キャリアデザインの意味とは|必要性や考え方をわかりやすく解説 | 管理職研修ならストレッチクラウド
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近年、労働環境の変化に伴い「キャリアデザイン」という概念が注目され始めました。
実はこの概念は、社会で働く労働者だけのものではなく、労働者を雇用する企業側も、人事施策などに組み込む動きや研修提供会社のサービスを導入する動きを加速しております。
一体、「キャリアデザイン」とはどのようなものなのでしょうか。今回は、「キャリアデザイン」とは何か、またその設計におけるポイントからメリットやデメリット、具体的な事例についてご紹介します。
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キャリアデザインとは?
将来のビジョンを明確化し、主体的に行動に移すこと
キャリアデザインとは、自分自身の将来の仕事や働き方についてのビジョンを明確にしたうえで行動に移すことを言います。会社によって仕事や働き方が決められるのではなく、自ら主体的にキャリアを構想・設計・実現するためにおこなうのがキャリアデザインです。
かつては、終身雇用制度や年功序列制度などの日本的雇用慣行がある企業が一般的でした。しかし、右肩上がりの経済成長を前提とした日本的雇用慣行は崩壊し、今、企業と従業員の関係は「縛り・縛られる相互拘束関係」から「選び・選ばれる相互選択関係」へと変化しています。
相互選択関係の時代に働く私たちにとっては、自分のキャリア形成を会社に委ねるのではなく、自分で構想・設計して実現するという意識が不可欠です。キャリアデザインでは、自分が将来どんな状態になりたいか理想を描き、強みやスキルを言語化し、大切にしている価値観や行動指針を洗い出し、理想の実現に向けたアクションやプロセスを明確にしていきます。単に、将来の年収や役職などを構想するのではなく、価値観やライフスタイルまで含めた理想のキャリアを設計することが重要です。
キャリアプランやキャリア形成との違い
キャリアデザインという用語には、意味が混同しがちな用語が複数あります。その中でも、キャリアプランとキャリア形成という2つの用語について説明します。
■キャリアプラン
キャリアプランは日本語に訳すと、「職歴の計画」になります。つまり、「自分がキャリアを通じてどんな仕事をしていくか」を計画することを意味します。
1つの会社で定年まで働きたいと思う人もいれば、転職や独立、起業を考える人もいるでしょう。
環境変化に応じて働き方が変わることを含めて、自分の人生における仕事の計画を立てることがキャリアプランになります。キャリアデザインと違い、プライベートの計画は含みません。
■キャリア形成
キャリア形成とは、仕事を通じて様々なスキルを獲得していくことを指し、キャリアデザインの一部です。
具体的には、キャリアデザインによって描いた自分の理想像や価値観と向き合い、その実現や体現をしていく上で必要なスキルを獲得していくことです。
キャリア形成を実践する上で、ロールモデルを見つけることや、自分の特性を知ること、計画したことをすぐに行動に移すことが重要になります。
■キャリアパス
キャリアパスは、「経歴」という意味を持つ「Career」と、「道」という意味を持つ「Path」を組み合わせた言葉で、一人ひとりの従業員が「目標とする職位・職務に向かってステップアップしていくための道筋」という意味で使われます。キャリアパスと似たニュアンスを持つ言葉に「キャリアデザイン」があります。キャリアパスはどちらかと言うと企業から従業員に提示するものですが、キャリアデザインは従業員が自ら設計する、プライベートも含めた職業人生のことを言います。
キャリアデザインはなぜ必要なのか?
ここからはキャリアデザインの重要性について、社会環境の変化→企業の変化→働く人々の価値観の変化をテーマに、その理由をご紹介します。
<必要性①>社会環境の変化
グローバル化やIT革命といった産業構造の変化に留まらず、少子高齢化や人間の平均寿命の拡大から人生100年時代と呼ばれるようにもなり、1つの企業で定年まで勤め上げるという考え方が一般的では無くなってきました。
このような社会環境の変化によって、企業の慣行や働く人々の価値観にも変化が起きてます。
<必要性②>企業の変化
日本的雇用慣行(終身雇用制度、年功序列制度など)の崩壊に伴い人材の流動化が高まったことや、成果主義や労働生産性といった考え方を重要視する企業が増えてきたことで、企業の求める人材像が変化してきました。
<必要性③>働く人々の価値観の変化
社会環境や企業の変化に伴い、転職や独立が当たり前になったことや、ワークライフバランスといった用語が普及したことで、働く人々の価値観も多様化してきました。
「1つの会社で定年まで働き続ける」という日本的雇用慣行のもと存在した価値観は、今では当たり前では無くなりました。
このような様々な環境変化の中では、益々働き方や生き方そのものが問い直されています。
そのため企業に依存せず、自分の「ありたい姿」を実現させるために、自ら主体的にキャリアを設計するキャリアデザインが必要なのです。
また、人材の流動化が高まっている時代だからこそ、企業は社員が自分らしい働き方を考えるサポートをする必要があります。
社員一人一人が今の仕事に対する意味を見出し、充実感や満足感を持って仕事をすることで、離職防止やエンゲージメント向上にもつながるでしょう。
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キャリアデザインの目的とは?
キャリアデザインの目的や、目的達成のために重要なことをご説明します。
自己実現のためのキャリアデザイン
キャリアデザインと言うと、単純に「昇格・昇進するための道のりを考えること」だと捉えられがちですが、キャリアデザインの本来の目的は昇格や昇進ではありません。
従業員が理想とするキャリアを歩み、「なりたい自分」「在りたい姿」に近づくこと、つまり自己実現をすることがキャリアデザインの目的であるはずです。キャリアデザインを通して自己実現をするために重要なのが以下の3点です。
①スキル・強みを把握する
キャリアデザインをおこなうにあたっては、従業員が自らのスキルや強みを把握していなければいけません。企業側は、従業員のスキルを棚卸しして「どんなスキルや強みがあるのか?」を従業員に認識させる必要があります。
そして、そのスキルや強みを「どのような仕事にどのように活かすのか?」を考えさせましょう。もちろん、自分のスキルを認識する過程で不足しているスキルも浮かび上がってくるはずです。
そのときは、「足りないスキルを補う・伸ばすために何をすべきか?」ということも考えていきましょう。
②適性や価値観を把握する
キャリアデザインをおこなうにあたっては、従業員が自分の性格や価値観、また仕事の適性を把握することも重要です。そのため、従業員にじっくりと自己分析をしてもらいましょう。同僚や上司・部下の力を借りて、他己分析をするのも有効です。
より客観的に自分の性格・価値観を把握することができるでしょう。なかには「自分の適性が分からない」という従業員もいます。そのような従業員に対しては、ジョブローテーションなどで様々な業務を経験させ、適性ややりがいに気付かせることも大切です。
③やるべきことを明確にして行動する
「なりたい自分」「在りたい姿」から逆算して、やるべき行動を明確にすることも大切です。10年後の自分、5年後の自分、3年後の自分、1年後の自分というように将来から遡って考えることで、「今どのような行動をすべきなのか?」「これからどのような行動を習慣化すべきなのか?」が明らかになるはずです。
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個人におけるキャリアデザインの設計手順
キャリアデザインは、自己実現と職業的満足を達成するために重要なプロセスです。これには、自己のスキルや経歴の把握から始まり、将来の目標設定、そして現状と目標とのギャップを埋めるための計画を立てることが含まれます。
現状のスキルや経歴、強みなどを洗い出す
キャリアの設計を始めるにあたって、まずは自己分析を行い、自分の現在持っているスキル、経験、そして強みを明確にすることが重要です。これには、過去の職歴やプロジェクト、達成した成果を振り返ることも含まれます。また、フィードバックを収集し、他人が見る自分の強みや改善点についても理解を深めるべきです。このステップは、自身の職業的アイデンティティを確立し、次のステップへ進むための基盤を築くことに影響します。
将来のキャリアを具体的にイメージする
自己分析を詳細に行い、自分の強みや弱み、スキルセットや経験を理解した後、次に進むステップは将来のキャリアについて具体的なビジョンを描くことです。これは、自分がどのような職業に就きたいか、どの業界で働きたいか、または達成したい職業的な成果は何かを深く考える過程となります。
この段階では、自分のキャリアに対する希望や夢を具体化し、それに向けた目標を設定します。この目標設定は、現実的かつ挑戦的でなければなりません。現実的であるとは、達成可能な範囲内のことを意味します。
目標とのギャップを把握し、課題を整理する
最終的なステップとして、設定したキャリア目標と現状とのギャップを明確にすることが重要です。具体的には、自分が持っているスキルと経験と、キャリア目標を達成するために必要なスキルと経験との間にどのような差が存在するのかを詳細に理解することが求められます。この過程では、どのスキルが足りないか、どの経験が必要か、何が障壁となっているかを深く分析することが必要です。
このギャップ分析を通じて、自分が何をすべきか、どの経験を積むべきか等の具体的な行動計画を立てることができます。
組織におけるキャリアデザインの設計手順
ここではリンクアンドモチベーションで提唱する考え方をもとに、キャリアデザインを設計する方法をご紹介します。
■①個人の変革:自主・自立意識の醸成
個人の自主・自立意識の醸成に効果的なのが「アイカンパニー」という概念です。 アイカンパニーとは、自分自身をひとつの「株式会社」として捉え、その市場優位性を発掘していく考え方です。 自社の経営理念や技術力、市場ニーズ等を、自分自身の「やりたいこと」「やれること」「やるべきこと」の3つの輪で整理し、その重なりを大きくしようとすることで、自主・自立的にビジョンを描き、成長していこうという姿勢を身に付けることができます。 企業は従業員の自主・自立的なアイカンパニーとしてのスタンスを開発することが重要です。
■②組織の変革:キャリアを定期的に見直す仕組みづくり
個人がキャリアデザイン施策を効果的に仕事に繋げるためには、定期的なキャリア見直しの機会が必要です。 これまで、多くの企業は世の中の潮流に合わせて、中堅社員向け、シニア社員向けといった形で、従業員に対して単発でのキャリアデザインの機会を設けてきました。 しかし本来、人のライフサイクルには節目が多く存在し、従業員の状況は常に変化しています。 また、現在の事業環境の変化スピードは速くなっており企業の状況も絶えず変化し続けています。そのため、企業は、従業員が定期的にキャリアデザインの見直しを行うための仕組みを整えることが重要です。
■③関係性の変革:キャリアマネジメントの担い手の育成
個人が自主・自立意識を持ち、定期的にキャリアの見直しがされたとしても、キャリアデザインという取り組みに対する管理職や職場の理解が無ければ成立しません。 管理職が、従業員ひとりひとりの特性を踏まえつつ、彼らのキャリアに対してコミットメントすることで、従業員のキャリアを、仕事に対する自主性や、会社への貢献欲求に繋げることができます。 そのため企業は、管理職にキャリアマネジメントの意識や方法を伝えていくことが重要です。
企業がキャリアデザイン設計を支援するメリット・デメリット
企業が社員のキャリアデザイン設計を支援するメリットとデメリットについて紹介します。
<メリット①>人材レベルの強化やエンゲージメントの向上
自分の将来像やその実現に向けた行動指針が明確になることでワークモチベーションが高まり、結果として社員の成長角度やエンゲージメントも高まります。
<メリット②>離職の防止や定着へつながる
企業側も具体的なキャリアパスを一定見せることで、今自分がやるべきことの意味を理解した上で業務に取り組むことができます。
また、キャリア面談などを活用することで、現職と理想のギャップの早期発見・対応につながるため、「びっくり退職」の低減にもつながります。
<デメリット①>従業員の転職リスクが高まる
従業員がキャリアデザインやキャリアプランを立てた結果、自社のビジョンや仕事内容が自分には向いていないと判断をし、転職を考えるきっかけになる可能性も高まります。
<デメリット②>自社内での昇進が目的化されるリスクが高まる
人事部が主体でキャリアデザイン施策に取り組むと、従業員は会社に評価されようと、人事部や経営層が臨むように自分自身のキャリアを構想・設計する可能性が高まります。
これらのデメリットも十分に留意した上で、企業は社員のキャリアデザインをサポートしていく必要があるのです。
キャリアデザイン設計支援に必要な施策
企業が従業員のキャリアデザイン設計を支援するためにできる施策についてご説明します。
①キャリアデザイン研修
キャリアデザイン研修とは、キャリアを形成していくうえで必要になる知識や、キャリア形成の方法・コツなどをレクチャーする研修です。年齢や階層によってキャリアの悩みや意識すべきポイントは変わってくるので、入社時、入社3年後、入社5年後など、定期的にキャリアデザイン研修をおこなうのが良いでしょう。
ベテランの従業員も管理職の従業員もキャリアに悩むことはあるので、中堅・マネジメント層向けのキャリアデザイン研修も必要です。オンラインで個別の研修をすることもできますが、集合研修の形にすれば受講者同士のコミュニケーションや意見交換から気付きが得られたり、刺激を受けてモチベーションが高まったりする効果も期待できるでしょう。
②キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントは、キャリア開発に関する専門性やノウハウを持ったコンサルタントです。近年は、自社内にキャリアコンサルタントを置く企業も増えていますが、外部のキャリアコンサルタントを活用するのがおすすめです。
外部のキャリアコンサルタントであれば、第三者として客観的かつ公平な視点からカウンセリングをすることができます。忖度のないアドバイスをもらえるため、自分のキャリアを冷静に見つめ直すきっかけになるでしょう。
従業員にとっては外部のキャリアコンサルタントのほうが本音を話しやすく、安心して仕事の悩みや葛藤などを打ち明けることができます。
③キャリア面談
キャリア面談は、従業員が「どのようなキャリアを構築していきたいのか?」を確認し、そのための方策や取り組みを明確にするための面談です。従業員のキャリアに関する希望や理想を把握したうえで、達成までに必要なステップを明らかにするとともに、キャリアに立ちはだかる壁や課題が見つかれば、それを乗り越え、解消するための方法を考えます。
定期的にキャリア面談をおこなうことで、従業員のキャリアに沿った業務の割り当てや能力開発ができるようになるでしょう。なお、キャリア面談は直属の上司がおこなうのが一般的ですが、部署にかかわらず、その従業員のロールモデルとなりそうな人に任せるのも有効です。
④目標管理制度
従業員に日常的に自分のキャリアを意識してもらうようにするには、目標管理制度とリンクさせるのも一つの手です。キャリアにおける目標の達成度合いを可視化することで常にキャリアを意識できるようになり、仕事に対するモチベーションアップにもつながります。
しかし、目標が数値目標ばかりになってしまうと逆効果を招くおそれもあります。キャリアデザインはその人の生き方全般に関わるものなので、数値にとらわれない目標設定を心がけましょう。
⑤人事制度
新たな人事制度を導入することでも、従業員のキャリアデザインを後押しすることができます。近年、取り入れる企業が増えているのが「ジョブローテーション」「社内インターンシップ」「社内公募制度」「社内FA制度」などの制度や、「フレックスタイム」「テレワーク」「ワーケーション」といった働き方に関する制度です。
このような制度を導入することで、従業員が自らの可能性を引き出せたり、より自分らしいキャリアを発見したりすることができるかもしれません。
⑥コーチング
自分でデザインしたキャリアを実現するのは自分しかいませんが、セルフマネジメントだけだと、何が正しいのか分からなくなったりすることがあります。このように、従業員に迷いが生じたときに効果的なのがコーチングです。
コーチングを導入する場合は、外部のコーチを招くか、上司・先輩にコーチになってもらうかのいずれかでしょう。外部のコーチを招く場合は、外部のキャリアコンサルタントと同様に、第三者であるがゆえのアドバイスが期待できます。上司や先輩によるコーチングは、普段から近くにいるがゆえのアプローチが期待できます。どちらも一長一短ですが、コーチングはスキルや経験が重要なので、社内に適した人がいない場合は外部のコーチを招くのが良いでしょう。
企業がキャリアデザイン設計をサポートする際のポイント
ここからは先述の「キャリアデザインを設計する方法」を踏まえ、企業がキャリアデザインをサポートする際のポイントについてご紹介します。
中でも一番重要なのは「①自主・自立意識の醸成」で記載した3つの輪を拡げ、その重なり部分をいかに大きくしていくかです。
この3つの輪の中でもまずは「やれること(技術力)」の輪から、拡大に向けて注力していくことがポイントになります。
キャリアデザインをしていく中で、「やりたいこと(経営理念)」を研ぎ澄ましていくこと、「やるべきこと(市場ニーズ)」を捉えることも非常に重要ですが、「やれること(技術力)」を増やさなければ、仕事においてパフォーマンスを発揮することはできず、周囲からの信頼も獲得することができません。
一体どういった観点で企業は育成・サポートすると良いのでしょうか。ここでは「やれること」を増やす方法についてご紹介します。
■ポータブルスキルへの理解
ポータブルスキルとは、持ち運び可能なスキルという意味であり、どの職種・どの業界においても必要なスキルになります。ポータブルスキルは下記の通り、3つに分解することができます。
対課題力:課題や仕事への処理対応能力
対自分力:行動や考え方をセルフコントロールする能力
対人力:人に対するコミュニケーション能力
この3つの能力をバランスよく鍛えていくことが重要になります。
■ポータブルスキルを分けて把握する
上記にてポータブルスキルを3つに分解しましたが、更に細分化すると24個のスキルに分解することができます。下記をご覧いただき、自分はどんなスキルが強みであり、弱みなのかを考えてみてください。
<対課題力>
- 試行力 判断材料が少なくても試行錯誤ができる力
- 発想力 新しいアイディアを思いついたり、企画することのできる力
- 機動力 状況に応じてすばやく活動に移すことができる力
- 変革力 既成概念に捉われずに物事を新しく変えることのできる力
- 計画力 ゴールに向けた緻密な計画を立案することができる力
- 分析力 物事の原因や本質を深く掘り下げて考えることができる力
- 確動力 やるべきことを確実かつ正確に実行することができる力
- 推進力 物事を目的に向かって前に進めることのできる力
<対自分力>
- 決断力 素早く、潔く意思決定をできる力
- 瞬発力 短期間で集中的にパワーを発揮することができる力
- 曖昧力 あやふやな状況をそのまま受け入れることのできる力
- 冒険力 危険を恐れず、難易度の高いことにも挑戦できる力
- 忍耐力 苦しみや辛さ、怒りなどに耐えることのできる力
- 持続力 ひとつのことを長期間、中断せずに継続できる力
- 規律力 秩序やルールに則り、整然と事を進めることができる力
- 慎重力 注意深く落ち着いて行動することのできる力
<対人力>
- 主張力 周囲に対し自分の意見を発信できる力
- 否定力 相手の意見や行動に対して真摯に指摘や否定ができる力
- 説得力 相手によく話を聞かせて、納得させられる力
- 統率力 集団において面々に指示して仕事をさせられる力
- 傾聴力 相手の立場に立ち、真摯に耳を傾けることができる力
- 受容力 相手に共感しながら話や要求を聞き入れることのできる力
- 支援力 相手に配慮したり、サポートを行い援助することのできる力
- 協調力 集団で力を合わせて事を成すことのできる力
■市場価値を高めるには、相反する力を鍛えいていく
アイカンパニーとして市場価値を高めるには、相反する力を鍛えていくことが重要になります。
先述の通り、アイカンパニーでは3つの輪(やりたいこと、やるべきこと、やれること)で考えることが大切ですが、そのうえで、まずは「やれること」を増やすことが一番大切です。
できることがないと、やるべきことに対応できず、やりたいことも広がっていきません。まずはやれることを増やすことで、より大きな選択肢が広がっていきます。
一般的には、強みに相反する力が弱みと言い換えられますので(例えば、瞬発力が強い人は、持続力が弱いなど)、やれることの輪を大きくするために、強みと相反する力を鍛えていきましょう。
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キャリアデザインサポートの事例(リンクアンドモチベーション)
企業のキャリアデザインサポートの事例として、リンクアンドモチベーショングループで実施している取り組みをご紹介します。
当グループでは、エンゲージメントの高い組織とは、One for All,All for Oneの状態であると考えており、All(企業)の成長のためには、One(従業員)の成長機会を創出することが必要不可欠だと考えます。
そのため、先述の通り個人をひとつの株式会社に見立て、自立的・主体的にキャリアを切り拓いていく「アイカンパニー」という考え方を軸に、従業員ひとりひとりがアイカンパニーを育む機会を豊富に提供しています。
さらに「表層レベルのスキル」ではなく「深層レベルのスタンス」を開発することを重視しており、ビジネススタンスを開発するために自社サービスである研修を全社で実施しています。
今回はその事例をいくつかご紹介します。
■アイカンパニー・ブランディングサポート
年に2回、当グループの全社員が自分株式会社の経営企画書を提出する「アイカンパニーブランディング」制度を運用しています。
社員ひとりひとりが自分自身の「キャリアの方向性」を描き、強み・課題を棚卸し、今後の行動に結びつけること、その意向や状況を会社と共有することを目的としています。
■スキルアップ講座
自社サービスである「エデュテインメントプログラム」研修の受講を通し、ビジネスパーソンとしての成長機会を提供しています。
本プログラムは、“楽しみ”ながら“学ぶ” 体感型の社員研修プログラムで、セルフコントロール、ロジカルシンキング等、多くのラインナップを取り揃えています。
そのひとつに「キャリアデザイン研修」もあり、「アイカンパニー」の概念を使用しながら従業員のキャリア意識を醸成していきます。
具体的には下記のステップに則って実施していきます。
- アイカンパニーの考え方理解
-
アイカンパニーの経営理念の言語化(やりたいこと)
自分自身のこだわりや価値観を言語化することによって、自身の「やりたいこと」(アイカンパニーの経営理念)をシートに記載し言語化していきます。 -
アイカンパニーの技術力の理解(やれること)
業界や職種によらずビジネスパーソンとして必要な「ポータブルスキル」のフレームを活用し、自分自身の「やれること」(アイカンパニーの技術力)を明確にします。 -
アイカンパニーの市場ニーズの把握(やるべきこと)
自社の今後の変化を考察するとともに、周囲からの期待や要望を理解することで、自身の「やるべきこと」(アイカンパニーの市場ニーズ)を明確にします。 -
アイカンパニーのビジョンの策定(目標)
自身の「やりたいこと・やれること・やるべきこと」を改めて整理し、アイカンパニーを発展させていくためのビジョン(目標)と具体的施策を策定します。 - 株主総会に見立ててアイカンパニーの計画(キャリア)を発表
■サーベイ/サーベイフィードバック研修の実施
年2回、当グループの全社員が当社サービスである360度評価サーベイを階層別に実施し、個人の成長課題抽出とアクションプランの設定を行います。
さらにサーベイ実施後、結果をもとに課題についてアドバイススクランブル形式で話し合い、今後のアクションプランを設定する研修を実施し、成長へのPDCAサイクルを高速回転させています。
■社内留学制度
異動をせずに、他部署・役割の視点を獲得するために、一定期間、別の部署に「留学」する制度です。
外から観察しているだけでは見えなかった仕事内容を理解したり、お互いの仕事の関連性に気づき、相手の立場や心情を理解するなど、新たな視点の獲得を目指しています。
■社内論文コンテスト
管理職以上を対象とした社内論文コンテスト。
「棚卸し機会の創出」「ナレッジ共有」「主体性の醸成」を目的としています。代表が審査し、優秀者には賞金授与、事業化へ繋がることもあります。
テーマや受賞論文は管理職のみならず全社員に公表され、会社の重要なテーマについて、会社と社員がコミュニケーションする機会となっています。
■LMゼミナール
アイカンパニー創りの後押し等を目的に全社でナレッジを共有する社内セミナー。「新入社員向けセルフコントロール」「マネジメント層向け組織づくりのポイント」など、毎回異なるテーマで開催されます。
記事まとめ
いかがでしたでしょうか。
社会や経済状況の変化、仕事に対する価値観の多様化によって、社員が自分の手で人生を切り開くために、自立的なキャリア形成が重要になることをご理解いただけたかと思います。
将来の選択肢をより増やしていくために、アイカンパニーとして生きていく覚悟を決め、ポータブルスキルの獲得によって3つの輪を大きくすると共に、企業側にとっても離職率低下や人材育成などのメリットがあるため、キャリアデザインを制度として導入してみてはいかがでしょうか。
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キャリアデザインに関するよくある質問
Q:キャリアデザインに使えるフレームワークは?
キャリアデザインに使えるフレームワークとして、Will・Can・Mustの「3つの輪」があります。「Will(やりたいこと)」は、自身のキャリアのなかで実現したい夢や目標のことです。「Can(できること)」は、自分が持っている経験やスキルのことです。「Must(やるべきこと)」は、会社のなかでやるべきことや期待されていることです。この3つの輪が重なる部分を軸にすることで、的確なキャリアデザインができるでしょう。
また、別のフレームワークとして「SWOT分析」も使えます。SWOT分析は本来、経営やマーケティングの戦略策定のために使われるフレームワークですが、キャリアデザインにも有効です。SWOT分析では以下のとおり、内的要因である強みと弱み、外的要因である機会と脅威を分析します。
-
Strength(強み)
スキルや経験、能力、資格など、自身の強みとなるもの -
Weakness(弱み)
弱点や課題、不足しているもの -
Opportunity(機会)
キャリアの実現を考えたとき、追い風になるような外的要因(働き方改革、副業解禁など) -
Threat(脅威)
キャリアの実現を妨げる可能性がある外的要因(AIによる仕事の置き換え、景気悪化など)
それぞれの項目を抽出したら、SWOTクロス分析をおこないます。SWOTクロス分析では、内的要因である強みと弱み、外的要因である機会と脅威を掛け合わせることで、キャリア実現のための方策を探っていきます。
- 強み × 機会(強みを活かして、価値を高める)
- 強み × 脅威(強みを活かして、脅威に打ち勝つ)
- 弱み × 機会(弱みを克服して、機会損失を防ぐ)
- 弱み × 脅威(弱みと脅威によるリスクを回避する)
Q:キャリアデザインはどんなタイミングでおこなうべき?
キャリアデザインをすべきタイミングは、自分が必要だと思うタイミングです。就職や転職をしたとき、結婚したときや子どもが生まれたとき、職歴が10年、20年を超えたとき、年齢が30歳、40歳になったときなど、大きな節目でキャリアデザインをする人が多くいますが、キャリアデザインが必要になるのは大きな節目ばかりではありません。
たとえば、「異動や昇進をしたとき」「重要なプロジェクトのリーダーに抜擢されたとき」「仕事に自信がついて、もっと高いレベルでチャレンジしたいと考えたとき」「仕事がうまくいかず、このままではダメだと思ったとき」などは、キャリアデザインをすべき(見直すべき)タイミングかもしれません。