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グッドパッチ社 前人未到、デザイン会社初の上場 新時代を勝ち抜く経営方法【前編】

家計簿アプリのマネーフォワードやニュースアプリのGunosy(グノシー)などの創業期にデザイン領域で関わり、またコロナ禍で高まる、高速通信やクラウド、人工知能(AI)などを事業に活用する『デジタルトランスフォーメーション(DX)』の推進にデザインの側面から大きく貢献している、グッドパッチ社。

グッドパッチ社は、少数の天才に依存するようなデザイン会社と異なり、組織にナレッジを蓄積し再現性を高める組織づくりにより人材育成のプロセスを体系化。優秀なデザイナーを継続的に生み出す仕組みを整えており、実際に多くの人材がデザインの力でビジネスを推進しています。

また、今年の6月にはデザイン会社として史上初となる新規上場 (IPO) を果たしました。上場までの道のりで、グッドパッチがどんな経営をしてきたのか?成功や失敗を経験される中で見出した法則を、新時代の経営手法としてお話いただきました。

【セミナー実施日】
2020年10月8日 (木)

【スピーカープロフィール】
株式会社グッドパッチ 代表取締役社長/CEO 土屋尚史氏

【モデレーター】
株式会社リンクアンドモチベーション 中堅・成長ベンチャー企業向けモチベーションクラウド事業責任者 田中允樹

【ライター】
株式会社リンクアンドモチベーション  沖田慧祐
株式会社リンクアンドモチベーション  岩崎健太

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企業の成長ステージによって、起こる問題は異なる

リンクアンドモチベーション 田中:企業は、拡大モード、多角モード、再生モードと成長していきますが、各成長ステージによって起こる問題は異なります。

特に拡大モードを細分化すると、アーリーステージ、ミドルステージ、レイトステージと分けられ、それぞれ起こる事業・組織の問題はスライドの通りです。本日は、グッドパッチ社の「13の経営哲学」と題して、各ステージで起こった問題と紐付けながらお話いただきます。


グッドパッチ 土屋氏:グッドパッチは、2011年に創業し、デジタル領域のプロダクト開発に強みを持つデザイン会社です。6月に、デザイン会社として初の東証マザーズに上場しております。

デザイン会社ではありますが、グラフィックや広告ではなく、デジタル領域のUI/UXデザインに強みを持っています。

弊社は、「ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる」というビジョンと、「デザインの力を証明する」というミッションを掲げてビジネスを展開をしています。9年で世界3拠点、173人のデザイン人材を抱えていますが、デザイン会社でこのようなスピード感でスケールさせた企業は、他にないと思います。

リンクアンドモチベーション 田中:本日は「13個の経営哲学」ということで、普段大切にされている経営哲学を、特に「アーリーステージ」「ミドルステージ」に沿ってご説明いただきます。


アーリーステージにおける経営哲学①
「一分野にフォーカスする」

グッドパッチ 土屋氏:まずは、50人までのフェーズ(アーリーステージ)で、どういうことを大切にしてきたかをお話できればと思います。「UIデザイン」にフォーカスをして会社を立ち上げたのですが、ここに大きなポイントがあったと思っています。

「一分野にフォーカスする」というのは、当たり前と思われがちですが、意外とできている会社は少ないんですよ。皆、色々なことに手を出しがちなんです。

グッドパッチの創業についてお話すると、当時サンフランシスコにいたのですが、アメリカのスタートアップの作るプロダクトのUIが、とてもイケていたことに衝撃を受けたんです。この分野は間違いなく日本でも重要になると思い、それで日本に帰ってきて、グッドパッチを立ち上げました。

これからの時代重要になるのは、単なるホームページやウェブサイトではなく、ユーザーが使い続けたくなるようなユーザーインターフェースであると。その一分野だけにフォーカスする、というのが最初の戦略でした。


アーリーステージにおける経営哲学② 「顧客を選ぶ」

グッドパッチ 土屋氏:ラッキーだったのは、一番最初にやった仕事がグノシー(編集注:情報キュレーションサービス・ニュース配信アプリ、https://gunosy.com/)だったことです。たまたまサンフランシスコ時代に知り合った大学生が、グノシーの創業者の一人だったんです。

僕がグッドパッチを創業した直後に、「こういうのを作りました」って彼が持ってきて、そのデザインを手伝ったのがスタートでした。そしたら、半年後くらいにいきなりグノシーが当たりまして、その結果多くの仕事が入ってきました。

実は最初から、「顧客を選ぶ」というのを、強い意思で行っていました。やる仕事が会社のブランドを創っていくため、どういう人たちと仕事をするかがとても重要であると考えていました。普通は、大手企業と仕事ができることがいいのでは?と思いがちですが、僕は当時大手には、あまりモチベーションがありませんでした。

大きい会社の看板を利用して自社の知名度を上げるのではなく、その時点で仮に小さかったとしても、僕らがデザインを手伝ったことによって、ビジネスを成長させたことを証明できるような仕事をしたいと思っていました。だからこそ、僕は創業当初特に、スタートアップと仕事をめちゃくちゃやったんですよね。

幸いにもグノシーのおかげで一応キャッシュ的には回る状態だったので、いくつかの仕事は、仮に僕らが利益が取れなかったとしてもOK、というくらいでやりました。その中からマネーフォワード(編集注:資産管理・家計管理ツール)とかは出てきました。

リンクアンドモチベーション 田中:顧客にするかどうかは、どういう軸で判断していたんですか?

グッドパッチ 土屋氏:大きく3つあります。まずは僕らが関わって、パフォーマンス出せるイメージが湧くかどうかです。あとは、それに関わることによって、グッドパッチの社員が成長できそうかどうか。

例えば、新しい見せ方だとかUIの挑戦ができるプロジェクトか、みたいな感じですね。最後が一番重要なんですけど、依頼主のパッションですね。担当者の当事者意識がない感じだったら、基本受けない。

リンクアンドモチベーション 田中:普通はアーリーステージにおいて、目先の収益が重要だと思うんです。その中でも、そういう判断をしようと思われたきっかけと、それによって得られた当時のメリットは何かありますか?

グッドパッチ 土屋氏:事業が成功するかしないかは、担当者のパッションの差によるなと思ったんです。ビジネスモデルとかも大事なんですが、最後は、逃げないとか、粘りとか、熱量とかになる。ここが実は大手でも勝てないポイントになりえるんですよね。

僕は、成長する顧客を選びたかったので、その時点で大きい会社ではなく、将来大きくなる会社を見つけて、そこの手伝いをしたかった。まさに投資家的発想で行っていました。

リンクアンドモチベーション 田中:なるほど。目先の収益、安定的なものに流れることなく、創業者として大切にしたいことからブレないことが大事なんですね。


アーリーステージにおける経営哲学③
「未開の才能を見つけて育てる」

グッドパッチ 土屋氏:一般的に起業する時は、最初の10人は、めちゃくちゃ優秀な人を入れろと言いますよね。最初の10人が会社のカルチャーとか、その後を作っていくので。でも、僕みたいに過去の実績がない人にとって、それ難しくないですか。

リンクアンドモチベーション 田中:そうですね。

グッドパッチ 土屋氏:僕も当時28歳で、有名な会社で働いてたわけでもなく、大学も中退でしたし、優秀な人が入ってくれるような会社じゃなかったんですよ。なので当時、創業したときに入ってきたメンバーっていうのは、未経験者が大半でした。

僕自身も、決してデザイン歴とかで人を選んでなくて、むしろ僕らがこれからやろうとしているUI/UXデザインは、その当時、経験者自体いなかったんです。別に、ウェブデザインやグラフィックデザインの経験って正直、UI/UXデザインには関係ないなと思って。

なので、経験者だから採用するというのをせずに、将来伸びる、まだ未開の才能を見つけるということをしていて、最初から育てるつもりで採用してました。

リンクアンドモチベーション 田中:「一分野にフォーカスする」も「顧客を選ぶ」も今の話も、どちらも質にこだわるということですね。


アーリーステージにおける経営哲学④
「長期目線での継続的な自社発信」

リンクアンドモチベーション 田中:続いて、長期目線での長期的な自社発信。グッドパッチさんって色々な発信をこれまでされていますが、そこは私から見ると御社の特徴だと感じています。

グッドパッチ 土屋氏:そうですね。僕が、一番最初にやったことは、オウンドメディアを立ち上げて、UI/UXの重要性を発信することでした。自社の実績ではなく、UI/UXそのものの重要性や海外の事例などを、UI/UX領域の情報に困ってる人たちに向けて、発信していました。

オウンドメディア始めるときにやりがちなのは、最初からKPI作って、そのメディア経由でどれくらい顧客獲得ができたか調べること。でも、当時のUI/UXマーケットは、ニーズが顕在化してるわけではないので、マーケット自体の盛り上がりや、その重要性を広めていくところに価値がありました。

ですから、自社の発信というよりは、UIとかUXデザインがいかに重要かという発信だけ行い、KPIは一切設定せず、PVも見なかったです。オウンドメディアが、顧客獲得において成果が出ていないのが分かると、つぶしたくなっちゃうじゃないですか(笑)。

リンクアンドモチベーション 田中:なるほど。人材採用に関しても、顧客選択に関しても、あるいはブランドづくりに関しても、PLではなく、BS的な発想。いかに未来の長期的な投資ができるかというのが、アーリーステージを乗り越えるための鍵ですね。


アーリーステージにおける経営哲学⑤
「同業が取らない選択の掛け合わせ」

グッドパッチ 土屋氏:僕は、デザイナー出身じゃないからこそ、普通のデザイン会社の人たちがやらないことをやっています。例えば、デザイン会社なのに自分たちのプロダクトも作るとか、デザイン会社なのにVCから出資を受けるとか。

デザイン会社なのに組織をスケールさせる方に行くとか、デザイン会社なのに美大以外からも人を採るとか。デザイン会社なのにIPOを目指すとかですね。

こうした普通のデザイン会社がやらないことをやることで、圧倒的にユニークなポジショニングを作れています。

これまでのデザイン会社の当たり前って、外から見るとおかしいことだらけなんですよ。
例えば、美大以外から人を採るというのも、デザインという領域が広がっている現代、ビジネス理解や顧客体験の分解とかも、デザインの範囲に入るわけです。ですから、絵を作ることだけができる人は、正直バリューが出しづらい。本質的課題の抽出みたいな方がよほど大事です。

他にも、デザイン会社だけど最初からホワイトだったんですよね。デザイン会社って、ブラック企業になりがちなんですよ。だから若いデザイナーが、デザイン会社に入って、下働きして、精神的に参って辞めていくみたいなのが、普通に起こっていたことなんですけど、グッドパッチは2、30人になってきた段階から、もう既にホワイトだったんですね。

リンクアンドモチベーション 田中:なるほど、すごいですね。

グッドパッチ 土屋氏:長期の目線に立った時、産業の発展という観点は、すごく重要だと思ってます。僕がこれまでとってきた戦略によって、結果的にデザインが産業として発展するというのが理想です。

例えば、業界がブラックな状態では誰も働きたくなくなる、給料が安い状態では優秀な人が入ってこない、というのを考えたときに、その構造自体を変えにいかないと駄目なので、そこのお手本になろうと思ったんです。


※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等はイベント実施当時のものです。


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