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圧倒的な人材投資を決断できれば、ベンチャー企業は次のステージへ進める。

2017年度版働きがいのある会社ランキング第1位(Great Place to Work® Institute主催)に選出された、株式会社ワークスアプリケーションズ。また、調査開始以来10年間連続で「ベストカンパニー賞」も受賞し、同社の組織づくりへの手腕は注目を増すばかりだ。

経営コンサルタントの波頭亮氏も、同社の共同創業者のひとりである牧野正幸氏について「本気で人材に投資している経営者」だと称賛する。

牧野氏の考える、「企業経営」とは何か。すべての経営者必読の、金言で紡がれた全3回シリーズ、中編。

【プロフィール】
株式会社ワークスアプリケーションズ 
代表取締役最高経営責任者 牧野 正幸氏
【インタビュアー】
株式会社リンクアンドモチベーション 
執行役員 モチベーションクラウド事業責任者 麻野 耕司

日本のベンチャー企業がメガベンチャーになれない最大の要因は、人材。

牧野 正幸氏(以下、牧野氏):企業は、生き残るためにも絶対に数字を上げることは必要ですが、あくまでも手段ですよ。目的じゃない。

「売上高1千億が目標だ」なんて言われても、そんな目標は手段の中の計画値にしかすぎないじゃないですか。

企業理念を掲げるにしても、お題目のようなフレーズを定めて、誰も共感していないのに、「これがうちの会社の理念だ」と言うだけじゃ駄目ですよ。

それから、10年くらい続いているベンチャー企業に共通して言えることは、創業経営者が優秀であり、初期の100名規模までに入ってきたメンバーが優秀であることが多いですね。

だからこそ、100名の集団であっても、大企業の100名の事業部よりも遥かにパフォーマンスが高いことが多いんです。

麻野 耕司(以下、麻野):そうですね。社員規模1万人の会社で、20人をマネジメントすることと、100名規模の会社で20名をマネジメントすることでは、求められる意識レベルが違います。

制度面・人材面をはじめとして、会社が整ってない中で、自分でつくっていくことの難しさがあるからこそ、人材レベルを非常に高く保たないといけないということなのかもしれません。

牧野氏:日本のベンチャー企業は、成長の鈍化が激しいんですよね。なぜ成長が鈍化するかと言うと、最初に集まる100名のレベルと、拡大していく中で採用する人材レベルの、格差がとてつもない。

優秀な人はそう簡単には集まらないので、途中から標準的な人も採用せざるを得ず、また、そうしている間に優秀な人もだんだん離れていってしまうので、急激にただの中小企業化していってしまいます。

日本のベンチャーがメガベンチャーになれない最大の理由は、人材なんです。

麻野:なるほど、新しい切り口ですね。上場してから時価総額が伸びない会社は多いですね。日本企業の中でも特に人に投資してきた会社って、江副さん時代のリクルート社だと思うんです。

小笹が採用担当だった当時、3千人の会社に千人の新卒を採ったそうなんですが、そのときの採用予算は86億円だったらしいんです。一人当たり、860万円かけている計算になります。

上場企業なら、そんな予算は絶対に通らないでしょうね。

利益を守るために、人材投資をないがしろにしてはならない。

牧野氏:そうですね。ただ、未上場だからできるとか上場していたらできないということは一概には言えず、これはもう経営者の性質次第だとは思います。

私も上場していたことがあるからわかりますが、上場企業の経営って言うのは、片足でアクセルを踏みながら、もう片方の足でブレーキを踏み続けているようなものです。

それはどういうことかというと、利益が一番大事になってしまうということなんです。

経営トップは、投資家に対して事業の方向性に間違いがないことを説明し、成長をコミットする必要があります。

でも、コミットしたにもかかわらず数字が伸びないというときに、せめて守らなければならないのは、利益なんですね。売上が伸びることも重要ですが、一番大切なのはやはり、利益をあげて約束を果たせるかどうかです。

そうすると、避けたくなるのが投資なんです。起業したての頃は、大抵確実に利益が出ない状況からスタートするので、もう全てが投資なんですよね。

椅子を一脚買うのも投資、社員を一人採用するのも投資というくらい、お金がない。非常に苦しい状況だけど、投資し続けてリスクをとって、会社が大きくなっていくわけです。

ですが、上場した瞬間からこういった投資をしたくなくなるんです。利益は水物なので、上手くいかないこともあります。そうした状況で利益をコントロールするためには、投資を抑えるしかないからです。

そして、そういった状況で犠牲になるのは、どうしても人なんです。「採用にお金なんかかけられない」とか、「成長性から言ったら100名くらい採用したいけど、来年の売上高が予定より伸びなかったら赤字になるから、とりあえず50名にしよう」とか。

必ずそうなって、慢性的な人員不足になるんですよね。

リスクをとって投資をして、万が一赤字なんかにでもなったら大変だという気持ちも理解できますが、経営の初期の段階において投資をしないということは、経営者の視点から見ると、仕事をしていないことと同じです。

麻野:経営者に本物の志がないと、上場しても尚、積極的に投資して、会社を成長させる挑戦をすることはできないですね。

利益が出ているのは、社員の給与が安いからではないのか、と自問せよ。

牧野氏:それから、ベンチャー企業の経営者が考えないといけないのは「報酬」です。報酬については、私自身も心に残っている経験があるんですよ。

創業時に、メガバンクからの転職者がいたんです。すごく優秀で、非常に活躍してくれた人材で。今の基準から見ると大した金額ではないですが、その他の社員の2倍以上の給与を払っていて、社内ではダントツに高かったわけです。

でもその彼が、久しぶりに元同僚と再会して、給与の話になったらしいんですね。そうしたら、銀行に残っている同僚たちは、自分の給与よりも多くもらっていることがわかったそうなんです。この話を聞いて、私自身もなんとも言えない気持ちになりましたね。

彼は非常に優秀で、リスクをとって挑戦し、活躍してくれているのに、リスクをとっていない元同僚に報酬では負けている。リスクをとっても一流企業の平均的な報酬しかもらえなかったら、いくら優秀でも挑戦したくなくなりますよね。

やっぱり、給与は高ければ高いほどいいんですよ。ベンチャー企業の経営者は、利益が出ているときにこそ、絶えず考えるべきです。

「利益が出ているのは、社員の給与が安いからではないのか」と。社員の給与が安いから利益が出ているとしたら、自社のビジネスモデルがまだまだ未熟なのだと、認識するべきだと思います。

創業期において、社員のみんなに我慢してもらっている間に、出た利益を投資に回して、企業を成長させていく。もしくは製品やサービスを充実させたり、採用に使ったりしていく。

これは大切なことだと思いますが、どこのタイミングまで我慢してもらい、どこのタイミングからしっかりと給与に反映していくかということは考えるべきです。

永遠にその安い給与でやっていったら、優秀な人はどんどん抜けていってしまうということを理解しないといけません。

それでも会社は回っていくかもしれないけれど、それはもう機械的に回っているだけです。何か行き詰まるような問題が起きたら、それをリカバーするような人材は残っていないのだから、会社としてはもう生き残れないと思うべきですね。

麻野:なるほど。ありがとうございます。

牧野氏:私自身も過去に、社員の給与を上げているつもりになっていました。実際、一生懸命上げてはいたんですが、どんどん社員が増えていく中で、このままでは平均報酬が上がらないと気づきました。

それで、メガバンクや総合商社といった、大企業の中でも給与が高い企業にいたOBに、給与がどんな風に上がっていくのかを聞いたんですね。新人のときはどこの会社であってもさほど給与は変わらないのに、30歳あたりで1千万円もらうようになる。

8年間ですさまじいピッチで上がります。一方、ベンチャー企業は3%ずつ上げていこうか、活躍してくれた人には10%あげようか、というレベルなので大企業に比べたら少ないのです。

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本編の後編となる『「グローバル基準>日本基準」という現実。日本企業も日本人も、このままでは生き残れない』はこちら

※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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