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三木楽器 「創業200年に向けた現場起点の『イノベーション』」

「楽器を売らない楽器店」の展開・「音楽に関する研究所」の設立など、190年の歴史の上で、イノベーションを起こし続ける三木楽器に迫る、後編。

本田宗一郎、井深大、孫正義。ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、イーロン・マスク。洋の東西を問わず、イノベーションは、往々にして「誰か一人の天才」の力に頼りがちである。しかし、三木楽器は、突出した「誰か」に頼ることなく、従業員一人ひとりの力でイノベーションを起こしている。
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まさに、理念で掲げる“Our Company”(企業は従業員のものであり、みなで企業をつくる)の精神をイノベーションにおいても体現していると言えよう。

今回は、古山社長に加え、三木楽器の二人のスタッフにご登場いただく。 三木楽器の中で、これまでにない店舗を開発された新井店長と、現場で業務を行いながらも新たな商品を企画し、実行に移したスタッフの山根氏。お二人のお話から見えてきた、イノベーションが生まれる現場の秘密とは。

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■三木楽器株式会社(MIKIGAKKI Co.,Ltd)
本社所在地:大阪府中央区
営業拠点:楽器店10店舗・音楽教室43会場・外販営業拠点 ほか
事業内容:
1)楽器・楽譜の販売
2)音楽教室の運営
3)音楽イベントの企画・制作
4)楽器修理、ピアノ調律ほかアフターサービス
5)楽器および付属品の開発、楽譜の出版
6)その他、音楽/楽器関連事業
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【プロフィール】
三木楽器株式会社 代表取締役社長 古山 昭氏
         DZONE店長 新井 統也氏 
         ローブラスセンター 山根 ちなみ氏

【執筆者】
株式会社リンクアンドモチベーション モチベーションエンジニアリングカンパニー
マネジャー 谷原 拓也

「専門性」より「マーケティング」

新井 統也氏:私は現在、DZONEという店舗を担当しています。DZONEとは、音にまつわるライフスタイルを提案する店舗。

言わば、三木楽器にとって初のチャレンジである「楽器を売らない」楽器店であり、三木楽器を語らない店舗でもあります。私はもともとDJ機器の販売を担当していました。DJ機器は、市場変化の激しい領域です。

かつてはセットで20万ほどした商品も、コンピューターの普及とともにどんどん安価なものが出てきました。今では10,000円程度で購入できるほどです。

私は「この領域の専門性だけでは、この先食べては行けない」という強烈な危機感を抱きました。そして、DJ機器を扱う以外の時間にビジネスチャンスはないのか、真剣に考え始めました。

「DJってどんなライフスタイルを送っているんだろうか?」

突破口はそこにありました。DJの一日を妄想して考え抜いたのです。DJは、DJ機器を扱っていないときも、よく音楽を聞いています。

DJ用のヘッドフォンだけではなく、普段使い用のヘッドフォンやイヤホン、スピーカーも可能性があるのでは?そんな思いから、DJ機器とともに普段使いのオーディオ機器を提案し始めました。すると、驚くことによく売れました。

お客様と会話を重ねる中でさらに驚くべきことがわかってきました。お客様にとって、そのオーディオ機器が「いい音」かどうかよりも「似合う」かどうかが選択の大事なポイントになっていたのです。このことから、お客様の声を「マーケティング」することの大切さが身に沁みました。

変化し続け「世界に類のない」店を実現する 

新井 統也氏:チャンスが巡ってきたのは、EXPO Cityという新しい商業施設のオープンです。私は、ヘッドフォンやイヤホンをアクセサリーのように、スピーカーをインテリアのように売る、そんな音にまつわるライフスタイルを豊かにする店をつくりたいと考えました。

そのためには、三木楽器が持つ楽器店のイメージや常識を払拭する必要がありました。そこで、店名から「三木楽器」の文字を完全に外しました。そして、私の企画は通り、新店舗を担当することになりました。

はじめは苦労の連続でした。一般的なオーディオの領域は、これまでの楽器店とまったく異なる仕入先を開拓しなければなりません。つてのない中、新たに40社を探し出し、その中から20社を仕入先に選定しました。

新たなことを任せてもらうからには結果を出したい。そんな気持ちひとつで走り回りました。研究を重ねる中で、自分たちのポジションはオンリーワンだという想いは確信に変わりました。

ヘッドフォン・イヤホンを中心としたオーディオの専門店は他にも存在しますが、どの店舗も「いい音」を重視しています。

それに対して、DZONEのような「ファッション」を軸にしている店舗はまだ存在しません。DZONEでは、まるでおしゃれを楽しむような感覚で、自分の感性でオーディオを選んでいただきたいのです。

私たちは、世の中のライフスタイルの変遷を捉えて常に変化し続ける店舗をつくり続けます。 

どんな提案も歓迎される風土

山根 ちなみ氏:私は、三木楽器の店舗の中でも管楽器を扱っている「ローブラスセンター」のスタッフとして仕事をしています。

昨年、あるタレントとのコラボ商品を企画し売り出しました。販売イベントは大いに盛り上がり、会社全体での利益にも大きく貢献したということで、MIKIGAKKI AWARDという社内表彰もいただきました。

私がこのような提案をしようと思った背景には、MIKI Music Labという研究所の存在があります。MIKI Music Labは、グランフロントOSAKAのナレッジキャピタルに出展している、音や音楽に関する研究所です。

そこでは、サブカル系のコンテンツを積極的に発信し、楽器店のイメージとはかけ離れたイベントを開催していました。それらを見ていた私は、この会社ならばどんな提案も受け入れられるのではないか、そんな雰囲気を自然と感じました。

私は、実はあるタレントの熱烈なファンです。その方たちのあらゆるグッズを持っているのですが、個人的にはどの商品もあと一歩、完璧なものにはなっていなかった。ファンである私が三木楽器という器を使って最高の商品を開発したい、そんな想いがぼんやりと芽生えていました。

あるとき、立ち話程度に話したこのアイデアに対し先輩からは、いい商品を作るだけじゃなく、利益を上げる方法を考えなければ企画として成り立たないことを教えていただきました。

これまで接客のことしか考えてこなかった私が、商品企画やイベントの運営に加え会社の利益について考える。なかなかの難題でした。

私がやりたかったことは、自分やファンが感動する商品づくり。しかし、同時に会社として利益を上げることも考えるという両立が必要だったのです。

苦労しながらも企画書をまとめ上げた私は、次長と役員の前でプレゼンをすることになりました。そして、トントン拍子に話は進み、企画は実現する運びとなりました。

アイデアが育つ土壌

山根 ちなみ氏:いざ実際に商品化しようとしたときに、社内の様々なリソースを活用し、企画をさらに練り直しました。その結果、あるコラボ商品を開発することに決まりました。ファン心理を知る人間として、お客様にとって最高の商品・イベントを作りあげること。

それに加え、三木楽器のスタッフとして、利益を上げることに注力しました。迎えた商品の販売イベントは、立ち見が出るほどの大盛況。そのコラボ商品は非常に評判が高く、三木楽器の長い歴史の中でも、単一品番での最高クラスの利益を短期間で捻出することに成功しました。 

自分自身のアイデアを思い切ってまわりに話すことによって実現する、三木楽器にはアイデアが育つ土壌があります。まだまだ、二の矢、三の矢のアイデアを温めていますので、これからさらに仕掛けていきます。

「やっちゃえ!」が起こすイノベーション

古山 昭氏:190年の歴史を重ねる三木楽器が、今後、200年を超えて事業を継続できるかどうか。それは、今後も継続的に「イノベーション」を起こせるかどうかにかかっています。経営側からは「何をやってもいいんだ!」と思える環境づくりをしています。

私自身、おかたいところでは、通信技術の研究会や地元の商店街の集会、柔らかいところでは、VR機器の展示会やコスプレイベントなど、幅広くネタ探しをしています。

そして、そういった場には可能な限り、誰か社員を連れて行きます。そうすることで、社内に「何をやっても良いんだ」という空気が生まれます。

もともと「サファリパーク」と呼ばれるような企業でしたので、やりたいことを持っている従業員が一定数、存在します。

音楽好きが講じて、オタク要素を持っている社員もいます。様々な個性を持った社員が活躍できる環境を整えていきたい。このあたりのベクトルが最近になって役員とすり合ってきました。

そこで、これまで私が実施していた社内プロジェクトの旗振りも、昨年はある役員に任せました。その役員の口癖は「やっちゃえ!」です。リーダーが参加メンバーの主体性を引き出し続けた結果、8つのビジネスアイデアが生まれ、そのうち6つが進行中という成果も生まれています。

「世界に類のないミュージックエクセレントカンパニーになる。」というビジョンを体現するような仕掛けを現場発で生み出し、それを定着させる風土を培う。200年以上続く企業を目指し、三木楽器はイノベーションを起こし、変化し続けます。  

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本編の前編となる 三木楽器「190年の歴史を刻む企業のイノベーション」は、こちら

※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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