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小売業界経営者座談会 店長(ミドルマネジメント)が組織を創る

【特別企画】
業界別経営者座談会 小売業界編。今回は下記の2社の経営者にお越しいただき、自社の経営において今悩んでいること、昔経験してきたこと、そしてこれからやりたいと考えていることなどを、ざっくばらんにお伺いしました。

■大阪北部を中心に、総合食料品スーパーマーケット「satake」と、生鮮特化型業務スーパー「TAKENOKO」を合計43店舗を展開する佐竹食品株式会社/株式会社U&S。

経営ビジョンとして「日本一楽しいスーパー」を掲げ、日本一エンゲージメントが高い会社を決めるベストモチベーションカンパニーアワードでは、2018年、2019年、2020年(中堅・成長ベンチャー企業部門)の3年連続で第一位を獲得しています。

■ドラッグストア「サツドラ」は北海道を中心に約200店舗を展開。調剤事業は約10店舗。
北海道共通ポイントカード「EZOCA」は約120社700店舗に導入し約185万人・世帯カバー率65%を超える。

その他、ITを先進的に活用すべくPOSやAIに投資、人材育成を目的としたプログラミング教育事業などの新規事業を推進。「地域をつなぎ、日本を未来へ。」のコンセプトのもと、店舗や地域の資産を活かして新たな課題解決型ビジネスの創造を目指す、サツドラホールディングス株式会社。

– 出た話題 –
・店舗マネジメントが上手くいっていない店舗には、経営からアプローチする
・小売業の生産性は、「動作のスピード」に依存する
・店舗ごとの昨年対比売上が悪くても、“問題がない”場合もある
・エンゲージメントスコアは、どんな時でも店長が管理することのできる管理指標
・雑談だけをする時間を、意図して確保する

【スピーカープロフィール】
株式会社U&S/佐竹食品株式会社 代表取締役社長 梅原 一嘉氏
サツドラホールディングス株式会社 代表取締役社長 富山 浩樹氏

【モデレーター】
株式会社リンクアンドモチベーション
中堅・成長ベンチャー企業向けモチベーションクラウド事業 事業責任者 田中 允樹

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「ありがとう総会」と「サツドラアワード」

リンクアンドモチベーション 田中(以下、田中):本日は、モチベーションクラウドを活用頂いている小売業の経営者お二人にお越しいただきました。小売業界ならではの組織創りの難しさや、その中で工夫されていることなどお聞きできれば幸いです。

株式会社U&S/佐竹食品株式会社 代表取締役社長 梅原 一嘉氏(以下、梅原氏):よろしくお願いします。

サツドラホールディングス株式会社 代表取締役社長 富山 浩樹氏(以下、富山氏):よろしくお願いします。梅原さんには何度もお会いしているのですが、実は今、うちのマネージャー向けの研修で梅原さんの動画を流させてもらっているんですよ。

梅原氏:本当ですか?

富山氏:はい。U&Sさんが2年に1回、パートの方も含めた全従業員を集めて行われる「ありがとう総会」での梅原さんのスピーチの映像です。内心はドキドキしています。

社員から「うちもこんな社長だったらいいな」って思われないかな、と。笑

梅原氏:光栄です。笑

富山氏:改めてですけれど、「ありがとう総会」という全従業員を集める施策というのは、経営者としては勇気がいる施策ですよね。

梅原氏:そうですね。勇気がいります。1日分の売上が止まりますからね。

富山氏:パート、アルバイトの方の交通費や時給も出ると聞きました。

梅原氏:そうです。業務なので、交通費や時給も出ます。欠勤届がなく欠席すれば、それは無断欠勤という扱いです。それでも実施することに意味があるし、価値を感じています。

初めて開催した時には、1日分の売上が丸々無くなったにも関わらず、年間の売上は上がりました。理念を共有し、エンゲージメントを高めることが、成果に繋がると思っています。

富山氏:すごいですね。当社ではバリューの浸透を目的にした「サツドラアワード」というのを実施しています。パートさん、アルバイトさん全員に投票権があるアワードです。

「あなたの周りでサツドラウェイを実践して働いている人は誰ですか?」という質問の回答に理由も添えて、投票してもらっています。

投票数だけで決めると、人数の多い店舗で働いている人が有利になってしまうので、そこで挙がってきた人の投票理由を役員が読みこんだ上で、優秀賞を決めています。

梅原氏:すごいですね。

富山氏:優秀賞を受賞した人にはインタビューをしに行って、プロジェクトXのような動画にするんです。その動画には毎回、僕が勉強になるような仕事のノウハウが詰まっています。

田中:小売という業態だと、各地に店舗があって、現場と経営が顔を合わせてコミュニケーションをとる機会が少なくなるという状況があると思います。

また、店舗には社員・パート・アルバイトという雇用形態の違いや、若者からお年寄りまで従業員の方の年齢の幅が広いという特徴があるかと思います。店舗マネジメントの難しさを感じることはありますか。

梅原氏:そうですね。店舗マネジメントは難しいと思います。店舗ごとに人数も違いますからね。少なくても30人、多ければ100人を超えます。

富山氏:うちも15人ぐらいのお店から100人規模まで。平均すると20人ぐらいですね。マネジメントしなければいけない人数の幅もそうですが、店舗マネジメントで特に難しいと思うのは、店長が従業員よりも若くて、ベテランの従業員をマネジメントしないといけないパターンです。

店長が異動して新しい店舗に行く時によくあることですが、新しい店舗で、自分よりも年上の人達に信頼されないとマネジメントがうまくいかない。

最近の若い人はストレスへの耐性が低くなってきている傾向もあるので、気になっている点です。

梅原氏:難しいですよね。うちでは、最近その問題が少なくなってきました。というのも、店長が変わってやり方が変わったとしても目的は同じ、マネジメントする人によってやり方が違うのだという認識が、各店舗に浸透し始めたのだと思います。

店長は相談できない。だから経営者が聞きに行く。

富山氏:梅原さんのスーパーでは、店舗マネジメントがうまくいっていない状況だと、役員の方が従業員の方に個人面談に行くと伺いました。これはすごいですよね。

梅原氏:そうですね。モチベーションクラウドのスコアが良くない店舗には、役員が直接行って、パートの方との個人面談もやります。

最近は担当役員ではなくて、別の役員が行くようにしています。その方が現状認識に対する変な色眼鏡もかかっていないし、フラットに話を聞き出せます。

結果的に、「どうやったらもっとお店を良くしていけるだろう?」という建設的な話ができます。

田中:店舗型ビジネスの場合、従業員の方が日頃から同じ空間で毎日のように顔を合わせるから、何か問題があっても言いにくい状況になってしまうのでしょうか。

梅原氏:そうだと思います。

富山氏:だからこそ、第三者的な立ち位置の人が、課題を把握しにいくというのは大切な取り組みですね。学校と一緒で、教室に馴染まないと学校ごと嫌いになってしまう。

狭い空間が世界の全てではないことを示すことは大事ですね。

田中:経営からすると、各店舗の様子が見えないことは怖いですよね。店舗の中で温度差があるということを掴めるかどうかが重要なポイントになってきそうです。

梅原氏:うちは、モチベーションクラウドを長年導入しているので、そのスコアの変化によって、店舗の状況が掴めるようになってきました。それはモチベーションクラウドを活用していて、良かった点の一つです。

田中:店舗の状況は、ブラックボックス化してしまいがちですね。店長に「大丈夫か?」と聞いても「うまくいっています!」と答えるけれど、実際に店舗にいってみると組織状態は酷いことになっていたり…。

梅原氏:よくある話ですし、それが普通なんだと思います。田中さんもマネジャーとしてそういう経験ありませんか?マネジャーは「大丈夫です!」と言っていても、マネジャーの上司からみると「本当に大丈夫?メンバーのモチベーション下がっているよ」ということ。

田中:ありましたね…。僕はその状態がすごく長かったです…。

梅原氏:まさにそういう状態ですよ(笑)。店長や責任者はすごく頑張っているんです。むしろ、責任者が一人で頑張っていてかわいそうになるときもある。

「あなたが頑張っているのはわかる。でも、皆ついてきてないよ」と言ってあげるのが、僕ら経営の役割でもあります。

田中:本人も苦しいですよね。困っていて相談したいけれど、自分で頑張らなきゃいけないという気持ちもある。本人から相談があることは少ないですか?

梅原氏:相談はできないですよ。人は、本当に苦しい時ってあまり人に相談できない。閉じてしまう。

それが、こちらから早めに察することができれば、こちらから出向いて一緒に解決することができます。そういう意味で、モチベーションクラウドで組織状態を定点観測するのは重要です。

富山氏:店舗というのは、小さな空間にいるチームなので、組織の状態の良し悪しが、如実にお店の雰囲気として出てしまいますね。

売上よりも先にエンゲージメントスコアを上げる

梅原氏:小売業は一般的に、店舗ごとの昨年対比売上 (昨対) を非常に重要な経営指標として扱っています。仮に昨対を割っているお店があると、そこにすごく問題があるように見えて、対応しにいきます。でも実際に店舗に行ってみると、すごく頑張ってるということが多々あります。

うちの会社では、それは問題ない状態だと捉えています。今は売上が厳しいかもしれない、でもモチベーションクラウドのスコアは高いし、お客様も笑顔で買い物してくれている。それなら問題ない、というジャッジをしています。

富山氏:うちもモチベーションクラウドを導入していますが、梅原さんのお話を聞いて、モチベーションクラウドのエンゲージメントスコアで店舗状態を把握する重要度を高めています。

僕らのようなチェーンストア型は特にそうですが、売上を左右しているのは、外部要因の影響も大きい。

梅原氏:シンプルに、近くに大きなマンションが建てば、売上が上がりますしね。

富山氏:ただ売上で評価するのではなく、成果が出ている店舗の状態については、様々な要因の相関関係について分析し、社内にノウハウをためていかないといけないと思います。

梅原氏:「売上を上げよう」といっても外部要因の影響が大きくて、すぐには上がらないけれど、エンゲージメントスコアを上げることはできます。店長もそこには全力で努力できるはずです。

なので、店長には「まずエンゲージメントスコアを上げよう」と伝えます。そこができていたら、その後の売上にもきちんと響いてくる。売上だけを見ていると、間違えた対応で逆に悪影響を与える場合もあります。

富山氏:そうですね。本当に画期的なことだと思います。小売業や飲食業など、店舗だけでコントロールできないことにKPIを設定している企業が多い中、エンゲージメントスコアという店長の努力によってコントロールできる指標が新しく加わることはとても大きなことだと思います。

梅原氏:小売業において大切なことは、「動作のスピード」なんです。「商品を運ぶ」「商品を並べる」「レジを通す」という色々な動作があります。

それをゆっくりやっている人もいれば、ちゃきちゃき進めていく人もいる。結局、動作スピードが上がれば、生産性が上がるんです。エンゲージメントが高く、モチベーションが高い人は「よしやろう!」と駆け足で動いています。

田中:なるほど。

梅原氏:組織へのエンゲージメントが低くてモチベーションが低いと「やってられへんなぁ」「まだ休憩ちゃうの?」等と言いながらの作業で、効率が下がっていきます。終いには、愛想も悪くなって、どんどんマイナス要因が蓄積されていってしまいます。

田中:梅原さんは、エンゲージメントスコアが上がると売上や利益率が上がっていく感覚があるとお話されていますよね。

梅原氏:そうです。まずはそっちです。富山さんがおっしゃるように、売上には外的要因が関係する。でも、エンゲージメントスコアを上げていれば、仮に売上が下がっていても大丈夫。メンバーが楽しんでいて、お客さんが喜んでいれば、大丈夫なんです。

大地震が起きた後にすぐ店を開けられた店長

田中:小売業における店長、企業におけるミドルマネジメントの育成という点で、大切にされていることはありますか?

富山氏:そうですね。育成という文脈とは違うかもしれませんが、「店長の人間性」って本当に重要だと感じます。北海道では2018年に胆振東部で震度7の地震がありました。

建物の倒壊などは一部の地域でしたが、日本で初めてブラックアウト(エリア全域における大規模停電)が発生しました。

身動きも取れないので、本部から僕がチャットでやりとりをしていたのですが、「もうすぐ電池が切れます」「通信が無くなります」という状況で、こちらから指示を出すことが難しい状況に陥りました。

そんな中で、お店を開けるかどうかは、各店舗の判断になりました。災害時という状況でドラッグストアが地域に果たせる役割は勿論大きいと思いますが、一方でお店を開けるリスクもあります。難しい判断だったと思います。

そして何よりも、お店を開けられるかどうかは、スタッフが集まるかどうかという部分が一番大きい。パートさんやアルバイトさんも、倒壊はしていなくても自分の家でやらなくちゃいけないことがたくさんある。

そんな大変な状況の中、「こういう状況だからこそ、お店を開けないといけない」と思って集まってくれて、お店を開くことができた。「地域のために、お店のために、店長のために」という思いがその店舗の従業員に生まれていたのは、店長の人間性があったからだと思います。

店長の人間性が、店長に対する信頼を育んでいた。

田中:すごいお話ですね。

富山氏:「その人のためだったら」と思われるところまで信頼されているって、すごいことですよね。

梅原氏:大切にしていることを伝えられる力って必要ですよね。言葉で語れる人は勿論いいのですが、言葉だけが全てではない。背中で語る人もいる。

「うちが大切にしている正直な商売ってこういうことやぞ」ということを、まず自分が実践して見せること。しゃべりが上手なことは武器ではあるけれど、その前に実践が大事。実践が伴わずにしゃべりばっかりだと「口ばっかりやん」と思われてしまう。

田中:どんな方法でもいいから、ちゃんと伝えられることが大切ということですね。

梅原氏:そうです。「店長が何を考えているかわからへん」と言われたらダメ。多くを語らないなら語らないで、そのキャラも伝わっていて、且つ店長が理念を大切にしているということがメンバーに伝わる状態をつくることが大事です。

30回のお昼ごはんがコミュニケーションを滑らかに

田中:店長の伝える力を育成するための施策等は実施されていますか?

梅原氏:施策じゃないけれど、うちは店長が赴任したら店舗のメンバー全員とマンツーマンでお昼ごはんを食べるというミッションがあります。

富山氏:すごい(笑)。

梅原氏:費用は全部会社が経費として出します。「新しい店長の梅原です。みんな、それぞれお昼ごはんいつ行ける?」という感じで、全員とアポイントをとって近くのご飯屋さんに行ってお昼ごはんを食べます。

結局コミュニケーションのきっかけや量が大事で、それを最初につくっておかないと「あの店長、何考えてるかわからへん」になってしまいます。

富山氏:それが新しい店舗に赴任した時のミッションなんですね。会社が経費を出して。

梅原氏:そうです。だからもう、ラーメン屋さんとかカレー屋さんとかお蕎麦屋さんの経費がばんばん来ますよ(笑)。店長は30食、ただでお昼ごはん食べれます。

富山氏:いいですね!真似します!

梅原氏:店長だけじゃなくて、本部でも雑談会をやっています。

富山氏:本部の雑談会って何ですか?

梅原氏:本部の経理課って、パソコンに向かってする仕事が多いじゃないですか。やっぱり課内でのコミュニケーションが薄くなっちゃう。

コミュニケーションがちゃんととれてないと「会議しよう」となっても「今ちょっと忙しくて」みたいなことが起きる。なので、全員で雑談をするための時間を確保するんです。お菓子と飲み物を置いて。

富山氏:何人ぐらいでやったんですか?

梅原氏:それは7人ぐらいですね。ヤッホーブルーイング(クラフトビールの製造及び販売を行う会社)の井手社長から聞いて、すぐ試しました。

最初は、20分でも無理ですって言っていたんですが、結局は1時間半近くやってましたね。どかんどかん盛り上がって。それでコミュニケーションは円滑になったと思います。

例えば、これまで「何なんあの子だけ先帰って」という感情も、雑談を経て色んな事情をお互いに共有すると「そうなんや、いまおうちが大変なんやな。はよう帰り帰り。明日その分頑張るから!」という関係に変わっていきます。

富山氏:めちゃくちゃいいですね。

田中:ありがとうございます。あっという間にお時間になりました。小売業における店長の重要性や店長育成や店舗内コミュニケーションの具体的な施策まで、大変学びになりました。ありがとうございました。

梅原氏:ありがとうございました!

富山氏:ありがとうございました!楽しかったです。

※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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