出張とは?その労働時間や出張手当などについて徹底解説
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ビジネスシーンにおいては、顧客とのアポイントや社内での集まりなどのために遠方に出張をする機会は度々あります。出張により直接顔を合わせて話をすることができると、コミュニケーションが円滑になり、話がまとまりやすくなることが期待できます。
必要に応じて活用することで、事業成果の向上に繋がる出張ですが、出張では経費や労働時間の管理が発生します。出張に伴い、どのように労働時間を扱うかや手当を支給するかなどを確認しておきましょう。
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出張とは?
出張とは、業務を遂行するために臨時で通常の職場から離れた場所に向かうことを指します。元々は合戦や戦の際に用いられていた戦陣用語であり、戦いのために陣地を他の場所に向かうことを意味していました。戦場に出る際には陣を張っていたことから「出張り」と呼ばれ、それを音読みしたものとして「出張」が使われています。
出張りは室町時代には使われていた言葉ですが、出張は明治時代からビジネスで使われるようになったと言われています。
出向との違いとは?
出張と似ている言葉として、「出向」があります。出向とは、グループ会社や支店など自社グループの他の会社や支社などに異動することを指します。出張はあくまで場所を移動することであるため、社内の籍は変わりません。
(参考:ジョブローテーションの目的とは?企業のメリットとデメリット・ポイントを解説)
出張時の労働時間について
しばしば「移動は労働時間に含まれるのか」といった疑問が生じることがあります。「移動時間が労働時間とならない場合」や「移動時間が労働時間となる場合」、「出張時の残業の扱い」について確認しておきましょう。
移動時間は原則労働時間に含まれない
労働時間とは、一般的に「事業主から指示や管理を受けて業務に取り組んでいる時間」を指します。そのため、移動をするだけである場合には通常の業務中のように拘束される度合いが低くなるため、普段の通勤移動と同様のものであると判断されます。つまり、業務を命じられて遂行していない移動は「原則として労働時間には含まれない」ということになります。
また、移動する時間が始業前や終業後である場合にも「普段の通勤退勤と同様のものである」ということになるため、移動時間が労働時間に含まれません。
加えて、労働基準法の解釈例規では下記のようなものがあり、休日の移動も労働時間には含まれないという解釈がされています。
「出張中の休日はその日に旅行する等の場合であっても,旅行中における物品の監視等別段の指示がある場合の外は休日労働として取り扱わなくても差支えない。」(昭和23年3月17日基発461号,昭和33年2月13日基発90号)
移動時間が労働時間に含まれるケースとは
基本的には労働時間には含まれない移動ですが、移動に業務が伴う場合には労働時間として含まれるケースがあります。例えば、移動中に資料や物品、現金、有価証券などの管理や監視を支持されている場合や、移動中に上司と出張先での業務について打ち合わせをしている場合、上司から作成を指示された資料を作成している場合などは、全てが労働時間に含まれるという扱いをされます。
出張時の残業について
出張時の残業について、残業の種類ごとに以下のような扱いがあります。
■早出残業
早出残業とは、始業時間の前に業務を行うことを指します。先述したように、始業時間前に移動をしていたとしても、業務が発生していない場合には労働時間には該当しないため、残業としてもみなされません。しかし、移動中に何らかの業務が発生している場合や、目的地に到着して業務を行っている場合には、早出残業を行っているとみなされます。
■残業
残業とは、所定の業務時間を超えて業務を行うことを指します。出張先で残業を行った場合には、通常通りに残業としてみなされ、残業代が発生します。また、移動中であっても上司の指示で業務を行っている場合には残業時間として判断されます。
■深夜残業
深夜残業とは、22時〜翌朝5時まで行われる残業のことを指します。出張先でも22時以降に残業をする場合は、深夜残業として深夜割増賃金が発生します。また、移動中であっても上司の指示で業務を行っている場合には残業時間として判断されます。
出張にかかる会社としての費用
出張に伴い、会社としては費用がかかります。出張で発生する費用はその目的や場所によって様々ですが、一般的には「宿泊費」や「出張手当」、「交通費」が出張にかかる費用として挙げられます。それぞれどのようなものなのかをを確認しましょう。
宿泊費
まず、出張で宿泊が発生する場合には宿泊費が費用としてかかります。宿泊費としては、以下のような2種類の生産方法があります。
■実費支給
宿泊にかかる費用を従業員が自身で支払い、後日事業主がその分の支払いを従業員に対して行う精算方法。従業員に対して過不足がなく宿泊費の支給ができる。精算金額の上限が設定されている場合がある。
■定額支給
実際の宿泊費用に関わらず、一定の金額を従業員に対して事業主が支払う精算方法。宿泊施設に依らず一定の金額を支給するため、従業員ごとに公平な扱いをすることができる。
出張手当
出張手当とは、従業員が普段とは違う場所や環境で業務を行うことに対して生じる、肉体的な疲労や精神的な疲労への慰労、食費など発生する雑費の補填などを目的にして支給される手当を指します。企業によっては「出張日当」とも呼ばれており、出張をしなかった場合に従業員が負担しなかったであろう経費を概算して支給します。
■交通費
交通費とは、出張の移動に伴って発生する飛行機や新幹線、タクシーなどにかかる費用を指します。この他にも、出張に必要であるとされる方法であれば、交通費としてみなされます。一般的には、移動に対して合理的な方法であるということが、交通費支給の条件となっているため、徒歩で移動できる距離をタクシーで移動した場合などは交通費がその分支給されない場合があります。
出張手当と出張経費の違いとは
出張手当と類似している言葉として、「出張経費」があります。出張経費とは、出張に伴って発生した交通費や宿泊費などの経費そのもののことを指します。一般的に、出張経費は一度従業員が支払いを行い、後日事業主へかかった分の金額を出張経費として申請し、事業主から支払いが行われます。
出張手当は出張に伴って発生する費用を概算して、一定の金額で支給する手当のことを指しているのに対して、出張経費はかかる金額そのものであることと、支払いの方法が異なるという点に注意しましょう。
出張旅費規程について
出張旅費規程とは、出張に伴って発生する費用の取り扱い方について定める規程です。その内容や金額などについては、法律で厳密に定められているものではないため、事業主が判断して決定することができます。そのため、企業や事業主によってその内容や金額は様々なものがあります。ここでは、一般的なメリットや策定のステップなどをご紹介します。
出張旅費規程策定のメリット
出張旅費規程を策定することで、下記のようなメリットが生まれます。
■従業員が出張の手配をしやすくなる
出張旅費規程には、交通費や宿泊費、食事代などに対してその範囲や金額などが定められています。そのため、出張の手配や準備をする従業員は、どの程度の金額帯で出張を行えば良いのかが判断しやすくなり、手配が行いやすくなるでしょう。
■出張手当を支給することで、従業員のモチベーションが向上する
出張旅費規程では、出張で発生する費用や経費を補填するための出張手当についても取り決めを行います。出張手当は非課税所得であるため、従業員は出張をすることへのハードルが低くなり、業務に対するモチベーションも向上しやすいでしょう。
■経理担当者が管理をしやすくなる
出張旅費規程では、出張に関するルールを決めることになります。そのため、経理担当者が判断する基準ができることで、対応を行う精算対象が規程に沿っているかが分かりやすくなります。
出張旅費規程策定のデメリット
出張旅費規程を定めることで多くのメリットを得られる一方で、「経費が増える」というデメリットも生じることがあります。出張旅費規程は出張に関するルールを決めますが、そのルールは従業員だけではなく、企業も従うことになるものです。
出張旅費規程を定めない場合には役員のみ出張手当などを受け取ることができますが、出張旅費規程を定めると全ての従業員に対して出張手当を支給する必要があることになるため、会社としての経費が増えることになります。
出張旅費規程策定のステップ
では、どのような手順で出張旅費規程を策定すれば良いのでしょうか。一般的な策定のステップをご紹介します。
■出張の目的や定義を決める
まず、自社における出張の目的や定義を明確にして、出張旅費規程の活用目的を明らかにします。どのような場合が出張に該当するのかといった、出張の条件や基準を設定します。
■出張の申請方法を定める
出張の目的や定義と共に、出張やその費用申請・承認の方法を定めます。申請方法としては、まずは申請のルートを定めましょう。役職ごとに「自分は誰に対して出張の申請をすれば良いのか」といったことが、従業員が明確になるように決定します。また、「いつまでに、どのような方法で」といった申請の具体的な期日や方法も決めておきましょう。
■出張旅費規程の適用範囲を決める
出張旅費規程の適用範囲を決めます。一般的に、出張旅費規程は全ての従業員が該当することになりますが、パート・アルバイトのように非正規社員の出張に対してはどのような取り扱いをするのかについても決めるようにしましょう。また、金額については一律にする必要はなく、「部長以上は〜〜円、一般社員はーー円」というように、役職に応じて金額の差をつけても良いでしょう。
■支給する金額を定める
交通費や宿泊費、出張手当など、支給する金額を決めます。交通費は新幹線のグリーン車を使用しても良いのかや、宿泊費は上限いくらまで許可するのかなどを決定します。一般的には、役職に応じて出張に伴って支給する金額上限は役職が上になるほど高くなる設定が行われます。
■規程のフォーマットを活用する
出張旅費規程で必要な項目を考えた後には、それをまとめる必要があります。その際には、フォーマットを活用して、抜け漏れなく必要事項を記載できるようにしましょう。1から作る場合よりも、作業の煩雑さを縮減することができます。
出張旅費規程における節税の為に注意したいこと
出張旅費規程を設定した上で、出張経費の支払いや出張手当の支給を行うと、通常の給与支給とは異なり、その金額は非課税所得として取り扱われます。そのため、法人税の対象となる金額を減らすことができるため、節税に繋がります。しっかりと節税をするために、出張旅費規程を作る際には下記のようなことに注意しましょう。
■交通手段を規定する
基本的に、どの交通機関であるかに関わらず交通費や宿泊費、出張手当は定額支給をすることができます。しかし、「どのような移動手段まで使用することができるのか」といった交通手段の規定を設定する必要があります。例えば、「部長以上はビジネスクラスを利用することができる」といったものを規定します。
■出張経費の精算に伴う書類を保管する
出張旅費規程による出張経費や出張手当の支払いにおいても、領収書は残しておきましょう。出張したということが証明できる書類が無い場合には、出張旅費として会計処理を行うことができません。出張した日付や出張先の場所、使用した交通機関、訪問した相手などをまとめて書類にします。一般的には、定期的に出張旅費の精算書を従業員が作成して、経理や担当部署などに提出することになります。
出張費を削減する方法とは
出張に伴う費用は非課税所得とすることができますが、出張の費用が大きくなると経営的には財務面での負担が大きくなることになります。では、出張費を削減するためにはどのような方法があるのでしょうか。代表的な方法をご紹介します。
①出張機会の削減
出張する機会が多くなると、交通費がかさんでしまいます。そのため、1回の出張でできるだけ多くの予定を消化することができると、交通費を抑えることができます。予定の調整によっては宿泊日数が増えることになりますが、何度も出張することで生じる交通費を考えた場合には全体の出張費を安くすることができるようになります。
②移動手段の見直し
移動手段を見直すことで、交通費を安くすることができます。新幹線や飛行機なども、キャンペーンや早割などで通常の金額よりも安く利用することができるため、出張の日付や予定が決まったら利用ができるかを確認しましょう。また、飛行機については格安航空券や航空券と宿泊のセット販売などもあるため、部署やチームで共有するとより出張費を抑えることができます。
③出張手配を外部に委託する
企業の出張手配を代行で行ってくれるサービスもあります。社内で行っていた出張の手配や準備を、出張の手配を専門として行っている代行会社に委託することも、出張費を抑える1つの方法です。出張手配の業務を委託する費用はかかりますが、専門にしている会社に任せることで、従業員が検討できていなかったより安価な交通手段や宿泊手段などを提示・手配してくれます。
④Web会議の導入
新型コロナウイルス蔓延の影響により、オンライン会議ツールを活用したWeb会議が一般的になってきています。出張においても、Web会議やテレビ会議を活用することでその費用を抑えることができるようになります。無理に出張をする必要が無いものは、Web会議を活用して新幹線や飛行機といった交通費、宿泊費などを削減しましょう。
⑤出張管理システムの導入
出張管理システムとは、出張の申請からその手配、精算の処理まで一貫して行ってくれるシステムのことです。出張管理システムを活用することで、割安で新幹線や飛行機、ホテルなどを予約することができるため、システムの利用料を加味しても全体の出張費を安く抑えることができる場合があります。
出張によって取引先に与えられるメリットとは?
2020年新型コロナウイルス感染拡大に伴い、リモートワークの動きが加速化しました。ビジネスにおいては出張の機会が減少し、Web会議を活用したやり取りが一般的となっています。しかし、そのような時代において、出張という手段を活用することによって、取引先に与えることができるメリットが多いことも事実です。
株式会社リンクアンドモチベーションでは人間を「限定合理的な感情人である」と捉え、「金銭報酬」だけでなく、「感情報酬」を満たすことが重要であると考えています。
ここでは、実際に出張によってどんな「感情報酬」のメリットを取引先に提供できるかについて紹介します。
まず、「感情報酬」とは以下の4つに分類することができます。
貢献欲求:人の役に立ちたい、感謝の言葉を言われたい
親和欲求:良好な人間関係のもと、働きたい
承認欲求:誰かに認められたい、表彰されたい
成長欲求:様々な知識や技術を吸収したい
次に、出張によって相手に提供できる感情報酬の一例は下記の通りです。
親和欲求:オンラインでは表出しづらい集団が持つ雰囲気や世界観
承認欲求:足を運び、時間を使ってでも直接お会いしたいという気持ち
以上のように、リモートワークの動きが加速化する現代において、オンラインではなく出張による対面での接触機会により、相手の「感情報酬」を満たすことができます。状況に応じて適切に使い分けていくことがポイントになります。
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記事まとめ
出張とは、通常の業務を行う場所とは別の場所に出向くことです。出張により、直接顧客やチームメイトと顔を合わせることができるため、結果として業務の効果を高めることが期待できます。出張で発生する移動は基本的に労働時間に含まれませんが、移動中に物品の管理や上司からの指示による業務などが発生している場合には、労働時間としてみなされます。出張費は非課税所得とすることができるため、出張旅費規程を策定して適切に出張費を調整しましょう。
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出張に関するよくある質問
Q1:出張中の残業代ってどうなる?
A1:出張時の残業について、残業の種類ごとに以下のような扱いがあります。
■早出残業
始業時間前に移動をしていたとしても、業務が発生していない場合には労働時間には該当しないため、残業としてもみなされません。しかし、移動中に何らかの業務が発生している場合や、目的地に到着して業務を行っている場合には、早出残業を行っているとみなされます。
■残業
出張先で残業を行った場合には、通常通りに残業としてみなされ、残業代が発生します。また、移動中であっても上司の指示で業務を行っている場合には残業時間として判断されます。
■深夜残業
出張先でも22時以降に残業をする場合は、深夜残業として深夜割増賃金が発生します。また、移動中であっても上司の指示で業務を行っている場合には残業時間として判断されます。
Q2:出張費の相場は?
A2:出張費の相場としては、役職によって変動する場合がありますが、国内・国外でそれぞれ下記のようになります。
■国内出張
・宿泊費:9,000円〜15,000円程度
・出張手当:1,900円〜3,000円程度
■国外出張
・宿泊費:15,000円〜20,000円程度
・出張手当:4,500円〜5,000円程度