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採用難・定着難の時代に「選ばれる組織」を作るためには【前編】

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労働市場の環境変化により、自治体は採用難、定着難、昇任難という3つの難局に直面しています。このような状況を打開するためには、「組織と職員の相互理解・共感度合い」を示すエンゲージメントの向上が不可欠です。前回は、エンゲージメントスコアが高い組織ほど退職率が低いという関連性から、本質的な定着対策として、エンゲージメントの向上こそが根本的な解決策となることを示唆しました。今回からはエンゲージメントを高め、「選ばれる組織」を作るためのポイントをお伝えします。

執筆者:依光宏太
執筆者:依光宏太
【プロフィール】 2013年、新卒で株式会社リンクアンドモチベーションに入社。 中小・ベンチャー企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。 全社アワード受賞後、プロジェクトマネジャーとして顧客の上場支援や組織変革を担当。 2021年からは地方展開を担う部門を立ち上げ、現在は官公庁のエンゲージメント向上にも取り組む。

目次[非表示]

  1. 1.高エンゲージメント組織は何が違う?データで要因を読み解く
  2. 2.高ES組織に近づくための3つの改善ポイント
  3. 3.職場内の良好な人間関係づくりの4ステップ

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高エンゲージメント組織は何が違う?
データで要因を読み解く

下図は、エンゲージメントと退職率との相関が見られる5自治体のデータを基に、当社のエンゲージメントサーベイにおける16領域の調査項目の回答を平均したものです。ここで使用するエンゲージメントスコア(以下ES)は、世の中の平均を50とした偏差値を指します。今回は課単位でデータを分析し、ESが55以上の「高ES組織」と、ESが45未満の「低ES組織」に分け、それぞれの平均値を16領域別にプロットしました。

サーベイでは、職員の皆様が回答しやすいよう行政機関向けの設問も開発し、網羅的な16領域32項目の設問について、組織への期待度と現状の満足度をそれぞれ5段階で評価。職員が「組織にこうあってほしい」と望む期待度については、高ES組織の平均が0.08高い程度で大きな差は見られませんでした。一方、職員の「現状どれだけ満たされているか」を示す満足度については、高ES組織の平均が低ES組織を0.50ポイント上回るという結果となりました。

特に、満足度の差が大きかったTOP3の領域は、「情報提供」「支援行動」「内部統合」でした。これらの領域は、職員に対して上司が適切な情報共有やサポートを行い、職員、部署同士が一体感をもって協働しているかを測るものです。

さらに詳細な項目を見ると、上記3領域以外でも「階層間の意思疎通」や「即時の意思決定」といった、上司・部下間および組織内のコミュニケーションや連携スピードに関する項目でも満足度の差が顕著に見られました。

高ES組織に近づくための3つの改善ポイント

この結果から、高ES組織と低ES組織の差は、職員が組織に求める「理想」(期待度)ではなく、組織運営の「実態」(満足度)によって生じていることが明確になりました。具体的には、満足度で大きな差が出た「情報提供」「支援行動」「内部統合」といった領域が示唆するように、高ES組織は低ES組織に比べ、以下の3点が優れていると言えます。

a.「職場内の良好な人間関係」ができている
b.「上司からの適切な情報提供」ができている
c.「上司の適切な支援・判断行動」ができている

それぞれ、改善に向けた考え方と具体的な施策について解説します。

職場内の良好な人間関係づくりの4ステップ

まずは、aの「職場内の良好な人間関係づくり」についてです。職員が安心して意見を出し合う、一体感のある組織を形作るためには、土台となる職場内の一人ひとりの間の「関係の質」を高めることが不可欠です。この関係性は一足飛びに築けるものではなく、「相互無関心→相互理解→相互信頼→相互要望」という4つのステップを意識的に上っていく必要があります。それぞれのステップについて、上司と部下の関係構築を例に詳細に説明します。

■「相互無関心」から「相互理解」へ
 =人生の経験と価値観の共有

関係構築の第一歩は、お互いを知る「相互理解」です。特に、職場の信頼関係を深める上では、継続的なコミュニケーションと時間が必要です。しかし、毎年人事異動が多く行われる行政機関では、職員が「どうせすぐに異動があるから」と深く踏み込むことを避けてしまい、もしかすると浅い関係で仕事を進めることに慣れてしまっている可能性があります。真の相互理解とは、単なる自己紹介のレベルに留まらず、「人生の共有」を意味します。

上司は時間軸を区切り、「過去の経験」「現在の価値観」「未来のビジョン」といった対話を通じて、熱中経験、達成経験、挫折経験、後悔経験など、人生の様々な経験と、その経験から得た価値観を深く共有することが求められます。例えば、上司が自身の「キャリアの選択における後悔経験」や「仕事で熱中した瞬間の具体的な感情」を共有したとします。これにより、部下は上司の人間的な葛藤や動機を深く理解し、これまで上司を業務上の役割として捉えていた「相互無関心」の状態から脱却できます。

■「相互理解」から「相互信頼」へ
 =小さな有言実行の積み重ね

相互理解の段階から「相互信頼」へ進むためには、上司の「約束と実行」が不可欠です。多忙な行政機関の職員の間では「上司が動いてくれない」「放置されている」といった不信感が生じがちです。これを避けるため、上司は「月に1回の1on1を実施する」「○日までに資料を確認する」など、実行可能な小さな約束を数多く交わし、それを確実に守る「有言実行」を積み重ねるべきです。この積み重ねこそが、部下が「この人は信頼できる」と感じる揺るぎない土台となります。

■「相互信頼」から「相互要望」へ
 =遠慮なく伝え合える機会の創出

信頼関係が築かれた上で、最終的に目指すべきは「相互要望」の関係性です。これは、共通目的に向けてお互いに期待や要望を遠慮なく伝え合える関係です。上司は「○○を頑張ってほしい」と明確な期待を伝えるとともに「実現に向けて上司にどう関わってほしいか」と尋ね、部下からの要望を引き出す働きかけが必要です。

360度サーベイを人材育成ツールとして活用したり、定期面談で「挑戦したい業務」を具体的に問う機会を設けることで、部下の声が届いている実感が生まれ、組織全体の活性化につながります。

関係構築は自己開示から

ここまでで述べてきた関係構築の4ステップの中でも、エンゲージメントの高い組織へと変革するための第一歩であり、最も重要なステップが、人生の共有による相互理解の深化です。

しかし、部下や同僚の人生経験を聞くことに抵抗がある方も多く、「ハラスメントにならないか?」というご質問をいただくこともあります。相互理解や信頼なき要望は、ハラスメントと受け取られやすい昨今において、この懸念は重要です。そのため、相互理解のきっかけは「自己開示」であるべきです。部下に質問して経験を聞き出す前に、上司自身が自分の人生経験や価値観を共有することから始めます。

心理学では、相手から受けた行為に対して何かを返したくなる「返報性の法則」が知られています。上司が積極的に自己開示した分だけ、部下も心をひらいてくれると信じ、まずは「知ってもらうための行動」を起こすことが、真の相互理解のステージへ進むための鍵となるのです。

今回は、データの分析から職場での関係構築について解説しました。しかし、これはデータを基にするまでもなく、人が協働する組織においては「当たり前」であるべきものかもしれません。

だからこそ、関係が希薄になりがちな行政機関では、組織を維持するための「戦略」として、意図的に再構築する必要があります。次回は、「上司からの適切な情報提供」と「上司の適切な支援・判断行動」の実践に向けたポイントについて、解説します。

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