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株式会社カヤック 「ユニークな人事施策で、会社の文化・事業を創る」

2017年6月7日、神戸にて開催された「IVS 2017 Spring Kobe」。デジタル時代に加えライフシフトが起きる中、企業としてこれからの働き方をどう設計していくべきか。

ユニークな人事制度を取り入れている企業より伺ったこれからのあるべき働き方や組織づくりにおける哲学を、HR2048独自編集にてお届けするシリーズ。今号では、株式会社カヤックに迫ります。

【イベント実施日】
2017年6月7日(水)

【プロフィール】
株式会社フロムスクラッチ 代表取締役社長 安部 泰洋氏
神戸市 市長 久元 喜造氏
ヤフー株式会社 上級執行役員 コーポレートグループ長 本間 浩輔氏
株式会社カヤック 代表取締役CEO 柳澤 大輔氏
株式会社リンクアンドモチベーション 執行役員 麻野 耕司

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戦略を絞ることでユニークな事業や組織をつくり出せる

麻野耕司(以下、麻野):「ユニーク人事組織に学ぶこれからの働き方とは?」をテーマにセッションが展開されています。それでは、株式会社フロムスクラッチ安部さんのお話に続いては、株式会社カヤックの柳澤さんです。 

柳澤大輔氏(以下、柳澤氏):カヤックの柳澤です。今日はよろしくお願いします。まず会社の成長というのは、大きく分けると、事業の戦略と組織の戦略という2つの輪の重なりが伸びていくものなのだと思っています。

戦略を絞っていくことで、非常にユニークな状況がつくり出せるものなので、唯一無二の事業を運営している会社は高収益につながります。

なので、事業同様に組織も絞っていくと、非常にユニークで効率の良い状態になるだろうというのが最初に立てた仮説でした。

そこで、どういう風に絞ろうかと考えたときに、私たちは、クリエイターだけの組織にしようと決断しました。社員の9割がクリエイターの集団にしたんです。

これくらい極端でないと、組織でユニークなことは出来ないと考えたんですね。

例えば、全員定年を迎えた高齢者しかいない会社であれば、それはかなりユニークな人事制度ができるはずなんです。

ですが、人が増えて幅広い層がいる組織になると、やはり最大公約数をとっていくので、ユニークさからはかけ離れていきがちになりますし、面白い働き方からも遠ざかっていきますよね。 

今日のテーマでもありますが、そもそも働き方自体でユニークさを出すのは難しいと思っています。

私たちが鎌倉に本社を構えている理由は、満員電車に乗らないスタイルの会社がいいなと思ってのことですが、地方創生の流れで他の会社さんも取り組み始めて、珍しいことではなくなりました。

週休3日というのも、時代の潮流と共に対応していかざるを得ないので、施策自体でユニークだというのは、組織の戦略自体を相当絞らなければ起きにくいものだと思っています。

麻野:なるほど。

柳澤氏:カヤックとしては、そういう中にあっても、せめて何かで組織を絞ろうとクリエイター中心の会社にしているんです。

「ぜんいん人事部化計画」「エイプリル採用」など、ユニークな施策がもたらす効果

柳澤氏:具体的な施策としては、2つご紹介しようと思います。まず採用でいくと「ぜんいん人事部化計画」です。

麻野:全社員の名刺に人事部と記載があるということですか。

柳澤氏:そうです。採用を増やすために、全員の名刺に人事部って入れればいいんじゃないの?という単純な考えからスタートしました。私の名刺にも人事部と入っています。

しかし、全員自分の所属に人事部と入っただけなのに、結果として意識が変わって、その年は採用コストが4割下がりました。この取り組みで、人事がHRアワード(日本の人事部主催)で優秀賞をいただきました。

「エイプリル採用」というものも、エイプリルフールの日に何かやろうと考えたものです。「4月1日だけは経歴詐称してエントリーしていいですよ!」という内容の施策です。

麻野:すごい趣旨ですね(笑)。

柳澤氏:エイプリル採用は、毎年1,000名近く応募がありますが、履歴書だけで判断しています。この取り組み自体は、もう5年間続けています。

麻野:実際に採用した人たちは、どんな詐称をして応募してきたのですか。

柳澤氏:本当に様々です。例えば、私の母だと名乗った人もいますし、一体どこを変えたのかわからない程度に、微妙に高学歴にした人もいました(笑)。

こういう企画を人事部が思いつくのは、組織全体をクリエイター組織にしているからだとも言えます。

麻野:すごいですね(笑)。

会社の文化は、評価によってつくられる

柳澤氏:それから、組織の話なので、基本的に文化の話に紐付いてきますが、その会社の文化がどうやってつくられているのか。それは、ほぼ評価なんです。だから評価の話をしていきたいと思います。

前提として、わざわざ「面白法人」という名称をつけている通り、言葉が重要だと捉えています。

これは面白く働こうという思いを込めてつけた名称で、つけるときに同時に、自分が仕事している中で一番つまらない時間は何だろうとも考えました。

ほとんどの経営者が同じように答えると思いますが、一番嫌な時間は評価の時間です。

私自身も、社員と面談して評価を伝える時間が一番憂鬱でした。まともな神経の持ち主であれば、この気持ちはわかるはずです。

そこで、何とかこの評価の時間を楽しくできないかいうところから始まって、カヤックの給与システムを考えました。仕組みは単純で カヤックの給与システムは、基本的にクリエイターを対象にしています。

経営陣やマネージャーはまた少し違いますが。例えばエンジニアが20名いたら、全員に「あなたが社長だったら、20名に対して、どういう順番で高く給料を払いたいですか?」と聞きます。

15段階評価として、一番高く給料を払いたい人を15として、その次少し離れるイメージなのであれば10にしたりして、20名を並べていく。

それで、20名のスコアを合計した平均値を、7段階に分けて順位をつけると、ほぼ給料順になっているというイメージです。

どうしても、評価は主観になってしまうものなので、給料の話で重要なのは、主観の中で公平性をいかに出すかです。一番自分が公平に評価をされたいと思うのは、自分と同じ職種で、尊敬し優れている人です。

その人たちの評価は比較的受け止めやすい。例えば、クリエイターが営業から評価されたとしても「この人に何が分かるんだろう」と思うし、逆もそうです。

なので、職種を揃えた評価が、一番公平性と納得感があるのだと思います。対象が20人のエンジニアだとしたら、年次・立場関係なく評価を行い、その結果が公開されます。

どれだけの段階に分かれてどこに誰が入っているかはわかるので、上の層に入る人を見て「そりゃあそうだよな」という納得感が持てるんです。非常にシンプルな評価制度ですが、これはカヤックの報酬にまつわるポイントだと思います。 

この評価方法を取り入れてから、評価の時間が憂鬱じゃなくなくなりました。なぜなら、私が相手につけた評価では無く、みんなが決めた評価だから。

評価面談が、応援面談に変わって「みんなの評価が上の相手と比べて、どこが足りないのか」を考える時間になる。とても明快になります。

何が言いたかというと、職種を揃えることで非常によい仕組みができるという一例でもあるし、面白くない時間を面白くしようと突き詰めると、アイデアが出てくるっていう一例でもあるということなんです。

そして、シンプルな問いには深みがあります。例えば採用時に「本当に一緒に働きたいのか」という問いを持つだけでいい。

仕事ができない人は採用したくないし、信用できない人は採用したくないですよね。たったひとつの問いで充分なんです。

カヤックは面白法人だから、組織を縛る「ルール」を増やさない

麻野:柳澤さんが冒頭に、事業戦略と組織戦略がリンクしていることが大事だということと、戦略という意味合いを考えると絞ることが大事だというお話をされていました。

それは、何を得て何を捨てるのかを明確にすることと同じだと思います。

今まさに、制度をつくって得たものについてお話しいただいたと思いますが、明確にこれは捨てているということもあるのでしょうか。

柳澤氏:例えば評価でいえば、昇格する人は、新卒で入社してすぐにでも昇格しますし、長く居たとしても、昇格できない人もいます。

誰でも順に上に上がっていけるわけではないというところでしょうか。

若くても昇格できるんだと楽しんで働いている人もいますし、一方で、ここにいても昇格できないなということをわかって転職する人も実際にはいて、難しいところです。

麻野:エッジの立った人事施策を組織としての色・カルチャーにして、それを事業の強みに活かしていくときに、やはり経営者の「これは要る・要らない」という、ポリシー・背骨が通っていないと、現場は捨てることができません。

一般的な会社であれば「社員自身がつけている評価の妥当性はどうなのか?」などといった意見も出て、カヤック社のような取り組みがなかなか出来ないと思います。

柳澤さんの中では「これは捨てられるけれど、これは捨てたくない」といったようなポリシーはありますか。

柳澤氏:そうですね。面白法人である以上、ルールを増やしたいくないということでしょうか。

社員数が増えてくるとルールが増えてしまいがちですが、同規模の会社と比較して、ルールは少なくありたいと話していますね。

もしルールをつくるのであれば「◯◯をしてください」は無し。「これは駄目です」というルールであればつくることもありますが、それもなるべくつくらないようにしています。

そもそもが、多様性を認める組織なので、カヤックでは個別対応が合言葉になっています。

あとは、外に発信するということ。先ほどの、全社員の名刺に人事部と入れるという施策についても、社内だけで終わらせず外に発信するんです。

この施策の場合は「7月1日付けをもって以下の社員は人事部に異動する」といった、人事通知書のようなサイトを作って、ニュースを出しました。そのニュースが、Yahoo!トピックスに取り上げられました。

ニュースを出すその際のポイントは、分かりやすさです。分かりにくいと、全く伝わらないので。先ほどお話しした「月給ランキング」の話が、外部にほとんど伝わっていないのは、説明が長くなって分かりにくいため、外にはほんと発信してないことが理由です。

麻野:改めて、会社毎に色があると感じます。そして、経営者の方のポリシーと、事業やビジネスのモデル、そしてカルチャーはつながっていますね。

柳澤さんのお話で興味深かったのはやはり、カヤックは多様性を大切にしていて、一人ひとりの多様性を発揮させるために、ルールをなるべく少なくするというということ。

これが恐らくビジネスの強みにも活きていると思うんです。

一方でフロムスクラッチ社は、多様性というよりもトップダウンで、ひとつのプロダクトをつくる。安部さんの頭の中にあるビジネスを形にしていくという感じだと思います。

なので、どちらかと言うとカヤック社とは真逆で「◯◯をしっかりやる」ということを大事にしているように思いました。

それを突き詰めていくと「全員、採用やれ!」「全員、テスト受験に合格しろ!」というトーンになり、フロムスクラッチ社らしさが効いてくるんでしょうね。

どちらがいい・悪いということではなく、経営者のタイプとビジネスモデルと組織、そしてそれをつなげる施策により、ぐっとエッジが立ってくると、会社として強いのだなと感じました。貴重なお話をありがとうございました。

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※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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