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所得金額調整控除とは?実施理由から内容・使用方法まで解説!


目次[非表示]

  1. 1.所得金額調整控除とは
  2. 2.所得金額調整控除が創設された理由
  3. 3.所得金額調整控除の適用対象者、控除額の計算方法
  4. 4.所得金額調整控除を受ける方法・手続き
  5. 5.制度を有効活用するための考え方「アイカンパニー」
  6. 6.まとめ


2020年の税制改正で新設されたルールが「所得金額調整控除」です。所得金額調整控除は、子育て世帯や介護世帯の負担軽減を目的とした制度で、一定の要件を満たした給与所得者の所得から一定金額を控除するものです。

今回は、所得金額調整控除の基本的な内容・要件などについて分かりやすく解説していきます。

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所得金額調整控除とは

所得金額調整控除は2020年(令和2年)に導入された税制措置で、子育て世帯や介護世帯の負担軽減を目的とした制度です。一定の給与所得者の総所得金額を計算する際に、給与所得から一定金額を控除することができるため、所得税・住民税の負担軽減につながります。

所得金額調整控除には、「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」と、「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」の2種類があります。

所得金額調整控除が創設された理由

所得金額調整控除が創設された背景としては、以下の2点が挙げられます。

■「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」が創設された理由

平成30年度の税制改正において給与所得控除の見直しがおこなわれ、給与収入が850万円を超える場合の控除額が引き下げられました。

しかし、子育てなどの負担がある世帯は必ずしも経済的余裕が十分とは言えないことから、23歳未満の扶養親族がいる人や、特別障害者である同一生計配偶者や扶養親族がいる人などについては、給与所得控除の見直しによって負担増が生じないようにするために「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」が設けられました。

■「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」が創設された理由

平成30年度の税制改正において、基礎控除や給与所得控除、公的年金等控除などの見直しがおこなわれ、給与所得控除額、および公的年金等控除額が10万円引き下げられるとともに、基礎控除額が10万円引き上げられました。控除額の増減を見ると、引き下げられた額も引き上げられた額も10万円なので、相殺されて納税額は変わらないように見えます。

しかし、これは給与所得と年金所得のいずれかを有する人の場合であり、給与所得と年金所得の両方を有する人の場合は、給与所得控除額と公的年金等控除額の両方が10万円引き下げられるため、トータルで20万円の課税所得増になります。

そのため、基礎控除額が10万円引き上げられたとしても、給与所得、年金所得の金額によっては負担増が生じるケースがあります。このような負担増が生じないようにするために「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」が設けられました。


所得金額調整控除の適用対象者、控除額の計算方法

上述のとおり、所得金額調整控除は「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」と「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」の2種類があります。それぞれの適用対象者や控除額の計算式についてご説明します。

■子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除

その年の給与等の収入金額が850万円を超える給与所得者で、以下のいずれかに該当する人が対象になります。

【適用対象者】

  • 本人が特別障害者(※)に該当する者
  • 年齢23歳未満の扶養親族を有する者
  • 特別障害者(※)である同一生計配偶者または扶養親族を有する者

適用対象者になる場合、総所得金額を計算する際に以下の「所得金額調整控除額」を給与所得から差し引くことができます。

【所得金額調整控除額】

{給与等の収入金額(1,000万円超の場合は1,000万円) - 850万円} × 10% = 控除額

なお、この控除は扶養控除と異なり、同一生計内のいずれか一方のみの所得者に適用するという制限がありません。たとえば、夫婦ともに給与等の収入金額が850万円を超えており、夫婦の間に23歳未満の扶養親族である子がいる場合は、夫婦の双方がこの控除を受けることができます。

※特別障害者とは、以下のいずれかに該当する人を言います。

①精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人

②精神保健指定医などから重度の知的障害者と判定された人

③精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人のうち、障害等級が1級の人

④身体障害者手帳に身体上の障害がある者として記載されている人のうち、障害の程度が1級又は2級の人

⑤戦傷病者手帳の交付を受けている人のうち、障害の程度が恩給法別表第1号表ノ2の特別項症から第三項症までの人

⑥原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定による厚生労働大臣の認定を受けている人

⑦常に就床を要し、複雑な介護を要する人

⑧精神又は身体に障害のある年齢65歳以上の人で、その障害の程度が①、②又は④に該当する人と同程度である人として市町村長、特別区の区長や福祉事務所長の認定を受けている人

■給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除

以下の要件に該当する人が対象になります。

【適用対象者】

その年分の給与所得控除後の給与等の金額と公的年金等に係る雑所得の金額がある給与所得者で、その合計額が10万円を超える者

適用対象者になる場合、総所得金額を計算する際に以下の「所得金額調整控除額」を給与所得から差し引くことができます。なお、上述した「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」も適用になる人は、それを適用した後の給与所得の金額から控除をおこないます。

【所得金額調整控除額】

{給与所得控除後の給与等の金額(10万円超の場合は10万円) + 公的年金等に係る雑所得の金額(10万円超の場合は10万円)} - 10万円 = 控除額

※参考:No.1411 所得金額調整控除|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1411.htm


所得金額調整控除を受ける方法・手続き

原則として、「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」を受ける場合は年末調整が必要になり、「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」を受ける場合は確定申告が必要になります。

■子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の場合

年末調整をすることで所得金額調整控除を受けます。適用対象者は年末調整の際に、会社に申告書を提出します。申告書は「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」というタイトルで、基礎控除申告書、および配偶者控除等申告書と一緒になっています。記載例は、国税庁のホームページでご確認いただけます。

>> 記載例はこちら(令和3年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書)https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/r4bun_07.pdf

なお、2ヶ所以上から給与の支払いを受けている場合は注意が必要です。この控除の要件である「給与等の収入金額が850万円を超える」かどうかは、年末調整の対象となる主たる給与によって判定されます。年末調整の対象とならない従たる給与は含めません。

たとえば、1ヶ所から800万円の支払いを受けており、もう1ヶ所から100万円の支払いを受けている場合、収入金額は900万円ではなく800万円と判定されるため、所得金額調整控除を受けることができません。このような場合は、確定申告をして所得金額調整控除を受ける必要があります。

■給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除の場合

確定申告をすることで所得金額調整控除を受けることができます。


制度を有効活用するための考え方「アイカンパニー」

今回ご紹介した、所得金額調整控除をはじめとした個人の生活をサポートするための制度は様々あります。

しかし、国、自治体、会社の制度問わず、ルールや条件が複雑さから、制度の名前は聞いたことがあるけれど、実際に活用する方法が分からない、活用するまで実行に移せていない方も多いのではないでしょうか。

こうした制度を有効活用することは、個人のライフプラン、キャリアプランを考えていく上でも重要なことです。

リンクアンドモチベーションでは、従業員個人のキャリア、人生を捉える際の考え方として、「アイカンパニー」という考え方を提唱しています。

アイカンパニーとは、「自分株式会社」のことです。自分自身を一つの株式会社に見立て、その経営者としてアイカンパニーを優良企業や人気企業に育む、すなわち選ばれる個人に成長させることです。会社に依存するのではなく、自律的に自らの人生やキャリアにおけるビジョンやミッションを設定し、自分自身にとっての顧客、株主、競合、競争優位性を考えていくことです。

アイカンパニーの考え方が重要となってきている背景としては2点あります。

一点目は、企業と個人の関係性が変化したことです。高度成長期から成熟経済期に突入したことで、終身雇用や年功序列は崩れ、「相互依存関係」から「相互選択関係」に変化しました。つまり、企業と個人は「選び合う関係」となり、企業も個人も相手から選ばれる存在となるよう、自分を磨き続けることが重要となってきています。

二点目は、ビジネスの世界において「価値を生み出す主体」が変わってきたことです。戦後復興期には「業界」が価値そのものでしたが、高度成長期には「企業」に変わり、更にIT化・ソフト化の加速によって価値の源泉は「個人」へと変化しました。個人が組織の中で埋没していた時代は終わり、個々人が能力や個性を発揮し、その相互作用によって成果を創出する時代になってきています。

上記のような背景から、個々人が「アイカンパニー」意識をもち、自らのありたい姿に向けて、キャリアとプライベートの計画やバランスについて考えることは重要なポイントです。

このように結婚、出産・介護などのライフステージにあわせて、今回ご紹介したような制度の活用も合わせて検討してみると、制度を活用する意味や目的がはっきりし、行動に移しやすくなるのではないでしょうか。


まとめ

所得金額調整控除は2020年に新設されたばかりの制度なので、理解が不足している方もいらっしゃいます。しかし、年末調整や確定申告で勘違いや記入ミスなどがあると、せっかく受けられるはずの控除を受けられなくなってしまう可能性があります。

所得金額調整控除の内容、要件や必要書類の記入方法などは確実に押さえておき、アイカンパニーとしてのありたい姿の実現に向けて、有効に活用していきましょう。

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執筆者:N.E
執筆者:N.E
【プロフィール】 リンクアンドモチベーショングループ新卒入社。 以降、モチベーションクラウドのカスタマーサポートとして、 主に大手企業の支援に従事。

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