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選ばれる組織へ〜採用編~ 「選ばれない組織」の自治体

「人手不足で忙しいのに、なかなか優秀な人材が入ってこない」──こうした状況に頭を抱えている自治体は少なくない。かつては地方公務員の競争倍率が10倍を超えるなど、「公務員」と言えば人気の職業の代表格だった。しかし、急速に変化する労働市場のなかで魅力は低下し、今や「選ばれない」職業になりつつある。

特別区では、毎年約1,000名(約10%)ずつ申込者が減少しており、総務省の調査では、「応募者の中に能力のある人材が見つからない」と回答した自治体は56%に上った。こうしたデータが示すように、多くの自治体が人材の量と質の低下に悩んでいるのが現状だ。

また、入庁希望者の減少だけでなく、若手職員の離職増加も深刻な課題になっている。少子高齢化による労働人口の減少により、人材獲得競争が激化するなか、民間企業は賃上げや残業時間の削減など、働きやすさ向上のために取り組んでいる。結果、自治体職員が民間企業へ転職したり、民間企業から引き抜かれたりするケースが増えている。

■隣の自治体より民間企業を意識せよ

自治体は、いかにして人材獲得競争を勝ち抜いていくべきだろうか。
近年、総務省は自治体に対し、エンゲージメントを高めることで職員の能力を最大限に発揮させ、人材の確保・育成・評価・配置を戦略的に実施する「人材マネジメント」の推進を要請している。しかし、こうした取り組みを推進できている自治体はまだまだ少ない。一方、民間企業に目を向けると、大手企業の約半数がエンゲージメントサーベイを導入し、従業員一人当たりの研修費用として平均3万円を投資するなど、人材マネジメントに力を入れていることが分かる。

自治体が新たな取り組みを始めるとき、隣の自治体を模倣したり、先進的な取り組みをしている自治体を視察したりするのが通例になっているが、他の自治体を参考にしていても、この難局を打開するのは難しいだろう。今、自治体がロールモデルにすべきは、他の自治体ではなく、積極的に人材に投資をしている民間企業である。自治体はまず、民間企業が採用競合になっていることを認識しなければいけない。そして、採用競合である民間企業に後れをとっている事実を直視すべきではないだろうか。

本連載では、自治体が労働市場で選ばれる組織になるために必要な、採用・育成・制度・風土のポイントを解説していく。次回は、組織づくりの入り口となる「人材採用」のポイントについてお伝えしたい。

※本稿は、『都政新報』2025年4月11日付「選ばれる組織へ 実践編 〜自治体の『人材確保・育成』改革〜」に寄稿した記事を再編集したものです。

※発行元の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。

執筆者:依光宏太
執筆者:依光宏太
【プロフィール】 2013年、新卒で株式会社リンクアンドモチベーションに入社。 中小・ベンチャー企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。 全社アワード受賞後、プロジェクトマネジャーとして顧客の上場支援や組織変革を担当。 2021年からは地方展開を担う部門を立ち上げ、現在は官公庁のエンゲージメント向上にも取り組む。
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