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【後編】株式会社LIFULL 「日本一働きたい会社」創りの秘訣とは

ベストモチベーションカンパニーアワード2017で第1位に輝いた、株式会社LIFULL。2008年に「日本一働きたい会社プロジェクト」を社内で立ち上げ、推進し続けてきたのが、羽田幸広氏だった。有言実行ののちに得た、日本一の称号。

そしてその軌跡は「日本一働きたい会社のつくりかた」として書籍にもなり、多くの反響を呼んでいる。

15年以上前から同社を支えるパートナーでもある、リンクアンドモチベーション主催の経営者セミナーで、日本一に至るまでの数多くの挑戦を聞いた。

【イベント実施日】
2017年5月29日(月)

【プロフィール】
株式会社 LIFULL 執行役員 羽田 幸広氏
株式会社リンクアンドモチベーション 執行役員 麻野 耕司 

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組織改善のPDCAサイクルを回す

麻野 耕司(以下、麻野):日本一働きたい会社創りの秘訣を、LIFULL社執行役員羽田幸広さんに伺っています。次は、チャプター④結果を出す組織開発について、お話を聞かせてください。

羽田 幸広氏(以下、羽田氏):これはもう、リンクさんにサポートいただいているモチベーションクラウドですね。僕たちは、サーベイを組織の健康診断だという風に捉えていて、年に1〜2回、実施しています。

考え方として大事にしているのは、3つのギャップを埋めることです。ひとつ目は感情のギャップ、二つ目はビジョンのギャップ、そして最後に戦略のギャップです。

最初に着手するのは感情のギャップ。先ほどの心理的安全にも関連してきますが、初めて配属された組織では、自分の意見が言いづらいこともあるので、期初の4月から6月頃にチームビルディングプログラムをやっています。

一人当たり15,000円くらいの予算をとって、プログラムの内容は各部門に任せています。部門によっては、BBQをしたり料理対決をしたり、サバイバルゲームに行ったり。

例えばサバイバルゲームを実施する場合、事業戦略であれば新卒は意見が言いづらいかもしれませんが、サバゲーであればテーマが簡単なので、新卒であってもその戦略に対して意見を言うことができる。

みんなが意見を出せるようなプログラムということが大事だと思っています。これにより、意見を出すことへのハードルが下がって、簡単に言うと、早い段階で仲が良くなる。これは、すごく大事なことだと思っています。

その後、7月頃にエンプロイーエンゲージメントサーベイの1回目を実施します。サーベイ後すぐに各部門長を集めてフィードバックを行い、結果に応じて部署ごとにアクションプランを実行していきます。

LIFULLは基本的に内発的動機付けを大切にしている会社なので、課題に対する施策は部門長に任せますが、もし人事の手助けが必要であれば人事が介入して組織開発の支援を行います。

例えばメンバーのヒアリングをして分析して課題を抽出したり、その解決策を一緒に考えたりなど、丁寧に伴走していきます。

そして、12月くらいに再度サーベイを実施して、施策を実行した結果どう変化したのかをチェックをするという流れです。

去年は、1回目のサーベイを実施後、エンゲージメントスコア60未満の組織に関しては、経営会議で部門長一人ひとりにどういう手を打つのかを話してもらいました。

エンゲージメントスコアはLIFULLにとって非常に重要な経営指標になっています。ですので、経営会議の時間をしっかり使って、一人ひとりに話をしてもらう。そして、役員からアドバイスします。

ビジネスモデル上、年末以降が繁忙期になります。ですので、その時期までにいかに組織を磨き上げていくかが、組織開発グループの腕の見せ所ですね。

それもあって、4月早々にチームビルディングをし、7月と12月にサーベイを実施するというスケジュールを設計しています。

部署毎に細かく丁寧に支援をして、スコアを上げていく、つまりモチベーションの高い組織をつくることを目指して、アクションを繰り返しています。

組織を変えるためにアンフリーズする

麻野:2012年にAランクの部署が全部署中2部署しかなかったにも関わらず、2016年には65部署に増えています。Aランクの占有率が、3.6%から65%になったということです。

LIFULL社の取り組みの興味深いところは、部署毎の取り組みを非常に大事にしていて、羽田さんたち人事は社内コンサルティングの立ち位置でアドバイスするという連携をとっていらっしゃるということですね。

また、最初にチームビルディング研修があるということも、なるほどと思いました、リンクアンドモチベーションでは、組織が変わるときには3つのステップ(Unfreeze・Change・Refreeze)があるという話をするんです。

氷の形が変わるのをイメージしてもらえればと思うんですが、四角い氷をいきなり丸い氷に変えようとすると割れてしまうじゃないですか。四角い氷を一旦溶かす。これが解凍、Unfreezeですね。

それで、溶かした水を丸い型にはめる。これが変化、Changeです。そして最後、その丸い水を凍らせる。これが再凍結、Refreezeです。

氷の形の変化と同じように、人の気持ちも、溶かしてから変えて固めるという順で進めないといけない。

なぜならば、人間には過去慣性や相互不信があるからです。社会学者のクルト・レヴィンが説いた理論で、私たちも組織変革をする際の、最も重要なセオリーのひとつとしています。

チームビルディング研修がUnfreeze。お互いに何を言っても受け入れられるとか、人間的に信頼してるみたいなベースがないと話にもならないですよね。

例えばサーベイデータを見て、マネジャーが「どこが悪いと思う?」と聞いたとしても、メンバーは誰も何も言わないだろうなと。

どうせ言ってもわかってもらえないとか、この人たちのことはあまり好きじゃないという状態でディスカッションをしても、有意義にはならない。

だから、フランクにチームビルディング研修をやった後にその中身に入るということが、理にかなっているなと思いました。

では、最後ですね。⑤社員が自ら学ぶ人材育成。こちらについても、教えてください。

自ら学ぶ人材育成

羽田氏:育成は、自分たちで学び合うことが大事だと考えています。社内大学(LIFULL大学)を設けて、各種研修プログラムを用意しています。

内容としては、ビジネス・営業・ものづくりという学部があって、その中にそれぞれ、必須プログラム・選択プログラム・選抜プログラムがあります。

必須プログラムは、ビジネスパーソンとして必須のスキルや共通言語となるようなスキルを学ぶためのものですので、必要最小限に抑えています。

実施しているものとしては、クリティカルシンキングやマーケティング、ファシリテーションなどといった研修になります。

管理職になると、社長の井上が講師になって全管理職と対話を行うミドルセッションというプログラムや、役員が外部のプロフェッショナルに様々なことを学ぶ役員勉強会などを設けています。

選択プログラムのゼミナールは特徴的かも知れません。ゼミナールは、その講師がほぼ全て社員で構成されていて、様々な講座が開講されています。大体、年間50講座くらいあり、社員は自由に選んで受講することができます。

選抜プログラムのLIFULL WILLは、1年間のプログラムで、実際に経営陣が抱えている全社課題に一人ひとりをアサインして取り組んでもらうものです。

例えば最近では、4月にオフィス移転をしたのですが、そのプロジェクトリーダーは、選抜プログラムの受講者です。通常は1年間のプログラムなのですが、オフィス移転については3年がかりでしたね。

研修は色々とやっているのですが、基本的な考え方は、70:20:10の法則です。ビジネスパーソンに何によって成長したかと聞くと、7割が実際の実務経験、2割が薫陶、1割が座学。

座学も重要なのですが、やはりもっとも重要なのは経験ということで、どんな経験をデザインするかということを大事にしています。

経験のデザインに関しては、未来人材会議というものを実施しています。未来人材会議は、営業、デザイナー、エンジニアなどの各職種で会議を開催し、当該職種の人材の把握や育成施策の検討、一人ひとりの目標設定や評価の支援を行っています。

未来人材会議には、階層別に次世代リーダークラスや幹部クラス対象の会議もあり、たとえば幹部クラスの会議では社長と取締役と僕とで定期的に経営チームのポートフォリオを考えています。

どういう専門性を持った人材で構成される経営陣であるべきかを、5年後・10年後ぐらいの中期的な事業ビジョンを想定して仮説を立てます。 

麻野:ありがとうございます。社員のキャリアを考えることに、かなり投資していらっしゃいますね。

社員への投資を大切にされたきっかけは何か、あったのでしょうか。例えば、社員が自分のキャリアが見えなくて辞めていくことが多かったとか。

羽田氏:やはり若い社員の場合、自分が何を身につければいいのかわからないとか、このまま営業マネジャーになっていいのだろうかとか、そういう相談はありました。

LIFULLでは「キャリアパスは自分で描いてね」という人事ポリシーでやっていて、実際そのように伝えてきました。ですが、完全に本人が一人で考えるのは難しい部分もありました。

そこで原則自分で将来やりたいことを描いてもらって、会社としてはその支援を行っていこうと。

麻野:なるほど。本人の主体性を大事にしながらも、未来を考えるきっかけを与えていくと。

確かに理念というのは会社の未来を表すことが多いですが、そこに個人の未来が重なってくると非常に高いエンゲージメント、モチベーションが生まれるなと感じました。

結果としてエンゲージメントスコアのスコアもC+からAへと上昇されました。

それでは最後に羽田さんのビジョンをお伺いできればと思います。

社員を幸せにしたい

羽田氏:今後自分がやっていきたいことを、シェアさせて頂きます。

シリコンバレーやイスラエルではスタートアップのエコシステムが形成されていると言われていますが、それをLIFULLグループ内でやっていきたいと考えています。

社員として採用して、その人にいいアイデアがあれば出資して、仲間を探してもらう。LIFULLとしては、法律やビジネスの面でいろいろな支援をしてあげて、どんどん子会社が生まれていく環境をつくりたい。

親会社が戦略的にシナジーを考えるだけでなく、生まれた子会社が、お互いに必要であれば組んで、結果としてシナジーが生まれればいいよねと考えています。

現在は、社員ではない一般の学生にも門戸を開きスタートアップのアイデアを募っています。

あとは、新オフィスの2階にLIFULL HUBというコワーキングスペースを開設しています。そこには複数のスタートアップに入っていただけるようなスペースがあり、面談をして、お互いの理念に共感しあえる会社に入ってもらっています。

そんな風に外の会社ともうまくコラボレーションして新しいことにどんどん取り組んでいきたいなと思っています。

そしてもうひとつは「社員を幸せにしたい」ということです。会社は社会に価値を提供するために存在するのですが、そのために社員が不幸になることもある。

社会に価値を提供するために、仲間が不幸になることに僕は価値を見出せません。

まだまだこれからなのですが、就業時間中だけでなく、就業時間外の社員の幸せも考える、ということをやっていきたいなという風に思っています。

麻野:羽田さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。


本文にも登場する「日本一働きたい会社プロジェクト」を中心に、現在に至るまでの組織改革が全公開されている、羽田幸広氏の著書「日本一働きたい会社のつくり方」も、ぜひご覧ください。

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▼こちらの関連記事もご覧ください▼

【前編】株式会社LIFULL 「日本一働きたい会社」創りの秘訣とは はこちら
【中編】株式会社LIFULL 「日本一働きたい会社」創りの秘訣とは はこちら

※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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