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【中編】株式会社LIFULL 「日本一働きたい会社」創りの秘訣とは

ベストモチベーションカンパニーアワード2017で第1位に輝いた、株式会社LIFULL。2008年に「日本一働きたい会社プロジェクト」を社内で立ち上げ、推進し続けてきたのが、羽田幸広氏だった。

有言実行ののちに得た、日本一の称号。そしてその軌跡は「日本一働きたい会社のつくりかた」として書籍にもなり、多くの反響を呼んでいる。

15年以上前から同社を支えるパートナーでもある、リンクアンドモチベーション主催の経営者セミナーで、日本一に至るまでの数多くの挑戦を聞いた。

【イベント実施日】
2017年5月29日(月)

【プロフィール】
株式会社 LIFULL 執行役員 羽田 幸広氏
株式会社リンクアンドモチベーション 執行役員 麻野 耕司 

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採用へのこだわりが、カルチャーを強くする

麻野 耕司(以下、麻野):日本一働きたい会社創りの秘訣ということでLIFULL社執行役員の羽田幸広さんにお話を伺っています。それではチャプター②「妥協のない、最高の採用」についてお話を聞かせて下さい。

羽田 幸広氏(以下、羽田氏):僕が入社したのが2005年で、2006年頃から本格的に採用活動の強化を始めました。採用のポイントは「妥協のない、最高の採用」、要は厳しく選考するということです。

採用においては、応募者を4つの項目で見ています。上から大事な順番になるのですが、ビジョンフィット・カルチャーフィット・ポテンシャル・スキルフィットです。ビジョンというのは経営理念を指しています。

カルチャーというのは当社の社是である「利他主義」やガイドラインのことですね。ポテンシャルは将来伸びしろがあるかどうか。スキルは、テクニカルスキルです。

ビジョンに関しては、特に新卒採用でいくと「うちはこういう経営理念を持ってるんだけど、あなたはうちの会社で何がやりたいの?」ということを、すり合わせていきます。

何かやりたいことがあって、だから成長したいということであればいいのですが、働く目的が「成長したい」というだけの人は、僕らは採用しないようにしています。

二つ目はカルチャーフィット。社是が中心にありますが、特徴的なカルチャーでは、ガイドラインの中に、「一点の曇りもなく行動する」というものがあります。

LIFULLは、少しでもグレー(曇り)があるということにすごく敏感な会社なんです。あとは、革進ですね。新しいことにガンガン挑戦して新しいものを生み出してくれる人かどうかを、学生時代の経験を通じて見ていきます。

スキルの前にポテンシャルがあるのは、長期的に一緒に働きたいので、マネジャーやスペシャリストになる資質があるかが大切だから。スキルは後からついてくると考えているので、最後ですね。

2006〜2007年くらいは、失敗も経験しました。会社が100〜150人規模のときに、毎年約100人を中途採用していたんです。

しかも、当時はまだ知名度が低かったので、スキルの高そうな方、例えば経営コンサルタントの方がエントリーして来たりすると、飛びつくわけです。すごい人が来たよ!といった感じで。

それで、スキルだけを見て採用するとか、即戦力だから採用するという判断をしたこともありました。

その結果、何が起きたかというと、そういう人たちは短期的には仕事ができるので、すぐ昇進するんですよね。そうすると、影響力が増すんです。

これがカルチャーフィットしていない人の場合、影響力のある立場で会社に対してネガティブな言葉を発したりする。その結果として、文化が乱れていきます。これはまずいということで、スキルも大事だけど、僕らと方向性が同じで、キャラクターが合う人を採ろうと、方向転換しました。

理念浸透の成功は、管理職登用時の「人格>スキル」という判断

麻野:一つ目にお話いただいた理念と採用・配置は、密接に繋がっているなと思っています。理念浸透ができてないことを遡ると、人材採用と人材配置に行き着く。

それから、ビジョンフィットやカルチャーフィットという人格的な部分が合う、ポテンシャル・スキルフィットという能力的な部分が合うことについても、言えることがあります。

組織が崩れる・理念が崩れる会社というのは、管理職登用時にポイントがある。人格も能力も全部揃った人材だけを管理職登用できたら最高ですが、なかなかそういう方だけで管理職のポストを埋めることは難しい。

能力は高いけど人格的に難しいとか、人格的に素晴らしいけど能力が物足りないとか。そういうときにどちらを選ぶのかが、社内の強いメッセージになると感じています。

理念浸透に失敗する会社は、人格でなく能力で選ぶんですね。なので、高い役職に能力を持った人が就くんですが、現場で「理念なんか大事じゃない」なんて言ってしまったりする。

そうすると、もうその現場には理念は浸透しません。登用の際に踏ん張って、理念への共感が高い人材つまりは人格面の優れた人材を、管理職に登用できるかが非常に大事です。

実際にLIFULL社は、中途採用で高いスキルがある人がエントリーしてきたとして、カルチャーフィットがなければ、面接官は落とせているということですか。

羽田氏:そうですね。過去には、ルールを決めた上で、社長ではなく事業責任者に最終面接官をやってもらっていたんですが、それを一旦、社長と人事で引き取りましたね。

その上で、きちんと面接ができる事業責任者には徐々に権限を返していっています。なので、まだ社長の井上と僕が中途採用の最終面接をしている部門もあります。

麻野:なるほど。現場に最終面接の権利まで与えてしまうと、現場は目の前の仕事が忙しいので、とりあえず人が欲しくて採用してしまうということは起こり得ますね。スキルは合っているけれど風土が合わないので、徐々に組織が悪くなっていく。

やはり、中長期的な目線で考える経営トップや人事のトップで、最後は見ていく。そして、擦り合うようになったと判断できれば、少しずつ現場に渡していくということですね。

挑戦の機会と安全な場を確保することで、才能を開拓する

麻野:それでは三つ目、企業文化を醸成する。引き続き、お話をお伺いしたいと思います。

羽田氏:企業文化については、先ほどからお話している、社是やガイドラインがそれに当たると思っています。

これら以外の特徴としては内発的動機付けと心理的安全を大切していて、内発的動機付けと心理的安全で「人材の未開拓の才能」を引き出す、ということに取り組んでいます。

内発的動機付けとは、内側から出てくる欲求のことです。これがやりたいとかこうなりたいという欲求に対して、機会を提供したいと考えています。

心理的安全に関しては、新しいチームに入ったときなどに、手を挙げて発表して間違っていたら無能だと思われるんじゃないかとか、評価が下がるんじゃないかとか、そういう風に思わないような、安全な場にしていくということが心理的安全です。

これらにより、未開拓の才能を引き出していきます。基本的に、やらされ仕事では、その人は指示されたことしかやらないので、その人の眠った力・すべての力を引き出すことはできないと思っています。

逆に、その人自身が夢中になれることをやってもらえば、自分で勝手に考えますし、勉強するもの。そうすれば、会社が想定した以上の力を発揮してもらえると思っています。それから単純に、人って自分のやりたいことをやった方が楽しいよね、という思いもあります。

内発的動機付けに関しては、挑戦できないという言い訳ができない環境をつくろうと色々と取り組んでいます。キャリアデザインシートは年に2回、全社員に書いてもらっています。

長期的なキャリアビジョンと、5年後・3年後・半年後にどうしたいか。半年後に関しては、今の部署に残りたいとか、別の部署に移りたいということも申請してもらいます。

一般的には自己申告と言って、人事だけに伝えるというものが多い内容ですが、LIFULLの場合は、上司に直接それを伝えて、正面で話し合ってもらう。

そして、異動するしないを決めていくという制度です。それがキャリア選択制度ですね。

異動については、申請者の約6割の希望が叶っています。弊社は、職種変更を伴うジョブローテーションを強制しない会社なんですね。

例えば営業職で、A営業部からB営業部へという同職種内での異動はありますが、基本的には職種を変えるようなローテーションは行っていないんです。その分、社員から希望があった場合は、職種の変更も加味し、組織を編成していきます。

 また「Switch」という、年に2回ある新規事業提案制度があります。年間100~150件くらいの応募があります。

その他にもクリエイターの日という、クリエイターが四半期ごとに、まとめて7営業日、業務以外の自分の新しい仕事に取り組むことができる制度もあります。

また弊社では全社横断プロジェクトへの参加を推奨していまして、述べ30%近い社員がなんらかの全社横断プロジェクトに参加して、会社の活性化を主導してくれています。

その挑戦心を守るために、心理的に安全な職場をつくる努力をしています。たとえば「薩摩の教え」。これはご存知の方も多いと思いますが、挑戦して成功した人が一番偉い。次が、挑戦して失敗した人が偉いという考え方です。

LIFULLでは全社総会を月に1回実施するんですが、社長の井上は薩摩の教えを引用しつつ「失敗した人にはちゃんとセカンドチャンスを提供する」という話を頻繁にします。そして実際に、しっかりとセカンドチャンスを提供しています。

例えば、ある子会社を立ち上げた社長が事業撤退することになったときも、その翌月の全社総会で壇上に呼んで、失敗した理由について話をしてもらったことがありました。

その上で「ナイスチャレンジ!」と言ってみんなで拍手してねぎらったんですね。彼女は今、新しい事業に取り組んでいます。

麻野:ありがとうございます。私自身、カラーのある会社は伸びていることが多いなと思っています。

カラーのある・なしが成長を分かつ。こういうカラーがいいですよ・こういう文化をつくりなさいということではなくて、自社のあるべき文化を突き詰めて、色を醸し出すくらいになることが大事だと思います。

LIFULL社は、挑戦を大事にされていて、思い切り挑戦するための安心もつくっていくということなんですね。

様々な施策のリンクにより、自社のカラーが醸し出される

麻野:この挑戦というLIFULLのカラーを醸し出すために、一番効果が出た施策はありますか。

羽田氏:そうですね。どれか一つというのは難しいですが、社長を中心とした経営陣が、挑戦を奨励すると頻繁に発信し、挑戦した人をきっちり守ったことでしょうか。

一方で採用も重要ですね。もしかしたら、経営陣が中心になって文化をつくったことで、挑戦意欲の高い人たちの芽が摘まれなかったっていうことなのかもしれません。

麻野:ひとつの施策というよりは、施策が繋がっているということですね。ひとつだけ真似ても意味がない。文化をつくるためには、様々な施策がきちんとリンクされている必要がある。

採用した後に芽を摘まないということでしたが、積極的な人材を採用しても、現場のマネジャーが、お前は言われたことだけやっておけよと言っていたら、その芽は枯れます。

逆に、現場で挑戦しろよと言っていても、優等生人材を採用していたらそうはならないですからね。


本文にも登場する「日本一働きたい会社プロジェクト」を中心に、現在に至るまでの組織改革が全公開されている、羽田幸広氏の著書「日本一働きたい会社のつくり方」も、ぜひご覧ください。

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▼こちらの関連記事もご覧ください▼

【前編】株式会社LIFULL 「日本一働きたい会社」創りの秘訣とは はこちら
【後編】株式会社LIFULL 「日本一働きたい会社」創りの秘訣とは はこちら

※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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