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裁量とは?意味や裁量権のメリット・デメリット、裁量労働制についても解説

 裁量とは、自分の意思で物事を判断して行動をすることを指しており、企業によっては現場の従業員に裁量権を大きく与えることで意思決定のスピードを上げたり、業務の効率化を図ったりといった施策を講じているところがあります。また、裁量労働制を導入して成果に集中した雇用形態を検討している方もいるかもしれません。本記事では、裁量の基本的な意味や裁量権のメリット・デメリット、裁量労働制の内容などをご紹介します。

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目次[非表示]

  1. 1.裁量とは?
  2. 2.裁量権とは?
  3. 3.裁量権が大きい傾向にある企業とは?
  4. 4.裁量権が大きい職場が向いている人
  5. 5.裁量労働制とは
  6. 6.裁量労働制のメリット
  7. 7.裁量労働制のデメリット
  8. 8.裁量労働制での注意点
  9. 9.裁量労働制の導入方法
  10. 10.組織改善ならリンクアンドモチベーション
  11. 11.まとめ
  12. 12.裁量に関するよくある質問


裁量とは?


 裁量という言葉は元々は行政や法律の分野で使われていたものであり、近年はビジネスシーンでも使われることが多くなってきました。裁量とは、「自分の中の基準や判断軸を基にして、物事の判断をして処理を行うこと」を指しています。「裁」には物事の良い・悪いを判断して、処遇を決めるという意味があり、「量」には「人や物事の背景を考察する」「ある程度の見当をつける」といった意味があります。「裁」と「量」といったどちらにも「判断する」「決める」といった意味がある言葉で裁量という言葉は成り立っています。

 「裁量がある」「自身の裁量で決める」といった状態は、周囲や上司からの指示や命令に従うのではなく、自分の中で考えて判断をする状態です。周囲の意見を聞いたり、相談をしたりはあるかもしれませんが、基本的に決定や判断の主体は自分自身になります。裁量は一般的に自身にある責任と共に大きくなっていくため、企業で言えば責任範囲が広い役職になれば裁量は大きい傾向があります。

「裁量」の使い方の例


 裁量とは、自分自身で決定をすることであるため、日常的なシーンでも使うことができます。例えば、どこか遠出をする時に車で行くか電車で行くかを自分で決めた場合でも、「自身の裁量で交通手段を決めた」といった使い方を行います。ただ、プライベートよりも仕事の中や仕事を選ぶタイミングなどでよく使われるでしょう。

 では、実際に「裁量」を用いた文章にはどのようなものがあるでしょうか。いくつか例文を見てみましょう。

■若手のうちから裁量が大きい会社に入りたい

■上司には責任と共に裁量がある

■この案件について、自分には裁量がない

■勤続年数に関わらず裁量を与えられる環境だ

■自分には裁量がないため約束ができない

裁量の類語は?


 裁量と近い意味を持っている言葉として、「任意」や「随意」、「自由意志」などが挙げられます。これらの言葉はそれぞれ下記のような意味を持っています。

■任意

 任意とは、「本人の意思に任せること」や「どのようにするかを勝手に選ぶことができること」といった意味を持っています。数学や法律などの分野で用いられることが多く、自由な選択ができるといった意味合いで使われることが多いでしょう。任意の使い方として、下記のような例文を書くことができます。

■警察官に任意同行を求められる

■任意の数を用いて計算を行うことができる

■任意参加の集まりを開く

■随意

 随意とは、「自身の思うままにできること」や「強制がなく自由であること」といった意味を持っています。任意と近い意味を持っており、自身の選択に対して制限や束縛がないという意味で使われています。随意の使い方として、下記のような例文を書くことができます。

■どうぞ、ご随意にお休みください

■お時間になりましたら、随意ご参加ください

■特に制限はないため、ご随意にお使いください

■自由意志

 自由意志とは、他のものからの強制や束縛を受けずに自由に決定や行動を行うことができる意志のことを指しています。哲学の分野で扱われることも多く、人間が根源的に持っている意志の力といった意味合いで使われることがあります。自由意志の使い方として、下記のような例文を書くことができます。

■人間には自由意志があると考えられている

■あなたの自由意志で決めてください

■あなたの自由意志を尊重します


裁量権とは?


 裁量権とは、自身で物事を判断して、行動することができる権利のことを指します。自身の生活における決定権や、企業の中での人事権や予算の使用権などが一般的に裁量権として使われています。「役職が付くと裁量権が大きくなる」「自分はこの件について裁量権を持っている」といったような意思決定権の大きさを表す使われ方をされており、ビジネスシーンでは、自身の裁量権の中で仕事や取引の判断を行うことができます。

裁量権が大きいことのメリット


 裁量権が大きいことで、下記のようなメリットがあります。

■自身で判断できることが増え、広い範囲で行動ができる

 裁量権があると、何かをする際に誰かに確認や許可を取る機会が少なくなります。そのため、行動を制限されることも少なくなり、自分が望んでいる範囲での行動がしやすくなるでしょう。

■やりがいを感じる機会が増える

 裁量権があることで、責任も増えますが自分自身の力で物事を達成したと感じる機会が増えていきます。自分の意思決定で物事を動かすことができるため、やっていることへのやりがいを感じやすくなるでしょう。

■成長機会が増える

裁量権を持っていると、自分自身で考えて行動する機会が増えていきます。若いうちからそういった環境にいることで、より自分の考え方を成熟させることができるでしょう。

裁量権の大きいことのデメリット


 裁量権が大きいことで、下記のようなデメリットがあります。

■責任が大きくなる

 裁量権は基本的に責任と共に大きくなります。そのため、裁量権が大きいということは自身が負っている責任も大きくなるということが多いでしょう。

■感じるストレスが大きくなる

 裁量権が大きいと、やりがいや自由を感じることができる反面、自身にある責任や重圧などからストレスを感じることが増えるでしょう。特に組織の中での裁量権が大きくなると、自身の判断ミスや失敗が他の人にも大きな影響を与えるため、シビアに感じる状況が多くなっていきます。

■裁量権と待遇が見合わないことがある

 企業の中では裁量権が大きくなることで、給与や手当といった待遇面でも優遇されることが望ましいですが、上手く整合性が取れていないこともあります。その場合は「やっていることに対して、給与が低い」といったことを感じる可能性があります。


裁量権が大きい傾向にある企業とは?


 企業における裁量権は、「どれだけ経営者の持っている裁量に近いか」ということができます。予算の決定権や使用権、人事に関する権利など、企業経営にまつわる権利がどれだけあるかが裁量権が大きいか小さいかだと考えられます。この観点で考えると、日系の大企業よりもベンチャー企業や外資系企業の方が従業員の規模に対する裁量権が大きい傾向があると言えます。

 ベンチャー企業については、事業の拡大スピードが重要であるため、現場の従業員に裁量権を持たせて意思決定のスピードを高める必要があります。また、外資系企業は職務内容に対してある程度の予算を持たせている場合が多く見受けられます。


裁量権が大きい職場が向いている人


 裁量権が大きい職場では、ある程度自立した考え方や成長意欲が求められます。そのため、裁量権が大きい職場には下記のような特徴がある人が向いていることが多いでしょう。

■自身のキャリアイメージが明確であり、多くの経験を積みたいと思っている人

■他の人から指示されるよりも、自分の考えで判断や行動をしたいと思っている人

■多少の苦労やストレスがあったとしても、成果を出してより多くの報酬を受け取りたいと思っている人


裁量労働制とは


 裁量労働制とは、雇用の仕方の1つです。一般的に、給与の支給は所定の労働時間と共に残業時間といった実労働時間を基に算出されていますが、裁量労働制ではあらかじめ定められた一定の時間が労働時間としてみなされます。

 そのため、定められた時間が8時間だとすると、業務が5時間で終わった場合でも10時間かかった場合でも、8時間で給与は算出されます。また、裁量労働制では基本的に出退勤や残業、休日出勤などを指示することがなく、労働者は自分の意思で労働時間を設定することになります。

 裁量労働制には、大きく「専門業務型裁量労働制」と「企業業務型裁量労働制」があります。専門業務型裁量労働制とは、専門性が高い職種に対して適用される裁量労働制であり、研究・開発職やクリエイティブな職種、士業などが該当します。企画業務型裁量労働制とは、事業運営の企画や調査などを行う業務を担う人に適用される裁量労働制であり、時間では給与を算出しづらい業務が該当します。

専門業務型裁量労働制の対象となる業務


 専門業務型裁量労働制の対象となる業務は、厚生労働省が指定する基準に基づいて判断されます。厚生労働省の指定する業務としては、下記のようなものが挙げられます。

■新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務

■情報処理システムの分析又は設計の業務

■新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法の制作のための取材若しくは編集の業務

■衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務

■放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務

■広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)

■事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)

■建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)

■ゲーム用ソフトウェアの創作の業務

■有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)

■金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務

■学校教育法に規定する大学における教授研究の業務

■公認会計士の業務

■弁護士の業務

■建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務

■不動産鑑定士の業務

■弁理士の業務

■税理士の業務

■中小企業診断士の業務

(出典:厚生労働省「専門業務型裁量労働制」)

企業業務型裁量労働制の対象となる業務


 企業業務型裁量労働制は、いわゆる「ホワイトカラー」と呼ばれる業務が該当します。対象の業務は労働基準法で下記のように定められています。

 「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務」

(e-Gov法令検索「労働基準法 第三十八条の四」)

 また、厚生労働省から公表されている「労働省告示第149号」では、具体的に下記のように業務例が挙げられています。

■経営企画を担当する部署における業務のうち、経営状態・経営環境等について調査及び分析を行い、経営に関する計画を策定する業務

■経営企画を担当する部署における業務のうち、現行の社内組織の問題点やその在り方等について調査及び分析を行い、新たな社内組織を編成する業務

■人事・労務を担当する部署における業務のうち、現行の人事制度の問題点やその在り方等について調査及び分析を行い、新たな人事制度を策定する業務

■人事・労務を担当する部署における業務のうち、業務の内容やその遂行のために必要とされる能力等について調査及び分析を行い、社員の教育・研修計画を策定する業務

■財務・経理を担当する部署における業務のうち、財務状態等について調査及び分析を行い、財務に関する計画を策定する業務

■広報を担当する部署における業務のうち、効果的な広報手法等について調査及び分析を行い、広報を企画・立案する業務

■営業に関する企画を担当する部署における業務のうち、営業成績や営業活動上の問題点等について調査及び分析を行い、企業全体の営業方針や取り扱う商品ごとの全社的な営業に関する計画を策定する業務

■生産に関する企画を担当する部署における業務のうち、生産効率や原材料等に係る市場の動向等について調査及び分析を行い、原材料等の調達計画も含め全社的な生産計画を策定する業務


裁量労働制のメリット


 企業が裁量労働制を導入するメリットとして、主に下記のようなものが挙げられます。

■人件費の予測がしやすい

 裁量労働制では、残業時間に応じた給与計算を行うことがなく、あらかじめ定めた労働時間で給与を計算することができます。月毎に大きく人件費が変動することがないため、ある程度人件費の予測がしやすくなります。

■残業管理を減らすことができる

 残業時間に応じて給与が変動する場合には、管理監督者が残業時間の管理を行う必要があります。しかし、裁量労働制では従業員1人1人に労働時間の管理が任されているため、残業時間を集計・計算する手間がかかりません。


裁量労働制のデメリット


 一方で、企業が裁量労働制を採用する際には下記のようなデメリットが挙げられます。

■届出や制度設計の手間がかかる

 裁量労働制を導入するためには、労使協定で労働時間や給与といった労働条件を定めて労働基準監督署に届け出をする必要があります。また、人事制度や就業規則といった制度面での設計を行う手間がかかります。

■長時間労働が生じやすくなる

 裁量労働制では基本的に従業員に自身の労働時間の管理を任せるため、マネジメント体制が整っていない場合には長時間労働が生じやすくなります。長時間労働が常態化すると、従業員の心身の不調に繋がる可能性があります。

■チームワークを高めにくくなる

 従業員同士がコミュニケーションをとる機会を設けていない場合、それぞれが自由に業務を行うことで会話する時間が減る可能性があります。従業員同士が話す機会が少ないと、チームワークを高めにくくなるでしょう。


裁量労働制での注意点

休日出勤や深夜労働の割増賃金は適用される


 裁量労働制を導入する上で、注意するべき点として「休日出勤や深夜労働に対する割増賃金は適用される」ことが挙げられます。裁量労働制ではあらかじめ決めた一定の労働時間に対して給与を計算するため、残業代の計算を行うことがありません。そのため、「所定の給与だけを考えれば良い」といった考えになってしまいがちです。

 しかし、裁量労働制の前提として「22時〜翌朝5時の深夜労働」「定められた休日に行った労働」に対する割増賃金の支払いは労働基準法でその支払いが定められているため、こちらは遵守しなければいけません。

 労働者に労働時間の裁量を任せる一方で、企業はそれぞれの深夜労働や休日出勤の実態を把握しておかなければ、法律に抵触する可能性があります。

労働者の健康・福祉を確保するための措置を行う必要がある


 裁量労働制を導入する際の注意点として、「企業は労働者の健康・福祉を確保するための措置を行う必要がある」ことも挙げられます。裁量労働制では労働時間を労働者に任せてはいますが、完全に放任することで労働者の健康や福祉を害する事態を招くことは許されていません。

 労働基準法では、「労働者の健康及び福祉を確保するための措置を使用者(雇用主)が講ずること」といった旨の規定が明記されています。そのため、企業は深夜労働の時間制限や勤務間インターバル制度の採用、労働時間の適切な把握といった措置を行う必要があります。


裁量労働制の導入方法

専門業務型裁量労働制


 専門業務型裁量労働制を導入するためには、下記の項目について労使協定で定めた上で所轄の労働基準監督署に届け出を行う必要があります。

①制度の対象とする業務

②対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと

③労働時間としてみなす時間

④対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容

⑤対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容

⑥協定の有効期間(※3年以内とすることが望ましい。)

⑦④及び⑤に関し労働者ごとに講じた措置の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存すること

(出典:厚生労働省「専門業務型裁量労働制」)

企画業務型裁量労働制


企画業務型裁量労働制を導入するためには、下記の条件に沿った手順を進める必要があります。

①労使委員会を設置する

・事業所に労働者の過半数で組織した労働組合、ないしは労働者の過半数を代表する者が任期を定めて指名されている

・議事録が作成・保存されている

②労使委員会で決議する

・委員の5分の4以上の多数決

・下記の決議項目が満たされている

 ー対象業務

 ー対象労働者の範囲

 ーみなし労働時間

 ー健康・福祉確保の措置の具体策

 ー苦情処理の措置

 ー労働者の同意を得る旨と不同意労働者に不利益な取り扱いをしない旨

③労働基準監督署に届け出る

④対象労働者の同意を得る

(出典:厚生労働省「「企画業務型裁量労働制」の適正な導入のために」)


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まとめ


 裁量とは、自身の意思で物事を判断して行動することを指しており、特にビジネスシーンでは「裁量権」といった言葉でも使われています。裁量権が大きいことで、従業員はより自由に行動してやりがいを感じやすいといったメリットがあります。一方で、裁量権だけを与えて他の管理やフォローを行わない場合は、責任やプレッシャーを感じやすくなったり、長時間労働が常態化したりといったデメリットがあります。注意するべき法律を確認しつつ、効果的な裁量の付与を行うようにしましょう。

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裁量に関するよくある質問


Q1:高度プロフェッショナル制度と裁量労働制の違いは?

A1:高度プロフェッショナル制度とは、高度な専門知識を保有しており、担当業務の範囲が明確である労働者との合意がある場合に適用できる制度です。基本的に労働時間ではなく成果に対する報酬を支払うといった点では裁量労働制と共通していますが、高度プロフェッショナル制度では裁量労働制では支払われる「深夜労働や休日出勤に対する割増賃金」が適用されないといった部分で異なります。

Q2:裁量労働制の「比較データ問題」って何?

A2:「比較データ問題」とは、厚生労働省が裁量労働制の奨励に伴い「裁量労働制は一般的な労働者よりも労働時間が短い傾向がある」と示したデータに不備があった出来事を指しています。実際には裁量労働制により労働時間が削減できるといったことを説明できる根拠ではなかったため、厚生労働省に対して追求が行われました。「裁量労働制では労働時間を短くすることができる」といったものではないことに注意しましょう。

 

執筆者:LM編集部
執筆者:LM編集部
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