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ジェンダーとは?ジェンダー平等とその取り組みについて解説

 近年は「ジェンダー」という言葉に触れる機会が多くなってきました。国際連合が発表したSDGsの中にも「ジェンダーの平等」が目標の1つになっていることからも、国際的なテーマと取り組みであると言えます。ビジネスシーンにおいても、女性の活躍促進やダイバーシティへの取り組みなどと共に大きなテーマになっています。

 一方で、「あまり触れてはいけないのではないか」「正直何がジェンダーの問題なのか分からない」といった声も耳にします。まずはしっかりジェンダーに関連する基本的なことを確認し、企業での取り組みについて知っていきましょう。

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目次[非表示]

  1. 1.ジェンダーとは?
  2. 2.SDGsにおけるジェンダー平等について
  3. 3.ジェンダー平等における9つのターゲット
  4. 4.ジェンダーに関するキーワード
  5. 5.組織におけるジェンダー平等への取り組み
  6. 6.組織改善ならリンクアンドモチベーション
  7. 7.記事まとめ
  8. 8.ジェンダーに関するよくある質問



ジェンダーとは?


 そもそも「ジェンダー(gender)」とはどういった意味なのでしょうか。ジェンダーは身体的な特徴を基にした生物学的な性別に対して、「社会的な性別」という意味で使われています。例えば、

・男の子は黒いランドセル、女の子は赤いランドセルを持つ

・男性は会社で働き、女性は家で家事をする

 といった「男性や女性はこうあるべき/こうあるのが普通」のような社会的なイメージがジェンダーです。また、こういったイメージの中で男性と女性、男性・女性同士の関係性のつくり方自体もジェンダーの範囲に含まれます。

 このようなジェンダーは社会通念や各々の主観が相まって社会的・文化的に構築されており、生まれてから社会に適応する過程で意識として根付いていきます。

 ジェンダーによってそれぞれの個人に期待される「らしさ」がある程度決定されるため、ジェンダーによって提供される機会や評価が限定されたり、差が生まれてしまったりすることが問題提起されています。


SDGsにおけるジェンダー平等について


 2015年に国連サミットで採択され、国連加盟国が2030年までに達成する事を合意した共有の指標である「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」、通称SDGsでも「5. ジェンダー平等を実現しよう」という目標が定められています。

SDGs17個の目標

(出典:SDGs17個の目標)


 元々SDGsとは技術や経済活動の発達で社会が発展してきた一方で、自然環境問題や貧困問題、差別などとして歪みが生じていることを問題視したところから世界的な取り組みが広がってきたものです。自然環境や貧困についての問題は学校教育でも取り組まれているため、イメージがつきやすいかもしれませんが、なぜジェンダーが目標に入っているのでしょうか。

 持続可能な社会とは、物質的な資源を守るだけではなく「未来の社会に向けた可能性」も守る必要があります。特に「女性」という面で見るとその人口は世界の人口の半分を占めているため、その分未来の社会に向けた可能性を持っていると言えるでしょう。

 しかし、現在は世界の至る国や地域で、

・出生時から適切な医療や社会的なサポートが得られない

・人身売買や性的搾取の被害に遭う

・平等に教育の機会が与えられない

・児童婚や早期の結婚を余儀なくされる

・暴力の対象になる

といった女性の権利侵害や平等性の欠如が問題視されています。

 このような状況が続いてしまうことは、その境遇にある女性自身の心身の健康を損なうことはもちろん、社会的にも多大な機会や利益の損失に繋がると考えられます。ジェンダー問題の解決は持続可能な社会を実現するために必要不可欠だと言えるでしょう。


ジェンダー平等における9つのターゲット


 また、SDGsには目指す状態である「目標」とその目標を実現するために達成が必要な「ターゲット」が定められており、ジェンダー平等の実現のためには下記のようなターゲットが定められています。


5.1
あらゆる場所におけるすべての女性および女子に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
5.2
人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性および女子に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。
5.3
未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚、および女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。
5.4
公共のサービス、インフラ、および社会保障政策の提供、ならびに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。
5.5
政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参加および平等なリーダーシップの機会を確保する。
5.6
国際人口開発会議(ICPD)の行動計画および北京行動綱領、ならびにこれらの検討会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康および権利への普遍的アクセスを確保する。
5.a
女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、ならびに各国法に従い、オーナーシップ、および土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する。
5.b
女性のエンパワーメント促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。
5.c
ジェンダー平等の促進、ならびにすべての女性および女子のあらゆるレベルでのエンパワーメントのための適正な政策および拘束力のある法規を導入・強化する。



ジェンダー平等に関する現状

 では、実際にジェンダー平等についての現状はどうなっているのでしょうか。ジェンダー平等の状況を把握する1つの指標として、世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)が公表している、「ジェンダーギャップ指数」(出典:世界ジェンダーギャップレポート(The Global Gender Gap Report))があります。

 「ジェンダーギャップ指数」とは「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野で評価し、0が完全不平等、1が完全平等として各国のジェンダー平等への取り組み度合いや成果を示したものです。

 2021年3月に公開されたレポートによると、上位は下記のようになっています。上位にはアイスランドやフィンランド、ノルウェーといった北欧諸国が位置しており、イラク、イエメン、アフガニスタンなどが下位に位置しています。

参考(内閣府男女共同参画局「共同参画」)

(出典:内閣府男女共同参画局「共同参画」)


 日本は対象156ヵ国中120位であり、先進国の中でも低い順位だと言えます。特に、先進国の中でも主要7ヵ国を指すG7の中では最も低い数値でありジェンダー平等に対する取り組みが相対的に遅れていると分かります。

参考(G7各国のジェンダーギャップ指数)

(出典:G7各国のジェンダーギャップ指数)


ジェンダーに関するキーワード


 「ジェンダー」は単体だけではなく、「ジェンダーギャップ」や「ジェンダーフリー」など組み合わされて用いられる場合や「LGBT」といった言葉と併せて用いられる場合があります。ここでは、ジェンダーに関する基本的なキーワードを抑えておきましょう。

ジェンダーギャップとは

 「ジェンダーギャップ」とは、ジェンダーの違いによって生じる差別や格差のことを指します。「男女格差」や「ジェンダー不平等」のように呼ばれることもあり、先述したジェンダーギャップ指数で評価されています。

 ジェンダーギャップが生じる理由としては、下記のような点での格差が考えられています。

■経済

・労働力の男女比

・類似の労働に対する賃金の男女格差

・推定所得の男女格差

・管理職の男女比

・専門職や技術職の男女比

■教育

・識字率の全体男女比

・初等教育就学率の男女比

・中等教育就学率の男女比

・高等教育就学率の男女比

■健康

・出生男女比

・平均寿命男女比

■政治

・国会議員男女比

・閣僚男女比

・直近50年の国家元首の在任年数の男女比

 特に日本は「経済」や「政治」でのジェンダーギャップが大きい結果になっており、

■経済

・管理職の女性の割合14.7%

・女性の72%が労働力になっている一方パートタイムの職に就いている女性の割合は男性のほぼ2倍

・女性の平均所得は男性より43.7%低い

■政治

・国会議員の女性割合9.9%

・大臣の同割合10%

・過去50年間、女性の行政府の長は存在していない

ことが特に問題視されています。(出典:内閣府男女共同参画局「共同参画」)

ジェンダーフリーとは


 「ジェンダーフリー」とは、上記のようなジェンダーギャップによるジェンダーごとの役割の偏りを解消する考え方です。「生涯働くのは男性の役割である」「女性はどこかで家事や育児に専念する」といったイメージに沿うのではなく、1人1人がそれぞれの特性や能力、個性などを活かしあうことでより多様的な生き方を目指すものだと言えるでしょう。

 ジェンダーフリーへの取り組みとして、「女性の活躍推進」に取り組んでいる企業も多くなっています。性別に依らない機会提供やサポートは企業がより発展するために重要ですが、一方で「施策先行」になることには注意が必要です。

 例えば、「女性管理職の割合増加」を掲げている企業は多く見受けられますが、それをそのまま自社に適用してその割合だけを見てしまうと望ましい結果にならない可能性があります。「その人自身の考えや声」に耳を傾けずに「女性の管理職をとにかく増やす」という考え方を押し付けることはジェンダーフリーではありません。

 「不透明に感じているキャリアステップを明確にする」「個々人のキャリアイメージを共有する」などの個々人との向き合い方を整備することが大切です。


ジェンダーレスとは


 「ジェンダーレス」とは、「ジェンダーによる区別を無くす」という考え方です。ジェンダーフリーがジェンダーに起因する社会的な制限やしがらみを是正する考え方であるのに対して、ジェンダーレスは「そもそもの個人の性のあり方を広げる」意味合いが強いと言えます。

 男性がスカートを履いたり、化粧をしたりするシーンが多くなってきたことはジェンダーレスに対する動きであると言えます。従来「男性はスラックス、女性はスカート」が一般的であった学校の制服でも共通のデザインのものを着る「ジェンダーレス制服」を採用する教育機関も出てきています。

LGBTとは


 ジェンダーと共に多く使われている言葉として、「LGBT」が挙げられます。LGBTとは

・レズビアン(Lesbian):自身の性は「女性」であると認識し、「女性」を好きになる性のあり方

・ゲイ(Gay):自身の性は「男性」であると自認し、「男性」を好きになる性のあり方

・バイセクシュアル(Bisexual):「男性」「女性」問わずに好きになる性のあり方

・トランスジェンダー(Transgender):自身の認識している性と、身体的な性が一致しない性のあり方

といった性的マイノリティの呼称の頭文字をとったものです。

 2019年にLGBT 総合研究所が行った意識行動調査では、LGBTのような性的少数者に該当する人は全体の約10%と、約10人に1人がLGBTに該当するという調査結果がでています。

(出典:株式会社 LGBT 総合研究所 LGBT・性的少数者に該当する人は10%と判明

 また、「働き方と暮らしの多様性と共生研究チーム」が実施した調査によると、LGBTに該当する人のみの割合は約3.3%であり、「決めたくない・決めていない」など、他の性的マイノリティも含めた結果が約8.2%と、調査によって異なる結果もあります。

(出典:大阪市民の働き方と暮らしの多様性と共生にかんするアンケート

参考:「LGBTとは?日本での割合や現状は?企業で必要な支援制度について


ジェンダーアイデンティティとは


 「ジェンダーアイデンティティ」とは、「自身の性に対して持っている認識」のことを指します。成長するにつれて自身のことや周囲のことを知っていく過程で認識が生まれてくることが多いため、出生の時に割り振られた性別とは必ずしも一致しません。また、男性・女性と別れるのではなく「どちらでもない」というあり方もあります。

ジェンダー規範とは


 「ジェンダー規範」とは、「男は度胸、女は愛嬌」という言葉のように、「男性/女性はこうあるべき」というジェンダーによってどのような外見や行動をするか、どのような役割を担うべきかという考え方です。

 神話における男女のあり方から始まり、芸術作品やゲームなど様々な面で文化的な思想との繋がりが強く見られるため、無意識的に規範に沿った考え方をしていることも多くあります。そのため、ジェンダー規範による不自由や差別を解消するためには、「そもそも自分はある程度のジェンダー規範に即している」と認識することが大切です。

ジェンダー役割とは

 「ジェンダー役割」とは周囲の環境にあるジェンダー規範や自身の選択によって、男性や女性、トランスジェンダーのようなそれぞれのジェンダーが社会的に担っている役割のことを指しています。仕事だけではなく、家庭でのあり方や日常生活での行動様式もジェンダー役割に含まれています。

ジェンダー関係とは


 「ジェンダー関係」とは、男女といったジェンダー間でつくられる関係性のことを指しています。両者の間での発言力や金銭・資源に対する権限、意思決定権のバランスなどが挙げられます。両者の間での話し合いや取り決めでその関係性を定めることがありますが、それぞれの育ってきたジェンダー規範によって違いや偏りが生じる場合もあります。


組織におけるジェンダー平等への取り組み


施策①:性別に依らない雇用条件や人事制度の整備


 ジェンダー平等を促進し、男女共に活躍するためには「性別に依らない雇用条件」「男女で偏りのない人事制度」を整備することは重要です。

・妊娠や出産を経て職場に戻りづらくなった

・男性だから産休や育休が取れない

 といった性別・ジェンダーによって働きづらさを感じてしまうことは多く見受けられます。例えば、

・時短勤務を導入して家庭と仕事のバランスを取れるようにする

・産休や育休が取得できるように業務体制を見直す

といった取り組みが挙げられるでしょう。一方で、従業員数が少ないことで中々柔軟な対応ができない場合もあるかもしれません。その際には、従業員との対話や説明の機会を設けて「お互いの期待」を調整することが重要です。

施策②:ハラスメントへの対策


 企業におけるコンプライアンス強化が注目されている中で、ハラスメントへの対策の重要性はより一層増しています。特に、「男だから/女のくせに」といったセクシュアルハラスメントが横行している場合はジェンダーの平等は著しく損なわれる可能性があります。

 ハラスメントを未然に防ぐためには、

・経営者や管理職がしっかりと理解する

・従業員への調査を定期的に行い、現状を把握する

・会社としての方針を周知する

・教育や研修を実施する

といった取り組みが必要であるため、今一度自社のハラスメントへの体制や制度を確認してみましょう。(参考:職場で起こるハラスメントとは?種類やリスク・対策を知ってハラスメントを防ぐ

施策③:より根源的なモチベーションマネジメント

「男性だから昇進や出世がしたいだろう」「女性だから厳しく接しない方がいいだろう」といった固定観念や、無意識下で影響されているジェンダー規範に則ったマネジメントを行うと、ジェンダー平等性は失われてしまい、本来発揮できた従業員のパフォーマンスも潰してしまう可能性があります。

 そのため、性別・ジェンダーごとのイメージではなく、人が感じる「根源的なモチベーション」に目を向けることが重要です。例えば、人は「お金やポスト」のうような「金銭報酬」以外にも、

・貢献欲求:誰かの役に立ちたい

・承認欲求:成果や行動を認められたい

・親和欲求:組織やチームと良好な関係を持ちたい

・成長欲求:自身の目指す姿に近づきたい

といった「感情報酬」も重要視しています。

参考(リンクアンドモチベーションの考え方)

(参考:リンクアンドモチベーションの考え方


 しっかり従業員の志向性や求めているものに向き合うことで、結果としてジェンダー平等への取り組みも促進できるでしょう。


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記事まとめ

 ジェンダーに対する問題意識や取り組みは国際的なものであり、その中で日本は先進国と比較して遅れをとっています。ジェンダー問題を改善するためには個々人の意識の変化も大切ですが、社会的な取り組みが必要であるため、企業の理解促進や対応も求められています。そのため、まずはしっかりとジェンダーについて知り、社会的・文化的な要因で作られてきたイメージや固定観念に依らない行動をすることが重要です。

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ジェンダーに関するよくある質問


Q1:実際の企業や国における具体的な取り組みってどんなものがある?

A1:企業では性別・ジェンダーに依らない管理職登用や人事制度の整備(育休・産休の取得や時短勤務の採用など)が行われています。この他にも毎年3月8日は「国際女性デー」として「女性の活躍促進や機会の平等化」などを啓発する取り組みが行われています。

Q2:ジェンダー平等と子供教育の関わりってどうなの?

A2:ジェンダーに対する認識やジェンダー規範は成長して社会に適応する過程で培われていくため、子供教育と非常に強く関わっています。特に先進国では、

・性別における役割分担を平等にする

・それぞれの個性の違いを認められるような教育をする

・文化や習慣の違いを学ぶ

といった取り組みが行われています



 

執筆者:LM編集部
執筆者:LM編集部
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