SaaS業界経営者座談会 「カスタマーサクセス」を実現するための組織創り
【特別企画】
業界別経営者座談会 SaaS業界編。今回は下記の2社の経営者にお越しいただき、自社の経営において今悩んでいること、昔経験してきたこと、そしてこれからやりたいと考えていることなどを、ざっくばらんにお伺いしました。
■株式会社セールスフォース・ドットコム:顧客管理や営業支援を行うためのCRM(Customer Relationship Management)分野におけるグローバルカンパニーとして成長を続け、2017年には米フォーブス誌による「世界で最も革新的な企業100社」ランキングにおいて、No.1を受賞。
また、「働きがいのある企業」としても常に上位にランクイン。2019年、リンクアンドモチベーション主催モチベーションチームアワード(素晴らしい組織変革に取り組んだ部署を表彰)を受賞。
■カラクリ株式会社:Deep Learningや自然言語処理など機械学習技術の研究をベースに、人手不足などの社会問題を解決するソリューションを開発。
CS(カスタマーサポート)特化型AIチャットボットSaaS「KARAKURI」(https://karakuri.ai/)は、mercariやレアジョブ、WOWOW、ニッセンなど、大手企業に続々と導入。
ICCサミットFUKUOKA2018「スタートアップ・カタパルト」で4位に入賞、2020年には「Google for Startups Accelerator」に採択されている。2017年~2018年度の成長率は270%を達成。
– 出た話題 –
・「カスタマーサクセス」という部門を廃止したことが、カスタマーサクセスにつながった
・営業アポイントは、お客様の成功への機会づくり
【スピーカープロフィール】
カラクリ株式会社 代表取締役 小田 志門 氏
株式会社セールスフォース・ドットコム セールスディベロップメント本部 執行役員 本部長 鈴木 淳一 氏
【モデレーター】
株式会社リンクアンドモチベーション 中堅・成長ベンチャー企業向けモチベーションクラウド事業 マネジャー 依光 宏太
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「カスタマーサクセス」という部門名を無くすことで、「カスタマーサクセス」の意識が高まる
リンクアンドモチベーション 依光 (以下、依光):本日は、モチベーションクラウドを活用頂いているSaaS業界の経営者お二人にお越しいただきました。
セールスフォース・ドットコム 鈴木 淳一 氏 (以下、鈴木氏):よろしくお願いします。
カラクリ 小田 志門 氏 (以下、小田氏):よろしくお願いします。当社はカスタマーサポート分野の自動化のサービスを提供しています。
チャットポッドという形式が今はメインなのですが、チャットポッドにこだわらず、デジタル時代のカスタマーサポートに必要なソリューションを開発している最中です。組織の規模としては30人ぐらい。
半分がエンジニアで、あとの半分がマーケティング・セールス、カスタマーサクセス、コーポレイトといった構成です。
鈴木氏:当社は顧客管理営業の仕組みをクラウドで提供させて頂いています。私が担当している部門はインサイドセールス。新卒や第二新卒を中心に若手育成を行っている部門です。
小田氏:組織の中でも、登竜門といった感じですよね。
鈴木氏:そうですね。私のいる部門では採用・育成そしてエンゲージメントというのは、毎回課題になります。将来の会社を支える大切な育成部門なので経営陣からも常に「スピードを上げる事」を期待されています。
依光:採用のスピードですか?
鈴木氏:採用も育成も、インサイドセールスが目指す数字も、すべてですね。いかにして、すべてを成長させるかということが私のミッションです。インサイドセールス部門で育った人材は、他部門へと巣立っていきます。
インサイドセールス部門の高い目標を追いつつ、常に新しい人材を育成していくというサイクルを実践しています。
小田氏:すごい部門ですね。
依光:SaaSというビジネスにおいては、売って終わりではなく、カスタマーサクセスまではビジネスとして繋がっています。
その中で、インサイドセールスやフィールドセールスやカスタマーサクセスなど、機能によって組織分化が行われていることが多いですが、組織の連携を高める上での工夫などありますか?
小田氏:先ほど組織の構成を説明するときには「カスタマーサクセス」という部門があるようにお伝えしたのですが、実は当社では「カスタマーサクセス」という部門名はやめました。CXDというカスタマーエクスペリエンスデザイナーという名前です。
「カスタマーサクセス」という部門があると、どうしても「カスタマーサクセス部門がお客様のカスタマーサクセスを担う」という意識になりがちです。
なので、カスタマーサクセスは部門名ではなく、全社で担うものという意識に切り替えるためにも、部門名は廃止したのです。
依光:全社の目標として明確になりますね。
小田氏:はい。全社でカスタマーサクセスということで「スクラムCS」というスローガンをつくり、会社としての目標に設定しました。その上で、セールスは何をやるべきか、開発は何をやるべきか、CXDは何をやるべきかをブレイクダウンしていっています。
この変更によって、それぞれの部門の顧客への向き合い方はだいぶいい方向に変化し、認識のズレが少なくなり一体感がでたという実感があります。
「アポイント」は「お客様の成功の機会」と捉えるインサイドセールス
鈴木氏:その施策はすごいですね。会社全体でカスタマーサクセスに向かう姿勢はとても共感します。どんなKPIを持つかによってメンバーや組織の動き方は大きく変わってしまいますよね。
インサイドセールスのメンバーにカスタマーサクセスを考えてもらうには、「お客様の成功のためにやっているんだ」ということをひたすら伝え続けていくしかないんだと考えています。
弊社のインサイドセールスはアポイントを取得する所までが責任範囲なのですが、メンバー皆さんに「アポイントを取りましょう!」と伝える時、アポイントの後にカッコをつけて(お客様の成功の機会)と補足するようにしています。
常にそういう伝え方をしていかないと、アポイントを取る事が目的になってしまうんですよね。「お客様の成功に繋げる」という理念は浸透していかない。
依光:採用段階で、カスタマーサクセスに対しての意識を高める工夫などはされていますか?
鈴木氏:弊社の場合は、社名が「Salesforce.com」、日本語に直訳すると「営業力」なので「営業力を高めたい」「少しでも早く成長したい」」という馬力のある方が一定量多い印象はありますね。
だからこそ入社後に「カスタマーサクセス」や「カスタマーエクスペリエンス」という概念をしっかり伝えるようにしています。カラクリさんは「カスタマーサクセス」への共感度がそもそも高い人が入社してそうですよね。
小田氏:そうですね。でも逆に言うと狩猟型の人がなかなか入ってこないですね。
依光:そういうタイプも求めていらっしゃるんですね。
小田氏:やっぱりいろんな人に来てほしいですよね。狩猟型ということにこだわっているわけではないですが、やっぱり所謂カスタマーサクセス職を希望する人が多いです。セールスという職種を、僕らが魅力的に言語化しきれていないのかもしれない。
先ほどの鈴木さんの話ではないですが「お客様の成功の機会を創る人」という概念をもっと伝えていきたいですね。成功の機会を創って一緒に成し遂げていく、そのフロントに立つ人なんだ、ということを。
鈴木氏:カラクリさんはいつ頃からモチベーションクラウドを導入されてるんですか?
小田氏:たしか2年前、社員数7人ぐらいの頃から導入しています。
鈴木氏:すごいですね。人数が少ない頃からあのグッとくるサーベイを。
依光:グッとくる(笑)。
鈴木氏:あれはグッときますよ。結果に向き合うのはなかなか覚悟がいりますからね。
小田氏:そうですね。前職で自分自身が組織を創っていくことに対してあまりうまくいかなかった経験があって。それもあって、自分の組織開発能力について、不安がありました。
きっとうまくいかないなという予感があって、2〜3年かけてその能力を高めていく必要があると思っていました。なので、10人以下のタイミングですごく大きな効果を期待したわけではなく、2年後にはきっと効いてくると思って始めました。
鈴木氏:やっぱりすごいですね。その段階で、先を見通して導入するというのが。我々は組織課題が顕在化してから導入しました。
依光:ぜひ引き続きご活用ください。当社としても、カスタマーサクセスを実現させられるよう、全力でサポートします!
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※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。