組織改善・開発のフレームワーク8選!企業事例や手順を解説
組織の成長には、現状を分析し、改善策を実行に移す組織改善が欠かせません。しかし、闇雲に進めても効果は薄いでしょう。そこで役立つのが、組織改善のためのフレームワークです。
本記事では、組織改善に役立つ様々なフレームワークを解説し、導入事例も交えながら、組織の成長を加速させるためのヒントを提供します。
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組織改善・開発に役立つフレームワーク8選
組織改善・組織開発を行う際には、0から自分で考えると時間と労力が過剰にかかってしまうことがあります。そうならないために、まずは基本的なフレームワークを踏まえて考えてみることをお勧めします。ここでは、代表的な組織改善・開発のフレームワークをご紹介します。
マッキンゼーの7S
概要と目的
マッキンゼーの7Sは、組織を7つの重要な要素(戦略、構造、システム、スキル、スタッフ、スタイル、共有価値観)に分類し、これらの要素が互いにどのように影響し合い、組織全体の機能に寄与しているかを詳細に分析するための包括的なフレームワークです。
このモデルは、組織のあらゆる側面を考慮に入れることで、組織全体の整合性を綿密に評価し、効果的な変革を成功させるための具体的な指針を提供することを主な目的としています。7Sモデルを適用することで、組織の複雑な内部構造をより深く理解し、持続可能な改善策を見出すことが可能となります。
期待できる効果
7Sフレームワークを活用することで、組織の現状を多角的かつ包括的に把握し、各要素における強みと弱みを明確に特定することができます。これにより、組織の潜在的な課題や改善の機会を早期に発見することが可能となります。
さらに、7つの要素間の相互関係を詳細に分析することで、各要素間の不整合や矛盾を特定し、組織全体のバランスと効率性を改善するための具体的かつ実行可能なアクションプランを策定することができます。
ミッション・ビジョン・バリュー
概要と目的
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)は、組織の根幹を成す3つの要素を定義するフレームワークです。ミッションは組織の存在意義や社会的使命を、ビジョンは組織が目指す将来の理想像を、バリューは組織の価値観や行動指針を表します。
このフレームワークは、組織の進むべき方向性を明確に示し、従業員のエンゲージメントを高め、一貫性のある強固な組織文化を醸成することを目的としています。
期待できる効果
MVVを効果的に活用することで、組織に多岐にわたる利点をもたらします。まず、組織の目的意識を明確に共有することで、従業員のモチベーション向上や組織への帰属意識の醸成に繋がります。
これにより、個々の従業員が組織の大きな目標に向かって自発的に行動するようになります。また、MVVは重要な意思決定の際の指針となり、組織全体の行動を一貫性のあるものに統一することができます。
さらに、採用プロセスや人材育成プログラムにMVVを組み込むことで、組織の価値観に共感し、文化に適合した人材の獲得や育成が可能になります。
OKR
概要と目的
OKR(Objectives and Key Results)は、組織の目標設定と達成プロセスを体系化するフレームワークです。具体的には、野心的かつ定性的な目標(Objectives)と、その達成度を定量的に測定するための主要な結果指標(Key Results)を設定します。
このフレームワークは、組織全体の方向性を明確にし、各部門や個人の目標をそれに整合させることで、効果的な目標達成を促進します。OKRの主な目的は、目標の明確化と共有、進捗の可視化と管理、そして最終的な成果の客観的評価です。
期待できる効果
OKRの導入により、組織は多面的な効果を得ることができます。まず、組織全体の目標と個人の目標を明確に連動させることで、従業員の主体性と当事者意識が高まり、自発的な行動が促進されます。
また、定期的な進捗確認とフィードバックのサイクルにより、目標達成に向けた迅速な軌道修正が可能になります。これにより、組織の俊敏性と適応力が向上します。さらに、目標達成度を客観的かつ定量的に評価できるため、公平で透明性の高い人事評価システムの基盤としても活用できます。
タックマンモデル
概要と目的
タックマンモデルは、チーム形成と発展のプロセスを5つの段階(形成期、混乱期、統一期、機能期、散会期)で説明する包括的なフレームワークです。
このモデルは、チームの動的な成長過程を詳細に分析し、各発展段階における特徴的な課題や機会を明らかにします。
その主な目的は、チームリーダーやメンバーがチームの現状を正確に把握し、各段階に応じた適切なリーダーシップスタイルや介入戦略を選択・実行することにあります。これにより、チームの効果的な発展と高いパフォーマンスの実現を促進します。
期待できる効果
タックマンモデルの適用により、組織は多面的な利点を得ることができます。まず、チームの現状を客観的かつ体系的に評価し、各発展段階における固有の課題や必要なサポートを的確に特定することが可能になります。これにより、リーダーは状況に応じた効果的なコミュニケーション戦略を立案し、チームの成長を最適に促進するための介入を適時に行うことができます。
PDCAサイクル
概要と目的
PDCAサイクルは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4つの段階を循環的に実施することで、持続的な改善を追求するマネジメントフレームワークです。
このサイクルを通じて、業務プロセスやプロジェクトの効率性を向上させ、組織の目標達成に向けた取り組みを最適化することを主な目的としています。各段階で得られた知見を次のサイクルに活かすことで、組織全体の学習と成長を促進します。
期待できる効果
PDCAサイクルの導入により、業務プロセスやプロジェクトの効率化と品質向上が実現されます。継続的な改善活動を通じて、目標達成に向けた取り組みの精度が高まり、成果の最大化が期待できます。
さらに、このサイクルを繰り返すことで、組織メンバーの問題解決能力や改善意識が醸成され、組織全体の学習能力と適応力の向上にも寄与します。長期的には、変化の激しいビジネス環境への対応力を強化し、持続可能な競争優位の確立につながります。
バリューチェーン分析
概要と目的
バリューチェーン分析は、企業の事業活動を製品やサービスの価値創造に関わる一連のプロセスとして捉え、それらを個別の活動(例:調達、製造、物流、マーケティング、販売、アフターサービスなど)に分解し、各段階における強み・弱みを詳細に分析するフレームワークです。
この手法を用いることで、企業は自社の競争優位性の源泉を特定し、より効果的な戦略策定に活用することができます。さらに、各活動間の相互関係や連携の効率性も評価することで、バリューチェーン全体の最適化を図ることが可能となります。
期待できる効果
バリューチェーン分析を実施することで、企業は各活動におけるコスト構造や価値創造プロセスを明確に可視化し、理解を深めることができます。また、競合他社との比較分析を通じて、自社の強みと弱みを客観的かつ包括的に把握することが可能となります。
これにより、コスト削減の機会や差別化戦略の立案など、競争優位性を高めるための具体的かつ実行可能なアクションプランを策定することができます。
経験学習モデル
概要と目的
経験学習モデルは、個人の学習プロセスを4つの連続的な段階(具体的経験、内省的観察、抽象的概念化、能動的実験)で説明する包括的なフレームワークです。
このモデルは、単なる経験の蓄積ではなく、その経験を深く理解し、概念化し、そして新たな状況に適用する過程を体系化しています。
具体的には、まず実際の経験を積み(具体的経験)、その経験を多角的に振り返り(内省的観察)、そこから得られた洞察を抽象的な概念や理論に昇華させ(抽象的概念化)、最後にその学びを新たな状況で試す(能動的実験)というサイクルを提唱しています。
期待できる効果
コルブの経験学習モデルを適用することで、個人は経験を単なる出来事として捉えるのではなく、そこから深い洞察と学びを引き出すことが可能になります。
このモデルは、経験の振り返りと内省を促進し、個人の自己認識と自己理解を深める機会を提供します。また、抽象的概念化のプロセスを通じて、個別の経験から一般化可能な知識や理論を導き出す能力を養います。
さらに、能動的実験の段階では、学んだことを実践に移す機会を設けることで、問題解決能力や創造性の向上につながります。
SWOT分析
概要と目的
SWOT分析は、組織の内部環境(強み Strengths、弱み Weaknesses)と外部環境(機会 Opportunities、脅威 Threats)を体系的に評価し、戦略策定のための包括的な洞察を得るためのフレームワークです。
この手法は、組織の現状を多角的かつ客観的に把握し、将来の方向性を明確にすることを主な目的としています。内部要因と外部要因を同時に分析することで、組織の競争力や市場ポジションを総合的に理解し、効果的な戦略立案の基盤を提供します。
期待できる効果
SWOT分析の実施により、組織は自身の強み・弱み、そして直面する機会・脅威を明確かつ構造化された形で把握することができます。これにより、戦略策定における意思決定プロセスが大幅に改善され、より根拠に基づいた戦略立案が可能となります。
具体的には、組織の強みを最大限に活用し、弱みを戦略的に克服するための具体的かつ実行可能なアクションプランの策定が促進されます。さらに、外部環境の変化を機会として捉え、潜在的な脅威に対して事前に対策を講じることで、組織の持続的な成長と競争優位性の確立を図ることができます。
組織開発・改善にフレームワークを活用する際の注意点
組織開発・改善にフレームワークを活用する際には、いくつかの注意点があります。まず、フレームワークはあくまでツールであり、目的ではありません。フレームワークに固執しすぎると、組織の状況やニーズを見失い、効果的な改善につながらない可能性があります。
また、フレームワークは万能ではなく、すべての課題を解決できるわけではありません。組織の状況に合わせて適切なフレームワークを選択し、柔軟に運用することが重要です。
さらに、フレームワークの導入は、社員にとって負担となる場合もあります。社員の理解と協力を得るために、導入目的やメリットを明確に伝え、積極的な参加を促すことが大切です。
組織改善・開発を行った企業事例3選
では、実際に組織改善・開発を行った企業にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、組織改善・開発を行った企業について、代表的なものをご紹介します。
キリンホールディングス株式会社
目的
過去の成功体験にとらわれず、変化に対応できる組織風土を醸成し、持続的な成長を実現すること。
実施した方法
社員間のコミュニケーション活性化と自律的な行動促進を目指し、従来の年功序列制度を廃止。代わりに、社員を小さなグループに分け、先輩が後輩を指導しやすい体制を構築。また、中堅社員が「職場先輩」として相談役を務める仕組みを導入し、気軽に相談できる環境を整えました。
さらに、評価制度も見直し、成果だけでなくプロセスや挑戦も評価対象とすることで、社員の挑戦意欲を高めました。
成果
社員間のコミュニケーションが活性化し、自律的な行動や挑戦が増加。新しいアイデアや取り組みが生まれやすくなり、市場の変化への対応力も向上しました。結果として、業績も改善し、持続的な成長を実現しています。
ヤフー株式会社
目的
組織全体のコミュニケーション活性化とエンゲージメント向上。
実施した方法
上司と部下が定期的に1対1で対話する「1on1ミーティング」を導入。上司はコーチングの手法を用いて部下の話を傾聴し、目標達成や成長を支援します。また、ミーティング後にはアンケートを実施し、上司へのフィードバックも収集。このフィードバックを基に、上司自身のコミュニケーションスキル向上にも取り組みました。
成果
1on1ミーティングを通じて、上司と部下の信頼関係が構築され、コミュニケーションが活性化。部下は自身の成長を実感し、エンゲージメントも向上しました。また、上司も部下の状況を把握しやすくなり、適切なサポートや指導ができるようになりました。結果として、組織全体の活性化と生産性向上に繋がっています。
株式会社ニトリホールディングス
目的
社員の成長を促進し、組織全体の能力向上を実現すること。
実施した方法
人材育成と組織開発を一体的に捉え、独自の教育システムを構築。社員一人ひとりの能力や成長段階に合わせた研修プログラムを提供し、継続的な学習を支援しています。また、現場での実践経験を重視し、OJT(On-the-Job Training)を通じて、実践的なスキル習得を促しています。
さらに、社員同士が互いに教え合う「相互学習」の機会も設け、組織全体の知識共有と学習意欲向上を図っています。
成果
社員一人ひとりの能力が向上し、組織全体の競争力強化に繋がっています。また、社員の成長意欲やエンゲージメントも高まり、定着率向上にも貢献しています。結果として、顧客満足度向上や業績拡大にも繋がっています。
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まとめ
組織改善のためのフレームワークは、組織の現状把握、課題特定、解決策の実行を効率的に進めるための強力なツールです。しかし、フレームワークはあくまで手段であり、組織の状況に合わせて適切に選択・活用することが重要です。本記事で紹介したフレームワークや事例を参考に、自社の組織改善に最適なアプローチを見つけてみてください。組織改善は一朝一夕には達成できませんが、継続的な取り組みを通じて、組織の成長と発展を実現できるでしょう