稟議書とは?必要性や書き方、目的ごとのテンプレートをご紹介
大手企業から中小企業まで、日本では多くの企業が予算の使用を決定する際に「稟議書」を使って社内稟議で承認を得ることが必要です。何段階かのプロセスや、複数の承認者からの承認が必要であるため、よく「非効率な日本型のプロセス」とも言われています。稟議書で修正が発生し、何回も書き直すことになると大きな手間になってしまいます。
一見稟議書は煩わしいものに感じますが、メリット・デメリットがあるものなので、本記事でご紹介する稟議書の基本的な知識や書き方などを参考にしてスムーズな稟議を目指しましょう。
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目次[非表示]
- 1.稟議書とは
- 2.稟議書の種類
- 3.稟議書はなぜ必要か
- 4.稟議書のメリットとは
- 5.稟議書のデメリットとは
- 6.稟議書が承認されるまでの流れ
- 7.稟議書の基本的な書き方
- 8.稟議書の書き方のコツ
- 9.稟議書のテンプレート紹介
- 10.組織改善ならリンクアンドモチベーション
- 11.まとめ
- 12.稟議書に関するよくある質問
稟議書とは
稟議書とは、企業の中で何か施策やプロジェクトの開始、何かの購入を行う際に作成して社内で承認を得るための書類です。稟議が必要なことについては、稟議書による承認を得ることで初めて物事を進めることができます。
稟議書が必要かどうかは、案件や内容によって企業ごとに規定があります。稟議が必要な場合には、稟議書を作成し、承認者に提出して承認を得ます。紙の書類で稟議書を作成する場合もありますが、ワークフローシステムを導入している場合には、ソフトウェアを使って作成した稟議書をシステム上で承認者に送ることができます。
稟議と決裁の違いは?
稟議と共によく使われる言葉として、決裁があります。この2つの言葉には下記のような違いがあるため、使う時には注意が必要です。
■稟議
企業の中で何か施策やプロジェクトの開始、何かの購入を行う際に作成して社内で承認を得るための手続き
■決裁
稟議書や提案書の内容に対して、最終的な判断を行うこと
このように、稟議はいわば決裁を得るための過程であり、決裁は最終的な段階となっています。一般的には、「稟議書を使って稟議に出す」→「稟議書を基に承認者が承認可否を判断する」→「決裁者が最終的な決裁を行う」という流れになっています。
稟議と起案の違いは?
決裁と同様に、稟議と近い意味で使われる言葉として起案があります。起案とは、社内で何かやりたいことや実行したい施策について発案してまとめたり、原案を作ったりすることを指します。起案したものを社内で提案する場合や共有する場合には、書面として起案書を作って説明をすることが多いでしょう。ここで、起案と稟議には下記のような違いがあります。
■起案
社内での活動や実行したい施策について起案書を作ってまとめること
■稟議
起案書を基にしてその承認可否を判断すること
稟議書の種類
稟議書にはその目的によって種類があります。代表的な稟議書の種類として、下記のようなものがあります。
■契約稟議書
他社との契約を行う際の稟議に使う稟議書
■購買稟議書
物品を購買する際の稟議に使う稟議書
■採用稟議書
社員の採用をする際の稟議に使う稟議書
■捺印稟議書
既に承認を得ている契約書への捺印を行う稟議に使う稟議書
稟議書はなぜ必要か
独断の決定によるミスを防ぐ
稟議書が必要な理由として、現場での勝手な判断によるミスを防ぐことが挙げられます。例えば、稟議書による稟議や社内の承認なしに営業マンが契約をしてきた場合を考えます。しっかりとした内容の契約ができていれば良いのですが、万が一「権限のない値引き」や「無理な納品計画」などを盛り込んだ契約をしてしまった場合には利益の喪失や組織の疲弊、ブランドの低下などを招くことになりかねません。このような独断の決定によるミスを防ぐために、稟議書による稟議は必要であると言えるでしょう。
計画の再確認
多くの場合は、稟議書の提出をする前の段階として提案書や計画書を提出しています。稟議書の内容が承認され、決裁を得た後の社内体制を整えるためにも、スケジュールの共有まで行われている場合もあるでしょう。その後に実際に決裁を得るタイミングで稟議書による稟議を行う場合には、既に提案・共有した内容について再確認をすることができます。
稟議書による再確認は一見非効率なステップに思えるかもしれません。しかし、しっかりとまとまった内容で目的や内容、スケジュールを再確認することは、組織やチーム内での認識の相違を無くして、効果的な活動を行うために大切なステップです。
会議の手間を省く
ある程度の規模の企業や、社内で決裁ルートが定められている企業では、複数の承認者や決裁者のスケジュールを調整して会議を開く必要があります。しかし、関係者が多くなる場合には、予定の調整や会議場所の確保などといった工数が掛かってしまうことが多いでしょう。
稟議書を活用することで、規定に沿って1回1回の会議を削減して承認を得ることができます。承認・決裁の手間を削減することで、その後の実行段階までスムーズに物事を進めることができるでしょう。
稟議書のメリットとは
現場の意見を反映することができる
稟議書は一般的に、現場の従業員が作成して承認や決裁を取りにいくことが多いでしょう。現場の従業員が自身の考えた提案や計画を、しっかりとまとめて承認者や決裁者に届ける過程で現場の意見を伝えることができます。
また、自身で目的や計画を考えることで、より施策やプロジェクトへの当事者意識が高まることが期待できます。稟議書の作成過程や提出までの過程で、その意思や意見を伝えることもできるため、上層部の人たちに現場の声を届けることができるでしょう。
意思決定プロセスが明確になる
企業の中で「誰が何を決める権限を持っている」「誰に申請すれば決裁が得られる」といった意思決定プロセスが明確になっていない場合、権限や責任の所在が曖昧になってしまいます。権限・責任の所在が曖昧であると、何かアイデアや意見、提案があったとしてもどのように共有すれば良いのかを迷ってしまいます。その結果、せっかく全社のためになるものであっても、実行にまで繋がらないことになってしまいます。
稟議書を使った稟議の仕組みが整っていれば、このような曖昧性を縮減することができ、現場からの意見や提案があがってきやすくなるでしょう。
稟議する内容をわかりやすく伝えることができる
口頭での説明やテンプレートやフォーマットがないままに提案内容をまとめてしまう場合、本当に伝えたい内容や提案の要旨が伝わりにくくなってしまう可能性があります。稟議書を活用することで、口頭では伝わりにくい内容を伝わりやすくまとめることができます。
承認者にとっても、稟議書に記載されている内容を確認することで、申請の目的やその背景、必要な経費とその投資対効果を把握しやすくなるでしょう。
稟議書のデメリットとは
作成に手間がかかる
稟議書のデメリットとして、作成に手間がかかることが挙げられます。特に稟議書をあまり作成したことがない人や文章を書くことが苦手な人にとっては、内容や書き方で迷ってしまうことがあるかもしれません。稟議が必要であると規定されているものの種類が多い場合には、稟議書の作成に業務時間が圧迫されてしまい、他の業務に使うことができる時間が少なくなってしまう可能性もあります。
稟議書の作成を煩わしく思ってしまうと、意見や提案があがってくる機会が少なくなってしまうため、テンプレートやフォーマット、記入例を充実させて負担を減らす工夫をしてみましょう。
各承認者の責任感が薄くなる可能性がある
稟議の承認は、一般的に複数人で行われます。そのため、トラブルやミスが発生した場合には責任の所在が不明確になることで、承認者それぞれの稟議書に対する責任感が薄くなってしまう可能性があります。
特に、承認のプロセスが多くなっていくと、「誰かが見てくれるだろう」と稟議書を確認することを手間に感じてしまい、あまり内容の精査を行わなくなってしまう懸念があります。稟議に関する問題が発生した時のために、適切に対応できるように対処方法を事前に整備しておきましょう。
稟議書が承認されるまでの流れ
稟議書は実際にどのような流れで承認されるのでしょうか。一般的な作成〜承認までの流れをご紹介します。
①稟議書を申請者が作成する
目的に沿ったフォーマットや雛形を使って、稟議書の内容を分かりやすく記入します。
②稟議書の番号取得
多くの企業では、稟議書に部署や部門などで番号を振って管理しています。その場合は稟議書の 番号を取得します。
③承認フローに沿って稟議書を提出する
一般的には、役職や権限が低い人から順番に稟議書を見てもらい、承認を得ていきます。
一般的には上記のような流れで稟議書の承認が進んでいきますが、フォーマットや雛形の有無やフローの守り方は企業によって様々です。場合によっては稟議書の作成を求められないことがあるため、それぞれのやり方に沿うとスムーズに承認が行われるでしょう。
稟議書の基本的な書き方
例文・テンプレートを用意
稟議書を毎回1から作っていると、手間がかかってしまい承認までの時間が長くなります。そのため、まずは自社で指定されているテンプレートや例文などを用意して使うようにしましょう。テンプレートを利用することで、承認者も内容の確認や把握がしやすくなります。
テンプレートが社内にない場合には、インターネット上で無料公開されているものがあるため、必要に応じて活用すると良いでしょう。また、部署内で共通のフォーマットを使うように促すとその後の社内稟議を効率化することができます。
例文・テンプレートに情報を記入
テンプレートに必要な情報を記入します。例文があればそれに沿って記入しますが、基本的には下記のような項目が盛り込まれていると良いでしょう。
■決裁結果
決裁者が稟議の結果を記入する欄です。「承認」「条件付き承認」「保留」「差し戻し」「否決」などがあります。
■決裁番号
決裁を管理するための決裁番号を記入します。
■決裁日・起案日
決裁日や起案日を、決裁者、起案者のそれぞれが記入します。
■件名
稟議内容を分かりやすく簡潔にまとめて記入します。
■稟議内容
申請する稟議の目的や趣旨、具体的にいつまでに何が必要なのかを記入します。
■金額
必要となる金額を記入します。継続的に必要となるコストについては、初期費用や月額費用なども記入します。
■添付資料
外部発注する際には、契約内容が分かる契約書や見積書などを添付します。
稟議書の書き方のコツ
まとまりのある文章を意識する
稟議内容を説明しようとして、まとまりがない長文を書いてしまうと、承認者に適切に内容が伝わらずに稟議内容が承認されなくなる場合があります。稟議の目的は、しっかりとやりたいことや目的、稟議内容の趣旨を伝えて理解してもらうことにあります。自分が伝えたいことではなく、相手に伝わることを意識して、すぐに内容がわかるようなまとまりのある文章を意識して稟議書を記載しましょう。
伝わりやすい言葉を使う
まとまりのある文章を意識すると共に、相手に対して分かりやすい言葉を使うことも大切です。承認・決裁ルートによっては、自部署以外の承認者・決裁者にも稟議書を確認してもらい、承認を得る必要があります。その際に部署内だけで使われている専門用語や、一般的ではない言葉を使ってしまうと、内容が分からなくなり伝えたいことが伝わらない場合があります。できる限り簡単な言葉に直したり、必要に応じて注釈をつけたりといった工夫を行いましょう。
必要なデータを活用する
稟議書には必要に応じて、収集した情報やデータをまとめて記載することがあります。その際に、趣旨に関係する周辺情報の全てを記載してしまうと、何を見ればいいのか分からなくなってしまい、論点が不明瞭になってしまいます。稟議書において、「情報をこれだけ努力して集めた」といったアピールは逆効果になってしまうことがあります。そのため、必要なデータを簡潔にまとめて記載するようにしましょう。
事前に根回しを行っておく
稟議の承認を得る上で、事前の根回しは重要です。一見、手間がかかる社内政治のように思えるかもしれませんが、承認者は多くの稟議の確認・承認を行っています。そのため、自分が認識していない稟議が稟議書だけで提出されてしまうと、理解が追いつかずに「リスクはないか」といった思考になりやすくなります。「今回このような目的で稟議を出します。効果を出すために事前の準備を早めに行うことが必要なので、承認をお願いします。」といったように事前に伝えるだけでも、提出する稟議に対する認識が変わるでしょう。
稟議書のテンプレート紹介
他社との契約締結
【○社との人材派遣契約締結の記入例】
件名:○社との人材派遣契約
標題の件について、下記の通り○社との人材派遣サービスの契約締結をしたく、お伺い致します。
契約者:○社
※事業内容や従業員規模など、必要に応じて情報を記入します
契約内容:契約の目的、派遣数、仕事内容、契約期間、契約金額などを記入します
契約理由:決算期間と重なり、経理部門の社員が産休に入ることが予定されているため、経理業務を円滑に進める補佐を行うスタッフが必要です。○社は過去にも当社に対する人材派遣を行っており、当社の特徴や情報を把握しているため、説明にかかるコストや手続きなどを簡略化することができます。新規契約に伴う時間を削減して本来業務の時間を捻出するためにも、○社との契約を申請致します。
物品の購入
【勤怠システム導入の記入例】
件名:勤怠管理システムの導入
標題の件について、下記の通り勤怠管理システムの導入をしたく、お伺い致します。
対象製品:〜〜〜
販売元事業者:○社
金額:〜〜〜円
金額の内訳:〜〜〜
購入理由:昨年からの新卒社員の採用増加に伴い、管理監督者が担う勤怠管理の件数が平均〜〜%増加しています。従来のExcelによる勤怠管理では、所定業務時間の〜〜%を勤怠管理に要しており、主要な業務時間を圧迫していることが分かっています。○社の勤怠管理システムを導入することで勤怠管理に必要な時間を〜〜%まで削減することができ、大幅な業務効率化を図ることができます。また、○社は当社と同業界、同規模での導入実績があり、当社の特徴や課題に対して適切な解決策を提供できると判断したため、購入を申請致します。
接待や会食
【会食申請の記入例】
件名:○社との会食実施
標題の件について、下記の通り会食の申請をしたく、お伺い致します。
会食相手:○社
先方参加者:〜〜社長、ーー専務 計2名
日時:〜〜月〜〜日
接待場所:食事処〜〜(住所:〜〜)
当社参加者:〜〜 計1名
予算:〜〜円程度
目的:○社とのお取引は5年前から継続しており、継続的に当社サービスの利用や顧客紹介をしていただいています。この度、先方専務がーー氏に交代となり、決裁権を持たれるようになりました。当社との継続的な関係構築や、今後のスムーズなコミュニケーションのため、顔合わせの会食を実施したく思います。
人材採用
【人材採用の記入例】
件名:営業職のキャリア採用最終合格者の承認
標題の件について、下記の通り会食の申請をしたく、お伺い致します。
採用予定者:〜〜
現職:〜〜株式会社
合格の理由:
・同業他社で5年間の実務経験があり、営業の即戦力となる
・当社のビジョンや方針への共感が深く、志望動機も前向きである
・チームリーダーを務めており、将来の管理職として登用が期待できる
雇用条件:
所属:営業部 〜〜課
勤務時間:9:00〜18:00(内休憩60分)
勤務地:東京本社
基本給:〜〜円
手当:住宅手当、家族手当、交通費
入社予定日:〜〜年〜〜月〜〜日
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まとめ
企業内で物品の購入や契約締結などの、承認を得るために利用されているものが稟議書です。稟議書は複数の承認者に対して、稟議の目的や内容、金額などを伝えて承認を得るために使われています。無駄な工程や非効率なやり方といったイメージがある稟議書ですが、現場での独断によるトラブルやミスの防止や、会議の手間を削減するといったメリットがあります。社内の意思決定プロセスを整理してスムーズな実行ができるように、自社内での活用の仕方を確認しましょう。
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稟議書に関するよくある質問
Q1:稟議書は無駄?
A1:稟議書は一見無駄なものであると思われるかもしれませんが、下記のようなメリットがあります。
■現場の意見を反映することができる
稟議書は一般的に、現場の従業員が作成して承認や決裁を取りにいくことが多いでしょう。現場の従業員が自身の考えた提案や計画を、しっかりとまとめて承認者や決裁者に届ける過程で現場の意見を伝えることができます。
■意思決定プロセスが明確になる
企業の中で「誰が何を決める権限を持っている」「誰に申請すれば決裁が得られる」といった意思決定プロセスが明確になっていない場合、権限や責任の所在が曖昧になってしまいます。稟議の承認プロセスが整っていれば、社内の意思決定プロセスや責任の所在が明確になります。
■稟議する内容をわかりやすく伝えることができる
口頭での説明やテンプレートやフォーマットがないままに提案内容をまとめてしまう場合、本当に伝えたい内容や提案の要旨が伝わりにくくなってしまう可能性があります。稟議書を活用することで、口頭では伝わりにくい内容を伝わりやすくまとめることができます。
Q2:「稟議書」と混同しやすい類語とは?
A2:稟議書と混同しやすい言葉として、下記のようなものが挙げられます。
■提案書
企画や商品を提案するための文書です。
■依頼書
社内外の関係者に対して、依頼をする際に作成する文書です。
■決裁書
案件に対する決裁を求める文書です。稟議書と異なる点は、決裁者が1名しかいないという部分です。