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社会心理学から学ぶ従業員エンゲージメントを上げる"4P"を徹底解説

 現在、持続的な企業成長を実現するために、日本のみならず世界中で「従業員エンゲージメント*の向上」に力を入れる企業が増えている。

 リンクアンドモチベーションのグローバルチームで代表を務める近藤 俊弥が、従業員エンゲージメントについて解説する本連載。

 今回は、従業員エンゲージメントを高める「4つの要素」についてお伝えする。
*従業員エンゲージメント = 企業と従業員の相互理解・相思相愛度合いを示す指標

従業員エンゲージメントを高める「4つの要素」

 前回、組織改善を進めるための「ものさし」として、従業員エンゲージメントを計測する重要性をお伝えした。

 それでは、どうすれば従業員エンゲージメントを上げることができるのだろうか。その参考になるのが「エンゲージメントの4P」という考え方である。

 当社では、エンゲージメントの要素、言い換えれば「人材がその会社を選び続ける理由」を以下の4つのPに分類している。

4つの要素

  • Philosophy(目標の魅力):企業の理念や経営計画、成長性など
  • Profession(活動の魅力):事業優位性や仕事の面白さ、成長、商品・サービスなど
  • People(組織の魅力)    :経営陣や仲間、組織風土など
  • Privilege(待遇の魅力) :給与や福利厚生、労働環境など

 これら4つの要素が満たされるほど、従業員は組織への帰属意識を強め、自発的に貢献しようとする意欲が高まる。

 それぞれ、詳しく解説していこう。

  最新データから読み解く シンガポールの従業員エンゲージメントを徹底解剖! 組織改善ならモチベーションクラウド

1.Philosophy「目標の魅力」

 組織の理念や目標が従業員個人の価値観と一致するほど、その組織へのエンゲージメントは高まる。

 たとえば、あなたがテニスサークルを探しているとしよう。「社会人リーグでトップを目指すサークル」と「メンバー同士の交流を楽しむサークル」があった場合、自身の目的や価値観によって選択する組織は異なるはずだ。競技力向上を望む人なら前者を、気の合う仲間と楽しみたい人なら後者を選ぶだろう。

Philosophy「目標の魅力」

 企業においても同様である。「自分がやりたいこと」や「個人として大切にしている価値観」と、企業が掲げるビジョンが重なれば重なるほど、組織への好感度や愛着は高まる。つまり、魅力的で明確なビジョンを設定し、従業員からの共感を引き出すことが、Philosophyを高めるための第一歩となる。

2.Profession「活動の魅力」

 人は「面白い」と感じる活動や、仕事を通じて得られる「達成感」に強いモチベーションを抱く。そのため、こうした体験ができる組織では自然とエンゲージメントが高まる。

 たとえば、自分がテニスをしたいときに、将棋サークルやマラソンサークルを見つけても、興味を引かれることは少ないだろう。これは、自分が求める活動と、提供される活動が合っていないためだ。

Profession「活動の魅力」
 企業においても、自身の興味や専門性と、企業が提供する仕事の内容や活躍できるフィールドが一致しているほど、仕事へのやりがいや充実感は高まる。Professionを高めるには、「個人が本当に取り組みたいと思える仕事や環境」を整えることが重要になる。

3.People「組織の魅力」

 一緒に働く仲間との関係性は、従業員エンゲージメントを大きく左右する。組織の価値観を共有できる人材を採用し、「この人たちとなら楽しく働ける」「互いに尊重し合って成長できる」と思える良好な関係性であることが重要である。

 これもテニスサークルの例で考えてみよう。同じようなテニスサークルがあった場合、当然より魅力的な先輩がいたり、メンバー同士の関係性が良好であったりするサークルを選ぶだろう。場合によっては「テニスサークルに入るつもりだったが、実際に会ってみるとフットサルサークルの方が人が良いので、こっちにしよう」ということすらあるかもしれない。

people「組織の魅力」

 企業の場合も同じである。企業としては、魅力的な人材を採用し続けるだけでなく、既存メンバー同士の関係性も良好に保つ仕組みを整えることが、Peopleを高める要となる。

4.Privilege「待遇の魅力」

 最後に、組織が提供する報酬や待遇も、従業員エンゲージメントにとって重要である。言わずもがな、どんなに目標や活動、組織の魅力が高くても、待遇に不満があれば、従業員エンゲージメントは低下する。

 テニスサークルの例で考えると、「練習場へのアクセスが悪い」「会費が高すぎる」などの不満があれば、人は去っていくだろう。逆に、「練習設備が整っている」「飲み会が豪華である」など、待遇が良ければエンゲージメントは高まる

 しかし、組織のリソースは限られているため、上記のようにお金を投下する必要がある「金銭報酬」の提供には限界がある。そのため、同時に「感情報酬」を提供するのが理想的だ。「感情報酬」とは、金銭以外で心理的な満足を提供する報酬だ。テニスサークルの例でいえば、「チームの勝利に貢献している実感が持てる」「活躍に対して感謝されている」「周囲から一目置かれている」などが挙げられる。

 「感情報酬」は「金銭報酬」と違い、工夫次第でいくらでも生み出すことができる。そのため、企業としては意識的に提供するべきだろう。具体的には、従業員の成果や努力を公正かつ明確に評価し、それを本人に伝える仕組みを整備することなどが考えられる。

金銭報酬と感情報酬

「4P」は選択と集中で尖らせる

 従業員エンゲージメントを高めるためには、単に不満を解消するだけでは不十分だ。企業は、自社の戦略やビジョンを踏まえたうえで、「4P」を意図的かつ効果的に強化し、魅力を高めていく必要がある。

 しかし、企業のリソースには限りがあるため、全てのPを同時に強化することは現実的でない。どのPに重点的に投資するかを定め、戦略的に尖らせるのがおすすめだ。それにより、競争が激化する労働市場においても存在感を発揮し、優秀な人材を引きつけることができる。

 次回の記事では、従業員エンゲージメントの効果的な調査方法について詳しく解説する。


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執筆者:近藤 俊弥
執筆者:近藤 俊弥
【プロフィール】 2007年に株式会社リンクアンドモチベーション入社し、大手企業から中小・ベンチャー企業まで幅広くコンサルティングを担当。 2017年に「モチベーションクラウド」の事業責任者に就任し、7年連続国内シェアNo.1を獲得。 2025年より拠点を国外へ移し、Link and Motivation Singapore Pte. Ltd.のCEOを務め、世界にコンサルティングの幅を拡大。

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