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岩本特任教授×味の素 特別顧問 企業価値向上に繋がる「人的資本経営」とは 「HR Transformation Summit 2024」イベントレポート

世界は変化し、AIなどの技術進化に注目が集まっていますが、資源に乏しいこの国にとって本当に注目すべきは最大の資源となりうる「人・組織」です。「人・組織」の力を成長エンジンとして未来を創る。私たちはそんな意志を持ち、「HR Transformation Summit 2024」を開催しました。
 
Session1では、慶應義塾大学大学院 特任教授の岩本隆氏、味の素株式会社 特別顧問の福士博司氏をお招きし、「企業価値向上に繋がる 人的資本経営とは」というテーマでトークセッションを行いました。
 
【イベント実施日】
2024年7月25日
 
【スピーカー】
・慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授 岩本 隆 氏
・味の素株式会社 特別顧問 (元 取締役 代表執行役副社長 CDO) 福士 博司 氏
・株式会社リンクアンドモチベーション代表取締役会長 小笹 芳央
 
【モデレーター】
・株式会社リンクアンドモチベーション モチベーションエンジニアリング研究所 上席研究員 林 幸弘

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投資家が腹落ちする「価値創造のナラティブ(物語)」を語ろう

リンクアンドモチベーション 林:本日は、「企業価値向上に繋がる人的資本経営とは」というテーマでトークセッションを行ってまいります。早速ですが、岩本先生、プレゼンテーションをお願いします。

慶應義塾大学大学院 岩本氏:人的資本経営は、人材を資本と捉える経営ということですが、平たく言えば、松下幸之助さんの『事業は人なり』にあるとおり、従業員一人ひとりがイキイキと働き、活躍し、成長することで企業の持続的な成長を図っていく経営のことです。
 
言われてみれば当たり前の話ですが、みなさんの会社で一人ひとりの従業員に目を向けてみたとき、「本当にイキイキと働いているのか?活躍しているのか?成長しているのか?」と言われると、「そうでもないな」と感じる会社は多いのではないでしょうか。
 
一人ひとりの従業員が活躍し、成長している状態を、企業文化にまで昇華させることが重要です。そうすることで、従業員が「活躍しないと居づらい」「成長しないと居づらい」と感じるような雰囲気をつくることが人的資本経営だと思います。人的資本経営は、ときに「従業員に甘い経営だ」と言われることもありますが、実は逆で、従業員にとって厳しいものです。従業員が「プロとして活躍しないと、この会社に居られない」と感じるような企業文化を醸成できれば、絶対に業績は向上するはずです。
 
私はよく「金太郎飴型」と「プロスポーツ型」という表現を使うのですが、日本企業は戦後長らく金太郎飴型で、みんなが同じことをして、みんなが同じように給料が上がっていく仕組みでした。量産型製造業では、それが重要だったのかもしれませんが、これからのビジネスはプロスポーツ型が求められるはずです。年齢も性別も役職も関係なく、すべての従業員がプロスポーツ選手のように活躍していかないと競争力は生まれませんし、GAFAMのような企業は現れないと思います。
 
今、あらゆる領域でデータやAIが使われるようになりましたが、人材マネジメントにおいても「ROI」が注目されています。実は20年以上前に『人的資本ROI』という本が出ており、人材マネジメントの領域においても昔から、投資リターンを計算しながら体系的にエンジニアリングしていこうという動きはありました。この考え方をベースに、ISOで人材マネジメントの国際規格が開発されています。その一つである「ISO 30414」は、リンクアンドモチベーションさんがアジア・日本で初めて認証を取得されていますが、11の領域で、全部で58の測定基準があります。人材マネジメントは領域が広く、ISOでさえ11の領域に分けています。そのなかで、どの領域にどう投資していけば自社の人的資本ROIを最大化できるのかということを体系的に考えていくことが重要です。
 
日本政府においても、内閣官房が人的資本開示のガイドライン(人的資本可視化指針)を出しています。


 このガイドラインは19の領域に分かれており、左から「価値向上の観点」の高い順に、右から「リスクマネジメントの観点」の高い順に指標を並べています。もちろん、企業によって優先順位は変わってきます。自社の価値向上のためにはこの指標が重要だ、リスクマネジメントのためにはこの指標が重要だということを決めて、マネジメントしていかなければいけません。
 
海外だけでなく日本企業でもよく使われている人的資本経営のKPIが「従業員エンゲージメント」です。古くは2008年にイギリスの政府機関が「従業員エンゲージメントを高める4つの要素」という研究結果を公開しています。

 
一番上に「戦略的ナラティブ」とあります。ナラティブは「物語」と訳されますが、「ストーリー」とは意味合いが異なります。ストーリーは「一方的な物語」というニュアンスですが、ナラティブは「相手が腹落ちする物語」というニュアンスを持ちます。従業員エンゲージメントを高めるためには、経営者やマネージャーが、いかに従業員が腹落ちするコミュニケーションを図れるかが重要だということです。
 
今、日本では統合報告書を開示する企業が増えていますが、統合報告書でも「価値創造のナラティブ」を語らなければいけません。

 
このスライドにある6つの資本のなかに人的資本も入っています。人的資本においてもインプットから、アクティビティ(事業活動)、アウトプット、アウトカムへと接続するナラティブを腹落ちするように語ることが重要です。これは、投資家からのリクエストです。今、多くの投資家は「人的資本は将来を見込むための先行指標」だと考えており、高い関心を持っています。実際に、統合報告書を見た投資家から、「全然ナラティブになっていない」といった指摘が入ることも少なくありません。
 
先ほども申し上げたとおり、人材マネジメントは領域が広いので、「自社にとって何がもっとも価値創造に寄与するのか」ということをデータで見て、投資家が腹落ちするように価値創造のナラティブを語ることが重要です。
 
人的資本経営を推進するために、最近はG3(Group of 3)やG4(Group of 4)と呼ばれる経営体制を取る企業が増えています。

 
G3はCEOとCFO、CHROがタッグを組んでディスカッションをする形です。ここに、企業によって呼び方は異なりますが、CDOを入れるとG4になります。要するに、データをもとに体系的・定量的に人的資本経営を進めていくような体制です。

DNAである「アミノ酸」を起点とした味の素の価値創造ストーリー

リンクアンドモチベーション 林:続きまして、味の素の福士様、プレゼンテーションをお願いします。
 
味の素株式会社 福士氏:味の素は、2010年代、東南アジアや南米の新興国の経済成長に乗っかって、食品事業の海外展開を進めました。これが成功を収め、大きな成長を遂げました。ですが、2016年あたりから業績が低下し、それまで上がっていた株価も4年連続で下がることになります。
 
当時は、海外進出が唯一の成長ドライバーであり、それを主導してきた人が出世街道に乗り、経営陣を形成していました。ですが、成功体験を積んだ人ばかりが集まると、派閥のようになって組織風土が硬直してしまいます。こうして、モノを言わせない、言わない組織風土ができていきました。
 
よく日本企業で問題になるのが、「自分ごと化できない」ということです。私はこの状態を「忖度と批判の三角関係」と呼んでいます。

 
経営のヒエラルキーを、一般の従業員と中間管理職と経営陣の3つに分けて考えます。経営陣と従業員のコミュニケーションでは、中間管理職がやり玉にあげられます。次に、経営陣と中間管理職のコミュニケーションでは、互いに忖度し合いながら、従業員のことを批判します。そして、中間管理職と従業員のコミュニケーションでは、「うちは経営方針がおかしい」と経営陣を批判します。このように、日本企業は往々にしてこの三角関係に陥ります。不在の第三者をやり玉に挙げて、その場をやり過ごすのが自分ごと化できない会社の構図であり、当時の味の素もそうでした。
 
こうした状態で、株価は1,640円まで下落しましたが、急速な変革によって3年ほどで6,000円を超えるまで上昇させました。このときに良かったのが、パーパス経営への転換と、DXの推進でした。
 
企業変革は簡単なことではありません。第一に、社長の心に火がつかないと変革はできません。ただ、社長一人では変革はできないので、変革の同志が必要です。
 
次に大事なのは、変革の目的やKPIを全社目標と同一にすることです。また、DXにしてもデジタル技術を導入すればいいというものではなく、組織風土を変えないと何も起こりません。要するに、仕事の仕方や文化を変えることが重要です。そして、企業のパーパスを定めて、変革プロジェクトを不退転の決意でやり抜くことです。
 
味の素は、内向きのベクトルを前向きにそろえて、企業変革を進めていきました。そのときに使ったのが、以下のスライドで示す「7分割法」です。

 
最初は、企業変革やDX推進の方針について、社長と合意形成を行います。それから変革の同志を集め、戦略立案の部隊と実行部隊を組織化してマジョリティーをつくり、用意周到に全社展開します。そして、変革のプロセスをマネジメントしながら、取締役会に報告を行い、成果を出して初めて組織風土が変わっていきます。やり終えた後は、次世代にバトンタッチします。
 
「変革の同志を集める」際は、無形資産の重要性を共有しました。成長の原動力は、売上やM&Aではなく、知財やR&D、マーケティング、すなわち無形資産だよねという話です。サービスにしても商品にしても、無形資産がより濃密に投入されたものほど単価が高く、利益幅も大きいわけです。ですから、そういうポートフォリオに変えていこうよという話をしました。事業ポートフォリオの変革とは、無形資産の変革です。その無形資産のコアは企業文化ですから、ポートフォリオを変革するためには、企業文化そのものを変革する必要があります。
 
「戦略立案の部隊と実行部隊を組織化する」際は、DXによって企業内の見えない資産を見える化し、企業価値向上のプロセスを高速回転させました。企業の組織資産は有形資産と無形資産からなり、人財資産、顧客資産、物的資産、金融資産に分けられます。

 
これらの組織資産を蓄積していくことが重要ですが、そのためには、無形資産を見える化する必要があります。ですから、DXによって見える化し、KPIを立てて価値創造プロセスを高速回転させていきました。
 
たとえば、人財資産は、従業員エンゲージメントスコアをKPIの一つにしました。顧客資産は、単価成長率をKPIの一つにしています。あとは、コーポレートブランド価値と強度をきちんと調査して、公開するようにしました。物的資産は、オーガニック成長率や重点事業売上高比率をKPIにしました。最初は恥ずかしい数字ばかりでしたが、こうしたKPIを回すことで徐々に組織資産が上がっていき、財務資産も良くなっていきました。
 
「変革のプロセスをマネジメントする」ために、パーパス経営に切り替えました。それまでは、売上や規模を目標にした経営をしていましたが、そこからはきっぱりと足を洗い、「食と健康の課題解決企業に生まれ変わる」と宣言しました。アウトカムは売上ではなく、10億人の健康寿命を延伸することです。
 
味の素が、どのように個人と組織と事業の共成長を図ったのかということですが、まずは「経営層との対話」です。「忖度と批判の三角関係」が生じないように、トップ自らがいろんな部署に降りていって、対話集会を何回も行いました。
 
「個人目標発表会」も効果的な取り組みになりました。これは、個々の従業員が自分の目標や活動計画、価値観をプレゼンするものですが、One to OneではなくOne to Allで共有するのが最大のポイントです。One to Allで行うメリットは、自分ごと化できることです。個人が40~50人の前で目標や活動計画を発表するわけですが、そのときに初めて「自分はこんなことをやっていたんだ」と気付いて、自分ごと化するのです。こうした経験をしないまま会社人生を終わっていくのは、非常にもったいないことだと思います。
 
もう一つのメリットは時間です。40~50人の組織で1対1のミーティングを繰り返しやっていたら、情報共有に相当な時間がかかります。ですが、One to Allなら半日で終わります。個性も含めて、すべてが分かります。毎年繰り返すことで、個人の成長が分かり、組織の成長が分かります。コストもかからない素晴らしい取り組みなので、ぜひおすすめです。
 
最後に価値創造ストーリーですが、味の素の場合、自社のDNAとも言える「アミノ酸のはたらき」をベースにして価値創造ストーリーを組み立てています。

 
当社では、アミノ酸のはたらきに立脚して、様々な事業がそれぞれのプラットフォーム技術を使って、顧客の課題解決を行っています。そして、顧客の課題解決を通じて、社会課題を解決する、というような価値創造ストーリーを組み立てています。

 
このように、左側の従業員エンゲージメントから始まり、2列目には「無形資産投資・強化の取り組み」があります。ここでは、たとえば社外との協業機会創出の回数などをKPI化しています。3列目に「DXによる生産性向上」として、オーガニック成長、BP率の改善、オペレーショナルコストの効率化などを置いています。このような指標を、最終的にはROICやPBRに紐付けています。このように、文化的要素が事業成績に結び付くようなツリーをつくって、企業価値向上を目指しています。

人的資本経営は一人ひとりの社員と共創するもの

リンクアンドモチベーション 林:続きまして、リンクアンドモチベーションの小笹さん、プレゼンテーションをお願いします。
 
リンクアンドモチベーション 小笹:はじめに、「企業が競争に勝ち残るための条件」についてお話しします。
 
どんな企業も、商品市場と労働市場に向き合っていますが、この2つの市場は近年、大きく変化しています。まず、商品市場では、企業の競争優位の源泉が「ソフト化」しており、設備などのハード面から、人材が生み出すアイデアなどのソフト面の重要性が高まっています。また、商品のライフサイクルが「短サイクル化」しており、ヒット商品が出てもすぐに陳腐化するようになっています。こうした変化が起きている商品市場では、「いかにソフト力で他社と差別化できるか」「いかに新たな価値を生み続けることができるか」が重要になっています。
 
労働市場では、企業と個人の関係性が大きく変化しています。高度成長期からバブル期まで、企業と個人は「相互拘束関係」にありました。年功序列も終身雇用も、お互いがお互いを縛り合う仕組みだったと言えます。それが昨今は、「相互選択関係」にシフトしています。状況に応じてお互いに関係を結んだり、関係を解消したりすることができるようになりました。
 
労働人口が減少する今、企業にとって労働市場への適応は重要な課題です。言い方を変えれば、「優秀な人材から選ばれる企業」にならなければいけません。それができない企業は、事業の存続すら危うくなるでしょう。
 
こうした変化を踏まえると、これからの企業の競争優位を左右する要因は「人材力」と「組織力」だと言えます。人材力というのは、一人ひとりの社員の力です。スキル、リテラシー、ホスピタリティなど、いろいろな要素があると思いますが、人材力を高めることが重要です。組織力というのは、優秀な人材を「束ねる」ことで生み出される相互作用のことです。人・組織への投資によって、人材力と組織力を高めていくことが不可欠です。
 
人材力を高めるポイントは、いかに「アイカンパニー」の意識を持てるかということです。

 
自らが「自分株式会社」の経営者であるという意識で、自立的、主体的に自らのキャリアや人生を切り開いていく。こうした人材を育んでいかなければいけません。アイカンパニーの顧客は上司かもしれませんし、競合は同僚かもしれません。アイカンパニーが競争優位を発揮して、選ばれ続けるためには、「Will(やりたいこと)」「Can(やれること)」「Must(やるべきこと)」の重なり合いを追求していくことが重要です。
 
組織力を高めるポイントは、いかに「従業員エンゲージメント」を高められるかということです。エンゲージメントが低い組織は、「笛吹けど踊らない」組織であり、トップが何を言っても社員は動いてくれません。逆に、エンゲージメントが高い組織は、トップが何か言えば、ミドルから現場まで方針や戦略が浸透する、「ささやけば伝わる」組織であるといえます。
 
本日、お越しいただいている岩本先生と当社の共同研究では、エンゲージメントと営業利益率、あるいは労働生産性との正の相関が明らかになっています。エンゲージメントは企業価値向上に直結する指標であり、組織力向上の一丁目一番地として投資すべき指標だと言えるでしょう。

 
続いて、「企業価値向上につながる人的資本経営実践のポイント」についてお話しします。端的にポイントを示すなら、一人ひとりの社員のコミットメントです。
 
もちろん、トップが本気になることが大事であり、経営者や経営ボードの100歩からスタートしますが、最終的には「現場の100人の一歩」をいかに引き出せるかで成否が分かれると思っています。そういう意味で、人的資本経営は経営や人事だけで取り組むのではなく、一人ひとりの社員と共創するという意識で取り組むことが大事です。
 
一人ひとりの社員のコミットメントを引き出すために重要なのが、「自社らしさ」を込めた言葉の浸透です。私自身、これまでの経験から、言葉が従業員の思考・行動に大きな影響を与えるということを身にしみて感じています。
 
当社の例で言うなら、一般の企業で言うリクルーターのことを「エントリーマネジャー」と呼んでいます。これは、「組織の入り口をマネジメントする人」という意味です。また、「キャリアナビゲーション」という言葉も使っています。以前、パソコンスクールの「アビバ」と、資格スクールの「大栄」という会社を買収して統合した際、文化の異なる2社を融合する接着剤として生み出した言葉が「キャリアナビゲーション」です。「講師は受講生のキャリアをナビゲートする存在である」という意味を込めています。このような独自の言葉を浸透させることで、一体感が高まり、企業の変革が促進されたという経験が数多くございます。
 
「自社らしさ」を起点にした人的資本経営が、企業価値の向上につながると思います。自社らしさというのは、自社で流通する言葉や定義に現れます。ぜひみなさんも、自社でどのような言葉が流通しているのか、あるいは、どのような言葉を浸透させれば企業変革を推進しやすいのかといったことを思考していただければと思います。

人的資本経営は「投資」と「費用」を混同してはいけない

リンクアンドモチベーション 林:
最後に時間の許す限り、トークセッションを進めていきたいと思います。あらためて「人的資本への投資を企業価値向上につなげるために重要なこととは?」という質問をさせていただきます。岩本先生、いかがでしょうか。

慶應義塾大学大学院 岩本氏:
今、世界中で「第四次産業革命」が進行していると言われていますが、そのなかで、「これからのビジネスをよく考える」ということが一番重要だと思っています。
 
これまでは、大企業も中小企業もやるべきビジネスが決まっていて、そのビジネスをきちんとやっていくことが重視されていましたが、失われた30数年と言われるように、新たな産業・ビジネスを生み出せないまま30数年が経過してしまったという現状があります。人材マネジメントに関しても、これまでは社長が言ったことに真面目に取り組んでくれる従業員がいれば会社は回っていました。ですが、これからのビジネスを考えたとき、今までのやり方では回らないことは明らかです。
 
先日、ある中小企業の社長とお話をする機会がありました。その会社は、下請け仕事が減ってきて、成熟産業のなかでも自分たちで新しいビジネスをつくっていかなければいけないという状況に立たされていました。そして、これからのビジネスをどうしていくべきか、よく考えました。普通の会社であれば、増収、増益したら増員するという順番で考えますが、その会社は増員を先に持ってきて、「増員 → 増収 → 増益」という考え方で人的資本経営に取り組みました。その結果、今すごく成長しているというお話でした。まず人に投資して、それによって増収、増益して、さらに人に投資をするという循環を確立したのです。
 
すべての企業が、これからのビジネスをどうするべきか、本気で考えるタイミングに来ているのだと思います。


味の素株式会社 福士氏:人的資本投資は「投資」であるわけですが、どうしても企業は「費用」と混同してしまいがちです。たとえば、経営企画部が何億も使ってコンサル会社に依頼するのは、よくある話です。外部にコンサルを依頼するのが悪いわけではありませんが、完全に丸投げしたら、それは「費用」になります。ですが、社員に同じようなことをスクールで学ばせれば、人への「投資」になるわけです。マーケティングも同じことで、代理店に丸投げしたら費用になります。ですが、マーケティング部門に「お金を使ってもいいから、ノウハウを習得し、アイデアを出してくれ」と言えば、それは投資になるわけです。企業の考え方次第ですが、投資にするのか費用にするのかというところは、きちんとポリシーを出すことが大事だと思いますね。

リンクアンドモチベーション 小笹:人的資本経営の広がりは、働く個人にとっても「チャンス」と捉えていただきたいです。
よくAIの登場で、自分たちの仕事が無くなるのではないかという論調もありますが、そのようなことは決してありません。
 
成功している人たちの共通点として、未来を誇大妄想する力が非常に長けていると感じます。「5年後、自分はこうなっている」「10年後、自分たちの会社はこうなっている」など、目の前の仕事は小さいかもしれないですが、仕事の持つ意味を誇大妄想的に解釈できる人がワクワクする人生を送れると思います。
 
ぜひ、誇大妄想を癖づけて、チャンスを掴んでもらいたいと思います。

リンクアンドモチベーション 林:以上をもちまして、トークセッションは終了とさせていただきます。ご登壇いただいたお三方、ならびに視聴者のみなさま、ありがとうございました。​​​​​​

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