
マネジメントとは?定義や役割・今後必要なスキルを解説
目次[非表示]
皆さんは「マネジメント」と聞いて、どんなことを思い浮かべるでしょうか?
どんな組織においても必要なスキルであることは間違いない一方で、その言葉の定義やそのスキルを向上させるために必要なポイントなどは、理解されていないことの方が多いかもしれません。
そこで、今回はマネジメントの歴史や定義とその目的やスキル向上の具体策についてお伝えします。
▼ 組織の力はマネージャーで決まる!【マネジメント】に不可欠なポイントを独自の視点で解説!資料はこちら
マネジメントとは何か
■「マネジメント」の定義の歴史
マネジメントは、英単語を直訳すると「管理」や「経営」という意味を持ちます。現在では、経営、組織の管理や運営を示す言葉としてより広義に使用されています。
具体的には、組織の成果を上げるためにヒト・モノ・カネなどの経営資源を効率的、効果的に活用し、リスク管理も行いながら、あらかじめ設定した組織の目標やミッション達成を目指すことをいいます。
マネジメントという言葉の定義は様々ありますが、一般的に広く認識されている定義は、著名な経営学者として知られるP.F.ドラッカー(1909~2005、アメリカ)が刊行した「マネジメント」から生まれたとされています。
ドラッカーは起業コンサルタントや経済学者として活躍後、経営や経済に関する著作を数多く発表してきました。
「もしドラ」と聞けばピンと来る方も多いと思いますが、2009年に刊行された『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの”マネジメント”を読んだら』では、ドラッカーの「マネジメント」の内容が、初心者でも理解しやすくまとめられていることから人気を博し、現在でも影響を与え続けています。
■ドラッカーによるマネジメントの定義
ドラッカーは著書の中で、「マネジメント」および「マネージャー」について、以下のように定義しています。
- マネジメント:組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関
- マネージャー:組織の成果に責任を持つ者
組織に成果を上げさせるための仕組みやツールをマネジメント、組織が成果を上げるように働きかけ、責任を持つ人をマネージャーと定義しています。
成果の責任者であるマネージャーには、組織の目標達成に向けたマネジメント力が求められるのです。
企業組織において肝となるマネジメントについて、ここからはその役割や仕事内容など基本的な説明から、よくある課題やその解決手法などマネジメントの秘訣まで詳しくご説明します。
■マネジメントの必要性
今、VUCAの時代と言われるように「いつ何が起きても不思議ではない」「何が正しいのか分からない」という不透明な時代を迎えています。このような時代において、マネジメントが弱い組織は次々に待ち受ける困難を乗り越えていくことはできないでしょう。
特に、日本の場合は少子高齢化による人手不足が深刻化していることもあるため、効率的な組織運営ができないと厳しいビジネス環境で生き残っていくことはできません。
企業が目標・ビジョンを達成するためにはマネジメントが不可欠ですし、従業員の能力を引き上げ、適材適所の人材活用によって成果を最大化できるかどうかもマネジメントにかかっています。マネジメントは、これからの企業の持続的な発展に欠かせないものだと言えるでしょう。
マネージャー(管理職)とは
ドラッカーは、マネージャーを「組織の成果に責任を持つ者」と定義しており、マネジメントに求められる役割について、以下のような考え方を提示しています。
1.組織が果たすべきミッションを達成する
組織がそれぞれ特有の果たすべきミッションを把握し、それを達成する必要があること
2.組織で働く人たちを活かす
組織はそこで働く人たちに自己実現できる場を与えて活かし、働く人たちはその中で自己実現をしていくこと
3.社会に貢献する
組織の果たすべきミッションを達成することは、最終的に社会へ貢献していなければならないということ。さらに、マネジメントには長期・短期の「時間軸での視点」で動くことも重要であること。
このように、組織としてのミッションを果たすべく、部下の動機付けやコミュニケーションをはかりながら、その部下たちを評価し、それを基に人材育成するという使命を持った役職です。
■マネージャーとリーダーの違い
「マネジメントの生みの親」と言われるドラッカーは、マネージャーを「組織の成果に責任を持つ者」と定義しています。マネージャーの役割は、目標を達成できる組織づくりをして、目標達成に向けてメンバーを率いていくことです。一方、リーダーの役割は強力なリーダーシップを発揮して、組織が目指すべき方向性や具体的な目標を示すことです。
分かりやすく言えば、経営方針や目標・ビジョンを示すのがリーダーであり、リーダーの意思に沿って目標達成までの道筋を示すのがマネージャーだと言えます。マネージャーはリーダーが示した方針や方向性を理解したうえで、「どのように目標を達成するのか?」を考え、目標達成に向かって組織を管理・運営していきます。
■マネジメントとリーダーシップの違い
マネジメントと同義で捉えらえやすい言葉に「リーダーシップ」がありますが、明確な違いがあります。
リーダーシップ:具体的な「方向性を示す」ことが目的
マネジメント:「設定した目標に沿って組織を運営する」ため手段を示すことが目的
たとえば「どんな事業やサービスをつくりたいか」を示すのがリーダーシップで、「その具体の事業やサービスの内容を考え、実行する」のがマネジメントです。
▼リーダーシップに関する記事はこちら
リーダーシップとは?今の時代に求められるスタイルは?
▼リーダーシップの種類に関する記事はこちら
リーダーシップの種類について教えてください。
マネジメントに求められる役割
ドラッカーの定義をもとに、現在では「マネジメント」の役割は以下のように認識されています。
1.自らの組織に特有の使命を果たす
まずは、その組織の本業に向きあい、世間から求められている役割を果たすべきという事です。
当然の事かもしれませんが、実際には本業から逸れて様々な業種に手を出してしまい本業が何なのか分かりにくくなるケースもあります。
2.仕事を通じて働く人たちを生かす
次に、組織の有する人材における役割です。人は、働く上で何らかの組織に属し、その人生のほとんどを「組織」において過ごします。
そのため、企業側は組織で働く人材に対して、仕事を通じて「自己実現」できるような、組織づくりをする事が大切です。
これは、仕事を提供したり働きやすい環境を整える、のみならず、社員の特性を見極め、その特性にあった責任感ややりがいのある仕事を提供し、その成果に対しフィードバックしたり、継続学習の機会を与えるというものです。
3.社会の問題について貢献する
最後は、社会貢献。ドラッカーの考え方によれば、会社は経営者や株主のものではなく「社会のためにある」ものです。会社は、社会から人材や資源を預かって運営しているものなので、その社会から求められるものを提供する役割があるという考え方です。
これは、一般的に言われる社会貢献活動とは異なります。元は利益追求のために始めたサービスであっても、結果的にそれが社会から求められているものであれば「社会貢献」できているという事になるのです。
上記を記載することは容易ですが、実際に行うことは非常に難しいのがマネジメントです。これらはメンバーとの間で信頼関係を築けているかが最も大事であり、信頼関係がない中では、上記を果たすことはほとんど不可能だと言えます。
マネジメントで行う仕事の具体的内容
それでは上記の責任を果たすために、具体的にはどんな事が必要となるのでしょうか。
リンクアンドモチベーションでは、社会システム論を背景に下記の4つの領域、8つの機能を定義しています。
①情報提供
- 戦略情報の提供:業界動向や顧客ニーズという社外情報と、自社の戦略やその具体策の提示が必要となります。
- 役割情報の提供:自部署における使命や目標、部署内の役割責任を明示する必要があります。
②情報収集
- 役割情報の収集:職場内や関連部署との連携状況や部下の強み・弱みの把握、上位役職者からの要望把握なども含みます
- 進捗状況の収集:顧客評価や業務の進捗度、トラブル状況や部下の成果について収集する必要があります。
③判断行動
- 基準提示と人事評価:行動指針や考え方を提示したり、評価基準を明確にして即時でのフィードバックも必要です。
- 意思決定と率先垂範:率先垂範の行動を見せるほかに、対立時の葛藤解消や必要に応じた役割変更なども時には必要です。
④支援行動
- 人材開発と業務支援:業務ノウハウの伝授や部下への学習機会、挑戦機会の提供が求められます。
- 動機形成と意欲喚起:業務の背景や意義を提示したり、個人成果の賞賛なども必要です。
マネジメントに必要なスキル
ここまで具体的な仕事内容について触れてきましたが、マネジメントを実行するために必要なスキルとはどんなものがあるのでしょうか?
ドラッカーはそのマネジメントに必要なスキルとして、次の4つを提示しています。
①意思決定のスキル
②コミュニケーションのスキル
③管理のスキル
④分析のスキル
ひとつひとつ見ていきましょう。
①意思決定のスキル
先の具体的な仕事内容でも触れた通り、マネージャーは仕事をする上で、何かを判断しなければならない場面は多々訪れます。
その際、マネジメントにおける「意思決定」を行う場合は、必ずしも全会一致が良いとは限りません。
より良い決断には、異なる意見が出てその見解が対立したり、さまざまな案が挙げられたりする中で選び抜いた意思決定が求められます。
多様な意見や見解、複数の選択肢が出てこないときは、意思決定自体を見送る決断も必要です。またマネージャーには、組織の目標に沿った明確なビジョンが求められます。
判断がブレれば部下に不信感を与え、組織を統率する力も弱まってしまうことでしょう。
②コミュニケーションスキル
複数人が働く組織で仕事をするため、意思の疎通は不可欠。同じ目標に向かって仕事を進めるには、チーム内の認識をひとつにして束ねる必要があり、その際に必要なのがコミュニケーションスキルです。
マネージャーは組織全体の目標を掲げ、そこに向かうための方法を示し、受け手である部下に自分の考えを理解してもらわなければなりません。
また、コミュニケーションは一方的なものではなく双方向に形成されるもの。相手の意見を傾聴し、相手の考えを理解・受容した上で、情報を伝えるといったように、相互理解を進めることが重要なのです。そのためには、マネージャー自身がメンバーの「状況に応じた関わり方」を意識的に実践することが重要です。マネージャー自身の「状況に応じた関わり方」の1つに「シチュエーショナルリーダーシップ」という観点がございます。(詳しくはコチラ)
③管理のスキル
仕事で成果を上げるために必要とされる管理のスキルには、以下の3つが挙げられます。
- 目標の達成に向けて、組織を適切に機能させること
- 生産性を高めるために、適切な事柄を適切に実施すること
- 仕事の基準を高め、組織が成す仕事の精度を上げていくこと
これらを実現するためには「評価測定」が重要です。
一人ひとりに適切な役割・仕事を割り当て、それぞれが得意な分野で力を発揮することで成果は上がります。定期的に評価・フィードバックして仕事に活用することが求められます。
④分析のスキル
この世界には単体だけで存在しているものは何ひとつありません。組織の未来を創造していくには、経験値や勘に頼って対応するのではなく、客観的な視点から検証し、アクションを起こしていかなければなりません。
そこで重要になるのが分析のスキルです。組織の目標を達成し、成果を上げるには4大経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報、これまで蓄積されてきた知恵や知識、技術などの資産や資源、リスクの分析および管理などが必要です。
マネジメントの種類
また、マネジメントは役割によって、以下の3つに分けられ、その階層毎に求められることも異なります。
①トップマネジメント(最高経営者層)
トップマネジメントとは組織の最高経営者陣のことで、該当するのは、会長、社長、副社長、常務、専務など取締役会のメンバーや、組織の各部門を取り仕切る執行役員などを指します。
トップマネジメントには、組織の基本的な方針を決定し経営計画を立てたり、組織の運営方針を決めるなど、経営に関する総合的な意思決定と同時に、最終的な責任を担う役割があります。強力なリーダーシップが求められる層です。
②ミドルマネジメント(中間管理者層)
ミドルマネジメントとは、部門的経営管理を担うトップマネジメントと現場の作業管理者であるローアーマネジメントの中間に位置する存在で、該当するのは、支店長、工場長、本部長、部長、課長、係長、マネージャーなどの管理職です。
中間管理者には、トップマネジメントをサポートし、戦略的判断、指示・命令、組織の運営方針などを下層部へ正しく伝えることが求められます。
またローアーマネジメント層を指揮監督し、ボトムの意見を吸い上げる役割も担います。中間管理者は経営陣と現場の社員をつなぐ結節点であり、意思疎通が必要な組織運営において欠かせないポジションなので、組織が大きくなるほど重視されます。
③ローアーマネジメント(監督者層)
ローアーマネジメントとは、3つの中で最下層に位置する存在で、該当するのは係長や主任、現場リーダー、チーフなどがそれに当たります。下級管理者層や監督者層とも呼ばれます。
ローアーマネジメントは、直接末端の業務遂行を指揮・統制し、組織戦略や施策を現場の活動へ反映させながら、上層部が描いたビジョンの実現を目指す役割を担います。
【参考資料のご紹介】
組織の肝である【ミドルマネジメント】の育成にどのように取り組むべきか?事例でご紹介!
業務別に見るマネジメントの種類
マネージャーの業務は幅広く、様々な種類のマネジメントをおこなう必要があります。業務内容に応じてマネジメントを細分化すると、「組織運営マネジメント」や「人材マネジメント」、近年重要度が高まっている「メンタルヘルスマネジメント」などに分けることができます。
■組織運営マネジメント
組織運営マネジメントには、「目標マネジメント(目標管理)」や「ナレッジマネジメント」などの手法があります。
目標が不明瞭だったり的確でなかったりすると、組織はどこに向かって進むべきか分からなくなり、間違った方向に進んでしまうことがあります。しかし、目標マネジメントに力を入れることでこのようなリスクは低減できます。明確かつ的確な目標を設定することで行動計画や中間目標を立てやすくなり、達成の可能性も高まるでしょう。
ナレッジマネジメントは、各メンバーが持っている知識や経験、スキルやノウハウを組織内で共有し、組織全体のスキル向上やパフォーマンスアップを促すマネジメントです。ナレッジマネジメントを取り入れることで業務効率化だけでなく、イノベーションを促すことも期待できます。
ナレッジマネジメントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
ナレッジマネジメントとは?重要性や導入手順は?企業事例も紹介
■人材マネジメント
人材マネジメントには、「タレントマネジメント」や「モチベーションマネジメント」などの手法があります。
タレントマネジメントとは、メンバーの特性やスキルに合わせた人材配置や育成をおこなうことです。マネージャーが各メンバーの志向性や強み、得意分野を把握していれば、適材適所の人員配置が可能になり、組織全体の生産性向上につながります。
モチベーションマネジメントとは、メンバーの意欲を引き出し、モチベーションを維持・向上させるマネジメントです。モチベーションが上がったメンバーは主体的に仕事に取り組むようになるため、作業効率や生産性の向上につながるほか、離職率の低減も期待できます。
モチベーションについては、以下の記事で詳しく解説しています。
モチベーションとは何か?上がらない要因や挙げる方法をわかりやすく解説!
■メンタルヘルスマネジメント
メンタルヘルスマネジメントとは、心の健康管理のことです。
メンバーがストレスや不安を抱え、精神状態が良くないまま働いていると、仕事のパフォーマンスが低下したり職場の人間関係が悪化したりすることがあります。さらにはメンタル不調から健康を損ない、離職・休職を余儀なくされるケースもあります。このようなリスクを未然に防ぐためには、メンタルヘルスマネジメントが非常に重要です。メンタルヘルスマネジメントは精神医学の専門知識が求められることも多いため、外部のカウンセラーや医師に協力を仰ぐ企業も少なくありません。
ストレスマネジメントもメンタルマネジメントの一種です。職場内のストレス要因を取り除き、従業員の心の健康維持を図ります。近年、取り入れる企業が増えているストレスチェックもストレスマネジメントの一環です。
ストレスチェックについては、以下の記事で詳しく解説しています。
ストレスチェックに意味はない?原因と改善方法を紹介!
マネジメント能力を向上させる方法は?
マネジメント能力を向上させるためには、「アセスメントスキル」「アカウンタビリティスキル」「コーチングスキル」の3つのスキルを伸ばすのが効果的だと言われます。
■アセスメントスキルを伸ばす
アセスメントスキルとは、メンバーの能力(ポテンシャル)、強みや弱み、行動傾向などを把握したうえで、「どうすればより成長できるのか?」という育成ポイントを把握するスキルのことです。
普段からメンバーと対話を重ねていれば、行動傾向を見極められ、最適な育成方針が見えてくるはずです。定期的な1on1などでメンバーの理解に努めることがアセスメントスキル向上の第一歩になるでしょう。
■アカウンタビリティスキルを伸ばす
アカウンタビリティスキルとは、メンバーに対して分かりやすいアドバイスや指示をおこなうスキルのことです。自分ではきちんと説明・指示しているつもりでも、実際は正しく伝わっていないというケースが少なくありません。
「伝わっているはずだ」と思い込まず、メンバーの反応を確認しながら理解度に合わせて説明する姿勢が大切です。また、論理性を意識して文章や言葉を見直すこともアカウンタビリティスキルの向上につながります。
■コーチングスキルを伸ばす
コーチングスキルとは、メンバーの能力を引き出し、それを最大限に発揮できるように導くスキルのことです。コーチングで重要なのはメンバーの自発性を促すことです。行動を強制するのではなく対話を重ねることでメンバーがポテンシャルを発揮できる状態に導き、自己成長を促していきます。
コーチングスキルを高めるには、メンバーの話を傾聴することや、メンバーの良いところを認め、それを言葉にして伝えることが大切です。
コーチングについては、以下の記事で詳しく解説しています。
コーチングとは?仕事における意味や効果的なやり方などを解説
マネジメントをしている中でよくある課題とは?
マネジメントの重要性やその役割は認識していても、実際にはさまざまな課題を抱えているマネジャーも少なくはないでしょう。ここからは、マネジメントで抱えがちな課題を3つご紹介します。
■課題①経営層と現場のベクトルが合っていない
現場では目の前の目標を達成しており、特に課題意識がない一方、経営層が中長期的に描いているビジョンにはマッチしていないケースもあります。現場に任せすぎたことでいつの間にか経営層が求めるビジョンとのズレが生じていることが考えられます。
会社として定めた方針やビジョンから各現場がズレ始めると、他の部署との間で矛盾や揉め事が生じるなど、組織としてもさまざまな問題が生じます。その結果、会社としての生産性の低下のみならず、人間関係などのモチベーションにも大きな影響を及ぼしてしまいます。
組織や個人の成長のためには、近視眼的に自分の組織のことだけを考えるのではなく、「会社が掲げる中長期的なビジョンや目指す姿を、現場メンバーの個人目標に落とし込み、組織目標の達成につなげる」というマネジメントの役割を再認識する必要があります。
■課題②課題は把握できているが、具体的な改善策が分からない
課題や問題点は把握していても、それを解決するために具体的にどのような行動をとればよいのかわからない。または、解決すべき問題が多すぎて、何から手をつければよいのかわからない。このようなケースは多い事と思います。
その要因の一つとして、時代の変化とともにマネジャーに求められる役割が多様化していることが挙げられます。
働き方改革やダイバーシティ経営などの推進などにより、多様な人材やさまざまなワークスタイル、それぞれに合う柔軟なマネジメントが求められるようになり、課題もその解決方法も複雑化している事が考えられます。
■課題③課題解決のためのアクションプランが実行されない
課題解決に向けて実行すべきアクションプランを策定したものの、実行できていないケースも少なくありません。例えば、通常業務に追われていてアクションプランを実行する余裕がない場合や、人手が不足していて手が回らないなど、さまざまな理由が考えられます。
実際に、多くの企業で「人手不足」が深刻化しており、これはマネジメントも例外ではありません。
リクルートワークス研究所「マネジメント行動に関する調査(2019年)」によると、従業員100名以上の企業に勤務し、一次考課対象の部下がいる課長相当の管理職を対象にしたアンケートでは、約9割のマネジャーは、何らかのプレイング業務に割いているプレイングマネジャーであることがわかりました。
※出典:Works Report プレイング マネジャーの 時代
マネジメントにおける課題の解決方法とは?
上記で紹介したマネジメント課題を解決するために、具体的にどのような方法があるのでしょうか。
それは、組織課題の特定を行う「診断」と組織課題の解決を行う「変革」の2つのフェーズを適切に行い、診断→変革・変革→診断と連続させていくことが非常に重要です。
■問題の相対化を行う
経営層が求める方針と現場の動きが合っていない場合には、「近視眼的」に自組織のことを見ているだけでは気づくことができません。
そのため「診断」フェーズにて、問題を相対化し、優先順位を決めることが重要になります。
その際、「満足度」だけを把握すると、多くのことが問題として取り上げられがちです。
取り上げられた問題を「重要度」や「緊急度」といった判断軸で相対化することで、今取り組むべき問題を絞り込むことが可能になります。
ただし、組織の中の立場が変わると、問題の捉え方も変わるため、全員が合意できる優先順位を決めることは容易ではありません。
「組織課題の解決」をゴールとするならば「現場の期待度」を。事業成果を優先するならば「事業からみた重要度」を。「会社の目指す姿」を優先するならば「会社からみた重要度」もとに相対化していくことが重要になります。
また、相対化する際には自部署だけではなく、他部署の状況との相対化も判断の参考材料となります。
■SMARTの観点で考えてみる
上記の通り、問題を特定するプロセスで打ち手は一定決まるので、診断と変革を切り離すことはできませんが、特定した問題(=課題)に対して、どのような打ち手を打つかが次の論点になります。
具体的な改善策が分からない場合は、「目標設定のSMARTの観点(※)」で観察できるレベルのものが望ましいです。
具体的には、「解決に向けた行動が取れるものか」(自分たちでコントロールできる変数か)や「行動が定量化でき、行動修正できるものか」という問いに答えられれば良い目標、改善策と言えます。
重要なポイントは、変革施策を決定することに時間を掛けすぎないことです。変革施策には答えはないため、施策の決定は難しいものです。
ただ、変革の効果は、「施策の決定に掛けた時間」ではなく「施策を実施した後の行動修正の回数」に強く影響を受けるため、まず行動を起こすことが重要になります。
※目標設定のSMARTの観点:目標を設定した際にチェックすべき5つの観点のことを指します。
具体的にはSpecific(具体的で)、Measurable(測定可能で)、Achievable(達成可能で)、Related(経営目標に関連しており)、Time-bound(時間制約がある)という観点です。
■役割、期限の明確化と、進捗確認の機会を設定する
課題解決のためのアクションプランが実行されない、という課題に対しては、役割と期限の設計、またその進捗状況を把握する会議体や帳票整備などが重要です。
課題解決においては、誰が、いつまでに、何を行うのかを決め、その後「実際に効果が見られたか」という効果検証を行うことが重要になります。
組織課題は、個人個人の状態や認識によっても変わるため、変化することが多く、解決策にも万能な答えはありません。だからこそ、行動を起した上で効果を測定し、解決策を修正するか、継続するかの判断をしていくことが重要になります。
また、解決のアクションにおいても効果が測定できなければ、ただ苦しいだけの筋力トレーニングと同じで継続できなくなります。
経過を観察し、一定の改善が見られたら、次の問題を洗い出す「診断」のフェーズに戻り、診断と変革を繰り返すことが重要です。
▼エンゲージメント向上施策集-多くの管理職が実践している施策とは?
マネジメントに今後求められるものとは?
「マネジメント」について様々ご紹介してきましたが、最後に、これからの時代に求められることを3点ご紹介します。
■部下のキャリアや目指す姿を見据えて、必要な指導・育成を行う
部下の指導や育成は、マネジメント業務の大切な項目の一つですが、従来のトップダウン指導だけでなく、今後は会社や自組織の目標を目指すなかで、部下のキャリアや将来も見据えた指導や育成が求められます。
部下の育成においては、自律的に物事を考えられるよう、見守りやサポートをする姿勢がとても重要となります。
■外部環境の変化を踏まえた、新事業や仕組みを自ら企画立案する
これからも経営を取り巻く様々な外部環境はどんどん変化し、従来の目標設定や仕事をしていては、会社の生き残りが厳しくなります。
今後は、常に変化をキャッチアップし、世の中の動きを踏まえた新しい事業や仕組みを自ら企画立案することが求められます。
■多様化する働き方へ対応する
これから労働人口が減っていく中で、出産や介護などで労働の場にとどまっていられなかった層や元気な高齢者に対しても、柔軟に働けるような環境を用意することは急務となっています。
このように多様な働き方が広がっていくことは、マネジメントを多面的に広げていく必要があることを示しているでしょう。
記事まとめ
いかがでしたでしょうか。「マネジメント」と一言で言っても、その定義や役割・必要なスキルは多岐に渡り、容易ではないことがお分かりいただけたでしょうか。
また今後のマネジメントは、市場のグローバル化やコロナ禍における多様な働き方等も鑑みて、個人のキャリアも意識した対応が求められていきます。
マネジメントの軸となるこれらの目的と役割、必要となるスキルを理解した上で、時代の流れに沿った要素を加えていくことが大切かもしれません。
【出典】P.F.ドラッカー「明日を支配するもの 21世紀のマネジメント革命」(1999年、ダイヤモンド社)
【出典】P.F.ドラッカー「マネジメント【エッセンシャル版】基本と原則」(2001年、ダイヤモンド社)
マネジメントに関するよくある質問
Q:マネジメントに向いている人の特徴は?
マネジメントに向いている人の特徴は様々ありますが、常に冷静でいられる人は資質があると言えます。どのような状況でも冷静でいることは、正しい判断につながります。意思決定が求められることが多いマネージャーとして重要な態度だと言えるでしょう。
また、洞察力に優れている人もマネジメントに向いています。洞察力がある人は部下の悩みや周囲の変化を敏感に感じ取ることができるので、高いレベルで組織を運営することができます。また、物事の本質を捉えるのが得意なので、根本的な組織改善や問題解決が期待できます。
Q:マネジメントに向いていない人の特徴は?
マネジメントに向いていないのは、優柔不断で自分の判断に自信を持てない人です。優柔不断な人がマネジメントのポジションに就いていると、機会損失を招いたり問題を大きくしたりしがちです。また、優柔不断な人は一貫性に欠けることが多いため、周囲からの信頼を得られません。感情の起伏が激しい人も同様です。そのときの気分によって言っていることが変わる人に、正しい意思決定は期待できないでしょう。
また、伝える力がない人もマネジメントには適しません。意図や背景を踏まえて伝えないとメンバーが理解できないことも多々あります。最低限の指示をしただけで伝えた気になっている人は、認識違いなどからトラブルを招くことも少なくありません。