
選ばれる組織へ〜採用編~ 内定辞退を防ぐ 「集団フォロー」
前回、自治体が最終的に選ばれるためには、採りたい人材が「来てくれるのを待つ」という姿勢を改め、応募者や合格者に対して、「入庁するまで魅力を伝え続ける」ことが重要だとお伝えした。その方法として、「個別」と「集団」の2種類のフォロー方法をご紹介したが、今回は「集団フォロー」について解説する。
そもそも、何がきっかけで辞退するのだろうか。よく見られるのが、長期休み中に「公務員として働くこと」への不安が増加し、辞退を決意するケースだ。
夏休みなどに地元の友人と再会したり、民間企業に就職が決まっている友人と話したりするなかで「このまま公務員になって本当に満足できるのか?」「自分がやりたいことは、民間のほうが実現しやすいのではないか?」といった迷いが生まれてくる。その結果、自治体と同時並行で選考に進んでいた民間企業のキャリアパスや働き方が魅力的に感じ、最終的に民間企業を選ぶということが起こりがちである。
■仲間との交流で期待を生み出す
就職活動中は、孤独で不安になりやすい状況である。だからこそ、同じ志を持ち意思決定をしている仲間の存在が重要だ。「集団フォロー」は、合格者同士や年齢の近い先輩職員との交流機会を設け、自治体で働くことへの期待感を高めるプロセスだ。
具体的には、食事会や懇談会などの場を設けたり、実際に地域イベントへ招待し、職員の働く様子を見学する機会を設けることなどが挙げられる。
先輩職員との食事会では、仕事内容をより深く理解する機会になるし、地域イベントに招待すれば、市民の声に触れるなかで自治体職員としての使命感が育まれる。内定者同士の交流機会を設ければ、仲間と働く未来への期待が膨らむはずだ。
ただし、集団フォローには「不安や懸念が合格者同士で広がり、集団辞退が起こる」というリスクが潜んでいることを忘れてはいけない。そのため、合格者同士の連絡先交換は極力控えさせたり、飲み会など合格者同士が集まる場には採用担当者も参加するなどの対策が必要だ。
個別フォローと集団フォローを組み合わせることで、合格者の入庁意欲を着実に高めることができるだろう。もちろん、入庁したら終わりではなく、早期離職を防ぎ、成長を促すための取り組みが必要になる。
次回は自治体における人材育成のポイントについてお伝えしたい。
※本稿は、『都政新報』2025年5月9日付「選ばれる組織へ 実践編 〜自治体の『人材確保・育成』改革〜」に寄稿した記事を再編集したものです。
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