オーマイグラス株式会社 組織偏差値34からのビジョナリーカンパニー 【前編】
清川忠康氏が代表取締役社長を務めるオーマイグラス株式会社は、日本最大級のメガネ・サングラスの通販サイト「Oh My Glasses Online Store」を運営しています。日本製の商品からレイバンやシャネル、グッチといった世界的なブランドまで2万点を超えるメガネ・サングラスを取り揃える一方、自社ブランドの「TYPE」と「Oh My Glasses TOKYO」を展開。企画開発から製造販売まで一貫して行っています。
オーマイグラス社では、2016年にモチベーションクラウドを導入。当初は組織偏差値34(※平均は組織偏差値50)というスコアでした。しかし、現在はそこからスコアは大きく伸び、合わせて組織状態も改善されました。本企画ではその裏側と、今後目指していきたい組織像について、清川氏にお話をお伺いしました。
【プロフィール】
オーマイグラス株式会社 代表取締役社長 清川 忠康 氏 (https://www.ohmyglasses.co.jp/)
1982年大阪府生まれ。2005年に慶応義塾大学法学部、2006年にインディアナ大学大学院を卒業後、UBS証券、経営共創基盤を経て、スタンフォード大学経営大学院に留学。2年次在学中にオーマイグラス株式会社を創業。主な著書「スタンフォードの未来を創造する授業」(総合法令出版、2013年)
【インタビュアー】
株式会社リンクアンドモチベーション中堅・成長ベンチャー企業向けモチベーションクラウド事業 事業責任者 田中允樹
株式会社まなざす 代表取締役 林 慎一 氏 (http://manazasu.com/)
【ライター】
株式会社リンクアンドモチベーション モチベーションクラウド事業マーケティンググループ 沖田慧祐
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ベンチャー経営最大の危機は、売上よりも組織
– この度は、特別企画「偏差値34からのビジョナリーカンパニー」ということで、オーマイグラス株式会社清川社長にご登場いただきました。清川社長は、Twitter、youtube などのSNSでの発信も多くしていらっしゃいます。
「偏差値34からのビジョナリーカンパニー」ということですが、偏差値34というのは、組織改善クラウドサービス モチベーションクラウドを2016年に導入して、一番最初に診断したときの組織偏差値だったそうですね。当時はどのような状況だったのでしょうか。
オーマイグラス 清川氏:
私自身、2011年に起業する前にマネジメント経験がほとんどなかったんですよね、2014年の末に資金調達をしたのですが、調達前は確か10人未満の社員数でした。でも、そこから一気に30人ぐらいまで、3カ月ぐらいで増やしたんですよ。
評価制度や労務管理なども全然追いついていませんでした。当時(2014 – 2015年)は今ほど起業ノウハウの情報がなくて、人を入れてきてもすぐ辞めちゃうし、会社の雰囲気も悪くなっていく。今考えれば当然のことが起きていました。
ベンチャー企業を経営する中で、一定の割合でメンタル的な不調をきたしてしまう経営者っているのですが、それは売上が上がらないということよりも、やっぱり“組織”なんですよね。
僕もそうなんですけど、売上が上がらないのは、シンプルに頑張ればよいんですけど、組織の雰囲気が悪くなると、そもそも頑張る気力すら沸かなくなってしまいます。
共同創業者もそのタイミングで辞めてしまっており、当時の自分は社内で孤立してしまっていました。人も辞めていくし、新しく入った株主さんとの関係性もうまくいかず、精神的にかなり辛い時期でした。
そんなときに、リンクアンドモチベーションの近藤さん (※当時担当。現在大手企業向けモチベーションクラウド事業 事業責任者) にたまたまお会いしました。
最初はリンクアンドモチベーションがベンチャー投資をしていると聞き、話をしていたのですが、ちょうどモチベーションクラウドというサービスがリリースされるということ(※2016年リリース)で試しに導入してみた、という経緯です。正直当時は、「組織を改善する」という発想自体、自分にはピンときていませんでした。
モチベーションクラウドを止めようと思った
-最初そういう状況で取っていただいて、スコアが34だという状態をご覧になられていかがでしたか?
オーマイグラス 清川氏:モチベーションクラウドではスコアの報告で毎回コンサルタントの方が来てくださるんですけど、34と聞いたときは「えっ」と思いましたね。ひとまず、近藤さんに反感を持ちました。勿論、近藤さんは何も悪いことしてないんですけど(笑)。何なんだよこれ、どうなってんだよ、みたいな。
スコア34の説明として、下位何%という話をしていただいたんですけど、まぁ低いスコアです。偏差値34ですからね。本当に下の下のところ。それが、経営者である自分自身を否定されているように受け取ってしまったんです。
呆然という感じでしたね。最初の2〜3回目ぐらいまではそんな感じ。2016年10月から半年ごとに、組織診断をしたのですが、最初1年ぐらいは毎回実施する度に「もうやめよう」って思ってました。
その後、毎回スコアが5ぐらいずつ上がっていたんですけど、1年半経っても平均スコアの50以下。言葉を選ばずに言うと、アホらしく感じてしまっていました。こんなに自分は頑張ってるのに、何でメンバーはわかってくれないんだ、という気持ちが湧き上がってくる、そんな状態でした。
目的を踏まえない組織施策はコストでしかない
-ただ、その後順調にスコアを伸ばされ、今は組織に大きな変化が感じられているとお伺いしました。最初2~3回目ぐらいのとき、色々な施策をやっているのになかなか変化がなかった、とのことですが、そのときはどんなことに取り組まれてましたか?
オーマイグラス 清川氏:当時の僕がやっていたことって、実は今とそんなに変わらないんですよ。社内報を発行するとか、社員との飲み会をするとか。でも、それって実は全然意味がないんです。ただ漫然と社内のコミュニケーション頻度を増やしましょうとかやっても、駄目なんです。
トップダウンで当時頑張った施策は、すべて空回りしていました。飲み会をやるにしても、「いや、別に社長と飲みたくないし」と思われてしまう。僕は「なんで出ないんだ」と不機嫌になる。
今振り返ると、組織偏差値が30〜40点台ぐらいでは組織内の信頼関係は無いのと同じなので、社員は僕と話したくないはずなんですよね。そんな状態で飲み会やったら、むしろみんな出たくない。
社内報とかも結局、興味のないスタッフにとってはただのコストなんです。「見なきゃいけない」「仕事を増やされてる」ってそういう感覚を持ってしまいます。
僕自身、サーベイに向き合う中で気づいたんですけど、目的や、目的を踏まえてコミュニケーションの中身を考えないと、むしろ逆効果なんです。
モチベーションクラウドのサーベイ結果に出てくる、各項目の期待度と満足度をしっかり見て、どの期待度・満足度を上げる・下げるのかを考えて、コミュニケーションの内容を考えるようにしたら、少しずつ組織施策がうまくいくようになっていきました。「○○という項目の期待度を下げるようなメッセージを発信しよう」とか。
売上と同じ基準で、組織偏差値に向き合う
-サーベイ結果に対して、そう捉えられるようになったきっかけはありますか。
オーマイグラス 清川氏:僕がモチベーションクラウドのサーベイ項目をちゃんと理解し始めたタイミングが一つのきっかけでした。施策の効果が目に見えて出るようになってきたんです。
要するに、事業の売上に対して向き合うのと同じ姿勢で、サーベイに向き合えばいいんです。ベンチャーの経営者って、営業で売上を作れるのに、組織に関しては全然興味もないという人結構多いと思うんです。
でも、シンプルに売上のPDCAを回すのと同じ感覚でやり始めたら、うまくいくようになりましたね。KPIを見て、この数字を改善する、今回はこれを上げていくっていうPDCAを回していくんです。
その基準で組織を見ている人はかなり少ないと思います。PDCAを回すときは、特にP(Plan)にこだわるのが大事ですね。
-モチベーションクラウドでいうと、どの項目の期待度/満足度を上げる/下げるのか、そのために何をするのかを徹底的に考えるということでしょうか。
オーマイグラス 清川氏:そうです。うちでずっとスコアが低かったオペレーション本部という倉庫管理の部門があります。この部門は最初ずっとスコアが低かったんです。
以前、僕がやっていたことは、倉庫に行く回数を増やして「みんな頑張ってるよね」と伝えたり、飲みに誘ったりすることでしたがスコアは低いままでした。
ところが、あるとき、飲み会などは一切してないのですが、むしろ厳しくフィードバックしてみたんです。そうすると、スコアが上がり始めました。
要するに、部門の皆が感じていたのは、「店舗の人たちは、お店の売上でインセンティブがもらえるのに、なぜ自分たちはもらえないんだ」「自分たちはこんなに頑張っているのに」ということだったんです。それに対して、適切に「店舗の人たちと比べて、これはできてるけど、これはできてないから、ここを頑張ろう」と伝えたことで、スコアが改善していきました。
それはつまり、思いついた施策や人から聞いた施策を適当にやってみるのではなく、目的を設定して丁寧にやるようになったからだったんです。
はっきり言って、世の中に出回っている組織施策なんて見る必要はありません。一度見てしまうと、「うちも同じことをやらなければ」と考えますが、その前に自分の組織のニーズに丁寧に答える方が圧倒的に良いと思います。
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※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。
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