ブレイクスルーとは?イノベーションとの違いやブレイクスルー思考について解説
ビジネスシーンでは何か困難な状況や立ち塞がる壁を突破した際に、「ブレイクスルーした」という言葉をしばしば使います。昨今の市場では既存のヒット商品・サービスには、すぐに模倣品や代替品が生まれることで商品・サービスを拡販しづらくなることもあります。そのため、ブレイクスルーを起こす仕掛けや体制を整えることで、その中でも自社の商品・サービスやブランドをより認知してもらうことは事業上大きな課題になっています。本記事ではブレイクスルーの種類やブレイクスルー思考についてご紹介します。
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ブレイクスルーとは?
「ブレイクスルー(breakthrough)」は、「破壊」「打破」「打開」を意味する「ブレイク(break)」と、「通り抜ける」「通過する」を意味する「スルー(through)」を組み合わせた言葉であり、「現状の課題や困難、障害を突破する」「突破口」という意味で使われています。
ブレイクスルーは、元々はスポーツや科学の世界でもよく使われる言葉でしたが、近年はビジネスシーンでもよく使われるようになっています。
イノベーションとの違い
ブレイクスルーの類語として「イノベーション(innovation)」が挙げられます。英単語では「革新」「刷新」という意味を持ち、「既存の考えや現在の状況に対して、新しい捉え方や技術などで大きな変化を生み出す」ということとして用いられています。イノベーションが必要とされる状況では困難や課題がある場合が多いですが、イノベーション自体には「困難を打破する」という意味は強くは含まれていません。
ブレイクスルーに対しては、
・ブレイクスルー:困難や課題の打破が目的
・イノベーション:新しいものを生み出すことが目的
という部分で違いがあるでしょう。
ブレイクスルーを用いた例文
「ブレイクスルー」を用いた例文としては、下記のようなものが挙げられます。
・「現状の経営課題を解決するためには、全員の力でブレイクスルーを起こすことが重要だ」
・「開発者たちは業界発展において重要なブレイクスルーを開発した」
・「ブレイクスルーを起こすためにはまだ仮説と検証が必要だ」
・「ブレイクスルーのためには、何か材料や情報が足りない」
ブレイクスルーした事例
事例①:コクヨ株式会社
起こしたブレイクスルー:模倣品に対する共存対応
大手文具メーカーであるコクヨ株式会社は、更なるシェア拡大に向けて中国市場にも進出していました。しかし、反日感情の高まりによる「日本製品不買運動」が広まってしまい、売り上げに影響が出る危機に陥るのに加えて、コクヨ商品の模倣品が中国国内でシェアを広げていました。
ここでコクヨ株式会社は「模倣品メーカーと戦う」のではなく、「模倣品メーカーの事業譲渡を受けて、その生産を担う」という手段を選びました。その結果、中国国内の生産設備や販路を手に入れ、売上を伸ばすことに成功しました。
事例②:ベネトンジャパン株式会社
起こしたブレイクスルー:ビジネスプロセスの改革
アパレルメーカーであるベネトンジャパン株式会社は、「流行の予測をして、生地を大量に染める」という生産方法を採用していました。しかし、流行の移り変わりが激しい中ではその変化に対応しづらく、機会の損失にも繋がっていました。
その状況を打破すべく、同社はビジネスプロセスを見直して「無地の生地を大量に生産し、後から染める」というプロセスに改変しました。その結果、流行の変化にも柔軟に対応できるようになり、成長を遂げています。
ブレイクスルーの種類
タイプ0のブレイクスルー
タイプ0のブレイクスルーは、「ブレイクスルーの前段階」とも言える種類です。タイプ0のブレイクスルーでは、「既存の商品・サービスや技術の改善」が該当します。タイプ0のブレイクスルーは確かに自社の商品・サービスの質を向上することはできますが、ブレイクスルーのように、
・大きな課題を解決する
・新しい事業をつくる
・市場でのシェアを大きく広げる
という大きな変化には繋がらないため、「タイプ0」という分類がされています。
タイプ1のブレイクスルー
タイプ1のブレイクスルーは、「既存の商品・サービスを支えている技術の研究」によるブレイクスルーのことを指しています。タイプ1のブレイクスルーは技術自体を研究し、その可能性や新たな機能を追求する方法であり、「青色LED」がよく例として挙げられます。
青色LEDは元々は実現が不可能であるという論調がありましたが、
・実験の繰り返しと結果の詳細な観察
・観察した結果への仮説立てや構造の理解
・効果の再現性を実現する方法をつくる
などの取り組みを経て実現させることに成功しました。研究・開発には多くの費用や時間がかかる場合が多いですが、革新的な市場やニーズの創出に繋がります。
タイプ2のブレイクスルー
タイプ2のブレイクスルーは、「既存の商品・サービスの価値を再定義すること」によるブレイクスルーです。タイプ1のブレイクスルーが「根本的な技術を研究する」のに対して、タイプ2のブレイクスルーは、
・商品・サービスによる顧客の感じる体験設計を見直す
・既存の市場に加えて、新しい市場に進出する
・顧客が価格対効果を感じやすい機能に特化させる
のような方法をとります。タイプ2のブレイクスルーと比較して、費用や時間を抑えられるというメリットがあります。
タイプ3のブレイクスルー
タイプ3のブレイクスルーは、タイプ1のブレイクスルーとタイプ2のブレイクスルーを組み合わせるものです。
・タイプ1:既存の技術を研究して、商品・サービス自体の可能性を広げる
・タイプ2:既存の商品・サービスの価値定義を変える
これらのそれぞれを並行して行うことになるため、複雑性が増す懸念はあります。しかし、研究過程で見つかる新技術と再定義で見つけた価値の双方を活かし合うことができれば、より影響が大きいブレイクスルーに繋がることが期待できます。
ブレイクスルー思考について
「ブレイクスルー思考」とは、南カリフォルニア大学の名誉教授であるジェラルド・ナドラーの提唱した「ワークデザイン(Work Design)」という概念を前身として、中京大学名誉教授である日比野省三らと提唱した思考方法です。
一般的な問題解決の思考法は、「現状の把握」→「起こっていることの原因分析」→「対策の検討・実施」という流れになっていることが多く、「現状の改善」をゴールとしています。それに対して、ブレイクスルー思考は「そもそもの企業の目的」や「それを実現するためのシステムや方法の実現」から思考を始めるため、より現状の課題や困難の打破に繋がる思考法だと言われています。
非凡ブレイクスルー思考とは
「非凡ブレイクスルー思考」とは、ブレイクスルー思考を構成している「3つの基礎原理」と「4つのフェーズ」のことを指しており、下記の内容が含まれています。
■基礎原理
・目的情報
・ユニーク
・システム
■フェーズ
・人間
・目的
・未来解
・生解
それぞれの内容についてご紹介していきます。
ブレイクスルー思考の基礎原理
目的情報
「目的情報」とは、目的の達成のために必要な情報のことを指しています。何かを検討・議論する際にはできる限り多くの情報を集める場合もありますが、ブレイクスルー思考では、「目的の達成に関する必要最低限の情報を収集する」という方法が採用されています。
ユニーク
「ユニーク(unique)」とは「特異な」「特徴的な」という意味を持つ言葉ですが、ブレイクスルー思考では、「全ての物事にはそれぞれユニークな差がある」という考え方を持ちます。出来事それぞれが持っている意味や特徴、人間が持っている個性やそこにある多様性など、過去からの慣例や固定観念に囚われずに目の前のことを受け入れる姿勢とも言えるでしょう。
システム
また、ブレイクスルー思考では、「全てのものはシステムである」という考え方を持ちます。ここでいう「システム」で言葉が使われているのは、「個々の出来事や要素はそれぞれが独立に存在している」のではなく「それぞれの出来事や要素はお互いに影響し合い、関係性を持っている」という捉え方をするためです。
ブレイクスルー思考のフェーズ
1.人間のフェーズ
「人間のフェーズ」とは、「関係する人たちの関わり方を考える」段階です。生じている問題や目指している解決策はそれに関係する人によって状況が変化します。「普遍的な絶対解」は無く、「関係者に応じた最適解」を探すことがブレイクスルーの大切な要素であるため、
・どんな人が関係者として存在するか
・それぞれの視点から見るとどう映っているか
・いつ、どこで、どのように関わってもらうか/関わらないでもらうか
などをまずは考えます。
2.目的のフェーズ
手段が目的化すると、ブレイクスルー思考はできません。そのため、「目的のフェーズ」では「そもそも何のためにやるのか」「取り組もうとしていることはどんな意味を持っているのか」といったことを考えます。目的は最初に考えたものに固執するのではなく、議論を重ねる中で見えてくる新たな要素についても関係者で共通認識を随時取っていくことが重要です。
3.未来解のフェーズ
「未来解のフェーズ」では、「目的を達成するためには、どのような状態であるべきか」を考える段階です。解決策や目指す状態について、「現状の延長線で可能な範囲を考える」のではなく「現状に関わらず、どうあらねばならないのかを考える」という逆算的な思考がブレイクスルーには大切です。
4.生解のフェーズ
「生解」とは「解決策は変化するものだ」と考えることです。社会情勢や市場の変化、人々の感情の動きなど様々な要素は常に一定なものではありません。ブレイクスルー思考では「一度考えた解決策はずっと変わらない」のではなく、「状況や環境によって変わりうるもの」だと考えることが大切です。
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記事まとめ
企業を取り巻く環境が変化し続けている現在では、既存の手法や慣例に囚われずに課題や壁を打ち壊していくことが必要になっています。そのために有効な武器の1つがブレイクスルー思考であり、ブレイクスルー思考は「3つの基礎原理」と「4つのフェーズ」で構成されています。現状の延長線上ではなく、目的やそれに即してあるべき状態を話し合うことで、それまで見えていなかった視点や角度での課題解決・解決策立案を実現することができるでしょう。
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ブレイクスルーに関するよくある質問
Q1:ブレイクスルー感染って何?
A1:ブレイクスルー感染とは、「ワクチンを打ったにも関わらず、対象の病気に感染して発症すること」を意味しています。昨今の新型コロナウイルスの蔓延により、一層認知されるようになった言葉ですが、「何かを突破する」という意味でブレイクスルーという言葉が使われています。
Q2:技術的ブレイクスルーやブレイクスルーポイントって何?
A2:それぞれ下記のような意味を持っています。
・技術的ブレイクスルー:技術の大幅な革新や飛躍のことを指します。近年で言えば「AIの進化」や「ロボット技術の発展」が挙げられます。
・ブレイクスルーポイント:「ここを超えたらブレイクスルーが起きる」という境界線のことを指します。ブレイクスルーポイントを越えることでそれまでとは大きく異なる結果や発展を得ることができます。