
業務契約委託を結ぶメリットは?雇用契約・請負契約との違いも解説!
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業務委託契約とは、企業が自社の業務を外部の法人・個人に委託する際の契約のことを言います。
近年は、労働力不足によって企業による外部リソースの活用が進んでいますが、業務委託契約ならではの注意点を把握しないまま業務委託を進めていると思わぬトラブルに発展してしまうこともあります。
今回は業務委託契約のメリット・デメリットのほか、雇用契約との違いや注意点などについて解説していきます。
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業務委託契約とは?
業務委託とは、企業が自社の業務を外部の法人・個人に委託することであり、その際に交わされる契約が業務委託契約です。
日本では「外注」という言葉がよく使われますが、企業が外注する際によく用いられる契約形態が業務委託契約です。受託者側は委託された業務をおこない、その成果物や、遂行したという行為に対して報酬が支払われるのが業務委託契約の特徴です。
ただし法律上、業務委託という言葉は存在せず、実態として業務委託契約は「請負契約」「委任契約」「準委任契約」のいずれかだとされています。
請負契約とは?
請負契約とは、成果物を納品することで報酬を受けるタイプの契約形態です。受託者側は、契約で決められた成果物を納品することで委託者側から報酬を受け取ります。
請負契約において、受託者側は正しい成果物を納品する義務を負うため、もし成果物に不備がある場合などは修正に応じなければいけません。
委任契約とは?
委任契約とは、法律行為に関わる特定の業務を遂行することで報酬を受けるタイプの契約形態です。
委任契約の目的になるのは、業務を遂行するという行為であり、受託者側は成果物を納品したり一定の成果を出したりする義務は負いません。契約で決められた期間中、契約で決められた業務を遂行することで報酬を受け取ります。
準委任契約とは?
準委任契約は委任契約の一種です。委任契約は法律行為に関わる特定の業務を対象にしていますが、法律行為以外の業務を対象にしている場合は準委任契約となります。
たとえば、コンサルティング業務や講師業務、受付業務などは法律行為ではないため、準委任契約の対象になります。準委任契約も委任契約と同様に、受託者側は契約で決められた業務を遂行することで報酬を受け取ります。
業務委託契約と雇用契約との違い
雇用契約とは、契約当事者の片方が相手方のために労働を提供することによって報酬を受けるタイプの契約形態です。一般的な会社員は、会社(雇用主)と雇用契約を結んで働いています。業務委託契約と雇用契約の主な相違点についてご説明します。
対価
雇用契約では、労働時間に対して対価が発生します。一方、業務委託契約では、仕事の成果や仕事を遂行したことに対して対価が発生します。
指揮命令権
雇用契約を結ぶと、雇用主と労働者という主従関係が生まれ、雇用主から労働者に対する指揮命令権が発生します。一方、業務委託契約は独立した事業者同士の対等な契約なので、委託者側から受託者側への指揮命令権は発生しません。
労働法の適用
雇用契約の当事者には労働法が適用されます。たとえば、1日8時間・週40時間の法定労働時間が適用されるため、これを上回る時間、働いた労働者には残業代が支給されますし、最低賃金や有給休暇のルールも適用になります。また、雇用主は労働者の社会保険料の一部を負担します。
一方、業務委託契約の当事者には労働法が適用されません。法定労働時間も適用されず、残業(残業代)という概念もありません。最低賃金のルールも適用になりませんし、失業保険や労災保険の適用もありません。
業務委託のメリットは?
業務委託契約における委託者側のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 自社に不足している専門性や知見、ノウハウを活用することができる
- 業務を外部に委託したいとき、必要に応じて委託することができる
- 委託する業務や委託先によっては、コストを削減することができる
- 労働法が適用されないため、人件費を削減することができる
- 自社の従業員を、社内でしかできないコアな業務に専念させることができる
業務委託のデメリットは?
業務委託契約における委託者側のデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 委託したい業務に対応できる法人・個人が見つかるとは限らない
- 社内にノウハウや経験が蓄積しない
- 自社の人材が育たない
- 委託する業務や委託先によっては、コストが高くつく場合がある
- 情報漏えいのリスクがある
業務委託契約によって、委託元からいただく声は?
業務委託契約によって実際に委託元からいただく声を、株式会社リンクアンドモチベーションの事例を交えて紹介します。
株式会社リンクアンドモチベーションでは、「モチベーションクラウド」という組織改善クラウドサービスを導入いただいているお客様に対し、委託元の担当者に変わって運用するという業務委託の対応を実施しています。
実際に業務委託として運用を行う中で、委託元より下記のようなお言葉をいただきます。
「運用のプロが代わりに対応してくださるので、とても安心感があります」
「自社だけでは実現できなかった運用方法が、委託したことでできるようになりました」
「委託したことによって、運用時間を大幅に削減することができました」
業務委託契約以外で業務を外部に出す方法は?
企業が業務を外部に出す方法は、業務委託契約の他にも代理店契約や派遣契約があります。
代理店契約
代理店とは、特定の企業から委託を受けて取引の代理・仲介をおこなう法人・個人のことを言います。企業の業務の一部をおこなうという意味で、業務委託契約に類似した契約形態だと言えます。
代理店は一般的に、代理店契約に基づいて委託された商品・サービスを顧客に販売します。顧客に販売したときに初めて報酬が発生するのが代理店契約の特徴です。
派遣契約
派遣契約とは、人材派遣会社(派遣元企業)が自社で雇用する労働者(派遣社員)を、ニーズのある企業(派遣先企業)に派遣する契約のことを言います。
派遣社員の雇用主はあくまでも派遣元企業ですが、派遣先企業と派遣社員の間には指揮命令関係が発生するため、派遣先企業は派遣社員に対して業務に関する指示・命令をすることができます。
業務委託契約が雇用契約であると判断されるリスク
雇用契約の当事者である企業は、自社で雇用した労働者の社会保険料や労働保険料を負担したり、残業手当を支給したり、有給休暇を付与するなど、様々な義務や負担を負います。
このような義務や負担を回避するために、実質的には雇用契約であるにもかかわらず、形式的に業務委託契約を締結して業務をおこなうケースがあります。これは「偽装請負」と呼ばれる行為で、かねてから問題視されています。
業務委託契約が偽装請負であると認定されると・・・
偽装請負は、労働基準法や職業安定法などに違反する違法行為として禁止されています。
業務委託契約を結んでいるものの、その実態は雇用契約であると認定されると、つまり偽装請負であると認定されると、行政指導や改善命令、勧告などの処分の対象になります。
また、社会保険料や労働保険料、賃金や残業代などは過去に遡って支払う必要があるため、契約内容や契約期間によっては多額の補償を強いられることになります。刑事罰として「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処せられる可能性もあります。
偽装請負であると認定されるポイントは?
業務委託のつもりで交わした契約でも、実質的に、雇用主と労働者の関係性があると判断されると雇用契約であると認定されます。契約の実態が、業務委託契約なのか雇用契約なのかは様々なポイントから総合的に判断されますが、主に見られるのは以下のようなポイントです。
指揮・命令があるか?
業務を遂行する方法などについて指揮・命令がある場合や、指揮・命令の程度が強い場合は、業務委託契約を交わしていても実質的には雇用契約であると判断されやすくなります。
仕事をする場所・時間について拘束があるか?
仕事をする場所や時間が決められている場合は、業務委託契約を交わしていても実質的には雇用契約であると判断されやすくなります。
業務に代替性はあるか?
代替性のある業務(他の人が代わりにできる業務)を委託している場合は、業務委託契約を交わしていても実質的には雇用契約であると判断されやすくなります。
報酬は何を基準に支払われるか?
仕事の成果物や結果ではなく、仕事をした時間に対して報酬が支払われている場合、業務委託契約を交わしていても実質的には雇用契約であると判断されやすくなります。
同様の業務に従事している者に比べて報酬は高いか?
報酬が、同様の業務に従事している従業員と同程度である場合、業務委託契約を交わしていても実質的には雇用契約であると判断されやすくなります。
器具・機械を誰が負担しているか?
業務に使用する器具・機械などを委託者側が用意している場合、業務委託契約を交わしていても実質的には雇用契約であると判断されやすくなります。
まとめ
今後、企業が業務委託契約を活用するシーンは増えてくると思いますが、業務委託契約が偽装請負と判断されるリスクは避けなければいけません。
正しく業務委託をしているつもりが、意図せず偽装請負になっているケースもあるため、まずは各担当者が業務委託契約や偽装請負について理解を深めることが重要です。
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