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佐竹食品・U&S社長 梅原一嘉氏 「日本一楽しいスーパー」づくりの哲学【前編】

関西を中心に「satake」「業務スーパーTAKENOKO」を36店舗展開する佐竹食品株式会社・株式会社U&S。

代表取締役社長 梅原一嘉氏が、スーパーマーケット業界の中でオンリーワンのポジションを確立した経営哲学、組織づくりにおける戦略的、実践的なアプローチを語ります。

【イベント実施日】
2014年6月
※当時の講演内容をもとに、一部現在の内容を加筆して編集しています。

【登壇者】
佐竹食品株式会社・株式会社U&S 代表取締役社長 梅原一嘉 氏 


スーパーマーケットが巨大な自動販売機になってしまう

みなさん、今日はよろしくお願いします。佐竹食品株式会社・株式会社U&Sの代表取締役社長をしています、梅原です。

私は28歳の時に、父親が経営する会社の社長に就任しました。それから約10年(2014年当時)、私が経営者として取り組んできたことを僭越ながらみなさんにお話ししたいと思います。

私が経営している会社の業態はスーパーマーケットです。私は日本一楽しいスーパーをつくろうと思っています。

日本一売上が大きいとか、日本一安売りだ、とかではなく「日本一楽しい」を目指しています。スーパーマーケット業界というのは、近年非常に効率化が進んでいます。

例えば最近出現しているセルフレジ。無人でお客様が会計をするシステムです。従業員1人で6~8台のレジを管理できるんです。非常に効率がいい。

もともとスーパーというのは不思議な構造になっています。入り口に店員はいません。入店すると、案内がなくともお客様が自分でカゴをとる。そして店内の商品を集めてまわって、最後はレジに向かいお支払いをする。

とても自動的な買い物の仕組みです。そしてレジでさえも無人になっていくという業界の動き。これでは巨大な自動販売機です。

私たちの業界には、自動発注というシステムもあります。商品がレジを通れば、自動的に商品が発注されるんです。従業員は何もしなくていい、というような状態を目指すかのような仕組みです。

昔は、スーパーマーケットは市場(いちば)でした。

八百屋さん、肉屋さん、魚屋さんが集まっている。そこに行くと「兄ちゃん、今日は何が安いの?」「今日は、いいアジが入っているよ!」というお客様との会話が常にあった。その会話の中で、商売が行われていました。

今は、効率を重視したシステム化がどんどん進んでいく中で、そんな会話は少なくなってきました。

買う人も売る人も楽しいのが商売

でもやっぱり僕は「買い物には楽しさが必要だ」と思ったんです。本来、男性でも女性でも、子供でも大人でも、買い物をする時って気持ちが高ぶるものです。

洋服でも靴でも鞄でも車でも、買う時は嬉しいんです。好きなものを手に入れる時って、お客様が笑顔で「ありがとう」と言ってお金を払うんです。

スーパーは違います。主婦の人は、眉間にシワ寄せながらスーパーに来るんです。「今日何食べたい?」「なんでもいい」「それが一番困んねん!」というやりとりを経て家を出て、家計のやりくりを考えながらスーパーに来はります。

たまごの値段を睨みつけたりしながら、険しい顔で店内を歩いている。同じ買い物なのに、洋服や鞄を買うのとは全然違う。これを変えられないか、と思ったんです。

「うわぁ、美味しそうやね!」「今日もいい商品をありがとう!」ってニコッと笑って買い物をしてもらえるようなスーパーマーケットってできないんだろうか。

そんなところから、日本一楽しいスーパーを目指したいという思いを持ち、いろいろな挑戦が始まりました。

写真:佐竹食品株式会社・株式会社U&S 当社のビジョン:「日本一楽しいスーパー」

以前、店舗で巨大なスイカを仕入れました。66キログラム。重すぎて一人で持てないです。おまけに9,999円。こんなもん、誰も買いません(笑)。

これを店頭に置いたんです。

夏の暑い日に、子供連れでお客様が来ます。子供は、このスイカにべたーっと引っ付くんです。冷たくて気持ちいから。大人もばっちばちスイカを叩いたりするんです。携帯でスイカと一緒に写真を撮ったりして、スイカの周りは大盛り上がり。

この商品は直接売上には繋がりません。けれど、みんなが面白がって、楽しんでくれる。そういったシーンが、スーパーマーケットの中にあってもいいやん、ということなんです。

何か楽しいことがあることで、会話が生まれる。お客様の家族の間で、お客様とお客様の間で、お客様と店員の間でコミュニケーションが紡がれていく。スーパーマーケットはそんな場所でありたいと思ったんです。

他にも店内に汽車を走らせようかとか、店長が着ぐるみを着ようか、とかいろんなアイディアがありました。

スーパーマーケットには、お客様は週に3回来ると言われています。さすがに週3回来て、店長が着ぐるみ着てたらうっとうしいな、ということでやめました(笑)。

人が週に3回も行く場所なんて、他にはほとんどありません。そんな場所で常にお客様を楽しませるってなかなか大変です。けれど、それを実現しよう、やってみよう、という気持ちで経営しています。

大阪には、有名なアミューズメントパークがあって、年間パスポートがあります。3回行ったら元がとれるような価格です(2014年当時)。僕は商売人なんで「はよ元とろう!」と家族を連れて行くわけです。でも3回行って4回目、子供は「もうしんどい」と。

あれだけ楽しい施設がある場所でも、楽しませ続けることは難しい。

やっぱり、施設だけじゃない、企画だけじゃない。大事なのはコミュニケーションだと思ったんです。コミュニケーションが溢れる場であれば、人は飽きない。昔の市場のような、そんな場所にするべきやと思いました。

サザエさんは三河屋さんと楽しく会話しながら買い物するわけです。それは毎日続いたって楽しい。そんな商売をしよう、と考えました。

業界の流れとは真逆を行っています。プライベートブランドというものも流行っていて、生産段階からの仕組み化も進んでいます。業界は「効率化」へと向かっていっています。

でも、僕たちは「楽しさ」に向かいたい。

巨大な自動販売機のようなスーパーマーケットに、眉間にしわを寄せてやってくるお客様。一言も誰とも会話をせずに商品を選んでお会計して帰っていく。それは僕らの目指すスーパーじゃない。

商売は楽しくなきゃいけない。商売ってもっともっと楽しいものです。そこに立ち返って、日本一楽しいスーパーを目指しています。

写真:コミュニケーションが溢れるスーパー


「こいつが悪い」と思ったら、組織は成長を止める

今でこそ「日本一楽しいスーパー」という企業理念を掲げる当社ですが、実は僕自身は理念やらビジョンいうものが大嫌いでした。

経営者が集まる会にいけば、「理念が大事」「ビジョンが大事」とよく言われました。その度に僕は「念仏で飯は食えん」と言っていました。「顧客第一でうんちゃらかんちゃら」みたいな言葉を朝礼で唱和させて、売上が上がるんか、と。

そんなことしてる暇ない。額に汗かいて、歯を食いしばって一生懸命やるから、売上や利益が上がるんや、と言い続けていました。

リンクアンドモチベーションに出会った時も言っていました。採用とか研修が大事なのはわかるけど、理念とかは嫌いやから、と。でもそんな自分にも変化がありました。

変化のきっかけは、社員が増えたことです。150人ぐらいの規模までは、社員の顔や名前、趣味や性格や誕生日までよく分かっていました。

けれど、それが300人400人と増えていく内に、だんだんと顔と名前さえも一致しなくなってきました。お店に行った時に「えっと、田中さんやったっけ・・・」というようなやりとりが何回か発生しました。

その時に、僕は恐怖を感じたんです。「顔と名前が一致しない彼に、自分たちが親父の代から大切にしてきた佐竹食品の思いが、伝わっているんだろうか、伝えられているんだろうか」と。

実際、伝わっていませんでした。会社のあらゆるところでスムースな意思疎通ができなくなっていました。「アレ持ってきて」と言っても「アレって何ですか?」ということが起こる状態。恥ずかしながらその時の僕は、こう思いました。

「あ、こいつが悪いんや」

今思えば情けない話ですし、当時からの従業員には申し訳なく思っています。けれど、当時の状況をお伝えするために、正直にお話ししていきたいと思います。

僕はもっと優秀な人を採用していかないといけない、と思って募集時の給与を上げてたくさんの募集広告を出しました。けれど、結局募集人数は増えるんですが、優秀な人は来ないんです。

面接の時にかっこいい横文字を使う「優秀そうな人」がいたので採用したのですが、そういう人は会社入ってからもよく分からない横文字を使って、成果も出さずに文句ばかり言うんです。採用した僕が悪いんですけどね。

当時の僕の頭の中には「優秀な人がいれば、会社はよくなる」という考えがありました。個人の能力で会社は変わると考えていました。優秀な人が何人いるか、ということが会社の成長を決めると思っていました。

いろんな方法を考えて採用をしてみたんですけれど、うまくいきませんでした。人を採ることは本当に難しいし、採用してからも会社になかなかフィットしない。試行錯誤の連続で、苦しい時期でした。

そんな時にリンクアンドモチベーションとプロジェクトミーティングを重ねていく中で、個人で戦うのではなくて、チーム力で戦っていこうという考えが生まれてきました。今の苦しい状況を「人」の問題にするのはやめようと思いました。

うちにはいい子がたくさんいる。そのいい子たちのいいところを伸ばすにはどうしたらいいか、お互いにカバーし合えるチームにしていくにはどうしたらいいか、ということを考えるようになりました。個人の力ではなく、チームの力で戦える組織をつくろう、と。

4番打者ばっかりを集めたチームではなくて、一人ひとりが自分の役割を全うできるチーム。その方が、自分たちには合っているし、何よりも仕事をしていて何倍も楽しい。

4番打者ばっかりの個人主義のチームで勝ってもそんなに楽しくないんじゃないか。みんながいろいろ試行錯誤して、助け合って、力を合わせて、それで勝てたら楽しい。

そのメンバーで酒が飲めたら最高やん。そう思って「チーム力で勝負する組織をつくる」ということを目指しました。


【後編】佐竹食品株式会社・株式会社U&S 代表取締役社長 梅原一嘉氏 「伝説の講演 商売人がつくる日本一楽しいスーパー」はこちら


※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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