
AIツールは増えたのに、なぜ管理職は楽にならないのか——管理職を支える「マネジメントテック」の考え方
近年、管理職に求められる役割は拡大しています。事業の成果を上げることに加え、育成をはじめとするピープルマネジメントへの期待が、さらに高まっています。
メンバーが今どんな状態にあり、どんな仕事を任せ、どう育てていくか。こうした判断は、AIに代替できるものではありません。メンバー一人ひとりの状況を具体的に見ることができる現場の管理職だからこそ、そうした期待が寄せられているのです。
AIツールは増えたのに、管理職は楽にならない
現場の多忙な管理職やメンバーの業務を効率化しようと、生成AIなどのツールを導入する企業が増えています。しかし、個々の作業にかかる時間は短くなっても、「仕事全体が楽になった」という声は、管理職からはあまり聞こえてきません。
その理由の一つは、管理職が判断に使う情報が、組織の中でばらばらに管理されていることにあります。勤怠や経費の情報は人事・労務のシステムに、顧客や案件の進み具合は営業管理システムにあります。業務ごとに便利なツールを入れるほど、得られる情報は増えます。
しかし、それらをつなぎ合わせ、解釈する管理職の手間も、そのぶん増えていきます。メンバーとの1on1を前に、いくつものシステムを行き来して状況を確かめる。そんな手間に、心当たりのある方もいるかもしれません。
こうした手間は、管理職の仕事を圧迫します。管理職の仕事は本来、チームの進む方向を決め、人に役割を与え、育てていくという、いわば「経営」の営みです。ところが、情報をつなぎ合わせることに追われるうちに、その仕事は日々の確認や対応といった「管理」にすり替わってしまいます。
しかも、苦労してつなぎ合わせた情報は、その管理職の中にとどまり、ほかの管理職や組織とは共有されないままです。これでは、どれだけ手間をかけても、組織の知見として積み上がっていきません。管理職一人ひとりの努力だけでは、局所的な問題解決で終わってしまいます。求められているのは、仕組み化による、組織としての問題解決です。
管理職を中心に、組織を組み直す
では、組織として何をすべきでしょうか。その前提として、まず管理職の仕事を整理してみます。管理職の仕事は、大きく4つに分けられます。KPI管理や戦略立案といった「ビジネスマネジメント業務」、顧客対応や企画検討などの「プレイング業務」、勤怠管理や経費承認などの「アドミン業務」、そしてメンバーの育成や1on1などの「ピープルマネジメント業務」です。

このうち3つの業務には、汎用AIや業務特化型のツールなど、すでに対応するテクノロジーがあります。一方、ピープルマネジメントを支えるテクノロジーは、まだ十分とは言えません。ピープルマネジメントは、ほかの業務の情報を接続して初めて成り立つ仕事です。最近残業が続いている、担当案件が山場を迎えている。そうした状況がわかって初めて、今このメンバーに何を伝え、何を任せるかを判断できます。
そこで求められるのは、散らばった情報を、管理職の手元に一つにまとめることです。飛行機の操縦席に計器が並ぶように、チームの状況を一目で把握し、判断できる「コックピット」をつくる。そのうえで、誰に何を任せ、どう育てるかを、管理職が自ら決められるようにする。マネジメントテックとは、業務ごとの情報をAIが結びつけ、こうしたコックピットを実現するテクノロジーです。
ただし、テクノロジーにできるのは、管理職の手間を減らして時間を生み出し、必要な情報を手元に届けるところまでです。生まれた時間を何に使い、集まった情報から何を判断するかは、管理職自身が選ぶことです。
そして、管理職がメンバーと向き合える環境を整えられるかどうかは、組織にかかっています。そこに、これからのマネジメントの質の差が表れ、その差はやがて組織の成果の差へと広がっていくと考えます。
本コラムのテーマについては、日経ESGの連載でも詳しく論じています。管理職を「管理する人」から「経営する人」へと変革していく考え方は、ぜひ以下の記事をご確認ください。
▼日経ビジネス電子版
『「罰ゲーム」状態の管理職が人的資本経営の壁に カギは情報のコックピット化』
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00614/100100033/




