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100人の壁を突破して実現した「球際に強い組織」株式会社ウエディングパーク

「組織偏差値70の企業が実践するマネジメントの秘訣とは」というテーマで迎えるゲストは、株式会社ウエディングパークの日紫喜氏。惜しみないコミュニケーション投資の先にあったのは、強いカルチャーを持ち、ライバルと競り合う際に「球際に強い組織」だった。

【イベント実施日】
2017年12月20日(水)

【プロフィール】
株式会社ウエディングパーク 代表取締役社長 日紫喜 誠吾(ひしき せいご)氏

コメンテーター
株式会社リンクアンドモチベーション  取締役 麻野 耕司

司会
株式会社リンクアンドモチベーション 山中 麻衣

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ウエディングパークの組織偏差値は、出現率3%の高スコア

山中 麻衣(以下、山中):「組織偏差値70の企業が実践するマネジメントの秘訣」というテーマで本日お迎えするゲストは、株式会社ウエディングパークより、代表の日紫喜様です。

日紫喜 誠吾氏(以下、日紫喜氏):皆さんこんにちは、日紫喜と申します。現在、130名ほどの従業員で会社経営をしておりますが、3人と小さなところから始まって成長していく中で、モチベーションクラウドの活用タイミングがうまく決定出来たと思っています。

本日は、モチベーションクラウド導入の決断に至った背景や、良い組織になっていくためにどのような努力をしてきたのかについて、お話できればと思っています。

山中:本日のお話の前提となっているのが、弊社のサービス「モチベーションクラウド」です。モチベーションクラウドについて簡単に説明をさせていただいてから、中身に入っていきたいと思います。

私たちは、効果的な事業活動を行うにあたり、組織にものさしが必要であると考えています。例えば、大学受験をされたとき、模試を一回も受けずに合格されたことはないと思います。良い教師と出会い、良い教材があったとしても、今自分の学力は全体のどの位置にあるのかが分からなければ、学力は上がっていかない。

ただ、事業活動においては、PLという形で事業活動を計るものさしはある一方で、組織状態を把握するものさしがない。そこで私たちは、組織状態を測るものさしを開発しました。

また、研修を実施したり制度を改訂したりしても、それが上手くいっているのかわからないという声や、従業員満足度調査を年に一度実施しているけれど、その結果を改善活動に使うことなく、ただ調査しているだけになってしまっているという声もあります。

そういったことから、組織改善にも、ものさしが必要だという考え方により「エンゲージメントスコア」を開発しました。このものさしをベースにして、PDCAサイクルを回す仕組みが、モチベーションクラウドのポイントです。

エンゲージメントスコア(=組織偏差値)は、11段階でランク分けしていますが、ウエディングパークさんのスコアは「A」で、会社と従業員の認識のすり合わせ度合いが高いと言えます。このAというのは、出現率は3%ほどですので、獲得するのが難しいスコアです。

このAスコアを獲得された秘訣をおうかがいしていくにあたり、まず事業のご紹介からお願いできればと思います。

日紫喜氏:株式会社ウエディングパークには、ビジョンと理念があります。まずビジョンが「21世紀を代表するブライダル会社を創る」。そして経営理念が「結婚を、もっと幸せにしよう。」です。

会社名から想像いただける通り、ブライダル業界で経営をしてるわけですが、ブライダル×インターネットの様々なサービスを提供して付加価値を出していく会社と、ご理解いただければと思います。結婚式場を中心にインターネット広告費をいただいて売上を立てるというビジネスです。

営業拠点は全国各地に9拠点あります。ネット企業で、9拠点も展開している会社はあまりないと思いますが、全国に営業拠点を構えて、直販営業している企業です。

サイバーエージェントの100%子会社なのですが、私自身も、2000年にサイバーエージェントに転職をしました。約3年間、色々な業界にインターネット広告をセールスした経験を経て、今このブライダルという領域で経営者をしています。事業領域のメインは、全国の結婚式場の比較検討が出来るクチコミサイト「ウエディングパーク」が、メインの中核事業です。

結婚準備をするタイミングで、皆さんが一番悩まれるのが、式場選びなんです。当然ですが、「失敗したくない」という気持ちが強い。そういった中で、日本で最初にブライダル領域でクチコミを取り入れたのが、私たちの会社です。

山中:ありがとうございます。ここからは具体的に、どのような取り組みをされたのかというお話に入っていければと思います。ウエディングパークさんの最新のエンゲージメントスコアは、2017年9月実施時の「70.2」です。

過去3回の実施の中で、スタート時は「65.5」ということで、最初と比較すると5ポイント以上スコアが上がっていることになります。

立ちはだかった100名の壁。幹部と現場のギャップを解消するために取り組んだ「組織状態の見える化」

日紫喜氏モチベーションクラウドの導入を決めた経緯からお話しします。導入したのは、2016年の夏頃です。経営者としては既に10年以上、社員と向き合っていた中で、社員との交流も積極的に持っている自負はあったので、組織の状態についても自信がありました。

ただ、従業員が70名ほどになり、いよいよ100名に迫りそうだというタイミングで、思うところがありまして。と言うのも、やはり70名を超えると社員が何を考えて何をしているのかが見えにくくなる。

そして、リーダーを育てないと会社は大きくならないからこそ、なるべくリーダーに権限を委譲して自分は距離を置くように意識をし始めたんです。

すると、組織全体が見えなくなるタイミングがありました。とは言え、一時的にその状況も通るべき道であり健全なことだと思っていたんです。

ですが、社員と食事をしたときに「会社の風通しが悪くなったように思う」という声があって。自分としては、それでも風通しが良い組織だと思っていたので、違和感を持ちました。それ以来、週に2〜3度社員と飲みに行って、話を聞くようにしたんですね。

そうすると、予想外のコメントがたくさん出てきてしまった。それで、これはちょっとまずいなと思ったんです。そこで役員・部長陣に、「風通しが悪いという声が現場から多く出ているから、テコ入れして欲しい」ということを伝えて、数ヶ月様子を見たんですが、なかなか状況が変わらなかった。

むしろ、役員・部長陣からは「組織状態は、結構良いと思います」という声も出たりするほどでした。現場と経営陣がずれているなという危機感を感じて、尊敬している経営者の方に相談をしたら、「組織の状態を見える化した方が良いよ」というアドバイスをいただいて。

それで麻野さんをご紹介いただいたんです。これが、モチベーションクラウド導入のきっかけです。

最初のスコアは「65.5」だったので、正直な気持ちとしては、そう悪くはないとは思いました。ですが、「トータルとしては悪くはないけれども、ここの部分は他社の平均的なスコアよりも悪いですね」など、細かいフィードバックをいただいて。

それを徹底的に改善してきたということが、大きな流れです。

組織の一体感を高める「褒め合う」文化

具体的な改善行動の話に入る前に、経営者として何を意識して大切にしているのかについて織り交ぜながらお話しさせてください。まず「内部統合」ですが、職場のメンバーに対して、目標や計画がちゃんと共有されて一体感があるのかということだと思います。

これは、創業以来ずっと意識しているところで、弊社には「褒める文化」があります。その文化がこのスコアの結果に、結びついているのだろうと思います。

もちろん、何でも褒めれば良いわけではありません。褒めるにしても、「目標に対してこういう結果が出ている」ということや「目標に向かって良い行動ができている」ということを、まめに伝えることが大切だと思っています。

月末の最終日には、全国の営業拠点のメンバーを東京に集合させて、全員で業績の振り返り会をやっているんですが、表彰式という賞賛の場も設けています。

また、半年に一度、社員総会という形で、半年間の業績を振り返るイベントも実施しています。全国に拠点があって物理的に意思疎通をはかることが難しいので、SNSも活用しますね。弊社の場合はFacebookで全社員をグループ化していて、自分が知らせたいなと思ったことを自主的にアップする仕組みにしています。

Facebookの投稿に気軽にいいね!を押したりコメントを返したりするやりとりも、社員が20〜30名の頃からやっていて、これは効いているなと思います。と言うのも、自部署のことは皆わかりますが、他部署でどんな嬉しいことや残念なことがあるのかは、見えにくいものです。

ですが、Facebookで毎日のようにトピックスが上がることで、情報が流通するんですね。メールで日報を提出する習慣もあるんですが、Facebookでの交流があるからこそ、他部署や他営業拠点のメンバーが日報に対して返信もする。

つまり、「褒め合う」文化につながっているんです。

「せどつく」で育む、自ら考えて動く社員

また、「組織風土」においては、縦・横・斜めの意思の疎通が組織で出来ているということだと思います。経営者として意識しているのは、「自ら考えて動く社員をいかに増やすか」です。どれだけ改善活動をしたとしても、組織には常に課題は出るものです。

だからこそ、その課題に対して不満を言うのではなく、自分が動いて課題を解決する。具体的には、「せどつく」というオリジナルの制度です。これは「制度を作る」の略称です。

2017年には12名の新卒社員が入ってきたのですが、彼らを3チームに分けて、「ウエディングパークに必要だと思う制度を経営陣に提案をしなさい」というお題を与えました。1年目の社員は非常に素直な目で会社を見ているので、面白いアイデアが出てきます。

こういった取り組みを、2012年に入社した、新卒1期生の頃から毎年続けています。

基本ルールは、提案の中から必ずひとつは「やりましょう」という決定をするということです。新人でも経営チームに提言する機会があり、「必ず決定をしてもらえる」という臨場感と、「自分で会社をつくっていかなきゃいけない」という良い危機感が生まれています。

麻野:ありがとうございます。素晴らしい取り組みを聞かせていただいて、非常に勉強になりました。中でも「せどつく」は良い取り組みですね。自ら考えて動く、当事者意識を促す取り組みが面白いです。

しかも、社員の方から提案を受けたときに、その場でイエス・ノーを答えることで、活性化するという部分が、興味深かったです。「50人の壁・100人の壁」の話は聞かれたことがある方も多いと思いますが、それぞれの壁のタイミングで経営者が向き合わないといけないのは、「社員の当事者意識」だと思うんです。

社員の当事者意識が薄らいでいくと、評論家的・批評家的になって、組織がまとまらなくなる会社は非常に多いです。

私たちがコンサルティングの際にお伝えするのは、「そのタイミングでいかに転換出来るか」なんです。何から何に転換するのかというと、経営者一人の百歩で進む会社から、社員一人ひとりの一歩に転換するということ。

要は、社員百人の一歩ずつで百歩進むような会社に、いかに転換出来るかが大事だということなんですが、ウエディングパークさんのこの取り組みは、社員の一歩を促すために非常に有効的だと思いました。

以前、企業再生ファンドの方から聞いた印象的な話があります。再生ファンドが介入する会社というのは大抵成熟企業で、社内に諦め感が蔓延してしまっており、社員は皆「どうせ・しょせん・やっぱり、うちの会社はダメだよ」と言っているそうなんです。

ただ、その状態を打開する有効な手段はひとつだけあると。具体的には、社長の隣にファンドの面々が並ぶ中で、若手のリーダー層に提案をさせるらしいんです。「これをやれば会社がよくなるというアイデアを話せ」と。

そのときにファンドが社長に指示するルールは「その場で絶対にゴー・ノットゴーを決める」ということだけ。全部ノーでもいいから、その場で決める。絶対してはいけないのは、持ち帰るという判断なんだそうです。

若手のリーダーたちの提案内容に対して社長がその場で返事をすると、若手リーダーたちの目つき・顔つきが変わってくるそうです。

知らないところで会社が動いているという感覚だったものが、「自分が意見を出すと会社が動くんだ」という実感を持つようになる。つまり、当事者意識を持った顔つきになってくるということなんですよね。

私自身も必ず、月末の納会でカンパニーのメンバーが集まると、質問と提案をさせます。そして、提案に対して必ず、イエスかノーをその場で伝えるようにしています。そうすると、場の雰囲気が変わるんですよね。

9個ノーだったとしても1個イエスがあると、「自分の提案で会社が動く」と思えるから。この取り組みは、多くの会社で使えるなと思いました。

例え業績が悪化したとしても、コミュニケーション投資は削減しない

麻野:ひとつ質問させてもらいたいのですが、ウエディングパーク社は、非常にコミュニケーションに投資をされています。

これは、異常なほどです。「これを全部やめたら、ちょっと業績上がるんじゃないか」と思えるくらいで、「業績が良いから、余裕があるから出来るんじゃないの」という見方も出来ると思います。

そこで、業績が悪くなったらさすがにコミュニケーション施策をもう少し削るかなという感じなのか、業績が悪くてもそこは今と同じぐらい投資するんだっていうことなのか。率直な考えをお聞かせください。

日紫喜氏:「削ってはいけない」が答えですね。現在の組織偏差値は「70.2」で、業績も堅調に伸びています。そんな中で、ちょうど今年度の「せどつく」が終わったところでして。1年目の社員が出したテーマが「コミュニケーション不足」でした。

「もっと他部署のことが知りたい」という意見がありましたね。もっと知りたいという声は永遠に出ると思った一方で、無関心ではなく他者を想像することで、仕事の意味や意義がより見えてくるとも思っています。

そういう意味でも、月末の表彰(=褒める場)でも、非常に貢献をしたと思う他者を、必ず一人推薦させるようにしています。日頃のコミュニケーションが十分にあるからこそ、具体的なエピソードとともに推薦者が挙がってきます。

誰が誰を推薦したかという、全社員分のリストもオープンにしているので、「この人が自分のことを見てくれていた」とか「応援してくれていたんだ」ということがわかる。

会社の士気を上げている要因は、間違いなくコミュニケーションの密度だと思いますね。また、確実に業績とも連動していると思います。

組織偏差値の向上に、業績がついてくるという手応え

麻野:スコアが70台に上がって組織が良くなったなとか、これは業績に跳ね返ってくるなっていう実感はありますか。

日紫喜氏:コミュニケーションの密度を含め、組織偏差値が高い状態ですが、すぐに業績の結果に結びつくものではなくて、少し時間差が出るだろうと思っています。弊社は9月決算なので、次の9月の業績に反映されてくるのではと見ています。

ただ、私自身の体感としては、球際が強くなったと思いますね。実は、サイバーエージェントの役員と話をしていたときに、「サイバーエージェントが強い会社になったのは球際に強いからだ」という話題になったことがありました。球際で競り勝つ人と競り負ける人っているじゃないですか。

最後の最後で競り負けない。何が強みになって競り負けないのかと言うと、それはカルチャーなんですね。

カルチャーが強みと言える組織をつくろうというのは、サイバーエージェントグループとして浸透していることですが、ウエディングパークも非常にカルチャーが良い会社だと思っています。

麻野:仕事で球際に強いと言うと、例えばどんな場面でしょうか。

日紫喜氏:例えば、お客様からネット広告年間契約のご発注をいただくのは、年末から3月にかけてなんです。当然、競合他社と比較して料金の話が出たりもするじゃないですか。

そのときに現場の営業マンが、「競合の方が安いからこれは負けても仕方がない」と思うのか「価格じゃないんです、うちの会社に投資してください。伸びますから」と、一歩踏み込めるのか。

昨年と比べてもグッと社員の目線は上がって、強くなったと思います。ちょうどそういった時期なので、より強く感じています。

麻野:社員一人ひとりの球際での一歩の踏ん張りが積み重なって、業績につながる手応えを感じ始めてらっしゃるということですね。非常にイメージしやすいエピソードをご披露いただき、ありがとうございます。

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※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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