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「社員が求めていないことに投資していないか?」 組織偏差値70越え 株式会社エアークローゼットが実践するマネジメントの秘訣

様々な企業の中で閉じられていた組織人事のナレッジをシェアし、日本のベンチャー企業の発展に貢献していくことを掲げて開催している、「Strategic HR Summit」。

「組織偏差値70の企業が実践するマネジメントの秘訣とは」をテーマに、株式会社エアークローゼット、株式会社PLAN-B、株式会社ユーザベースの三社に登壇いただきました。

HR2048独自編集でお届けする三回シリーズの初回は、株式会社エアークローゼットに迫ります。

【イベント実施日】
2017年9月22日(金)

【プロフィール】
株式会社エアークローゼット 代表取締役社長 兼 CEO 天沼 聰氏
株式会社PLAN-B 代表取締役 鳥居本 真徳氏
株式会社ユーザベース 代表取締役社長(共同経営者) 稲垣 裕介氏
株式会社リンクアンドモチベーション 執行役員 麻野 耕司

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  モチベーションクラウド|組織改善ならモチベーションクラウド モチベーションクラウドは、リンクアンドモチベーションがこれまでの組織人事コンサルティングのノウハウをもとに開発した国内初の組織改善クラウドです。組織のモノサシ「エンゲージメントスコア」をもとに「診断」と「変革」のサイクルを回すことで、組織変革を実現します。 株式会社リンクアンドモチベーション


出現率3%、組織偏差値70の算出の仕方

麻野 耕司(以下、麻野):今回のSHRSは「組織偏差値70の企業が実践するマネジメントの秘訣とは」をテーマにお送りしていきます。

弊社では、モチベーションクラウドというサービスを通じて組織状態をスコア化する技術を持っており、多くの企業さまに組織状態の定量化・可視化に取り組んでいただいております。

ちなみに、偏差値70を超える出現率は3パーセント以内と非常に希少なのです。本日は、組織偏差値70を超える三社にご登壇いただき、お話をおうかがいしていければと思います。

まず一社目は、株式会社エアークローゼットより、代表取締役社長兼CEOの天沼さんです。

天沼 聰氏(以下、天沼氏):株式会社エアークローゼットの天沼と申します。よろしくお願いします。ファッションレンタルプラットフォーム「airCloset(エアークローゼット)」というものを運営している会社です。

ITを最大限活用したオンラインのサービスなのですが、お客さまが選ぶスタイルではなくて、airClosetのスタイリストがお客さまに似合うものを選ばせていただく形のレンタルサービスです。

例えば、好きなファッションスタイルや着てみたいと思っているお色みや、ファッションのお悩みをご登録いただいて数日お待いただく。

そうすると、プロのスタイリストがコーディネートしたお洋服が3着、ご自宅に郵送されるという仕組みです。

レンタルサービスと謳っているのですが、単にお洋服をレンタルしたい訳ではなくて、「これまでにない感動するお洋服との出会い体験を届けたい」と考えています。

会社のことについては、現在約50名の規模です。設立は2014年なので、ちょうど四期目に入ったところです。

麻野:ありがとうございます。組織偏差値70をどのように測っているのかについて解説を差し上げてから、具体的なお話をおうかがいしていければと思います。

私どもが展開しているサービス「モチベーションクラウド」にはエンゲージメントサーベイという機能があります。組織状態が定量化・可視化できるツールです。

考え方としては、効果的な活動には必ず定量指標(ものさし)があるということで、例えば、一回も体重計に乗ったことがないのにダイエットを成功させたという方はいらっしゃらないと思います。

いいサプリやいいエクササイズも大事なんですが、やはり体重計に乗って今の体重と理想の体重の開きを把握しながら、PDSサイクルを回すことが何より大切です。

一方で、企業経営や企業活動に目を向けると、事業サイドにはPLをはじめとする様々な定量指標(ものさし)、KPIがある。

ですが、これほど組織活動・人事活動が大事になっているにもかかわらず、ほとんど定量指標(ものさし)がなく、勘や経験で進めている現状があります。

それを定量化していこうという試みがエンゲージメントスコアという考え方です。

現在、2,700社66万人という国内最大のデータベースを保有しています。そのデータベースをもとに、組織のスコアの偏差値を算出しているのですが、真ん中を50と置いていて、段階はAランクからEランクまで5段階です。

質問項目は、組織状態・モチベーション状態・コミュニケーション状態・マネジメント状態を左右する、エンゲージメントの4Pで整理しています。

4Pとは、Philosophy(目標の魅力:理念・戦略)・Profession(活動の魅力:事業・仕事)・People(風土の魅力:人材・風土)Privilege(待遇の魅力:制度・報酬)です。

会社だけではなく、対上司や対職場を含めて、16領域64項目について調査をするというサーベイです。これについて、期待度と満足度の2軸、スケールは5段階で設定しています。

期待度が高く満足度の高いものが強み、期待度の高く満足度の低いものを弱みと置き、組織状態を把握して改善活動につなげていくものです。

今日は、実際のデータと照らし合わせながら、「偏差値70ってどうやったら出るんですか」という質問をぶつけていきたいと思います。

株式会社エアークローゼット社の「74.1/A判定」というスコアは、非常に高いですし、非常にモチベーション効率の高い状態であることが読み取れます。

組織偏差値が70を超えているときと超えていないとき、実際組織にどんな違いが起きているのでしょうか。ぜひ、肌感覚を教えてください。

すべての満足度を上げるのではなく、期待値をコントロールする

天沼氏:組織偏差値70を超えているときとそうでないときは、明らかに違います。いいときは、社内をひと目見ても一人ひとりが自信持って働いてるとわかりますし、コミュニケーション量が明らかに多いですね。

一方で悪いときについては、飲み会の場で、今現在に対する愚痴がこぼれます。組織偏差値が70を超えているときは、飲み会の場は、未来についての話がよく出るんですよね。

麻野:なるほど。では、スコアの高い組織状態をつくるために、特にポイントとなったところをおうかがいしていきたいと思います。

天沼氏:その前に、サーベイを実施して思ったことがあるんです。メンバーたちに何を理解してもらうべきかを、経営者が考えることが非常に重要だと。というのも、組織づくりに正解はないと思ってます。

事業内容や目指している方向性によって、オペレーションに特化をした組織づくりをすべきかもしれませんし、一人ひとりが独立して動けるような組織づくりをすべきかもしれません。

我々は当初、つくりたい組織像を明確に持っていなかったのですが、サーベイ実施後、組織像についてディスカッションできたことが大きかったと思います。

そしてともかく、将来つくりたい組織像に対する現在地を共有しようとしてきましたね。それから、敢えて社員が期待しない状態をつくる必要があるなとも思っています。納得をもって期待しないというか。

例えば我々は、4年目に入った50名規模の会社で、素晴らしい研修制度を期待している社員は皆無なんですよね。

ここに関しては、期待値が低くて満足度も低い状態を敢えてつくっていて、それで良しとしています。今すぐには、研修制度は要らないよね、と。

麻野:期待してるほど満足してなくて、期待してないものに満足しているという、バランスの悪い状態になっている会社は多いです。この状態は、例えば離職が発生しやすい状態です。

ですがエアークローゼット社は、満足してないものは徹底的に期待度を下げているということなんですよね。全部の満足度を上げようとすることは、会社の資源が限られている中では非現実です。

なので、「これは満足させるけれど、これは満足させません」ということを明確にしていることが、エアークローゼット社の特徴だなと思いますね。

常に徹底的に、伝え続ける

天沼氏:ともかく、経営陣が考えている組織の方向性と現状を共有することと、今の事業の内容やポジショニングを共有すること。社内のコミュニケーションを活性化させることですね。

それから、私個人ではなくて、経営陣がメンバーにメッセージングしていくことを大切にしています。具体的には、組織の理念戦略を徹底的に伝える。これは常に伝え続けることが大事ですね。加えて、経営者の考えも伝え続ける。

具体的には毎週全社会議があるんですが、冒頭25分くらいを使って、私から全社へのメッセージングの時間にしています。組織に対する今の考えを率直に伝えます。

組織文化も伝えるという意味では、年2回の全社合宿がその位置付けです。

9Hearts(ナインハーツ)という行動指針や採用基準など、会社組織がどういうメンバーで構成されていて、どういう状態を良しとするかということなど、全社員が理解を深められる場として設けてます。

それから、マネジメント層が重要だという思いから、経営方針に関してマネジメント層が自分事で語れるようにしています。メンバー全員が守ることを約束する行動指針が9Heartsですが、役員陣はそれに加えて、いわゆる役員憲章のようなものとして、全メンバーに対する約束としての6Promisesというものを設けています。

それから、透明性の高い社内にすることと、できる限りフラットにコミュニケーションを取れるようにすることを、経営のスタイルにしているので、透明性に関しては、PLの細かい数字まで全社会議で共有しています。

また、ビジネス上、どうしても日々の仕事の関わりが薄い組織が出てくるので、全員と握手をしてから帰るという施策を、創業期からずっとやってます。

全員と握手しようとすると10〜15分ほどかかりますが、この施策により他のグループの仲間とも、毎日一度は必ず目を合わせてコミュニケーションが取れていますね。

圧倒的なカルチャーを持つ会社は、その特徴が社外にまで滲み出る

麻野:ありがとうございます。今天沼さんのお話を聞いていて面白いなと思ったことが三つありました。一つは期待度のお話。何を提供するのか・何を提供しないのかをはっきりさせることは、非常に大事だなと思いました。

モチベーションが高い会社というのは、先ほどお話しした4P(Philosophy・Profession・People・Privilege)の、どのPで引っ張っているかが明確ですね。

例えば、マッキンゼー・アンド・カンパニー社をはじめとした外資系コンサルティングファームは、Professionですよね。若い内から、大きく難しく面白い仕事ができる。

一方で、理念や風土にはさほどこだわっていない。リクルート社はPeople。特に、以前のリクルートの方々は「なぜリクルートに入社したんですか?」と聞くと、「先輩が魅力的だったから」と口を揃えておっしゃいました。事業内容は気にしてなかったように見えます。

ともかく、どのPで引っ張っているのかが、社外の私たちにまでにじみ出るほどはっきりしているんだと思うんです。どの領域であれば社員の期待に応えるのか、また応えないのかを決めることの大切さですよね。

ちなみに、会社基盤や制度・待遇、上司に関する項目など、ベンチャー企業では比較的提供しにくい項目の期待度がしっかりと下がっています。期待値を下げるために、実際にされたことはありますか。

ビジネスの特徴から、組織課題を予測して予防する

天沼氏:全社会議のメッセージングを含めた様々な機会や、経営陣がメンバーと話をするときに、「今会社はそれを提供しないフェーズだよね」と伝えていますね。もちろん将来的には提供できたらいいし、皆でつくっていこうという話はしますけれども。

麻野:常に話をしているということですね。二つ目は6Promises/役員憲章が面白いなと思ってました。

成長企業では特に、現場の仕事ができる人がマネジャーになってマネジメントを担うので、部下の仕事の面倒は見れるものの、社長の代わりに経営方針を伝える役割にある意識が希薄だったりします。

理念や戦略をつくってはいるものの、全然伝わっていないなんてことも、よくあります。それらの解決策として、役員憲章はいい取り組みだと思いました。

それから三つ目。自社のビジネスの特徴からどんなことが組織課題に出やすいかを、把握していらっしゃるんだなと思いました。

eコマースはオペレーションビジネスなので、バリューチェーンが長いためチームを分化しなければいけない。そうすると、チーム間の連携が悪くなるだろうと予測されていたのかなと思います。

天沼氏:そうですね。オペレーショナル型の組織では、「あのチームがやってくれないから上手くいかない」など、チーム同士が他責になりがちだと考えました。なので、予防の意味も込めて横のコミュニケーションを意識しましたね。

麻野:素晴らしいですね。

組織偏差値70を超えるエアークローゼット社が実践するマネジメントの秘訣ということでは、「期待値をコントロールする」「マネジャーがきちんと方針を伝えるためのルールをつくる」「自社のビジネスを踏まえてポイントを押さえておく」という三つが非常に参考になると思いました。

大変貴重なお話、ありがとうございました。

次回は、「組織偏差値50台から70台へ。 前年比30倍の予算をかけた新卒採用で、組織が変わった。」をテーマに、株式会社PLAN-Bに迫ります。

※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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