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池田純氏 横浜DeNAベイスターズを変えた男の 「しがみつかない経営」【前編】

株式会社横浜DeNAベイスターズの前代表取締役社長である池田純氏は、球団発足と同時に社長に就任して以来5年間、経営と組織の再建・再生に邁進しました。一体どのようにして、不可能を可能にする組織づくりを実現できたのかを池田氏に伺います。

【プロフィール】
池田純 氏

【インタビュアー】
株式会社リンクアンドモチベーション 取締役 麻野耕司

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会社でも組織でもない「荒地」からのスタート

麻野耕司(以下、麻野):横浜DeNAベイスターズの変革は、様々なところで語られていて、特にマーケティング面での取り組みが注目されることが多いです。ですが、組織にこそドラマが潜んでいるのではないかと思っています。

横浜DeNAベイスターズの代表取締役社長に就任されたのは、2011年12月ですね。池田さんがどんなステップで組織変革に取り組んできたのか、お聞かせください。

池田純氏(以下、池田氏):私が社長就任したときの横浜DeNAベイスターズ(以下、ベイスターズ)は、組織と呼べる状態じゃありませんでした。セキュリティは整備されていないし、パソコンもない。分煙もされていなくて、フロアのあちらこちらでタバコの煙が上がっているような状態でしたね。

人事評価も存在していなかったし、会社の方針や事業計画なんてものもない。若手のメンバーはベイスターズに飛び込んだばかりの私に「自分たちは灰色の水槽に泳ぐ金魚のようなもの」と例えてさえいました。

野球界というのは放映権で潤っているビジネスモデルで、それだけで食べていけてた時代があった。ただ、ベイスターズは球団自体を身売りせざるを得なくなって、オーナーが変わった。

そういった不安定さも手伝って、組織のメンテナンスがされてなかったんでしょうね。

麻野:なぜそんな状態で放置されていたんでしょうか?当時はもうすでに、放映権だけではビジネスが成り立たないことに、球団運営に関わる人たちが気付いていたのではと思いますが。

池田氏:組織を統括するリーダーがころころ変わっていたこともあって、経営視点を持って意識統一されたマネジャーが存在しなかったんですよ。

麻野:なるほど。例えば構造的な問題はあったのでしょうか。要は、赤字が出てもどうせ親会社が補填してくれるという意識があるとか、部門ごとの業績の評価がなされていないから成果にコミットしないとか。

池田氏:そうですね。親会社がある以上は、赤字が続いても永遠に補填され続けます。そうなると、自分たちが必死に経営をしなきゃいけないという意識は芽生えにくかったのだろうと思いますね。

「球団の黒字化」を掲げた戦い

麻野:そんな中、組織改革において、まずここに着手しようと考えたポイントはありますか?

池田氏:マネジャーをつくることと、会社の文化をつくることですね。まず最初にコーポレートアイデンティティをつくりました。「継承と革新」。いいものはそのまま引き継ぎましょうと。

球団が持っているいい意味での遺産は引き継いで、それ以外のものは、業界の既成概念にとらわれず革新的に変えていきましたね。

麻野:コーポレートアイデンティティをつくり浸透させていくとき、反発や抵抗はありませんでしたか?

池田氏:もちろんありました。一番大きかったのは、野球界の既成概念の中で成功してきた人たちの考え方でしたね。実際、その人たちの主張は正しいんですよ。でも彼らの論理では、球団経営は黒字には絶対ならない。

球団というのは、親会社の広告宣伝の意味合いも兼ねているんですよね。なので「単独での黒字化を会社のミッションの中に掲げるなんて、非現実的だ」という主張でした。

私からすると、いやいや待ってよと。株式会社なんだから黒字化しないと意味ないでしょうと思うわけです。ハマスタ(横浜スタジアム)の買収さえ実現できれば、黒字化の目標は描ける。

「非現実的かどうかじゃなくて、自分たちで独立して経営ができる会社を目指したいんだ」と主張し続けました。

麻野:衝突はどういうふうに融和していったんですか?

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池田氏:これは改革なので、軋轢は仕方がないと考えていました。ただ、いつまでも意見が合わないからといって、内輪で戦っているわけにはいかなかった。一番の戦いは外にありますから。

なので、いつまでも軋轢がなくならないような相手には、重要な仕事は任せられなくなっていきました。同じ志を持って、ベクトルを同じくしてくれる優秀な若手メンバーをマネジャーに登用して、重要な責任や仕事を与えていくことにしたんですね。

観客動員増という成果により、組織の風向きが変わった

麻野:抵抗勢力の態度がなかなか軟化しない中で、何がきっかけで、池田さんの話を聞こうという風向きに変わっていたんですか?

池田氏:社長就任後1年経った頃ですかね。ともかくお客さんを増やすんだと、思いつく限り色んな施策を展開していたんですが、球場に来てくれるお客さんが増え始めたんですよ。それがきっかけになったと思います。

麻野:組織をつくった後に成果が出るということではなく、多少強引に成果を出したことにより、組織が動き始める。組織って奥深くて面白いですね。こういった旧態依然とした状態の組織に対しては、いいアプローチだと思います。

池田氏:合意制を選んでも中途半端なものにしかならない。一方で、合意制で進めようとすると、やっぱり既定路線のアイデアに対して賛同者が増えていき、大きな成果は出なくなってしまいます。多少強引でもいいから、リーダーが思い切って引っ張ること。

そして、志を同じくできる人間を一人ずつ仲間に入れていく以外、方法はないですよね。常日頃一緒に仕事をして、お酒も飲む中で、発信していることが理不尽じゃなく一貫していることが伝わることが大切です。

共に汗を流した仕事で成果を出すことができれば、メンバーたちは、難しい仕事ばかりだけど、チャレンジしたらまた成果が出せるんじゃないかという期待を持ってくれるようになるんですよね。

麻野:私たちは、拡大期・多角期・再生期と言った成長ステージで分けて、企業のコンサルティングをするんですが、ベイスターズはまさに、再生期だったと

思いますね。拡大期の企業は、成果は後からついてくるというスタンスで、ビジョンを掲げてそれをメンバーに伝達することから始めるんですね。

ただ再生期というのは過去慣性が強すぎるので、組織づくりを先にやってもラチがあかないことが多い。やはり、成果を先に出すことが正解なんだということを、池田さんのお話を聞いて改めて感じました。

池田氏:今まさにそういう話を本にしたんですよ。「しがみつかない理由」(12月15日ポプラ社)というタイトルです。

ベイスターズはまさしく、再生フェーズだったんですよね。コンクリートをかき混ぜるところから始められたんですよ。それで自分の好きな土台をつくって、その上に自分の好きな家を建てて。そして、横浜にふさわしいカラーを塗って、ちゃんとした会社にすることが自分の仕事だったと思います。そしてこれは、合議制ではできなかったことだったと思いますね。

※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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