスキルよりもそれを伝える・受け取る能力が求められています。

「姿勢」習得型のマネジメント研修の内容例

いずれのスキルも「実践しようと思えば実践できる」状態ではなく、「常に実践できる」状態が重要です。いわゆる保有能力ではなく、発揮能力として実践できている状態が「姿勢」として習得している状況です。

研修としては「アクションラーニング」形式でないと「姿勢」の習得には繋がらないため、「知識」や「スキル」の研修と異なり、一回の研修では終わらず、変化を追いながら習得を目指すのが「姿勢」習得型の研修の特徴です。

また、「姿勢」の習得においては、各現場や組織の構成員によって判断結果は異なるため、360度サーベイや組織サーベイを用いて、繰り返し効果検証と課題設定を行うことが重要です。最近では多くの企業において、「姿勢」習得型のマネジメント研修施策を基軸とし、個別の課題を解決するために「スキル」や「知識」を習得する機会を設けるといった管理職育成プログラムを検討することが多くなってきています。

マネジメント研修を行う上でのポイントとは?

そもそも、研修という機会だけでは人はなかなか変わりづらく、さらに管理職においては経験も実績もあるからこそ、研修を変化の機会にしてもらうことは非常に難しいのが実情です。少しでも多くの研修参加者に変わりたい・変われそう・変わらなければと思ってもらうためにも、研修において「何を伝えるか」だけではなく、「どう伝えるか」まで設計を凝らすことが重要です。

態度変容のプロセスに沿ったマネジメント研修のポイント

管理職を研修で変える際の壁は大きく分けて下記の3点です。
■職場の状況やこれまでの経験が異なるからこそ一律のテーマで全ての課題に対応できない
■管理職自身も管理される役割だからこそ、本人だけが変わることは実質的に難しい
■研修は実業務と別と捉えられることが多く、優先順位が下がってしまう

こういった壁に対応するためには、態度変容のプロセスをもとに、「個別の動機や課題を踏まえる」「他の階層も巻き込む」「目的や意図をしっかり伝える」ことを意識して研修を設計・運用していくことが重要です。

上記の流れを踏まえて、それぞれのマネジメント研修の設計の際の陥りがちなポイントと対応策を以下に細かく記載します。

【目的設定のポイント】
伝えやすいメッセージを伝えるのではなく、経営からのメッセージとして伝える

管理職の方々に対する課題は、経営や現場、人事から多く聞かれます。一方で研修という手段に至りづらいのも事実です。
その理由として最も多いのは、管理職研修の設計が人事の担当(対象より低い役職)で検討されることが多く、現場から感情的な反発を招きやすいということです。
その結果として伝えやすいメッセージや研修内容となってしまい、本質的な変革に至らないことが多く見られます。

管理職の方々は日々現場を支えているだけではなく、会社の方針や戦略を現場で実践させるための大事な機能を担っているからこそ、変化を求める際には理由と到達すべきゴールを明示することが重要です。言い換えると、戦略から逆算すると管理職が研修で変わることが経営として必要であることを伝えた上で、現状と変化後の差分を明確にすることが重要となります。

【対象選定のポイント】
研修対象者だけに変化を求めるのではなく、他の階層を巻き込んで変化を求める

マネジメントの変化は、上下の階層の変化なくしては実現しません。「研修で変化が生まれない」という時に起きがちな状況も「現場に戻ったら元に戻らざるをえないから」というものが多いですが、管理職のマネジメントにおいては、周囲との関係性による影響が大きいため、上下の階層にも変化を求めることが重要になります。
少なくとも、上位役職者には「変化を妨げない約束」をしてもらい、職場には「変化を受け入れる姿勢」を示してもらわなければ、マネジメントを変えていくことは非常に難しいと言えます。

ただ、最初から全ての管理職を変えることも難しいため、選抜的に対象を絞ることや新任管理職ではなく中堅管理職を変化の起点にするなどして、「確実に変える・変わる」ための環境づくりが非常に重要だと言えます。

【内容決定のポイント】
マネジメントのスキルだけを強化するのではなく、動機づけや姿勢の強化を盛り込む

過去、研修とは「なかなか手に入らない情報を入手する機会」でしたが、今では、マネジメントに限らず、知識やスキル、考え方までまとまった良書が溢れています。つまりは、情報は入手しようと思えばいくらでも手に入る状況に置かれています。その中で知識やスキルの不足が生じているとすれば、研修で強引に学ばせようとしても、効果は期待できません。言い換えると今の時代の研修とは「必要性に気づく機会」として動機づけの効果が最も求められています。

現場で日々忙しいからこそ、学習の機会として研修を提供することは重要ですが、その要素の中に動機づけや姿勢の強化を盛り込み、適切な危機感を感じながら実践度合いを高められるような内容を選ぶことが重要です。

【方法選択のポイント】
マネジメントの強化や習得だけに光を当てるのではなく、変化が分かる仕組みを盛り込む

普段忙しく、定期的な棚卸しの機会が設けづらいマネジメントのトレーニングにおいては、やりっぱなしにしないための効果検証を求められることが多くなっています。研修参加者の効力感を醸成し、変化を持続させるためにも、変化が分かる仕組みをつくり、定期的に振り返る機会を設けることが重要です。

ただ、振り返りの機会は、研修という手段だけではなく、上司との面談、研修参加者同士での情報共有など、様々な仕組みで実践することが可能です。だからこそ、現場の状況に合わせ、他の人事施策と関連させることが重要です。研修を設計する際には、研修自体だけではなく、その後の仕組み作りも合わせて検討することが重要です。

おわりに

これまでマネジメント研修は、「新任管理職」に「一律」で行われることが多くありました。

ただ、変化を確実に、より大きくもたらすために、「中堅管理職」に「選抜」で行うことも増えてきています。管理職は会社経営における鍵となる方々だからこそ、マネジメント研修の強化が今後も一層注力されるでしょう。貴社のマネジメント研修も今一度考え直し、進化させ続けることが重要ではないでしょうか。