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懲戒処分とは? 処分の基準や実際の手順について解説

皆さんは、「懲戒処分」というワードにどのような印象を持たれるでしょうか?

「懲戒処分」は就業規則に定められた「懲戒事由」に相当する行為が見られた場合に行われる「不利益措置」のことです。

「聞いたことはあるが、馴染みは深くない」という方が大半を占めるのではないのでしょうか。昨今では「コンプライアンス」や「ガバナンス」など企業内のルールやモラルを適切にマネジメントすることが求められてきており、少しの油断が企業価値を大きく棄損することにもなりかねません。

また、懲戒処分を下した後に訴訟やトラブルにつながりやすいことから、経営や組織運営に関わる人にしっかり内容を理解しておく必要があります。

このコラムでは懲戒処分の内容やその事例、懲戒処分を下す際に企業が留意しなくてはいけないことなど、様々な角度から光を当てて解説していければと思います。

懲戒処分とは?

■懲戒処分の定義と、就業規則との関係

そもそも、「懲戒処分」とは何なのでしょうか?懲戒処分をもう少し説明すると、「従業員が果たすべき義務や規律に違反したことに対する制裁として行われる不利益措置」という定義になります。

「義務や規律」は労働規約に基づいており、「労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」という規定がされています。

そのため、例えば遅刻や無断欠勤が続くなど職務上の規律違反があった場合や、犯罪行為をした場合はもちろん、就業規則に定められている内容を逸脱した場合も懲戒処分に該当します。

そのため懲戒処分を行うためには、就業規則で「どんな時に」「どんな種類の懲戒を行うのか」を明記し、それを社内に周知しておく必要があります。

また、懲戒処分を行うに当たり、問題行為への処分内容が妥当であるかを慎重に判断する必要があります。いざ懲戒処分を執行する際に右往左往しなくても良いように、経営者、管理職も自社の就業規則を十分に理解した上で日々の監督業にあたることが重要です。

基本的には懲戒処分は就業規則に基づいて判断する必要がありますが、法的観点からは以下のポイントが挙げられます。

1つ目は、「懲戒処分の種類と理由を就業規則に明記しているか」です。前述の通り、懲戒処分は「就業規則」から逸脱しているかどうか、という判断をします。そのため、もし就業規則に明記をしていない場合、懲戒処分に該当するかどうかが曖昧になり、ひと悶着することもあり得ます。

2つ目は、「問題行動が就業規則上の懲戒事由に該当しているのか」です。感覚や慣例ではなく、具体的に懲戒処分該当者のどの行為が、就業規則の懲戒理由に該当するかを示したうえで処分を行うことが求められます。

最後に3つ目は、「懲戒処分の内容が重過ぎないか」です。懲戒処分は本人の経済的な負担になることもありますし、職場の同僚、家族にまで何かしらの影響を及ぼす措置でもあります。

また、懲戒処分の種類によっては今後の社会人のキャリアに大きな影響を及ぼすことも考えられます。そのため、懲戒処分の重さが妥当なものであるかどうかは処分を下す側がチェックするポイントだと言えるでしょう。

懲戒処分の具体的な場面

では、具体的に「懲戒処分」を行使した事例としてはどのようなものがあるのでしょうか?
例えば、過去には以下のようなケースで実際に「懲戒処分」が下されたことがあります。

・事例1:勤怠の恣意的な調整、無断欠席

管理者に対しての承認を取ることなく、出社時間を個人の裁量で勝手に変更したり、無断欠席を行ったことが処分に該当しました。また常習的に遅刻や欠席を繰り返していたこともあり、他の従業員の士気が下がり、会社として示しをつけるためにも懲戒処分が執行されました。

・事例2:パワーハラスメントの実施

何度指導をしても改善の気配を見せない部下に付き合いきれなくなり、必要最低限の業務だけ任せ、部署のミーティングや連絡チャットへの入れ込みをしない、などの嫌がらせ行為に加え、「お前の将来など俺の一言でどうにでもなる」などの精神的苦痛を与える発言が繰り返されました。

この事案は管理職の権限を大きく超えた対応に対して懲戒処分が実行されました。

・事例3:個人情報データの漏洩、不正提供

顧客の個人情報(メールアドレス、住所など)の社内データ、及び社内での重要会議での決議事項を無断で第三者に提供していたとして、懲戒処分が執行されました。

・事例4:兼業禁止の企業にて、無断で兼業実施

会社の終業後、会社に無断でアルバイトをしていた従業員に対して、就業違反としての懲戒処分が執行されました。

・事例5:同僚にストーカー行為を繰り返した

本人が嫌がっているにもかかわらず、性的発言や脅迫めいた発言を繰り返して業務への支障を引き起こしたとして、懲戒処分が執行されました。

懲戒処分の種類

懲戒処分の事例には様々なものがありますが、その違反の程度によって処分の内容は「7つ」に分かれます。「戒告(かいこく)」「譴責(けんせき)」「減給」「出勤停止」「降格」「諭旨解雇」「懲戒解雇」です。

それぞれの処分内容について、どのような内容なのかを見ていきましょう。

・戒告(かいこく)
戒告は、「文書や口頭によって厳重注意をし、将来を戒める処分」とされています。事実上の「注意」として多用されており、懲戒処分の中では最も軽い処分に位置付けられています。


・譴責(けんせき)
譴責は、「始末書を提出させて将来を戒める処分」です。以後同様の違反行為を行わないように、反省や謝罪を含んだ言葉で誓約させます。

戒告と同様、減給などと比較すると経済的不利益が生じにくい処分に位置付けられています。

・減給
減給は、「本来ならば支給されるべき賃金の一部を差し引く処分」です。ただし、欠勤や遅刻をした場合に働いていない分の賃金を差し引く行為は、「欠勤控除」に当たり、「減給」には該当しません。これは経済的不利益に直結する内容だと言えるでしょう。

・出勤停止
出勤停止は、「一定期間の出勤を禁止する処分」です。一般的には1週間から長くても1カ月までとするケースが多いです。また、出勤停止の際の賃金は支払いません。

期間中は「無給」となるため、これも経済的不利益に直結する内容だと言えるでしょう。

・降格
降格は、「役職や職位、あるいは職能資格を引き下げる処分」です。降格すると役職給などの職務手当が下がり、出勤停止よりもさらに経済的な打撃が大きい処分です。また経済的にも精神的にも大きな影響を及ぼすことになるため、降格処分を下す際は慎重に検討することが必要です。

・論旨解雇
諭旨解雇は、「一定期間内に退職願の提出を勧告し、提出があれば退職扱いとし、提出がない場合には懲戒解雇とする処分」を指します。懲戒解雇に相当する事案であっても、「情状酌量の余地がある場合」「深く反省が認められる場合」には諭旨解雇の処分を行います。

・懲戒解雇
懲戒解雇は、「制裁として、労働者を一方的に解約する処分」を言い、解雇予告期間を置かない即時解雇として処分が執行されます。懲戒解雇の事実そのものが再就職にとって障害となることから、極めて重い処分だと言えるでしょう。

懲戒処分の基準、原則

懲戒処分を実施する場合において、基準が置かれていないと職権乱用や従業員にとって不利益が生じ得ます。そのため、懲戒処分には執行にあたり「7つの原則」が設置されています。それぞれの原則の名称と、その内容を見ていきましょう。

「罪刑法定主義の原則」
どのような行為が懲戒処分に該当し、どのような処分が下されるのか。懲戒処分の具体的内容が事前に就業規定などで規定されていなければならないという原則です。

「個人責任の原則」
懲戒処分に該当するものはその個人の責任であり、事案に関与していない周囲の人間に連帯責任を負わすことは出来ないという原則です。

「二重処分禁止の原則」
一つの事案に対しては一回の処分がセットであり、同一の事例に複数回の処分を行うことは出来ないという原則です。

「効力不遡及の原則」
新しい処分基準は規則制定後の事例にのみ有効であり、新たに設置した処分基準に従って過去の事案に対する懲戒処分を執行することは出来ないという原則です。

「平等取り扱いの原則」
過去事例と比較し、以前の処分とのバランスを考慮するべきであり、類似の事案にも拘らず処分の重さが大きく異なってはならない、という原則です。

「適正手続の原則」
懲戒に該当する事案が生じた場合は事実関係の確認を行い、本人に弁明の機会を与えるべき、という原則です。

「合理性・相当性の原則」
事案を生じさせた本人だけではなく、その事案が生じた背景や経緯、被害者の問題点を考慮するべき、という原則です。

これらの原則すべてが、客観性を持って妥当な判断を下すためには必要だと考えられています。原則を逸脱したその場限りの判断になっていないかどうか、チェックすることが大切です。

懲戒処分の流れ

本来であれば「懲戒処分」が執行されないようなガバナンス、マネジメントがされていることに越したことはないのですが、企業活動をする中で懲戒処分の執行が必要とされる機会もあると思います。

その場合はどのような流れで実施をしていけばよいのでしょうか?その流れを以下に記載いたします。

■事実関係の調査・確認

前述の原則にも記載してある通り、客観性を持って処分の内容を確定する必要があります。だからこそ、処分を決定するためには、事実情報の調査・確認が何より重要です。

主に「関係者へのヒアリング」「証拠品の収集」「周囲へのヒアリング」「本人へのヒアリング」と、まずは周辺事項から事実情報を収集していきましょう。

また、その際の留意点としては「事実情報と推測情報」を分けて捉えるという姿勢が求められます。

「事実」と言われている情報は、いつ、誰が、どのような立場で認識した事象なのか。得てして、当事者には当事者の、また当事者との関係性によって周囲の人間にも認知のバイアスがかかるものです。

可能な限りそのバイアスを排除して、複数の角度から事案を見ることを心がけてみましょう。


■当事者への弁明機会の提供

懲戒事案の事実情報が集まった次のプロセスとしては「本人に弁明機会を提供する」ことが必要になります。懲戒処分自体はその人の金銭面、キャリア面においても少なからず影響を与えるものになります。

そのため、本人に意見を聞く機会を設けておくことで、その後の訴訟などの問題を事前に防ぐことができます。

(もし就業規則に弁明機会を提供すると記載しておきながらその機会を設けなかった場合には、懲戒処分そのものが無効になる場合もあります)具体的には「呼び出して話を聞く」「書面で提出させる」といった方法があります。


■処分決定と当事者への告知

経営会議等で懲戒処分の内容を決定し当事者への告知を行います。(告知の前に、企業によっては「懲罰委員会」への確認プロセスを通す場合もあります。

特に大企業では懲罰委員会を置いているケースも見られますので、自社に委員会を設置している場合は委員会の目も通すようにしましょう。(委員会自体は、法律的に設置が義務付けられている訳ではありません) 

また当事者への告知方法は、「懲戒処分通知書」を作成し、書面で通知します。書面には、「懲戒処分の対象となった該当事由」「懲戒処分の根拠となる就業規則の該当条項」「懲戒処分の内容」などを記載します。

懲戒処分時の退職金や失業保険は?

「懲戒処分」の中でも6段階目、7段階目に該当する「諭旨解雇・懲戒解雇」は文字通り解雇が生じるため、当時者の金銭的に負担がかかるのは避けられません。

そのため、当事者から金銭面での条件について質問を受ける機会もより多くなるかと思います。もし具体的に「諭旨解雇・懲戒解雇」に該当した場合に、その当事者に退職金の支給や失業保険は必要なのでしょうか?

まず「退職金」に関して、「論旨解雇」の場合には、就業規則によって支払う金額が変わってきます。

全額支給するのか、それとも減額が生じるのか。前述の通り事前に就業規則に明記しておくことが大切です。また「懲戒解雇」の場合は、退職金は支払われないことが一般的です。これも同じく、「懲戒解雇の場合は退職金を支払わない」ことを、就業規則に明記する必要があります。

(その場合は金銭的不利益が生じるのは避けられないため、企業にとって著しい損害を与えた事象であることが前提になります。懲戒解雇そのものが会社に大きな不利益を与えたからこその処分ではあるものの、退職金を無くすレベルの損害だったかどうかが論点になるでしょう。)

次に「失業保険」に関して、そもそも失業保険とは「失業した人の再就職まで、一定期間の生活を保証する」という位置づけのため、「論旨解雇」「懲戒解雇」どちらに該当する従業員でも、失業保険を貰えることができます。

懲戒処分に関する法律

「懲戒処分」の処分の決定、及びそれを規定する就業規則を作成するにあたり、多くの「法律」が下敷きになっています。懲戒処分にはどのような内容の法律が絡んでいるのか、内容に関して詳しく紹介します。

・労働契約法第15条(懲戒権の乱用)
企業が執行した懲戒処分が「過度な処分である」や「必要な手続きを踏んでいない」場合には労働契約法第15条の「懲戒権の濫用」が適用される場合があります。

前述に記載している懲戒処分における基準や手順を適切に踏み、双方の合意が取れた状態での処分が大切だと言えるでしょう。

・民法第415条・416条(債務不履行に基づく損害賠償責任)
従業員が労働契約の労務提供義務に反して企業に損害を与えた場合、企業は損害賠償請求を行うことが出来ます。

・民法第709条(損害賠償責任)
従業員の行為が不法行為に該当する場合は、その従業員に損害賠償責任が発生します。
(管理者の指揮命令系統によってその行為が生じた場合は、企業や管理側にも非があるとみなします。そのため、どの程度の損害賠償を実施するかはケースバイケースで確定されます)

・民法第627条(雇用契約の解消)
懲戒処分の中でも「懲戒解雇」に関しては、雇用契約の一方的な解消という特性上、既に退職している人間には適用出来ません。そのため、懲戒処分を検討している人間の退職手続きが進行していないかどうかは最初に確認しておけると良いでしょう。

・日本国憲法第39条(二重罰則の禁止)
前述の「7つの原則」の中にも「不遡及の原則がありましたが、基本的には一度処分が決まったものを再度処分することはありません。

一つの事案に対して一つの処分が原則であるため、事実確認の精度を向上させる、本人としっかり合意を取る、事前の就業規定への記載を丁寧にする、などの仕組みが必要不可欠だと言えます。

記事まとめ

いかがだったでしょうか?

普段は馴染みのない「懲戒処分」に関して、様々な切り口から解説をさせて頂きました。企業側の視点としては、事前に懲戒処分の内容やその執行条件を規定しておくことで、コンプライアンスやガバナンス、マネジメントの留意点が明確になるかと思います。

そして、万が一懲戒処分に該当する事案が生じた場合は、その内容と対応を速やかに周知、執行することで企業風土の強化にも繋がってくるでしょう。

また、従業員側としては、自身の経済状況やキャリアを大きく左右することにもなるため、高い倫理観を備え業務遂行が求められます。今回の記事が、皆様の企業力強化や職業意識の強化に繋がれば幸いです。

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