人事異動とは?その目的からメリット・デメリットなどを徹底解説
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目次[非表示]
- 1.人事異動とは
- 2.人事異動を行う目的
- 3.人事異動の種類
- 4.人事異動で検討する項目
- 5.人事異動の時期
- 6.人事異動のメリット
- 7.人事異動のデメリット
- 8.実施前に知っておくべき基本
- 9.人事異動の手順
- 10.実施における注意点
- 11.人事異動の情報漏洩を防ぐ方法
- 12.組織改善ならリンクアンドモチベーション
- 13.記事まとめ
- 14.人事異動に関するよくある質問
期末や期初になると、多くの企業では人事異動が行われます。人事異動は配属や勤務地が変更されるため、従業員にとっては大きなイベントであると言えます。人事異動を行うことで、組織の活性化や人材の育成などを図ることができますが、実は人事異動を行うためにはいくつか気をつけるべきことがあります。
本記事でご紹介する人事異動のメリットやデメリット、異動者の決め方、気をつけるべきポイントなどを把握して、自社の人事異動の検討材料にしてください。
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人事異動とは
人事異動とは、企業が人事権を行使して従業員の配置や勤務地、その他の勤務条件などを変更することを指します。ここで、人事異動が組織戦略の中でどのような位置付けなのかを、全体像と共に把握しておきましょう。組織というものを捉える際には、下図のように「5つのM」を用いることが効果的です。
(参考:組織を捉える5つのM)
5つのMとは、下記の英語の頭文字をとったものであり、組織施策を考える際には基本的にこの5つのMに沿って検討や実行が行われます。
■5つのMの内容
・Message:事業政略
・Motivation:動機形成
・Mission:役割設計(人事異動はこの部分にあたります)
・Membering:人材開発
・Monitoring:管理制度
人事異動は、この中の「Mission(役割設計)」に関する組織施策です。人事異動を行うことで、組織の中での役割の再編やコミュニケーションの設計を変更することなどができます。
■人事異動の分類
人事異動に厳密な定義はありませんが、人事異動は「企業内での人事異動」と「企業間での人事異動」に分けることができます。企業内での人事異動は、企業の中で配属や役職などが変更することであり、企業間での人事異動はグループ会社間や関係会社への出向や転籍が該当します。
つまり、人事異動は組織内での人材の配置変更から、1つ以上の組織をまたがって行われるものまで様々なものがあることが分かります。企業では、企業内での人事異動と企業間での人事異動を目的に応じて使い分けられています。
人事異動を行う目的
人事異動はいわば組織のフォーメーションを変更することにあたります。スポーツでも目的や作戦によってフォーメーションは変わりますが、企業における人事異動でも同様のことが言えます。人事異動によりフォーメーションを変更することで、以下のようなことを実現しようとしています。
①組織開発のため
組織開発とは、ビジョンや事業計画の実現のために、組織の中の課題を解決したり強みを伸ばしたりすることを指します。先述したように、人事異動は組織の中の「役割設計」を変更する施策であるため、組織開発を目的としたものであることが分かります。
様々な資質を持っている人材の能力を発揮して、組織開発を実現するために、人材配置の変更や部署の統廃合などを戦略や計画に沿って実行します。
②人材育成のため
人事異動は人材育成を目的としても実施されています。特に、求める人材像として「ジェネラリスト」を掲げている企業では、経験を積むためやスキルアップのためにジョブローテーションが積極的に活用されています。ここで、ジェネラリストとは1つの分野を専門的に業務として行うのではなく、広い範囲での知識や経験を持っている人材のことを指します。
人事異動を行うことで異なる環境での経験を積むことができるため、ジェネラリストとして様々な方面での知識やスキルを身につけることができます。また、人材の特性や性格などを考慮してそれに合った部署やチームに配属することで、それまで以上のパフォーマンスを発揮してもらうことができるようになります。
③スキル管理のため
スキル管理とは、企業の中で従業員が獲得しているスキルを把握して、全体を適切なバランスにすることを指します。人事異動を行うことで、組織内または組織ごとのスキルのバランスを整えることができます。
④健全性の維持のため
同じメンバーで長い期間同一の組織で行動していると、チームワークの向上が期待できる一方で、組織の硬直性が高まる場合があります。特に、組織に対して経営から適切なメッセージが届いていない場合には、組織内での独自のルールが作られ、場合によっては「経営 VS 現場」といった構図になる可能性があります。この状態では、暗黙のルールにより従業員が萎縮してしまったり、不誠実な行動が目立ったりといった事態に発展しやすくなります。
人事異動により適切に人材の配置転換を行うことで、組織の硬直性を解いて新陳代謝を促すことができます。また、心身の負担が大きい役割に対しては、担当する従業員の健康を守るために、定期的に人材の入れ替えが行われているケースもあります。
⑤人材の最適配置のため
市場の環境変化や顧客のニーズの多様化などに応じて、企業は適切なフォーメーションをとることが必要です。特に、新規事業の立ち上げや新しい部署の創設などのタイミングでは、現在の組織体制を維持することが難しい場合があります。その際には、人事異動を活用して従業員の特性に応じて新しい組織体制をとることが重要です。
また、昨今はタレントマネジメントという言葉が注目されています。タレントマネジメントとは、従業員の強みや弱みに合わせて人材配置や業務設計を行うことを指しますが、改めて従業員の特性を把握して人事異動を行うことで、最適な配置を実現することができるでしょう。
人事異動の種類
先述した通り、人事異動には「企業内での人事異動」と「企業間での人事異動」があります。では、具体的にはそれぞれどのような内容なのでしょうか。該当するものを確認していきましょう。
■企業内の人事異動
企業内での人事異動には、下記のようなものが該当します。
■昇格
昇格とは、一般的には等級が上がることを指します。等級は企業によってはグレードやランクとも呼ばれていますが、昇格によりそのレベルが上がります。多くの場合は昇格に伴って給与も上がるため、より広い範囲での影響力の発揮や、専門的なスキルが求められるようになります。また、企業によっては、役職、職位が上がることを昇格と呼ぶこともあります。
■降格
降格とは、昇格とは対照的に等級が下がることを指します。企業内で定められた要件に沿って降格が検討されますが、一般的にはネガティブなイメージがあるかと思います。
もちろん、職務を全うできない場合や、企業に対して何か損害を与えた場合の処遇として降格が行われることはありますが、従業員のライフステージやキャリアイメージに合わせて、適切に役割や責任を調整する意味合いでも降格が適用される場合もあります。
■部署異動
部署移動とは、配属部署を変更することを指します。従業員の特性に応じた部署移動もあれば、キャリアステップに応じた部署移動もあります。
■転勤・拠点異動
勤務地や拠点が変更になることを指します。転勤や拠点移動は転居が必要である場合もありますが、必ずしもそうしなければ転勤に当てはまらないということはありません。同じ県内で私生活に影響を与えない範囲での移動も転勤として含まれます。
■企業間の人事異動
企業間での人事異動には、下記のようなものが該当します。
■出向
出向とは、グループ会社や関係会社の部署に異動することを指します。出向では異なる企業での業務を担うことになりますが、出向元と雇用契約は維持した状態になっています。そのため、雇用条件などは出向元と結んだ契約が適用されます。
■転籍
転籍とは、出向とは異なり新たに転籍先の企業と雇用契約を結んで異動することを指しています。元々在籍していた企業を退職して転籍先の企業と新しく雇用契約を結び直すことになるため、雇用条件は転籍先の企業と締結したものが適用されることになります。
人事異動で検討する項目
様々な目的や種類がある人事異動ですが、実際に人事異動を行う際には多くの項目が検討の材料として用いられます。企業の経営戦略や人材育成、現場での必要性などが検討する項目として挙げられますが、代表的なものをいくつかご紹介します。
■人材の資質
人材の資質とは、以下のように人材に付随する特性や状況のことを指します。
■年齢
■勤続年数
■心身の健康状態
■キャリアイメージ
■現在の業務の特性
■等級や役割
■これまでの人事評価
■保有しているスキルや資格
■賞罰の状況
■採用時の選考状況や評価
■昇格試験での結果
■休暇の取得状況
■職場での人間関係
人事異動を検討している段階では、上記のような項目が検討材料として用いられやすいでしょう。スキルや経験はもちろんですが、今後のキャリアイメージや職場での人間関係といったものが考慮され、多面的に人事異動による効果を考えます。
その他の検討要素
人材の資質以外にも、以下のような項目が人事異動の検討要素として挙げられます。
■自社の目指す姿に伴う求める人材像のイメージ
■今後の事業計画とそれに伴う人員計画
■現在の欠員状況や人員補充の希望
■自社のポリシー
■従業員の家庭の状況
■従業員自身の希望
一般的には、従業員は人事異動の業務命令に反することはできません。しかし、多くの場合は従業員の家庭の状況や希望を把握した上で人事異動の可否が決定されます。
人事異動の時期
人事異動が実施される時期として、定められたものはありません。そのため、極端に言えば1年の中ではいつでも人事異動が実施される可能性があると言えます。しかし、一般的な傾向としては企業の事業年度に応じて全社的な人事異動が行われることが多いため、期末に人事異動の決定がされて期初に実施されることが多いでしょう。
特に、多くの日本企業では決算期の付近で人事異動を検討・実施しています。決算月は企業によって異なりますが、顧客や取引先との兼ね合いで一般的には3月や9月を決算月としている場合が多いでしょう。この場合は、決算月の翌月である4月や10月が人事異動が実施される時期となります。さらに詳細な時期だと、4月1日や10月1日付けでの異動が執り行われます。
人事異動のメリット
■企業側のメリット
人事異動による企業側のメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
■組織の活性化
人事異動を行うことで、組織の新陳代謝を促すことができるため、組織の活性化に繋がります。
■人材配置の最適化
従業員の特性や指向性、部署の特性などに応じて人事異動を行うことで、人材配置の最適化を図ることができます。
■事業計画の実現
人事異動を行うことで、短期的な組織の活性化を行うと共に、中長期的な事業計画の実現を狙うことができます。
■従業員側のメリット
人事異動による従業員側のメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
■キャリアアップが実現できる
人事異動で新しいチームや部署に配属されて、新しい業務を担当することで従業員は新たなスキルや経験を得ることが期待できます。スキルアップや経験値の増加により、より広い範囲で自身のキャリアを考えることができるようになるでしょう。
■新しいコミュニティを形成できる
新しい人間関係を築くことはストレスがかかることではありますが、同時にそれまでとは違った特性や性格の人たちと関わることで新しいコミュニティを作ることができるようになります。
人事異動のデメリット
■企業側のデメリット
人事異動を行うことでの企業側のデメリットとして、引き継ぎ業務の発生や従業員のモチベーションの低下などが挙げられます。人事異動のタイミングでのフォローが十分でない場合には、顧客の喪失や従業員のパフォーマンスの低下、退職などに繋がる可能性があるため、注意が必要です。
■従業員側のデメリット
人事異動を行うことでの従業員側のデメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
■スキルが身につきにくい
頻繁な人事異動が行われると、十分に専門的なスキルを身につける前に次の部署に異動する可能性があります。その場合は、専門性が身に付かなくなるため、その後のキャリアイメージが考えにくくなることがあります。
■環境に適用するストレスがかかる
新しい人間関係や新しい業務内容に慣れるまでは、どうしてもストレスを感じやすいものです。それまでとは異なるチームの文化や風土、コミュニケーションのスタイルなどを掴むために心身の負担がかかる可能性があります。
(参考)人事異動に際して持っておくべき観点
人事異動は、計画や発令を行うだけではなく、異動後のフォローを実施することが重要です。人事異動では多くの場合、従業員はそれまでとは違った環境に入ることになるため、フォローが十分でないと職場内での孤立やストレスの原因になる可能性があります。フォローの方法としては、従業員同士の相互理解の場を設けることや、メンター制度の活用などが挙げられます。
その下敷きとなっている考え方が「組織は要素還元できない協働システム」というものです。
例えば5人の組織があるとすると、5人の個が集まっている組織と捉えるのではなく、10本のコミュニケーションがある組織と捉えようという考え方です。この考え方に立つと仮にメンバーが1名入れ替わっただけでも10分の4のコミュニケーションラインが生まれ変わることとなり、組織として大きな変化だと捉えることができます。
このような背景から、メンバーが加入した時や入れ替わった際には丁寧にフォローアップを行い、それぞれのコミュニケーションラインにおいて関係性を育むことが重要となります。
実施前に知っておくべき基本
日本の法律では、人事権を行使する際にいくつかの規定が設けられています。人事異動を行う前に基本的な法律を把握しておくことで、人事異動に関するトラブルの発生を防止することができるでしょう。
■性別による差別の禁止
人事異動が性別による差別にあたる場合には、法律に抵触する可能性があります。性別による雇用機会や労働条件については、以下のように男女雇用機会均等法で定められています。
■男女雇用機会均等法
第六条 事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。
一 労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練
二 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの
三 労働者の職種及び雇用形態の変更
四 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新
(出典:e-Gov法令検索「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」)
■出向命令権の濫用の禁止
労働契約法の第十四条では、出向に関して以下のような規定が明記されています。これに反した出向命令は、企業が人事権を濫用しているとみなされて無効になる場合があります。
■労働契約法
第十四条 使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。
(出典:e-Gov法令検索「労働契約法 第十四条」)
従業員に出向を命じる場合には、出向の理由や出向する従業員の選定などで、適切な説明を行うことが求められています。
■育児・介護に対する配慮
人事権を行使して人事異動を行う際には、従業員の育児や介護に対する影響を考慮する必要があります。人事異動により従業員の育児や介護に支障が生じてその継続が困難になる場合には、事業主はその人事異動について従業員に対して配慮をすることが求められます。
■育児・介護休業法
第二十六条 事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。
(出典:e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)
人事異動の手順
ここまで、人事異動のメリットやデメリット、注意しておくべき項目などについてご紹介してきました。では、実際に人事異動を検討・実施するためにはどのような手順を踏んでいけば良いのでしょうか。ここからは、基本的な人事異動の進め方についてご紹介します。
■組織状態の調査
人事異動を行う前に、まずは組織状態の調査を行いましょう。全社や部署、チームが現在どのような状態なのかを把握するために、ヒアリングの実施やエンゲージメントサーベイのようなアンケート調査を実施します。把握するべき項目としては、エンゲージメントの状態や事業計画の進捗状況などが挙げられます。この際に、どのような人材がマッチするのかなどをイメージしておくと良いでしょう。
■必要な人材要件の整理
組織状態を把握した後には、どのような人材が人事異動の対象となるのかを考えます。この際には、把握した組織の課題や特徴などと共に、今後の事業計画や人員計画なども考慮します。
その上で、どのような役割が必要か、どのような人材が適しているのかなどの人材要件の整理を行いましょう。要件を整理した後には、人員計画と改めて照らし合わせると、整合性を確認することができます。
■候補者の洗い出しと選定
必要な人材要件の整理ができたら、実際に人事異動の候補者となる従業員を検討します。原則として従業員は人事異動の命令に従うことが求められますが、異動後にしっかりとパフォーマンスを発揮してもらうためには、先述したような人材の資質や状況を把握して考慮することが大切です。
また、異動先の部署やチームでどのような役割を担ってもらうかについて考える必要がありますが、異動者が抜けた後に異動元の部署やチームがどのような状況になるかも考慮しましょう。
■内示
内示とは、全社員に対して正式な異動の辞令を発令・共有する前に、異動の対象者に対して事前に通知や共有を行うことを指します。異動者に対しては、直属の上司から異動の理由や異動先で期待している役割、具体的な業務の内容などを説明することになります。内示の段階では正式な発表ではないため、辞令よりも先に情報が漏れないように注意喚起を行う必要があります。
■辞令
辞令とは、企業の中で行われる昇格や降格、部署移動などの業務命令の実行を、正式に発令することを指します。辞令では、あらかじめ内示で伝えていた異動先の部署やチーム、期待している役割、業務内容、勤務地などを交付します。辞令のタイミングで初めて全社員に対して人事異動の内容が公開されることになるため、この段階までに情報漏洩が起こらないようにしましょう。
■フォローの実施
人事異動は、辞令が発令されたら終わりというわけではなく、異動を行った後に本人や周囲に対してフォローを行うことが大切です。人事異動の対象者はもちろん、異動先や異動元の従業員はそれまでとは異なる環境や人間関係、業務内容の中で働くことになります。そのため、フォローが十分でない場合には、ストレスや負担が大きくなってしまい、上手く組織が機能しなくなる可能性があります。
挨拶と共に従業員同士が相互理解をできる場を設けたり、面談を実施したりといった施策を実施することで、フォローの体制を整えることをおすすめします。
実施における注意点
人事異動がうまく従業員に受け入れられない場合には、異動者だけではなく周囲の従業員のモチベーションが低下してしまう可能性があります。人事異動に対する体制ややり方が不十分だと、せっかく異動を実施してもパフォーマンスが発揮されずに、場合によっては離職の発生に繋がります。そのため、以下のような注意点を考慮して人事異動を行いましょう。
■従業員は異動を拒否できない
雇用契約により、従業員は原則として人事異動の業務命令を拒否することができません。多くの場合は就業規則の中で、「業務の都合により、勤務地や部署などの変更を命じることがある」といった旨の文章が記載されているため、人事異動は業務命令となります。
従業員は人事異動に従うことが前提とはなりますが、立場を利用して従業員の状況を無視した人事異動は結果として企業全体の生産性を低下させることに繋がるため、しっかりと背景の説明やフォローの実施を行うようにしましょう。
■異動命令が無効となる条件
上記のように、従業員は人事異動の命令を拒否することはできませんが、人事異動が人事権の濫用にあたる場合や従業員が著しく不利益を被る場合などには異動の命令が無効となる可能性があります。その場合には、従業員は業務命令を拒否することができ、人事異動の命令に従わなくても良いことになります。人事異動の命令が無効となる条件としては、以下のようなものが挙げられます。
■従業員の思想や信仰、その他の個人的な要素に対して差別的な扱いであると判断される場合
■従業員の性別や家庭環境などを理由として不利益な条件を提示していると判断される場合
■従業員の労働条件が著しく悪化すると判断される場合
■従業員の私生活に大きな不利益が生じると判断される場合
■業務遂行をする上で必要がないと判断される場合
■業務内容や勤務する場所が合理的な範囲ではないと判断される場合
人事異動の情報漏洩を防ぐ方法
人事異動に関する情報は、その後の部署やチーム内での関係性や従業員の心理的な負担、企業の事業戦略などに関係するものであるため、正式に辞令が発令されるまでは機密情報となります。人事情報が漏洩した場合には、対外的な信用や評価の低下や、社内での無用な混乱を生み出すことなどに繋がります。
では、人事異動の情報漏洩を防ぐためには、どのようなことに気をつければ良いのでしょうか。初歩的な方法として、「内示から辞令までの社内ルールを整備して共有すること」が挙げられます。人事異動の情報に関するルールとして、以下のようなものを考えておくと良いでしょう。
■内示〜辞令までの社内での流れを整理する
■内示から情報を秘匿する期間の設定をする
■内示の具体的な方法を明確にする
■異動を実施するまでの動き方を明確にする
■情報漏洩をしてはいけない理由を共有する
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記事まとめ
人事異動とは、人事権を行使して従業員の配属や勤務地などを変更することを指します。人事異動は組織変革の中でも、組織内での役割設計やコミュニケーション設計に関わるものであり、いわゆるフォーメーションの変更にあたります。
人事異動を行う際には、従業員に対する差別や不利益の押し付けにならないように気をつける必要がありますが、人事異動により組織の活性化や人材育成など多くのメリットに繋がります。しっかりと人事異動のフローを整理して、効果的な人事異動を実行できるようにしましょう。
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人事異動に関するよくある質問
Q1:内示とは?
A1:内示とは、人事異動の対象者に対して、全体の正式な辞令発令の前にその内容を伝えることです。異動者に対しては、直属の上司から異動の理由や異動先で期待している役割、具体的な業務の内容などを説明することになります。内示の段階では正式な発表ではないため、辞令よりも先に情報が漏れないように注意喚起を行う必要があります。
Q2:辞令とは?
A2:辞令とは、企業の中で行われる昇格や降格、部署移動などの業務命令の実行を、正式に発令することを指します。辞令では、あらかじめ内示で伝えていた異動先の部署やチーム、期待している役割、業務内容、勤務地などを交付します。辞令のタイミングで初めて全社員に対して人事異動の内容が公開されることになるため、この段階までに情報漏洩が起こらないようにしましょう。